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     理解は記憶の最大の援軍であるが、記憶もまた、ある水準を越えると、理解を助けることができる。

     このことは、とりわけ独学者にとって朗報だ。
     理解を助ける直接的な支援=誰かに教えてもらうことが難しい独学者にとって、他に打つ手があるということだから。

     しかし理解を助ける域にまで記憶が達するには、正確かつ高速に想起することができる必要がある。
     流暢に引き出せる知識は、忘れにくく、妨害されにくいだけでなく、応用されやすい。

     思い出すことを要しないほど定着した記憶は、認知リソースをほとんど消費しない。
     したがって、そこで浮いた分を複雑な処理に回すことができる。

     例えば、掛け算の九九をマスターした人と、7×6を7を6回足して計算する人が、同じ方程式を解くことを想像しよう。
     九九をマスターした人は、ただ解くのが速いだけでなく、正確であり、より楽により複雑なものを処理できる。
     7を6回足すのに費やされるワーキングメモリや注意(これも重要かつ限りある認知リソースだ)を、別のことに用いることができるからだ。

     単純な事項を反復訓練するだけで、文章理解や問題解決のような、より複雑な行動のパフォーマンスが上がることがあるのは、こうした理由からである。



    記憶に最適なスケジュール

     しかし、覚えることに望外の効果があるとしても、その覚えることこそ難所ではないか?

     繰り返せばよいというが、多くのことを覚えようとすれば、そのループの期間は長くなり、最初に覚えたことを忘れてしまっている。
     忘れたことを覚える、覚えたことを忘れる、の繰り返しで、ある程度以上は先に進めない。
     効果が感じられない。やり甲斐がない。続けるのがつらい。やめる。そして忘れ続ける。ついには、何もやらなかったのと同じになる。嫌になる。学ぶことなんてムダだ、二度とやるもんか。


     対処法を示そう。

     まず知っておくべきは、《忘れるのは、人間の仕様である》ということである。
     そして、それに打ち勝つことができるのは、繰り返すことだけである。

     さまざまな記憶の方法(方略)が存在するが、我々に必要なのは、見世物としての記憶術や記憶のスプリント競技に必要な、円周率を何桁も覚えるような少種類大容量タイプの記憶術ではなく、いろいろな種類の事項について長期に維持しメンテナンスできるような記憶方略である。

     ここでいう記憶のメンテナンスは具体的にいえば、繰り返し思い出すことで、記憶の内の優先順位を上げて、取り出しやすくすることを意味している。

     では、多くのことを覚えようとすれば、そのループの期間は長くなり、最初に覚えたことを忘れてしまうという問題はどうすればよいのか?

     忘却するという人間の仕様を、もう少し詳しくみることで対処法がわかる。
     時間が経つに従って忘却し続けるが、その忘却の度合いはゆるやかになっていく。
     この忘却スケジュールに照らすならば、復習のタイミングもまた次第に間隔を広げていくことで最適化できる。

     このスペースド・リハーサルと言われる復習タイミングの方法については、何度か書いてきた。

    復習のタイミングを変えるだけで記憶の定着度は4倍になる 読書猿Classic: between / beyond readers 復習のタイミングを変えるだけで記憶の定着度は4倍になる 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加
    1年の計はこれでいく→記憶の定着度を4倍にする〈記憶工程表〉の作り方 読書猿Classic: between / beyond readers 1年の計はこれでいく→記憶の定着度を4倍にする〈記憶工程表〉の作り方 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加


     単純な暗唱ものから文章理解から技能習得に至るまで有効な方法だが(そしてほとんどの記憶術/記憶方略と併用可能である)、最大の欠点は〈面倒くさい〉ことである。

     最初のうちはいいが、学習をはじめて何十日か経つと、復習すべき項目が〈1日前覚えた項目〉〈3日前覚えた項目〉〈7日前覚えた項目〉……と積み重なってきて、しかも復習までの期間が広がっていくわけだから、とっさに今日はどれを復習すればいいかが分かりにくくなる。

     だったらコンピュータに復習タイミングの管理を任せられないかとは、誰しも考えることだが、スペースド・リハーサルを取り入れた単語帳ソフトSuperMemoが1985年に商品化され、その後Ankiというオープンソースでマルチプラットフォーム(Windows、Mac osx Linux、FreeBSD、iPhone、Android、ノキアのMaemo(マエモ)で動く)のソフトが登場した。



    Ankiによる後退しない学習

     Ankiの使い方は簡単である。

     覚えたいコンテンツをダウンロードなり入力するなりしておけば、カードの表が表示され、それを見て裏側を思い出す。
     正解だったか間違いだったかを、クリック/タップすれば、正答率に基づき、最適化されたスケジュールで(当然、間違えたものはより早いタイミングで、正解だったものはより遅いタイミングで)、それぞれのカードは再登場する。

     携帯端末にAnkiを入れておけば、たとえば乗り物待ちのわずかな時間に数枚のカードを復習することができる。
     あとでその日の学習結果をグラフで見ると、そんなすきま時間だけで合計39分で356枚のカードをこなしていることが分かる。

    anki-統計(一部)


     我々の目標は、単にうろ覚えすることでなく、正確かつ高速に想起できるようになることだから、慣れていけばいくほど、こなせるカードの数は増えていく。

     もちろん、もっと忙しい日や体調が悪い日もあるだろう。しかし机に向かって勉強する/しないの、大きな単位のゼロか100かでなく、Ankiによる学習は最小単位が数秒で済む1枚のカードなので、日によって5や10になることはあってもゼロにはなりにくい。

     そしてこれが重要なところだが、Ankiに入力した事項は、あなたがAnkiを使い続ける限り、もう二度と決して忘れないのと同じだと見なせる。
     今の時点では覚えていなくても、遅かれ早かれ、何十回と思い出す作業を行う中、嫌でも覚えることになる。
     そして忘れようにも、忘れかけた頃に再び登場して、思い出すことを求めるのだから、忘れることができない。いや、たとえその時忘れていたとしても、その時は間を置かずに繰り返し再登場するのだから、やっぱり覚えてしまうしかない。

     Ankiは、あなたが止めないかぎり(止めたとしても再開すれば)、いつまでもあなたに付き合う。



    Ankiで何ができるか?

     シンプルな機能であり、応用は様々であるが、例としていくつかあげてみる。


    ◯外国語の文字

     ロシア語やアラビア語は、文字から覚える必要があったで、カードの表に文字を、裏に文字の呼び名や発音を入れた。
     ロシア語のほうが、由来の外来語や知っている固有名詞も多いので、外来語/固有名詞の綴りをカードの表に、裏にそのローマナイズと外来語を書いた。

    根気も時間もないあなたが外国語習得の臨界点を越える一番ゆるいスタートアップの方法 読書猿Classic: between / beyond readers 根気も時間もないあなたが外国語習得の臨界点を越える一番ゆるいスタートアップの方法 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加




    ◯外国語の単語・短文

     外国語の短文記憶は、語学における九九にあたる。
     
     慣れない言語を、我々の脳が扱うバッファは驚くほど小さい。
     当然、処理速度は遅く、読んでも遅々として進まず、会話も速すぎると感じて、着いていくことができない。

     アルファベットを覚えたての段階では、我々は1文字ずつ写すことしかできない。
     やがて慣れてくると、1語ずつが扱えるようになり、さらに進むと数語を一度に扱えるようになる。

     短文を反射的に想起できるようにすることは、一度に処理できるバッファの容量を増やすことである。
     覚えるなら、自分のバッファぎりぎりのものを選ぶと良い。
     バッファの容量は、外国語の文を見て書き写す時、いくつの語一度に書き写せるかで分かる。
     4語程度のバッファしかないのに、10数語でできた長めの文章を覚えるのはつらい。
     それよりも短い文の、想起の正確さを速度を高めることから取り組んだ方が効率が良い。
     Ankiはこうした用途に向いている。


     さて、Ankiでは、カードの内容と、レイアウトその他を含むカードのテンプレートは、別の階層になっている。
     複数のカードに共通する事項は、テンプレートに記入することで入力の労力を少なくできる。
     また、ひとつの単語帳(カードデッキ)には、いくつのテンプレートでも使うことができる。

     よく使われるテンプレートはすでに用意されている。
     たとえば表裏両面のテンプレートを使えば、表に外国語、裏に日本語を入力するだけで、外国語→日本語と、日本語→外国語の2枚のカードができることになる。

     下の例は、google翻訳を使って発音する機能を埋め込んだものである。
    (参考:Anki日本語マニュアル Wiki* etc/AnkiTips/語学 発音させる

    Anki-arab-temp.png

     これをテンプレートに入れておけば、カードに単語や短文を入れておくだけで、音声ファイルを用意しなくても合成音声による発音をさせることができる。



    ◯プログラミング言語(穴埋め&入力)

     Ankiでは、カードの表/裏を使うだけでなく、穴埋め問題を作ったり、入力を求めて合っているかどうかをテストするカードも作ることができる。

     以下の例は、穴埋め問題 と キー入力 を組み合わせたテンプレートをつかい、Javaについてのカードを作ったもの。
    (参考:Anki日本語マニュアル Wiki* etc/AnkiTips/プログラミング言語


    Anki-java.png

    そのテンプレート

    Anki-java-temp.png


     本やサイトに載っているサンプルコードをもとに、何を答えるべきかをコメントで書き、憶えたい単語 (コマンドや関数名) を穴埋めにすることで、数理系を含む「指が憶える」系の知識を習得することもできる。

    (参考)
    プログラミングの学習を劇的に効率化する「Janki」メソッド : ライフハッカー[日本版] プログラミングの学習を劇的に効率化する「Janki」メソッド : ライフハッカー[日本版] このエントリーをはてなブックマークに追加



    Ankiの入手先とマニュアル

    (本家サイト;ダウンロードもここから)
     http://ankisrs.net/index.html

    (日本語ユーザーマニュアル)
     http://wikiwiki.jp/rage2050/?manual

    AnkiMobile Flashcards App

    カテゴリ: 教育

    価格: ¥2,200




    アンキドロイド単語帳
    Nicolas Raoul
    価格:無料




    Pairシステム Linkシステム Lociシステム Pegシステム Phoneticシステム
    創案者ソウアンシャ 不詳フショウ 不詳フショウ シモニデス?(紀元前556年頃 - 紀元前468年) Henry Herdson (mid-1600s) Mink von Weunßhem (1648)
    Francis Fauvel-Gouraud (1844)
    イメージ ○ー○

    ○ー○
    ○→○→○→…… ○ ○ ○……
    ↑ ↑ ↑
    ■-■-■……
    ○ ○ ○……
    ↑ ↑ ↑
    □→□→□…… 
    ○ ○ ○……
    ↑ ↑ ↑
    □-□-□……
    ↑ ↑ ↑
    1 2 3…… 
    概要 一対イッツイのものをイメージでムスびつける。 A、B、C、D……ならば、AとB、BとC、CとD……という具合グアイにイメージでムスびつける。 現実ゲンジツまたは仮想カソウ場所バショに、オボえたいものをイメージでムスびつける。 順序ジュンジョ明確メイカクなもの(peg;かけくぎ)を記憶キオクしておいて、それにオボえたいものをイメージでムスびつける。 数字スウジ対応タイオウするキーワードを生成セイセイし、それに覚えたいものをイメージで結びつける。


     

     Phoneticシステムは、Pegシステムを改良したものとみなすことができる。
     Phoneticシステムは、数字を子音に置き換える数字子音置換法とPegシステムと組み合わせることで、Pegシステムの長所を保ったまま、その短所を改善するものだった。
     
     Pegシステムでは、記憶を結びつける〈掛け釘〉は、順序をもった素材であれば、何からでもつくることができる。数字やアルファベットでも、また黄道十二宮や干支のように数字と直接関係がなくてもよい。
     Pegシステムはこれによって、記憶内容へのランダム・アクセスを実現した。
     覚えたことを順にみていかなくても、たとえば4番目のアイテムを直接に取り出すことができた。
     
     一方、Pegシステムの弱点は、Pegの作成にあった。
     順序をもった対象があれば、いくらでもPegの系列は作成可能だが、Peg作成は、元になる素材を見つけることに依存している。長い系列の(とくに2,30アイテムを越えた)Pegをつくることは実際には難しい。
     たとえば三十六歌仙や四十七士を素材とすれば、36ないし47のアイテムを格納できるPegが作れそうだが、ここまでアイテム数の多い素材はそもそも中々覚え切れず、また何番目と指定してアイテムを取り出すことは更に困難である。
     
     Lociシステムの弱点は、Pegシステムによって〈掛け釘〉の素材を、実在(ときに非実在)の〈場所〉に縛られることなく、より抽象的な、順序関係を持つ素材へ移行することで克服された。
     Pegシステムの弱点は、〈掛け釘〉の素材を、順序を持つ既存の(黄道十二宮や干支のような)素材に縛られることなく、さらに抽象化を進めることで克服される。
     つまり素材をどこからか見つけてくるのではなく、もっとシステマティックに/単純なルールによって〈掛け釘〉をユーザーが自由に発生させるようにすること。
     この要求に応えたのがPhoneticシステムであった。
     
    major-system-pd.png

    Mink von Weunßhem Relatio novissima ex parnasso de arte reminiscentiae, Das ist : Neue wahrhafte Zeitung aus dem Parnassus von der Gedechtniß-Kunst / Stanislaus Mink von Weunßhem. - [Electronic ed.]. - [S.l.], 1618 [ca. 1648](Phoneticシステムについての最初の著作の一つ)から




    ■Phoneticシステムの実際

     Phoneticシステムが、それまでの記憶術に対して何が画期的なのかといえば、イメージ化した記憶を結びつける〈掛け釘〉(Phoneticシステムでは〈鍵言葉〉と呼ばれる)を、原理的にはいくらでも生成できる点である。
     
     古典的な数字子音置換法を使い、Phoneticシステムの実例を示そう。
     ここでは、よく知られる次の変換表を用いる。
     
    数字 変換する子音 覚え方
    0   s, c(soft C、サ行の音), z zは"zero"の頭文字
    1   t, d, th d,tには下向きの線が1本
    2   n nには下向きの線が2本
    3   m mには下向きの線が3本
    4   r 4"four"の最後の文字
    5   l ローマ数字では50をLを書く
    6   sh, ch, j, g(soft G、ヂャ行の音) jを裏返すと6に似てる
    7   k, c(hard C、カ行の音), g(hard G、ガ行の音), ng 7を2つ組み合わせるとKになる
    8   f, v 筆記体のfは8に似てる
    9   p, b bの鏡文字は9に似てる
    対応なし  ※母音a,e,i,o,uとh、w、yは数字と対応しない
     いくつでも子音の間に入れることができる



    Gouraud.jpg

    Fauvel-Gouraud, Francis, Phreno-mnemotechny, or, The art of memory : the series of lectures, explanatory of the principles of the system, delivered in New York and Philadelphia in the beginning of 1844 (1845) p.93. から。 それまでのPhoneticシステムを取り入れ、Fauvel-Gouraudがまとめたもの。現在、一般的に使われる数字子音変換の最初のもの。



     上の変換表に従い、与えられた数の各桁の数字を子音に置き換え、それらの子音を使った一つの単語をつくる。つまり何桁であっても一つの数字は、一つの単語に置き換えることができる。
     
     この方式は、大きな数の取扱いを簡便にする。。
     数字のひとつひとつに、ひとつのイメージを与えていた形態法や音韻法では、桁数の増加は、そのまま取り扱うイメージの増加につながった。
     しかし、この数字子音置換法では、数字の大きさが増えても子音の数が増えるだけで、桁が1つ2つ増えても、少しばかり長い単語を選べば済む。
     
     「子音に数字を対応させる」ということは、母音(加えて上記表に現れないh、w、yを含む)については自由に子音の前後にいくらでもはさんでよい、ということである。
     たとえば1という数字に対応した〈鍵言葉〉は、teaでもtieでもaidでもいい。eやaやiといった母音は無視されるからだ。
     14という数字に対応した〈鍵言葉〉は、treeでもdrawでもthrowでもいい。

     いくつかの文献から0〜9の数字をどのように単語に変換しているか例をあげる。

      Furst*1 Lorayne
    & Lucas
    *2
    Buzan*3 "Charles57"*4 Mindtools*5
    0 sew       sew
    1 tea tie day tie toe
    2 Noah Noah Noah Noah Noah
    3 may(pole) Ma Ma Ma Ma
    4 ray rye Ra Ra ray
    5 law law law law law
    6 jaw shoe jaw shoe jaw
    7 key cow key key key
    8 fee ivy fee ivy fee
    9 pea bee bay bee pie


    *1 Bruno Furst, You Can Remember (Memory and Concentration Studies, 1962) pp.12-20.
    *2 Harry Lorayne and Jerry Lucas, The Memory Book: The Classic Guide to Improving Your Memory at Work, at School, and at Play (Ballantine Books, 1996) p.119.
    *3 Tony Buzan, Use Your Perfect Memory: Dramatic New Techniques for Improving Your Memory; Third Edition (Plume, 1991) p.90.
    *4 http://members.optusnet.com.au/~charles57/Creative/Memory/index.html
    *5 http://www.mindtools.com/pages/article/newTIM_07.htm

     0から99までの数字について単語に変換した例を、それぞれ1つずつあげよう。

     0. sew  25. nail  50. lace  75. coal 
     1. tea  26. niche  51. lot  76. cage 
     2. Noah  27. neck  52. lane  77. cake 
     3. may  28. navy  53. lime  78. coffee 
     4. ray  29. nap  54. lair  79. cap 
     5. law  30. mass  55. lily  80. face 
     6. jaw  31. mat  56. lash  81. fat 
     7. key  32. man  57. lake  82. fan 
     8. fee  33. mama  58. leaf  83. foam 
     9. pea  34. mare  59. lab  84. fire 
     10. toes  35. mail  60. cheese  85. file 
     11. tot  36. match  61. jet  86. fish 
     12. tan  37. mike  62. chain  87. fog 
     13. tam  38. muff  63. jam  88. fife 
     14. tar  39. map  64. chair  89. fob 
     15. tail  40. rose  65. jail  90. bus 
     16. tissue  41. rat  66. judge  91. bat 
     17. tack  42. rain  67. check  92. bun 
     18. taffy  43. ram  68. chef  93. bomb 
     19. tap  44. rear  69. ship  94. bear 
     20. nose  45. rail  70. case  95. ball 
     21. net  46. rash  71. cat  96. beach 
     22. nun  47. rake  72. can  97. bike 
     23. name  48. reef  73. comb  98. beef 
     24. Nero  49. rope  74. car  99. baby 


     もちろん、各数字に対応付けられる単語は、上記以外にもいくらもある。
     例えば10と対応する英語の単語は、AIDS、Hades、Texas、White House、DASH、DOS、Aedes、Aethusa、Aides、Aotus、AthosDESDISA、DOSDSDawesDiasDiazDisDuse、Dyaus、EDS、Equetus、Exodus、Hades、Hyades、Ixodes、Oates、Odesa、Otis、Otus、Outaouais、THz、TSA、TSH、Taos、Taxus、Texas、Toyohashi、Tues、WATS、Watusi、White House、White Sea、Wodehouse、Yeats、adios、adz、adze、at sea、daisdaisy、dasdash、daysdaze、deixisdesex、diazo、dish、dishy、dose、douse、dowse、doze、dozy、eats、eidos、ethos、head sea、hiatus、hideous、hothouse、ides、idesia、iodise、iodize、odious、otiose、outhouse、……とまだまだある。


     このように数字と変換後の言葉との対応をゆるめることで、語呂合わせとは比較にならない自由度が生まれ、〈鍵言葉〉を原理上は無限に、実用上も無数に近く、つくりだすことができるようになる。
      
     これによって、PegシステムのランダムアクセスとLociシステムの大容量記憶を同時に実現し、〈掛け釘〉Pegの枯渇/オーバーライドによる混乱といった問題にも対処している。
     
     
     
    ■Phoneticシステムの日本語への適用
     
     上の数字子音置換法(メジャー記憶術)は、英語などのヨーロッパ系の言語に依存している。
     
     これを日本語用にローカライズするには、

    数字仮名置換法

    1 → あ行 → あ、い、う、え、お
    2 → か行 → か、き、く、け、こ
    3 → さ行 → さ、し、す、せ、そ
    4 → た行 → た、ち、つ、て、と
    5 → な行 → な、に、ぬ、ね、の
    6 → は行 → は、ひ、ふ、へ、ほ
    7 → ま行 → ま、み、む、め、も
    8 → や行 → や、ゆ、よ
    9 → ら行 → ら、り、る、れ、ろ
    0 → わ行 → わ、ん、*
    *0がわ行だけでは少ないので、ば行、ぱ行も使う。

    という風に行単位で数字を割り当てればよい。
     これで実質的に子音に対応して数字を割り当てていることになり、語呂合わせに対して、単語選択の自由度は大きく広がる。
     ただし子音の後に必ず母音が来る言語の特性上、単語選択の自由度と、変換した言葉の短さの点では、数字子音置換法に対して劣る。
     
     


    ■Phoneticシステムの短所

     従来の記憶術のすべての長所を取り込み短所を克服したPhoneticシステムにも欠点がある。

     それは、システムの抽象性と複雑さとにある。
     一言で言えば、難しい。習得に、そして慣れるのに、時間がかかる。

     また、事前準備についても、もっとも時間をかける必要がある記憶術である。

     原理的には、必要になってからいくらでも〈鍵言葉〉を作ればよいのだが、実用上は、〈鍵言葉〉にかかる時間を節約するために、よく使う〈鍵言葉〉はあらかじめ作っておき、慣れておく(そして記憶しておく)必要がある。
     
     
    ※また日本人にとっては、上記とは別に次のようなことが利用にあたって障害となる。

    ・ヨーロッパの言語を念頭につくられたシステムであるので、音韻構造の違う日本語にはそのままでは使いづらい。
     →単語選択の自由度は若干落ちるが、数字仮名置換法で代用すれば、実用上大きな問題はない。
     
    ・数字子音変換を生かそうとすれば、たとえば英語の単語から〈鍵言葉〉を見つける必要がある。
     →現在では、数字を入力すると、条件に合致した〈鍵言葉〉の候補を教えてくれるウェブサービス*を活用することもできる。


     
    *数字子音変換に関するネット上の資源

     Phoneticシステムでは、原理上いくらでも〈鍵言葉〉を作れることができるが、実用上はよく使う〈鍵言葉〉はあらかじめ作っておき、慣れておいた方がよい。
     自分で〈鍵言葉〉をつくるのがおっくうな人や、数字に対応する子音を含む単語を思いつけない人のために、これまでつくられた〈鍵言葉〉を対応する数字から検索したり、好きな数字を入れれば、該当の子音を使った単語のリストを提案してくれるウェブサービスが存在する。

    Memorize numbers with this online mnemonic generator
    http://www.rememberg.com/


     数字を入力すると、子音変換した単語の候補を、WordNetやWikipedia等にある項目から拾ってリストにしてくれる。
     Wikipediaにある項目には、Wikipediaへのリンクがつくので、提案された単語を知らなくても意味を確認することができて便利。


    The Number Thesaurus
    http://www.the-number-thesaurus.com/Submit.asp


     こちらは逆に、単語を入力すると、子音変換で対応付けられる数字が何かを表示してくれる。
     
     
    iPhone用には次の無料アプリがある。

    NumberThink App

    カテゴリ: 教育

    価格: 無料




    Android用には、有料だが次のものがある。

    Mnemonic Major System - Android Apps on Google Play






    ■改良されたPhoneticシステム
     
     Phoneticシステムは、それまでの記憶術の長所を生かし短所を取り除いた、最も完成されたシステムだが、その複雑さ・難解さから、それ以降の改良は、特性をできるだけ保持したまま、システムを簡素化し、習得しやすく、また利用しやすくする方向に進んだ。
     


     たとえばDominicシステムは、より簡単な変換規則を採用していて、システムを習得する初期コストが低い。
     
    1→A
    2→B
    3→C
    4→D
    5→E
    6→S
    7→G
    8→H
    9→N
    0→O

     Dominicシステムは、2桁の数字をアルファベット2文字に変換し、アルファベット2文字をイニシャルにする人物のイメージへと変換するものであり、数字子音変換のかわりに用いることができる。
     
     数字は人にとって最も覚えにくいものの一つだが、逆に人間の顔は最も記憶に残るものの一つであるが、Dominicシステムは、このことを利用している。
     つまり人間にとって最も覚えにくいものを、最も覚えやすいものに転換するのである。

     実用には、00~99のあらゆる数字に対応して、イニシャルから、とっさに人物を思い浮かべることは難しいので、あらかじめ条件に合った人物のリストを用意しておく必要がある
     つまりこの方法を用いるために、事前に00~99に対応したイニシャル(O.O.からN.Nまで)の、顔が分かる99名をリストにしておくのである。
     以下にリストの例を示そう。

     00 = OO = Ozzy Osborne     50 = EO = Edward James Olmos  
     01 = OA = Orphan Annie     51 = EA = Edward Abbey  
     02 = OB = Orlando Bloom     52 = EB = Ernest Borgnine  
     03 = OC = Oliver Cromwell     53 = EC = Eric Clapton  
     04 = OD = Olympia Dukakis     54 = ED = Ellen Degeneres 
     05 = OE = Omar Epps     55 = EE = Erik Estrada  
     06 = OS = OJ Simpson     56 = ES = Elisabeth Shue  
     07 = OG = Oscar the Grouch     57 = EG = Eva Gabor  
     08 = OH = Oliver Hardy     58 = EH = Ed Harris  
     09 = ON = Oliver North     59 = EN = Ed Norton 
     10 = AO = Annie Oakley     60 = SO = Shaquille O'Neal  
     11 = AA = Andre Agassi     61 = SA = Sammuel Adams  
     12 = AB = Antonio Banderas     62 = SB = Sandra Bullock  
     13 = AC = Agatha Christie     63 = SC = Sean Connery  
     14 = AD = Andy Dick     64 = SD = Scooby Doo  
     15 = AE = Alison Eastwood     65 = SE = Sheena Easton  
     16 = AS = Arnold Schwarzenegger     66 = SS = Steven Spielberg  
     17 = AG = Alec Guinness     67 = SG = Sam Gangee  
     18 = AH = Alfred Hitchcock     68 = SH = Saddam Hussein  
     19 = AN = Alfred E. Neuman     69 = SN = Sam Neill 
     20 = BO = Barack Obama     70 = GO = Gary Oldman  
     21 = BA = Ben Affleck     71 = GA = Gillian Anderson 
     22 = BB = Bugs Bunny     72 = GB = George Bush  
     23 = BC = Bruce Campbell     73 = GC = George Clooney  
     24 = BD = Brian Dennehy     74 = GD = Gena Davis  
     25 = BE = Barbara Eden     75 = GE = Gloria Estefan  
     26 = BS = Ben Stiller     76 = GS = Gene Simmons  
     27 = BG = Bill Gates     77 = GG = Galileo Galilei  
     28 = BH = Bob Hoskins     78 = GH = George Harrison  
     29 = BN = Bill Nye     79 = GN = Greg Norman  
     30 = CO = Conan O'Brien     80 = HO = Haley Joel Osmet 
     31 = CA = Charles Atlas     81 = HA = Hank Aaron  
     32 = CB = Charlie Brown     82 = HB = Halle Barry  
     33 = CC = Charlie Chaplin     83 = HC = Harry Carey  
     34 = CD = Cameron Diaz     84 = HD = Humpty Dumpty  
     35 = CE = Clint Eastwood     85 = HE = Havelock Ellis  
     36 = CS = Charlie Sheen     86 = HS = Homer Simpson  
     37 = CG = Cary Grant     87 = HG = Hermione Granger  
     38 = CH = Charlton Heston     88 = HH = Howard Hughes  
     39 = CN = Chuck Norris     89 = HN = Harriet Nelson  
     40 = DO = Donnie Osmond     90 = NO = Norah O'Donnell  
     41 = DA = Douglas Adams     91 = NA = Neil Armstrong 
     42 = DB = Dave Barry     92 = NB = Ned Beatty  
     43 = DC = David Copperfield     93 = NC = Nicolas Cage  
     44 = DD = David Duchovny     94 = ND = Neil Diamond 
     45 = DE = Dwight D. Eisenhower     95 = NE = Wikipedia:Nora Ephron  
     46 = DS = David Sedaris     96 = NS = Nancy Sinatra  
     47 = DG = Danny Glover     97 = NG = Newt Gingrich  
     48 = DH = Dustin Hoffman     98 = NH = Neil (Patrick) Harris  
     49 = DN = David Niven     99 = NN = Nick Nolte 


     このリストに登場する全員について、あなたが顔を思い浮かべることができるとは限らない。
     分からない人物については、それぞれ顔が分かる人物に差し替える必要がある。


     50音表をつかっても(上記の1 → あ行 、2 → か行 、3 → さ行 、4 → た行 、5 → な行 、6 → は行 、7 → ま行 、8 → や行 、9 → ら行 、0 → わ行ば行ぱ行)、同様の人物リストは作ることができるが、母音を自由に使える子音変換よりも縛りが強く難しい。
     既存のものが見つからなかったので、やっつけ仕事でつくってみたが、「ら行」や「わ行」で苦しんだ。
     苦し紛れに「ご本人の顔は分からないけれど絵柄が浮かぶから」という言い訳をしつつ、「漫画家」カードを乱発してしまった。

     00:わたなべわたる(漫画家)    50:中村文弥(俳優) 
     01:和田あき子(歌手)    51:中村敦夫(俳優) 
     02:渡辺一夫(仏文学)     52:中上健次(作家) 
     03:渡辺貞夫(サックス奏者)    53:中村正三郎(プログラマ) 
     04:若木民喜(漫画家)    54:中村玉緒(女優) 
     05:渡部直己(文芸評論家)    55:中村伸郎(俳優) 
     06:和田春樹(歴史学者)    56:中田英寿(元サッカー選手) 
     07:和田政宗(NHKアナウンサー)    57:中村メイコ(女優) 
     08:和田芳恵(作家)    58:仲間由紀恵(女優) 
     09:綿矢りさ(作家)    59:仲村瑠璃亜(女優) 
     10:オスカー・ワイルド(作家)    60:ビリー・ワイルダー(映画監督) 
     11:アルバート・アインシュタイン(物理学者)    61:林あさ美(歌手) 
     12:アンドリュー・カーネギー(実業家)    62:長谷川健太(元サッカー選手) 
     13:オリバー・サックス (作家)    63:林家三平(落語家) 
     14:阿佐田哲也(作家)    64:浜田剛史(ボクサー) 
     15:アルフレッド・ノーベル(実業家)    65:フローレンス・ナイチンゲール 
     16:荒俣宏(物知り)    66:ハナ肇(コメディアン) 
     17:あだち充(漫画家)    67:長谷川町子(漫画家) 
     18:あさりよしとお(漫画家)    68:袴田吉彦(俳優) 
     19:芥川龍之介(作家)    69:林家ライス・カレー子(漫才コンビ) 
     20:カール・ポパー(哲学者)    70:マツダ・ポーター(トラック) 
     21:カート・ヴォネガット(作家)    71:前田愛(女優) 
     22:桂木桂馬(マンガの登場人物)    72:前田健 (タレント) 
     23:カール・セーガン(物理学者)    73:松田聖子(歌手) 
     24:嘉門達夫(歌手)    74:マリー・タッソー(蝋人形作家) 
     25:カップ・ヌードル(食べ物)    75:松田直樹(サッカー選手) 
     26:小林秀雄(評論家)    76:前田美波里(女優) 
     27:カール・マルクス(哲学者)    77:松任谷正隆(音楽プロデューサー) 
     28:カール・ヤスパース(精神科医)    78:前田米造(映画カメラマン) 
     29:カール・ルイス(陸上選手)    79:前田遼一(サッカー選手) 
     30:スティービー・ワンダー(歌手)    80:山田わか(婦人運動家) 
     31:ささきいさお(歌手)    81:山田晶(中世哲学研究者) 
     32:沢田研二(歌手)    82:山田かまち(詩人) 
     33:ジャンポール・サルトル(作家)    83:山田サチ子(妹) 
     34:さとう珠緒(女優)    84:山田太一(脚本家) 
     35:ジョン・ナッシュ(数学者)    85:山本直樹(漫画家) 
     36: サダム・フセイン(政治家)    86:矢井田瞳(歌手) 
     37:佐々木マキ(絵本作家)    87:山田まりや(女優) 
     38:貞本義行(アニメーター)    88:山田康雄(声優) 
     39:坂本龍一(音楽家)    89:山田玲司(漫画家) 
     40:チャールズ・パース(哲学者)    90:リヒャルト・ワーグナー(作曲家) 
     41:鉄腕アトム(マンガの登場人物)    91:ラッキィ池田(振付師) 
     42:田中角栄(政治家)    92:ルイス・キャロル(作家) 
     43:田辺聖子(作家)    93:頼山陽(史家) 
     44:田中達也(サッカー選手)    94:ルビー・ディー(女優) 
     45:高橋尚子(陸上選手)    95:ルイ・ナポレオン(政治家) 
     46:立花ハジメ(アーティスト)    96:ロラン・バルト(思想家) 
     47:田村正和(俳優)    97:雷句誠 (漫画家) 
     48:たがみよしひさ(漫画家)    98:ローマン・ヤコブソン(言語学者) 
     49:田村亮子(柔道選手)    99:ルードヴィヒ・ローレンツ(物理学者) 

     




    ■Phoneticシステムの適用

     このシリーズで紹介した記憶術には上位互換の関係があり、これまでにPairシステム、Linkシステム、Lociシステム、Pegシステムの紹介の中で挙げられたすべての用途に、Phoneticシステムは用いることができる。
     
     習得と準備の手間(コスト)の大小があるため、簡易的な目的には、より簡便な方法を使ったほうがよい(日常的にはこうした記憶ニーズの方が多いだろう)。
     逆に言えば、これまでの記憶術ではスペック的に力不足となった領域こそ、Phoneticシステムが活躍する場である。




    *ステージ記憶術(memory feat)

     ステージ記憶術(memory feat)の定番の出し物に、会場から好きな単語を言ってもらい、記憶術師の後ろにあるホワイトボードに書き上げていき、何十個か並んだ後に、それを一つ飛ばしに言わせたり、任意の場所(例えば23番目)単語は何かを尋ねたりするものがある。
     正順、逆順、一つ飛ばし、二つ飛ばしで言わせたり(ここまではなんとかLociシステムでもできる)、またN番目の単語は何か?との問いに瞬時に答えることができるのは、記憶術師が何らかのPhoneticシステムを利用しているからである。
     

    *一冊を覚える

     Pegシステムでやったように、目次から小見出しに至るまで、〈鍵言葉〉を対応させ、一冊の書物の内容を記憶することができる。
     phoneticシステムでは、記憶を引っ掛ける〈鍵言葉〉の数に、実質上制限がないので、つまりどれほど詳細な目次であっても、その項目それぞれに〈鍵言葉〉をあてがうことができる。
     同じ理由で、数百の本であっても、すべてのページごとに〈鍵言葉〉を付与し、ページ単位で記憶することが可能である。
     実用目的ではどのページに何が載っているかを記憶する必要はないが、ステージ記憶術(memory feat)のあるものは、この方法を使っている。




    *メンタル・ファイル・システム

     数百の(必要ならそれ以上の)〈鍵言葉〉を作ることができるということは、頭の中にそれだけの数の、自由に出し入れできる〈引き出し〉を用意できるということだ。
     Phoneticシステムによる頭の中の〈引き出し〉の一部を普段使いの備忘録として割り当てておくことで、手帳などの外部記録なしに日常的に必要となるデータ、メモ、情報などを持ち歩くことができる。
     たとえば101番~130番はto do list、131~150番にその日思いついたアイデア、151~170番にidやアカウント関係、171~190番に緊急連絡先……といった具合に。
     当初は手帳等を併用することになるが、やがてそうした外部記憶を使う必要がなくなっていることに気付くだろう。
     

     
    *数字の記憶

     桁数の多い数字であっても、Phoneticシステムは短い単語に変換することができる。
     このため数字を記憶するには最善の記憶術である。



    *暗記したものへのタグ付け

     他の方法で記憶したものであっても、Phoneticシステムをつかって記憶したアイテムのひとつひとつに番号を付与しておくとよい。
     記憶を呼び出す手がかりが増えることとなり、たとえば英単語帳を覚えた場合など、今日は21~40番目の単語を復習しようといったことが英単語帳が手元になくても可能になる。
     一冊の英単語帳には数百以上の単語が載っているが、phoneticシステムなら数百数千の〈鍵言葉〉を作り出すことが可能である。
     

    *Phoneticマップ(マトリクス)

     複数の素材から作った複合Pegで、表や2次元座標についての〈掛け釘〉をつくったが、Phoneticシステムを用いれば、さらに大きな表や詳細な座標を使うことができる。
     トニー・ブザンは、伝統的な数字子音置換法を使って、2系列の〈鍵言葉〉を作り、Phoneticマップを提案している。
     Ron-Hans Evansはは、より簡素なDominicシステムをつかって、100×100=10000の記憶アイテム数を擁するPhoneticマップ〈ドミニック・ホテル〉を提案している。
     

    Mind パフォーマンス Hacks ―脳と心のユーザーマニュアルMind パフォーマンス Hacks ―脳と心のユーザーマニュアル
    (2007/08/25)
    Ron Hale-Evans

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    Pairシステム Linkシステム Lociシステム Pegシステム Phoneticシステム
    創案者ソウアンシャ 不詳フショウ 不詳フショウ シモニデス?(紀元前556年頃 - 紀元前468年) Henry Herdson (mid-1600s) Winckelman (1648)
    Francis Fauvel-Gouraud (1844)
    イメージ ○ー○

    ○ー○
    ○→○→○→…… ○ ○ ○……
    ↑ ↑ ↑
    ■-■-■……
    ○ ○ ○……
    ↑ ↑ ↑
    □→□→□…… 
    ○ ○ ○……
    ↑ ↑ ↑
    □-□-□……
    ↑ ↑ ↑
    1 2 3…… 
    概要 一対イッツイのものをイメージでムスびつける。 A、B、C、D……ならば、AとB、BとC、CとD……という具合グアイにイメージでムスびつける。 現実ゲンジツまたは仮想カソウ場所バショに、オボえたいものをイメージでムスびつける。 順序ジュンジョ明確メイカクなもの(peg;かけくぎ)を記憶キオクしておいて、それにオボえたいものをイメージでムスびつける。 数字スウジ対応タイオウするキーワードを生成セイセイし、それに覚えたいものをイメージで結びつける。




     Pegシステムは、Lociシステムの改良として生まれた。
     すでに印刷術の勝利が確定した17世紀半ば、Henry Herdsonの手によるものと伝えられる。

     Lociシステムでは、イメージ化した記憶を結わえ付ける相手として空間的なLocus〈場所〉を用いたが、Pegシステムでは数字などの順序が決まったものを元につくったPeg(掛け釘)を用いる。
     
     たとえば演説で話す内容を記憶する場合、話す順番どおりに記憶され再生されないとまずい(オチを先に話してしまうかもしれない)。Locus〈場所〉は空間的に並んでいるため、そこに結び付けられた記憶も、その並び順が固定されている。部屋を/通りを歩くように、イメージの中で空間を移動すれば、記憶したとおりの順番で再生されるだろう。
     
     これに対してPegシステムでは、記憶を結びつけるPeg(掛け釘)を順序がある系列からつくる。
     たとえば数字の1~9をもとにして
     
    1 → 煙突
    2 → アヒル
    3 → 耳
    4 → ヨット
    5 → 鍵
    6 → さくらんぼ
    7 → 鎌
    8 → だるま
    9 → オタマジャクシ
    0 → 卵

    と、数字と形の似た具体物をつかってPeg(掛け釘)をつくる。

     そして「雑誌」「自動車」「医者」「バラ」「ボール」をこの順に記憶したいとすれば、

    ・「煙突」に「雑誌」を結びつける→「煙突に、その高さほどある巨大な雑誌が突き刺さり、貫通している」
    ・「アヒル」に「自動車」を結びつける→「巨大なアヒルのくちばしから頭へ自動車が駆け上る」
    ・「耳」に「医者」を結びつける→「耳の穴から、白衣を着た医者がぬうっと出てくる」
    ・「ヨット」に「バラ」を結びつける→「ヨットの帆が風を受けると、帆と同じ大きさの巨大な赤いバラに変わり、花びらが風に散っていく」
    ・「鍵」に「ボール」を結びつける→「鍵を鍵穴から抜こうとすると抜けず、無理やり引き抜くとボールに変わっている」
    ・・・

    というイメージをそれぞれつくることで記憶する。こうしておけば、
     まず1 → 煙突、2 → アヒル、3 → 耳、4 → ヨット、5 → 鍵と、Pegを数字の順に呼び起こすことで、「雑誌」「自動車」「医者」「バラ」「ボール」をこの順で思い出すことができる。
     このような記憶したものへのシーケンシャルな呼出しは、Lociシステムでも可能だった。

     さらに4番目は何か?といった要求にも、4番目→ヨット→ヨットに結びついたバラ、という具合に、記憶したものを順繰りすることなくダイレクトに呼びさせる。
     つまりPegシステムは、記憶したものへのランダム・アクセスが可能な記憶術なのである。




     
    ■Peg(掛け釘)の作り方

     前回述べたように、我々の記憶ニーズは少量多種類なものが主である。
     つまり同種のアイテムを何十何百も覚えるニーズよりも、それぞれはせいぜい数個ずつなのだが、そんなのを何十種類覚えなくてはならないことの方が多い。
     我々に必要なのは長い1本の系列ではなく、短くとも複数のPegの系列が必要である。
     
    ※(もちろん大容量の記憶をランダムアクセスするのに、長い系列のPegがあると便利だが、Pegシステムではあまり長い系列は作りにくい。この欠点に対処したのが、次回紹介するPhoneticシステムである)。

     以下に、Pegの作り方と素材となるリソースをあげよう。



     Peg(掛け釘)は、順序を持つものであれば、どんなものからでもつくることができる。もちろん具体物である方がイメージしやすく記憶術に用いやすい。
     
    *数字からつくるPeg

    ・形態法

     数字に似ていれば何でもいいわけで、Ron Hale-Evansはもう少し覚えやすいイメージを提案している。

    1 → penis(ペニス)
    2 → swan(白鳥)
    3 → breasts(おっぱい)
    4 → sailboat(ヨット)
    5 → pulley(滑車)
    6 → lasso(投げ縄)
    7 → scythe(大鎌)
    8 → sand timer(砂時計)
    9 →  flag(旗)
    0 → black hole(ブラックホール)



    Domnic Obrienは次のようなリストを上げている。

    0 → フットボール、車輪、指輪、太陽、生首、帽子
    1 → 電柱、えんぴつ、バット、矢、男根
    2 → 白鳥、ヘビ
    3 → 手錠、ドリー・パートン、労働者の背中(を空から見たもの)
    4 → ヨット、旗、アイロン台
    5 → カーテン・ホック、座椅子
    6 → 象の鼻、クロケットの打つ棒、金属探知機、ゴルフクラブ
    7 → ブーメラン、飛び込み台、崖、縁石
    8 → 砂時計、マリリン・モンロー、向こうが透けて見えるポテトチップス
    9 → 紐付き風船、バスケットボールのフープ、片眼鏡(モノンクル)

    number-shape-memory-pegs.png

    visualSymbolSystem.jpg






    数字の形と似た具体物をPegにする〈形態法〉のほかにも、数字からPegをつくるやり方はある。

    ・音韻法

     数字をその数字と韻を踏む単語(具体物が望ましい)をPegにする。
    1 → one → sun,fun,gun,nun
    2 → two → shoe,Jew
    3 → three → tree,bee,key,tea
    4 → four → door,core
    5 → five → live
    6 → six → sticks
    7 → seven → heaven
    8 → eight → gate,date,fate,mate
    9 → nine → line,sign,pine,wine
    10 → ten → pen,men,hen

    rhyming.jpg



     17世紀半ば形態法から始まったPeg法に、John Sambrook(1879)は韻rhymeを使う方法を持ち込んだ。
     韻をつかった記憶法はヨーロッパの言語話者に親しいものだが、言語に依存したやり方なので、日本語にそのまま持ち込むことはできない。
     
     
    *アルファベットからつくるPeg

    ・アルファベットのA~Zの26文字から、それぞれを脚韻を使ったもの、頭文字にした名前の具体物をPegとする。

     頭文字法は50音のかな文字によっても行うことができる。

    rhyme(韻)法         頭文字法
    A→bay         A→artichoke
    B→bee         B→bat
    C→sea         C→cake
    D→deep         D→dog
    E→eve         E→elephant
    F→effect         F→fireman
    G→geology         G→goat
    H→age         H→horse
    I→eye         I→iron
    J→jay         J→jelly
    K→quay         K→kangaroo
    L→elm         L→llama
    M→Emma         M→mouse
    N→end         N→napkin
    O→open         O→orange
    P→pea         P→pail
    Q→cue         Q→queen
    R→art         R→rat
    S→essay         S→shoe
    T→tea         T→tank
    U→you         U→umbrella
    V→veer         V→vase
    W→double you         W→wagon
    X→exit         X→xylophone
    Y→why         Y→yarn
    Z→zebra         Z→zebra



    *その他の順序を持つものからつくるPeg

    ・動物の系列

     『記憶術と書物 —中世ヨーロッパの情報文化』を著したメアリー・カラザースによれば、ヨーロッパ中世の修道院の蔵書目録には、必ず動物を登場人物とする寓意集が見つかるという。今も幼子しか耳を傾けないように思われる動物譚は、およそ信仰生活に無縁のように思われるが、写本と記憶術が共存したこの時代にあっては、これらは修道士たちの記憶術に生き生きとしたイメージを供給するネタ本であった。


    記憶術と書物―中世ヨーロッパの情報文化記憶術と書物―中世ヨーロッパの情報文化
    (1997/10)
    メアリー カラザース

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     定番の画像と記憶内容を繰り返し結びつける営為は、教訓や寓意の重層化を通じてイコンの知へと通ずる回路を開いていく。

    Affenliebe.jpgvulpes_Hircus.jpg





    ・干支

     動物のイメージを使ったもので順序のあるものとしては、日本人には干支がまず思い浮かぶ。
     十二支の本義は、古代研究に便利な漢の釈名や、史記の歴書によっても、実は生命消長の循環過程を分説したものであって、実際のねずみや牛と直接関係のあったのではないが、象徴思考が具体像を要請したように(農事暦を理解・記憶させるための便法であったとの説がある)、我々にとっても具体物と対応付けられることで記憶術に供することができる。
     
    1→子(ね)―ねずみ
    2→丑(うし)―うし
    3→寅(とら)―とら
    4→卯(う)―うさぎ
    5→辰(たつ)―竜(りゅう)
    6→巳(み)―へび
    7→午(うま)―うま
    8→未(ひつじ)―ひつじ
    9→申(さる)―さる
    10→酉(とり)―にわとり
    11→戌(いぬ)―いぬ
    12→亥(い)―いのしし


     干支以外にも、星占いで知られた黄道十二宮は同じように使えるだろう。
      
    1→白羊宮-おひつじ座
    2→金牛宮-おうし座
    3→双子(そうし)宮-ふたご座
    4→巨蟹(きょかい)宮-かに座
    5→獅子(しし)宮-しし座
    6→処女宮-おとめ座
    7→天秤(てんびん)宮-てんびん座
    8→天蝎(てんかつ)宮-さそり座
    9→人馬宮-いて座
    10→磨羯(まかつ)宮-やぎ座
    11→宝瓶(ほうへい)宮-みずがめ座
    12→双魚宮-うお座

     なお、十二支獣には西方天文学の十二獣帯(黄道十二宮)の影響があるともいわれ、同じ動物(うし、ひつじ)が登場するので、なれないうちの併用は混乱をきたすかもしれない。
     個人的には動物でまとまってる干支が使いやすい気がする。

     他に占いでは、タロットに親しんだ人なら大アルカナもPegに使えるだろう。
     
    0→愚者(道化師)
    1→魔術師
    2→女教皇(女司祭長)
    3→女帝
    4→皇帝
    5→教皇(法王、司祭長)
    6→恋人達(恋愛、恋人)
    7→戦車(征服者)
    8→力(剛毅)…ライオンの口を押さえる女性の絵
    9→隠者
    10→運命の輪(運命、運命の車)
    11→正義(裁判の女神)
    12→吊された男(吊るし人、死刑囚、刑死者)
    13→死神 ※無記名の場合アリ
    14→節制…杯へ水を移し変える天使の絵
    15→悪魔
    16→塔(神の家)
    17→星
    18→月
    19→太陽
    20→審判(永劫)…ラッパを吹く天使、右側に老人が一人、左側に女性が一人、中心には棺からよみがえった人物の絵
    21→世界(宇宙)…は月桂樹で形作られた輪とその中央に描かれた人の絵


    *素材としての〈名数〉

     同様に、三皇(伏羲・神農・黄帝)、五大老(徳川家康、前田利家、毛利輝元、宇喜多秀家、小早川隆景),7つの大罪(大罪、傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲)といった事物に特定の数を添えて称えるいわゆる名数は、もともと記憶を助ける効果を持っていたが、我々にとってもPegをつくる素材の宝庫である。

     七福神、十大弟子、十二神将、十二使徒、オリュンポス十二神といった宗教がらみのそれは、都合がよいことに強力にビジュアル化&エピソード化されている(7つの大罪も悪魔や動物が対応づけられている)。

     もっとも即座に何番目か分かる程度によく知ったものは、今の時点ではそれほどないかもしれない。
     また知ってはいても、例えば黄道十二宮を全部言えてもおとめ(座)が何番目だったか、とっさには言えないかもしれない。ただしその場合も、少しの手間をかけて覚えなおせば使い物になるし、知らない名数を知ることはPegシステムの素材を得ることでもある。

     

    ■Pegシステムの適用例

     このシリーズで紹介する記憶術は「上位互換性」があり、Pairシステム、Linkシステム、Lociシステムでできたことは、Pegシステムでも行うことができる。
     
     特に大容量の記憶性能を誇るLociシステムと、Pegシステムは同等の性能があることが確認されている。
     しかし、一般にPegシステムと比較して、Lociシステムの方がまだ〈自然〉なやり方であると受け取られることが多い。Pegシステムは更に手が込んだ方法であり、習得のコストや、事前準備のコストがより高い。
     より簡便な方法で間に合うならば、そちらを選択すべきである。
     
     Pegシステムの長所は、記憶したものを順番にたどらなくても、欲しいものを引き出せるランダム・アクセス性にある。
     記憶したものを自在に引き出すことが要求される場合には、Pegシステムを用いることがコスト的にもペイするだろう。
     
     

    *数字の置き換え
     
     Pegシステムそのものではないが、順序を持った素材として数字からPegをつくることが多いことから、ここで記憶術における数字の置き換えについて少し触れておこう。
     
     数字は、人間にとって記憶しにくいもののひとつである。
     そのため記憶術を称する方法や文献の多くは、数字の記憶法、より正確には数字を記憶しやすいものに置き換えるシステムを提唱している。
     今回触れた形態法や音韻法は、その古典的手法である。
     桁数の少ない場合、たとえば公式の中の係数を置き換える場合になど用いられれることがある。

     ただし大きな桁数の数字を置き換えるには、数字のひとつひとつにイメージするこれらの方法よりも、Phoneticシステムを紹介する中でで触れる予定の、子音置換法などを使うほうがよい。



    *Pegマップ(マトリクス)

     数字と対応したPegを2系列組み合わせて使うことで、あるいは二つの素材を組み合わせて合成Pegをつくることで、たとえば数字(0~9)×干支で10×12=120の複合Pegを作ることができる。
     
    1 → ろうそく
    2 → アヒル
    3 → 耳
    4 → ヨット
    5 → 鍵
    6 → さくらんぼ
    7 → がけ
    8 → だるま
    9 → オタマジャクシ
    0 → 卵

     
     これは大容量のPegシステムとしても使うことができるが、タテ10ヨコ12の2次元座標として、表になったものや位置関係などを記憶するのに使える。
     表にまとめること自体、記憶しやすくなる効果があるが、表のある項目、たてば3行4列めのアイテムを思い出す必要があるなど、ランダム・アクセスのために開発されたPegシステムが活躍する機会である。
     座標としてPegシステムを使うことは、空間記憶術たるLociシステムへの領域侵犯のようだが、目印がないような位置関係を表象するためにPegシステムの利用はメリットがある。たとえばバスケットボールやアメリカン・フットボールのフォーメーションの記憶になどにPegマップは用いられる。
     
     

    *Pegツリー/1冊を覚える

     中世のキリスト教会において修道院は、修行の中に写本を位置づけ、多くの写本労働力を抱えた文書生産センターだった。
     この時代、書物と記憶術は共存しており、写本には記憶術に使うための〈掛け釘〉になる記号やアルファベットがマージンに書き加えられていた。
     著述家たちは、ほぼ口述筆記で多くの書を著した。最も書物を手にする機会の多かった者は、書物なしでもそれらの内容を引き出すことができたし、自分の頭の中で複雑な論点を満載した論争書を書いてきた。
     
     こうした伝統は失われたが、印刷術は莫大な書物を生み出し、人は黙読という速読術を身につけるようになった。
     こうした時代の書物記憶術には、かつてのシーケンシャルなLoci法よりも、ランダム・アクセスを前提としたPeg法が要求されるだろう。
     (もっとも古人がLoci法のこの欠点に気付いていなかった訳がない。かれらは実在の街に番地を振っていくように、イメージ中の〈場所〉にも、数字や順序を表す手のイメージ、あるいは10箇所ごとに金貨を埋め込むなど、〈場所〉に検索の手がかりを追加する方法を知っていた)。
     

     複数のPeg系列組み合わせる方法では、ある書類や書物の構造=章と節にPeg系列を対応させて、構造化された資料の内容を記憶する適用例がある。
     12アイテムのPegを2系列使えば、長大でない本なら、すぐに目次レベルの概要を記憶し、ランダム・アクセスできるようになる。
     より詳細な内容を記憶することもできる。Peg系列を増やして、ネストを深くし、より詳細な見出し、小見出しを記憶し、各部分の内容をそこに結びつけていく。ひとつの見出しに対応するPegに複数の事項を結び付けるには、Linkシステムなどを利用してぶら下げるものを増やす。
     しかしより多くの章立て、より深く入れ子になった構成を記憶するためには、Pegシステムを使ってツリー構造を掌握するよりも、〈掛け釘〉を簡単に増やせるPhoneticシステムの利用を考えた方がよいかもしれない。
     
     
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