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     先日紹介した、米国の小学生が使う作文支援/思考ツールである4squareメソッド

    物事を論じられるようになるスモール・ステップス→米国の小学生が使う思考ツール 読書猿Classic: between / beyond readers 物事を論じられるようになるスモール・ステップス→米国の小学生が使う思考ツール 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

    は、問題解決のやり方を学ぶのにも使われる。
     問題解決なので、すでに4squareを使って作文の経験を積んできた中学生くらいからの応用である。
     
     基本の4squareメソッドとはフォーマットの使い方が少し異なるので、混乱しないように前回の記事からは外したが、このアレンジのルーツは算数・数学におけるWriting支援にある。


     すなわち算数・数学において、問題を解き、解答を書くことを助けるために、作文のための4squareメソッドを使おうというところから、今回紹介する問題解決のための4squareメソッドは生まれた

    ※Zollman,A. (2009). Students Use Graphic Organizers to Improve Mathematical Problem-Solving Communications, Middle School Journal 41(2), pp. 4-12.


     問題解決のための4squareメソッドの、もうひとつのルーツはすでにお馴染みの、ジョージ・ポリア(George Poly 1887-1985)の『いかにして問題をとくか(How to Solve It)』である。


    いかにして問題をとくかいかにして問題をとくか
    (1975/04/01)
    G. ポリア

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     問題解決のための4squareメソッドは、基本的にポリアのHow to Solve Itの4ステップを、子供たちが作文で親しんでいる4squareメソッドで行おうというものである。
     
     以下に見るように、4squareの4つの欄は、ポリヤの問題解決の4つのステップ、(1)問題を理解する、(2)計画を作る、(3)計画を実施する、(4)問題解決を振り返る、にそれぞれ対応している。

     しかし、必ずしも、このステップの順序で問題解決が進む訳ではない。実際には行きつ戻りつを繰り返しながら、問題解決は進む。むしろ手順通りに進まないような難易度であるからこそ、問題解決として取り組むことが必要になる。
     そうしたことから、順序を意識させる直線的なレイアウトよりも、すべてのステップの進み具合を一望できる(そして不足している部分に注力することを要求する)レイアウトである方が、ビギナーには望ましい。問題解決のための4squareは、そうした要求にかなっている。


    0.(準備)紙を折って4スクエアのフォーマットをつくります。
    (1)長方形の紙を用意します。
    (2)紙を半分に折り、さらにもう一度半分に折ります。
    (3)広げると真ん中になる角を折ります。
    (4)広げるとこんな風に中心にひし形の領域ができ、周りに4つの領域ができたら完成。

    4sqfolding.jpg


    1.中央の菱形に、問題を書きます。


    2.左上(THE KNOWN:分かっていること)
    の欄に、「与えられた条件」や「何を求めればいいか?」「たどりつくべきゴールは何か?」などを書き出します。

    (フォーマット)
    ・I know that ________ .(______ということが分かっている。)

    (ポイント)まずは何が問題か(問われているか)、問題解決のリソース(資源)や条件はどうなっているのか、確認するのが大切。せっかち君は問題を最後まで読まずに計算をはじめたりします。


    3.右上(STRATEGIES:方針)
    の欄に、どんな手で行くか、思いつく限り書き出します。

    (フォーマット)
    ・I will (try to) __________. (______をやってみよう。)

    (ポイント)たくさん思いつかなくても大丈夫。一度、ここで「やり方」の書き留めて、タメをつくるのがミソです。別解を面倒がる人も多いけど、新しい問題を解くよりもローコストで身につくものは多いです。


    4.左下(Solve It!:やってみよう)
    の欄で、右上の欄から一つ選んだ手を試します。

    (フォーマット)
    ・My answer (solution) is ________________. (私の答えは_________だ。)


    5.右下(SATISFIED?:うまくいった?)
    の欄で、左下欄でやった解答が、すべての条件を満たしているか? などを確かめ、また問題解決から教訓を得ます。

    (フォーマット)
    ・What I was ______________. (私がやったのは_________ということだ)。

    (ポイント)
     計算が終わったから問題が解けた訳ではありません。人数を聞かれているのに、小数がついたままじゃないですか? マイナスの答えもありですか? 問題に立ち返って(それはモデルの世界から現実の世界へ立ち戻ることでもあります)、条件を満たしているか確かめましょう。


    4aq-sol2.jpg
    (Zollman,A. (2009)から)

    4sq-sol3.jpg
    (『いかにして問題をとくか(How to Solve It)』の最初の例題から作成)




    導きの問い
     それぞれの欄を埋める(ために考える)のに使える〈導きの問い〉がある。

    〈THE KNOWN:分かっていること〉のための問い
    ・未知なものは何か?
    ・与件(データ)は何か?
    ・条件は何か?
    ・条件を分解せよ。
    ・条件を満たすことはできるか?
    ・問題の中に矛盾点は、余分な要素はあるか?
    ・できるなら図を描け。

    〈STRATEGIES:方針〉のための問い
    ・与件と未知なものとにつながりはないか?
    ・以前に同じような問題、似たような問題に出会ってないか?
    ・類似の、関連のある問題を知らないか?
    ・似た例題、似た結果、似た方法で使えそうなのは?
    ・役立ちそうな定理や方法を知らないか?
    ・与件(データ)は全部使ったか?
    (問題が解けそうにないなら)
    ・似たような、せめて関係してそうな問題をさがせ。そいつはもっと一般的だったり、もっと特殊だったり、類似の問題だったりするだろう。
    ・条件の一部だけ使って、残りは捨ててみよ。そうしてみて、解き方は変わるだろうか?
    ・問題をもっと簡単ないくつかの問題に分けられないか? ひょっとすると補助問題や補助変数が必要なのかもしれない。

    〈Solve It!:やってみよう〉のための問い
    ・各段階で誤りが無いかチェックせよ
    ・間違ってないと証明できるか?もしできないなら計画を修正するにはどうすればいい?

    〈SATISFIED?:うまくいった?〉のための問い
    ・すべての条件を満たしているか?
    ・(数学の問題なら)与えられた条件をぜんぶ使ったか?
    ・一般的な方法やアイデアが何かあったか?
    ・他の問題に使えそうな結果や方法はあったか?
    ・答えを違ったやり方で導き出すことはできそうか?



     新人は、いつの世も、そしてどんな集団にあっても、「訳が分からない」状態におかれる。
     医局に配属されたばかりのレシデントからカルト教団の洗脳待機者にいたるまで、あらゆる一年生がそういう目にあう。
     根拠があるかも分からない、集団内の独自ルールやしきたりや儀礼や評価基準などが、容赦なく襲ってくる。

     何故なら、「いままでの知識も体験もまるで役に立たない状況に取り巻かれた状態」こそ、ヒトの学習能力が最大限に発揮される時だからだ。
     しかし学習能力は高まるかもしれないが、そうした状況はストレスフルなことこの上ないことも確かだ。
     たとえれば、水の中にたたき込まれて、どっちが上で下なのかすら分からないような状態だ。
     

     向きを確認し、自分を落ち着かせるために、《地図》を描こう。


     といっても、ローカルなルールやコードを解読するには、まだ少し時間がかかるだろう。
     こんなときフィールドワーカーはまず、《目に見えるもの》から始める。
     例えば調査している村落の、どこに何が建っているかを書き出していく。
     最終的には、そこで繰り広げられる、目だけでは見ることができない文化や何かを明るみに出すとしても、まずはそこからはじめる。


    hand_drawn_map.jpg



     ベタに立ち寄り先の位置や道順を示したものを描こう。
     自分の周囲の地理的な情報を簡単な地図にまとめてみよう。
     通勤経路や通学路からはじめて、自分が立ち寄る場所を地図に落とし込もう。
     そして見たままに簡潔なコメントを追加していこう。

     急いで完成させる必要はない。


    map.jpg



     次第にしかしゆっくりと成長し拡大していく地図は、あなたを控えめに先導していくだろう。


     我々が本当に欲しているのは、比喩的に「地図」と呼ぶこともできるが、暗黙の了解や何やかやを解き明かすような別のしろものだ。

     しかし、この地理的落書きは、メタファー的に効く。

     我々が読み解きたい、見えないルールを解読するための余地(スペース)のようなものを、精神の一角に設ける効果があるのだ。

     この地図はきっと、あなたの観察=認識の背景(バックグラウンド)になっていく。


    handmap.jpg




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     問題解決の定石の一つ〈逆向きに解く Working backwords〉のわかりやすい例が


    いかにして問題をとくかいかにして問題をとくか
    (1975/04/01)
    G. ポリア

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    にある。

     次のパズルは試行錯誤でも解くことができるが、この〈逆向きに解く〉を使うと、行き当たりばったりよりはずっと、見通しのよい解決になる。

     どういう風にアタマを使えばいいかを知っていると、オタオタせず、やるべきことを見つけることができる。
     どうやって解決のための「思い付き」を得ればいいか、探すべきところの手がかりが得られる。
     


    問題:われわれが4リットルと9リットルの2つの桶しかもっていないとき、ちょうど6リットルの川の水をくむにはどうすればよいか?

    Barrel1.jpg



    逆向きに解く その1……求めるものはすでに得られたと仮定せよ

    6リットルの水が9リットルの桶の中に入っている

    (4リットルの桶ではあふれてしまう)


    Barrel2.jpg




    逆向きに解く その2……問題をつくりかえよ

    つくりかえられた問題:9リットルの桶に水がいっぱい入っている。ここから3リットルの水を汲み出したい(それができれば最初の問題は解ける。9リットル-3リットル=6リットル)。どうすればいいか?



    逆向きに解く その3……さらに問題をつくりかえよ

    つくりかえられた問題2:4リットルの桶を使って、3リットルの水を測りたい。どうすればいいか?

    →(答)3リットル入れたらちょうど一杯になるように、4リットルの桶にあらかじめ1リットルの水が入っていれば良い。


    Barrel3.jpg



    逆向きに解く その4……さらにさらに問題をつくりかえよ

    つくりかえられた問題3:われわれが4リットルと9リットルの2つの桶しかもっていないとき、ちょうど1リットルの川の水をくむにはどうすればよいか?

    →(答)9リットルの桶をいっぱいにして、そこから4リットルの桶がいっぱいになるように2回水を汲み出せばいい(9リットル-4リットル×2回=1リットル)。


    Barrel4.jpg


    逆向きに解く その5……これまでの思考のプロセスを逆にたどれば、元の問題の答えになる

    元の問題 われわれが4リットルと9リットルの2つの桶しかもっていないとき、ちょうど6リットルの川の水をくむにはどうすればよいか?

    (1)まず1リットルの水を測る(9リットルの桶をいっぱいにして、そこから4リットルの桶がいっぱいになるように2回水を汲み出せばいい)。

    (2)4リットルの桶に1リットルの水を入れておく。

    (3)9リットルの桶を一杯にして、4リットルの桶が一杯になるまで水を汲み出す。

     こうして答えは得られた。