2015.08.24
知らないことを知る技術ー未知の分野で文献調査を導く3つの表の作り方と使い方
無知:たのもう!たのもう!
親父:うるさい奴が来たぞ。おい、そこのバカ、口を縫いとじてやるからこっちへ来い。
無知:そうです、バカなんです。
親父:なんだ、泣き始めたぞ。見かけない顔だな。
無知:彼女のできなかった非モテ先輩からお話を聞いて、教えを請いに参りました。
親父:なんだか随分古い話だな。じゃあ友達の作り方でも訊きに来たのか? あんなものは炭水化物と同じだ、切れると結構つらいが、無いなら無いで何とかなる。
無知:いやローカーボンダイエットの話ではなく、どうやったら教養が身につくかを教えてください。
親父:なるほど。察するにお前さんは物知らずだな?
無知:そこまではっきり言う!……でも、おっしゃるとおりです。
親父:ものを知らない奴は「知識がある」ってことがどういうことかも知らないから、自分と真逆のイメージをこしらえるしかない。何も知らない自分←正反対→何でも知っている=教養がある、って感じだな。言わば《無知の陰画としての博識》だ。松岡正剛なんかをありがたがるタイプだ。
無知:げげっ、どうしてそれを?
親父:しかし、そういう目標設定だと、一度にすべての方向へ進む訳にはいかんから、仕方なくノンジャンルに行こう、みたいな話にしかならん。
無知:はい、それで百科事典を読んでみたのですが「あゝ玉杯に花うけて」のところまで来て挫折しました。
親父:とんだ赤毛組合だな。実を言うと検索に便利なアルファベット順や五十音順は、記憶するには不向きだという研究がある。関連のある項目を芋づる式に読む方がましだ。
無知:そうでしたか。
親父:しかし元々「知らないことは嫌だ」というネガティブな動機付けから始まった企てだから、何かを学んでいても、すぐにまだ学んでいない別の〈知らないこと〉が気になってくる。しかも知らないことは各方面に山のようにあるから、結局どれにも身が入らず、ぐるぐる回っているうちに、ほとんどどっちにも進んでいないことに気付いて、過ぎた歳月をうらむことになるだろう。達者でな。
無知:ま、待って! どうしたらいいでしょうか?
親父:こういう場合、正解は大抵つまらない上に受け入れがたいぞ。気にせず、強く生きろ。
無知:いや、かえって気になります。
親父:では言うが、あきらめろ。すべてを知ることは誰の手にも余る。知的分業を承認しないと、自分が知らない知識を探すなんてできるはずがない。また、一篇の論文を生み出すのに必要な熱量がどれほどのものか体感しないと、何でも知ることができるんじゃないかという甘美な夢はなかなか覚めない。
無知:では専門バカになれと?
親父:なれるもんならなってみろ。念のために言っとくがネットで阿呆なことを垂れ流してる◯◯学者や脳タレントがいるが、ああいうのは専門バカじゃなくただのバカだからな。
無知:では八方ふさがりですか。何年もビジネス書と日経新聞を読んであとには何も残らない知的敗残兵のまま一生を送らねばならないのですか。
親父:新聞にだって新刊書の書評ぐらい載るぞ。そういえば功成った連中の成功話に共通点が少ない理由は、ハトにランダムにエサを与えると生じる迷信行動で説明できるって話を知ってるか?
無知:知りませんし聞きたくもありません。
親父:まあ何に負けるか分からんが、知的劣等感から嫌がらせに走る奴は居ても、死んだ奴はいない。というか人間どのみち死ぬしな。
無知:無言電話と玄関先に生ゴミを撒くのと、どちらがいいですか?
親父:やれやれ。それくらいやる気があるなら「最速の素人」にでもなれ。
無知:おおっ! 村人Bでも戦えますか?
親父:あらかじめすべてを知ることは不可能だが、必要になった時に必要な知識や情報をなるべく速やかにかき集めるための準備ならできなくはない。
無知:具体的には?
親父:まあ、このブログはそういうことが書いてあるところなんだけどな。
無知:そこを最短で、お願いします。
親父:知ってる奴に聞け。それができないならググれ。
無知:超がっかり。
親父:文字数当たりのパフォーマンスを最大化すると、そういうアドバイスになる。
無知:もう少し汗をかいてください。
親父:かくのはお前だ。仕方がない、知りたいテーマについて聞ける奴がいない場合に、お前でもできそうなことを教えてやる。全く未知のテーマについて最速で数十から数百の文献を扱って自分なりのまとめができる程度だが。前提はとりあえずネットを見ることはできるってことでいいな。
無知:前ふりが長過ぎましたが、それで手を打ちます。
親父:まったく何様だ。とりあえず事典と書籍と論文を検索して3つの表を作っていけ。
無知:どんな表ですか?
親父:(1)文献×目次マトリクスと(2)文献×文献マトリクスと(3)文献×概念マトリクスの3つだ。どれから作ってもいいが、まあ最初は(1)から順番にやるといいだろう。
無知:文献×目次マトリクスというのはどんなものですか?
親父:見つけた文献の目次をあつめた表だ。
(1)文献のタイトル、著者などを左端のマスへ入力する。
(2)目次の見出しを拾い出し、タイトルの右に1つずつマス(セル)へ入力。
(3)一つの文献が終わったら次の行へ(1)〜(2)を繰り返す。
以下はおまけ
(4)必要なら(目次の見出しだけでは内容がわかりづらい場合は)各章の概略をメモる
(5)(どこになにが書いてあるか可視化できたら)同じ/似た内容をマーキングしたり囲んでつないだりする

書籍だと現物を手に入れなくてもネットで目次がみれるからひたすらコピペすればいい。Webcat Plus Minusあたりで見れるだろ。詳しい作り方は、次の記事を参考にしろ。
無知:こんなもの作って何か意味があるんですか?
親父:お前さんがこれから調べたい分野やトピックについていくらか知っていて「土地勘」みたいなものがあるなら、もっと効率がいい手が思いつけるだろう。しかしまったくの無知なら、そこでどんなことが話題になっているか、どんな言葉・概念が使われているか、見当つかないだろう。そこで、目次を先に眺めておくと雰囲気みたいなものが分かる。同じようなことを書いてる本がやたらとあることだとか、そういう焼き直し本がどれかも見当がつく。頻出のキーワードや、論者によって意見が分かれてるトピックも分かってくる。すると、もう少しましな検索ができるようにもなる。
無知:わざわざ表にまとめなくても、たくさんの文献を読めばいいのではないですか?
親父:効率と根気の問題だな。目次だけなら100冊ぐらいこなすのは屁でもないが、手当たり次第に読むやり方は(慣れないうちは)よくて十数冊、でなきゃ数冊あたりで失速する。同じ分野の本は重複が多いから、そのあたりで「これ以上読んでも仕方ないんじゃないか」と思えてくる訳だ。文献を何十ってオーダーで扱うには、どのみち文献リストっていう外部記憶が要る。それに不案内なうちは、最初にカスみたいな文献をつかんじまって迷走しがちだ。目次だけでも網羅しとけば、たとえ迷走しても、別の文献が見えてるから立ち戻るのもはやい。
無知:次の文献×文献マトリクスっていうのは?
親父:それぞれの文献が、他の文献を参照したり言及したりしている部分を拾ってまとめた表だ。
(1)表の上端に集めた論文名等をコピペする
(2)表の左端に合わせた参考文献リストをコピペする
(3)他の文献を参照している箇所を拾い出して入力
(以下はおまけ)
(4)言及が多い順に被引用文献をソートする(より多く参照された文献がマトリクスの上部に浮かび上がってくる。)
(5)引用している側の文献についても必要なら並び替える

これも詳しくは次の記事を読め。
無知:つまり文献の参照関係をたどる表ですか。
親父:ある文献が参照している文献、その文献が参照している文献、という具合に芋づる式に参照関係をたどって文献を追いかけていくのは文献調査の基本だ。実際は、ひとつの文献は複数の文献を参照しているのが普通だから、追っかけて行くと捕獲できる文献は雪だるま式に増えていく、スノーボール・リサーチだな。
無知:はっきりいって面倒くさいです。
親父:はっきり言うな。ある文献Aが他の文献Bを引いて何を言っているかをチェックしていけば、文献Bの概要やら評価の一欠片が分かる。文献Bを読むのに、外部支援として文献Aが使える訳だ。
無知:文献の関係も、文献を読むのに活用するわけですか。
親父:いろんな文献がこぞって取り上げてる文献は、その分野では基本的な必須文献か、それに近いもんだろう。これを見つけるということは、逆に見れば、一つの文献を共通して取り上げてる複数の文献を捕獲できることになる。文献Aだけだと心もとないが、他の文献A'、文献A''……と、文献Bを取り上げている複数の文献たちを見ていけば、文献Bの評価はもっとはっきりするだろう。要するにその分野の前提や文脈みたいなものが分かってくるという訳だ。まあ、手っ取り早いのは知ってる奴に聞くか、その分野の教科書でも読むことだけどな。しかし教科書のない分野は多いし、知り合いが物知りとは限らん。
無知:おまけに友達もいないんです。
親父:面倒くさいお前に幸いあれ! でだ、文献Bに対する、文献A、文献A'、文献A''……それぞれのスタンスは、逆に文献A、文献A'、文献A''……を評価する手がかりにもなる。共通必須文献として取り扱っているまともな(メインストリームにいようとする)文献か、それともあえて逆らおうとしている異端派なのか、ぐらいはすぐ分かるだろう。
無知:最後は文献×概念マトリクスですか。
親父:文献×目次マトリクスで、よく出てくるキーワードが分かってくるし、文献×文献マトリクスで文献が雪だるま式に集まって、それぞれの評価や関係も浮かんできた。そしたら、特に気になるキーワード(概念)について、それぞれの文献では何と言っているかを引っ張りだして、これまた表にまとめるんだ。
(1)文献を集めて年代順に並べる
(2)マトリクスへ抽出するキーワードを決める
(3)文献からキーワードに関する記述を摘出してマトリクスを埋めていく
これは次の記事で書いたレビュー・マトリクスの簡易版って感じだ。
ひとつのキーワード(概念)に対して複数の文献から見ることができる。一つの視点からは見えなかったものが、他の視点からは見えるかもしれん。ある者の主張には良いとこばかり(悪いところばかり)だけでないことも気づきやすくなるだろう。誰かの受け売りやってるレベルをできるだけ速やかに抜ける方法は、複数の見方を何度も/何十にも突き合わせてみることだ。

2014.02.01
必読文献が浮かび上がる→引用マトリクスで複数の文献の関係と分布を一望化する
(忙しい人のための要約)
引用マトリクスの作り方
1.表の上端に集めた論文名等を横方向にコピペ
2.集めた論文から参考文献リストをまとめて縦方向にコピペ
3.他の文献を参照している箇所を拾い出して表を埋める
4.言及が多い順に被引用文献(行)を並び変える

何も知らない分野について、いや自分の知りたいことが何の分野の事項なのか分からないことについて、基本文献を探したいとしよう。
独学者にとってはかなり不利な(しかしよくある)状況にあっても、英語の文献を探す場合には、検索エンジンやデータベース以前から、紙のツールと標準的な手順が存在する。
(1)専門事典(Special Encyclopedia)の横断検索ツールを引く(どの辞書のどこに載っているかが分かる)
レファレンス、この一冊/事典の横断検索ならFirst stop : the master index to subject encyclopedias 読書猿Classic: between / beyond readers

レファレンス、この一冊/複数の領域を渡り歩くならFirst Stopふたたび 読書猿Classic: between / beyond readers

(2)各事典の該当項目から参考文献リストを拾い出す
(3)何種類の辞書に登場したかで参考文献をソート(登場回数が多いほど重要な文献)
日本語にはこのレベルの横断検索ツールは存在しないが、複数の参考文献リストが得られるなら、ソースを事典に限る必要はない。
学術論文は、先行する文献への参照を明記するルールに則って書かれるから、もちろん利用することができる。
辞書も教科書もまだない新しい分野やマイナー分野では、論文をソースにするのがむしろ普通であり合理的である。
もう一工夫して、文献の間の参照関係をただ数え上げるだけでなく、参照の内容をも拾い上げるならば(ある文献の位置づけなどのコンテクストを知るのに必要な情報が含まれることが多い)、グラフ(ネットワーク図)よりもマトリクスで整理する方がいい。

今回紹介する引用マトリクス(Quotation Matrix)は、マトリクスによる文献整理の方法を参照・引用関係に適用したものである。
以前に紹介したコンテンツ・マトリクスが複数の文献の《中身》を一望化(一目で見えるように)するものだとすれば、引用マトリクスは複数の文献の《間/関係》を一望化するものだと言える。
両者は図と地(Figur und Grund)あるいはコンテンツとコンテクストの関係であり、複数の文献を取り結びながら読む〈面の読み〉において相補的な役割を担う。
(関連記事)
・複数の文献を一望化し横断的読みを実装するコンテンツ・マトリクスという方法 読書猿Classic: between / beyond readers

・集めた文献をどう整理すべきか?→知のフロント(前線)を浮かび上がらせるレビュー・マトリクスという方法 読書猿Classic: between / beyond readers

1.いくつかの文献を入手する
2.文献たちから参考文献リストを集める
論文の末尾には、その論文で引用・参照した他の文献が列挙されている。
この参考文献のリストを、自分が集めた論文のそれぞれから集めてくる。
これをひとつのファイルにまとめてソート(昇順で並べ替え)すると以下のようになる。
こうして同じ文献同士がくっついて並ぶので、どの文献がより多くの論文から参照されているかは一目瞭然である。
参考文献を書く方式は複数あるので、同じ文献でも論文によって書き表し方が異なる場合もある。
大きく分けると
・著者名+発行年+題名(+このあと論文なら掲載誌名と掲載号やページ数、書籍なら発行所などの情報が続く)
・著者名+題名(+このあと論文なら載誌名と掲載号、著作なら発行所などの情報が続く。発行年は掲載号の含まれるか、書籍の場合は最後に回されたりする)
書き方が混在していると、ソートをかけて並べ替えた時、同じ文献なのに隣同士に並ばない。
(いずれの場合も著者名が先頭なので、それほど離れ離れになるわけではないが)。
3.引用マトリクスをつくる
引用マトリクスと、あつめた文献のそれぞれが、(a)他のどの文献を参照して(b)どんなことを言っているかを拾い集め、それを1つのマトリクスにまとめたものである。
引用マトリクスは文献の間の参照関係をその内容まで含めて一望するためのツールである。
まず外枠を入力し、ひろあげた情報でマス目を埋めて、最後にソートをかけることから、表計算ソフトの上で作成・更新することを想定している。
(1)表の上端に集めた論文名等をコピペ

表の上端には、集めた論文を並べる(上図のオレンジの囲み部分)。
例では著者名、発行年、題名を入力している。
こちらが引用する文献サイドとなる。
入力段階では、入手できた順に左から右へ並べている。マトリクスが埋まってきてから必要なら並び替える。
被引用文献に並んだ文献も入手できた段階で、表の上端の引用する文献サイドに並べる。参照文献リストについても拾って追加していく。
(2)表の左端に合わせた参考文献リストをコピペ

集めた論文から拾い集めた文献リストをひとつにまとめ、著者名+発行年で並び替え(ソートし)、重複は除いたものを表の左端に縦向きに並べる(上図のブルーの囲み部分)。
こちらが被引用文献サイドとなる。
ここは著者名+発行年の順でソートしておきたい。
理由は、ハーバード方式と相性が良いからだ。
ハーバード方式は、それまで本文中や各ページの脚注に散在させていた参考文献の書誌を論文末尾にまとめて列挙し、本文で言及する箇所では〈著者の姓と発行年〉によって参照文献を指示する方式である。
引用マトリクスでは、ある文献が、(a)他のどの文献を参照して(b)どんなことを言っているか、を拾い集めるが、上の例のように、ハーバード方式では、本文を見るだけでどの文献を参照しているかが分かるので、(a)(b)両方の情報が一度に得られる。
あとで入手できた論文が増えた場合は、追加で拾い上げた参考文献を被引用文献サイドの一番下以降に追加して、再度ソートをかけて、重複したものは新しく加わった方を抜いておく。
(3)他の文献を参照している箇所を拾い出す
集めた論文それぞれを読み、本文及び注釈から他の文献を参照している箇所をみつけ、言及している内容を引用マトリクスの該当箇所へコピペしていく。
どこが該当箇所であるかは、図のとおり。

つまり、引用する側の文献A(図のオレンジ部分)と引用される側の文献B(図のブルー部分)が交わるマス目が、文献Aが文献Bを引用・参照して言及している内容を入力する該当箇所である。
作業的には、入手した論文の一つを読みながら、その文献が対応する縦列(図のオレンジ部分)を埋めていき、1つの論文が終われば、次の論文に進み対応する別の縦列を埋めることの繰り返しになる。
こうして入手できた論文について(3)の作業をやり終えると引用(クォーテーション)マトリクスができあがる。
(4)言及が多い順に被引用文献をソートする
引用マトリクス埋まったマス目は、表上端に並んだ引用側文献から表左端に並んだ被引用文献への参照関係があることを示しており、マス目の内容は参照の内容(例えば引用文献が被引用文献をどのように要約し、どのように評価しているか等)が書かれている。
では、埋まったマス目の数を数えて(表計算ソフトのCOUNTA関数などが使える)、数の多い順に被引用文献(各行)をソートしよう。
これによって、より多く参照された文献がマトリクスの上部に浮かび上がってくる。
こんな風に。

入手できた論文が少ないと、被引用数についてあまり差がつかないこともある(最大被引用数=集めた論文数だから)。
その場合は言及量(LENB関数が使える)や言及内容によって被引用文献(各行)を並べ替える。
(5)引用している側の文献を並び替える
引用している側の文献(各列)についても、埋まったマス目の数などで(多いほど左へ)並び変えることもできる。
引用・参照する文献の多さは、論文の質や重要度と直接関連はないが、論文の種類(たとえば展望論文は多くの論文を参照する)を示唆しているかもしれない。
しかし機械的に並べ替えるよりも、人の手で分類・並べ替えした方が得るものが大きいだろう。
例えば、引用している側の文献(各列)を発行年順に並べ替えた時、年代によって参照される文献の移り変わりがあることや、逆に時代を越えて参照され続ける文献の存在が浮かんでくる場合がある。つまり、ある年代まで参照・引用されていた文献がある時以降参照・引用されなくなっていることや、どの年代の文献からも参照・引用されていることが引用マトリクスの上に現れる。
同様に、著者やグループ別あるいは分野別に引用している側の文献を並べれば、特定の著者やグループ、特定の分野の研究だけが参照・引用する文献、また広く分野を超えて参照・引用される文献が浮かび上がる。

4.引用マトリクスの読み方・使い方
引用マトリクスは、文献の間の参照関係をその内容まで含めて一望するためのツールである。
引用マトリクスからは、文献を孤立させ/単独で読んでいたのでは分からない文献間の関係が浮かび上がる。
(1)文献の評価を知る
左端部からある行(被引用文献)を選び、マトリクスを横に読んでいくと、その被引用文献を参照して複数の論文がどんなことを言っているかが比較できる。
複数の論文が同様のことを言っているなら、それはその被引用文献について共有された見解なり評価を示している。
複数の論文が食い違ったことを述べているなら、その被引用文献についての見解なり評価は論者によって別れていることが分かる。
(2)基本文献を知る
言及数で並び変えたことで、よく引用・参照される文献ほど引用マトリクスの上部に集まっている。
加えて引用マトリクスでは、複数の文献にどのように言及されているかをまとめて読むことができる。
複数の文献から引用・参照され、その上、基本概念やアプローチに関して言及されている文献は、そのテーマに関して必ず触れるべき基本文献であると考えてよい。
(3)研究・文献の分布を知る
先にふれたように引用マトリクスの上にいくつかのグループを発見できる場合もある。
たとえばグループごとに必ず引用・参照する基本文献が異なる場合があるかもしれない。それらは異なる学派やディシプリンに基づく研究集団の存在(その間の隔たり)を示しているかもしれない。
(サンプルの引用マトリクス作成につかった文献)
野中 亮.(2003).デュルケームの社会学方法論における象徴主義の問題.大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要.2..161-175
野中 亮.(2002).「社会形態学」から「儀礼論」へ : デュルケーム社会理論の変遷.大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要.1..195-209
小川 伸彦.(1994).<論文>デュルケームの儀礼論への一視角 : 二つの規範と「社会」の実在性.京都社会学年報 : KJS.1..31-48
樫尾 直樹.(1991).儀礼類型論と供犠の優越性 : デュルケム宗教社会学の理論的可能性(1).東京大学宗教学年報.8..21-35
引用マトリクスの作り方
1.表の上端に集めた論文名等を横方向にコピペ
2.集めた論文から参考文献リストをまとめて縦方向にコピペ
3.他の文献を参照している箇所を拾い出して表を埋める
4.言及が多い順に被引用文献(行)を並び変える

何も知らない分野について、いや自分の知りたいことが何の分野の事項なのか分からないことについて、基本文献を探したいとしよう。
独学者にとってはかなり不利な(しかしよくある)状況にあっても、英語の文献を探す場合には、検索エンジンやデータベース以前から、紙のツールと標準的な手順が存在する。
(1)専門事典(Special Encyclopedia)の横断検索ツールを引く(どの辞書のどこに載っているかが分かる)
レファレンス、この一冊/事典の横断検索ならFirst stop : the master index to subject encyclopedias 読書猿Classic: between / beyond readers

レファレンス、この一冊/複数の領域を渡り歩くならFirst Stopふたたび 読書猿Classic: between / beyond readers

(2)各事典の該当項目から参考文献リストを拾い出す
(3)何種類の辞書に登場したかで参考文献をソート(登場回数が多いほど重要な文献)
日本語にはこのレベルの横断検索ツールは存在しないが、複数の参考文献リストが得られるなら、ソースを事典に限る必要はない。
学術論文は、先行する文献への参照を明記するルールに則って書かれるから、もちろん利用することができる。
辞書も教科書もまだない新しい分野やマイナー分野では、論文をソースにするのがむしろ普通であり合理的である。
もう一工夫して、文献の間の参照関係をただ数え上げるだけでなく、参照の内容をも拾い上げるならば(ある文献の位置づけなどのコンテクストを知るのに必要な情報が含まれることが多い)、グラフ(ネットワーク図)よりもマトリクスで整理する方がいい。

今回紹介する引用マトリクス(Quotation Matrix)は、マトリクスによる文献整理の方法を参照・引用関係に適用したものである。
以前に紹介したコンテンツ・マトリクスが複数の文献の《中身》を一望化(一目で見えるように)するものだとすれば、引用マトリクスは複数の文献の《間/関係》を一望化するものだと言える。
両者は図と地(Figur und Grund)あるいはコンテンツとコンテクストの関係であり、複数の文献を取り結びながら読む〈面の読み〉において相補的な役割を担う。
(関連記事)
・複数の文献を一望化し横断的読みを実装するコンテンツ・マトリクスという方法 読書猿Classic: between / beyond readers

・集めた文献をどう整理すべきか?→知のフロント(前線)を浮かび上がらせるレビュー・マトリクスという方法 読書猿Classic: between / beyond readers

1.いくつかの文献を入手する
2.文献たちから参考文献リストを集める
論文の末尾には、その論文で引用・参照した他の文献が列挙されている。
この参考文献のリストを、自分が集めた論文のそれぞれから集めてくる。
(文献1から拾った参考文献リスト) ・秋山豊 (2006)『漱石という生き方』トランスビュー。 ・石原千秋 (2010)『漱石はどう読まれてきたか』新潮選書。 ・江藤淳 (1970)『漱石とその時代 第1・2部』新潮選書。 (文献2から拾った参考文献リスト) ・江藤淳 (1970)『漱石とその時代 第1・2部』新潮選書。 ・長尾剛 (1993)『漱石ゴシップ』文春ネスコ。 ・夏目鏡子 (1966) 『漱石の思い出』角川文庫。 (文献3から拾った参考文献リスト) ・石原千秋 (2010)『漱石はどう読まれてきたか』新潮選書。 ・江藤淳 (1970)『漱石とその時代 第1・2部』新潮選書。 ・長尾剛 (1993)『漱石ゴシップ』文春ネスコ。 ・福田清人 (1966)『夏目漱石 人と作品』清水書院。 |
これをひとつのファイルにまとめてソート(昇順で並べ替え)すると以下のようになる。
・夏目鏡子 (1966) 『漱石の思い出』角川文庫。 ・江藤淳 (1970)『漱石とその時代 第1・2部』新潮選書。 ・江藤淳 (1970)『漱石とその時代 第1・2部』新潮選書。 ・江藤淳 (1970)『漱石とその時代 第1・2部』新潮選書。 ・秋山豊 (2006)『漱石という生き方』トランスビュー。 ・石原千秋 (2010)『漱石はどう読まれてきたか』新潮選書。 ・石原千秋 (2010)『漱石はどう読まれてきたか』新潮選書。 ・長尾剛 (1993)『漱石ゴシップ』文春ネスコ。 ・長尾剛 (1993)『漱石ゴシップ』文春ネスコ。 ・福田清人 (1966)『夏目漱石 人と作品』清水書院。 |
こうして同じ文献同士がくっついて並ぶので、どの文献がより多くの論文から参照されているかは一目瞭然である。
参考文献を書く方式は複数あるので、同じ文献でも論文によって書き表し方が異なる場合もある。
大きく分けると
・著者名+発行年+題名(+このあと論文なら掲載誌名と掲載号やページ数、書籍なら発行所などの情報が続く)
(例) ・Smith, John Maynard. (1998). The origin of altruism. Nature 393: 639-40. ・Smith, J. (2005). Harvard Referencing, Wherever, Florida:Wikimedia Foundation. |
・著者名+題名(+このあと論文なら載誌名と掲載号、著作なら発行所などの情報が続く。発行年は掲載号の含まれるか、書籍の場合は最後に回されたりする)
(例) ・Smith, John Maynard., "The origin of altruism". Nature. 1993 Jun 3;363: 639-40. ・Smith, J., Harvard Referencing, Wherever, Florida:Wikimedia Foundation; 1998. |
書き方が混在していると、ソートをかけて並べ替えた時、同じ文献なのに隣同士に並ばない。
(いずれの場合も著者名が先頭なので、それほど離れ離れになるわけではないが)。
3.引用マトリクスをつくる
引用マトリクスと、あつめた文献のそれぞれが、(a)他のどの文献を参照して(b)どんなことを言っているかを拾い集め、それを1つのマトリクスにまとめたものである。
引用マトリクスは文献の間の参照関係をその内容まで含めて一望するためのツールである。
まず外枠を入力し、ひろあげた情報でマス目を埋めて、最後にソートをかけることから、表計算ソフトの上で作成・更新することを想定している。
(1)表の上端に集めた論文名等をコピペ

表の上端には、集めた論文を並べる(上図のオレンジの囲み部分)。
例では著者名、発行年、題名を入力している。
こちらが引用する文献サイドとなる。
入力段階では、入手できた順に左から右へ並べている。マトリクスが埋まってきてから必要なら並び替える。
被引用文献に並んだ文献も入手できた段階で、表の上端の引用する文献サイドに並べる。参照文献リストについても拾って追加していく。
(2)表の左端に合わせた参考文献リストをコピペ

集めた論文から拾い集めた文献リストをひとつにまとめ、著者名+発行年で並び替え(ソートし)、重複は除いたものを表の左端に縦向きに並べる(上図のブルーの囲み部分)。
こちらが被引用文献サイドとなる。
ここは著者名+発行年の順でソートしておきたい。
理由は、ハーバード方式と相性が良いからだ。
ハーバード方式は、それまで本文中や各ページの脚注に散在させていた参考文献の書誌を論文末尾にまとめて列挙し、本文で言及する箇所では〈著者の姓と発行年〉によって参照文献を指示する方式である。
ハーバード方式の例 (本文) ……ヨーロッパでもそうだが、パートタイマーの増加は、経済のサービス化や女性の典型的な職業が事務職になってからみられる現象である(Smith,1979)。…… (文献リスト) …… ・Roistacher, E. A., & Young, J. S. (1980). Working women and city structure: Implications of the subtle revolution. Signs, 5(3), S220-S225. ・Smith, R. E. (1979). Subtle Revolution, The: Women at Work., Washington D.C.:The Urban Institute. ・Sorensen, G., Pirie, P., Folsom, A., Luepker, R., Jacobs, D., & Gillum, R. (1985). Sex differences in the relationship between work and health: the Minnesota Heart Survey. Journal of Health and Social Behavior, 379-394. …… |
引用マトリクスでは、ある文献が、(a)他のどの文献を参照して(b)どんなことを言っているか、を拾い集めるが、上の例のように、ハーバード方式では、本文を見るだけでどの文献を参照しているかが分かるので、(a)(b)両方の情報が一度に得られる。
あとで入手できた論文が増えた場合は、追加で拾い上げた参考文献を被引用文献サイドの一番下以降に追加して、再度ソートをかけて、重複したものは新しく加わった方を抜いておく。
(3)他の文献を参照している箇所を拾い出す
集めた論文それぞれを読み、本文及び注釈から他の文献を参照している箇所をみつけ、言及している内容を引用マトリクスの該当箇所へコピペしていく。
どこが該当箇所であるかは、図のとおり。

つまり、引用する側の文献A(図のオレンジ部分)と引用される側の文献B(図のブルー部分)が交わるマス目が、文献Aが文献Bを引用・参照して言及している内容を入力する該当箇所である。
作業的には、入手した論文の一つを読みながら、その文献が対応する縦列(図のオレンジ部分)を埋めていき、1つの論文が終われば、次の論文に進み対応する別の縦列を埋めることの繰り返しになる。
こうして入手できた論文について(3)の作業をやり終えると引用(クォーテーション)マトリクスができあがる。
(作業上の諸注意) 前述したように、本文中に参照文献への指示(著者の姓と発行年)を埋め込んだハーバード方式を採用している論文だと、この拾い上げ作業はやりやすい。本文を見るだけで、どの被引用文献なのかが分かり、埋めるべきマス目がどれか分かるからだ。 これに対して、自然科学系の論文で多く用いられるバンクーバー方式(参考文献と本文を引用順の文献番号で関連付け、参考文献の列挙を引用順に行う方式)では、本文と末尾の参考文献欄を行ったり来たりしないと、(a)他のどの文献を参照して(b)どんなことを言っているか、という2つの情報がそろわない。 手っ取り早くこの事態を解消するにはエディタの検索・置き換え機能などを使い、本文中の文献番号を末尾に番号付きで列挙された参考文献の書誌情報で、置き換えることである。 しかしバンクーバー方式を採用する論文が他の文献を参照する数は普通多くないから、前処理をしないで済ませても実際はそれほど手間はかからない。
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(4)言及が多い順に被引用文献をソートする
引用マトリクス埋まったマス目は、表上端に並んだ引用側文献から表左端に並んだ被引用文献への参照関係があることを示しており、マス目の内容は参照の内容(例えば引用文献が被引用文献をどのように要約し、どのように評価しているか等)が書かれている。
では、埋まったマス目の数を数えて(表計算ソフトのCOUNTA関数などが使える)、数の多い順に被引用文献(各行)をソートしよう。
これによって、より多く参照された文献がマトリクスの上部に浮かび上がってくる。
こんな風に。

入手できた論文が少ないと、被引用数についてあまり差がつかないこともある(最大被引用数=集めた論文数だから)。
その場合は言及量(LENB関数が使える)や言及内容によって被引用文献(各行)を並べ替える。
(5)引用している側の文献を並び替える
引用している側の文献(各列)についても、埋まったマス目の数などで(多いほど左へ)並び変えることもできる。
引用・参照する文献の多さは、論文の質や重要度と直接関連はないが、論文の種類(たとえば展望論文は多くの論文を参照する)を示唆しているかもしれない。
しかし機械的に並べ替えるよりも、人の手で分類・並べ替えした方が得るものが大きいだろう。
例えば、引用している側の文献(各列)を発行年順に並べ替えた時、年代によって参照される文献の移り変わりがあることや、逆に時代を越えて参照され続ける文献の存在が浮かんでくる場合がある。つまり、ある年代まで参照・引用されていた文献がある時以降参照・引用されなくなっていることや、どの年代の文献からも参照・引用されていることが引用マトリクスの上に現れる。
同様に、著者やグループ別あるいは分野別に引用している側の文献を並べれば、特定の著者やグループ、特定の分野の研究だけが参照・引用する文献、また広く分野を超えて参照・引用される文献が浮かび上がる。

4.引用マトリクスの読み方・使い方
引用マトリクスは、文献の間の参照関係をその内容まで含めて一望するためのツールである。
引用マトリクスからは、文献を孤立させ/単独で読んでいたのでは分からない文献間の関係が浮かび上がる。
(1)文献の評価を知る
左端部からある行(被引用文献)を選び、マトリクスを横に読んでいくと、その被引用文献を参照して複数の論文がどんなことを言っているかが比較できる。
複数の論文が同様のことを言っているなら、それはその被引用文献について共有された見解なり評価を示している。
複数の論文が食い違ったことを述べているなら、その被引用文献についての見解なり評価は論者によって別れていることが分かる。
(2)基本文献を知る
言及数で並び変えたことで、よく引用・参照される文献ほど引用マトリクスの上部に集まっている。
加えて引用マトリクスでは、複数の文献にどのように言及されているかをまとめて読むことができる。
複数の文献から引用・参照され、その上、基本概念やアプローチに関して言及されている文献は、そのテーマに関して必ず触れるべき基本文献であると考えてよい。
(3)研究・文献の分布を知る
先にふれたように引用マトリクスの上にいくつかのグループを発見できる場合もある。
たとえばグループごとに必ず引用・参照する基本文献が異なる場合があるかもしれない。それらは異なる学派やディシプリンに基づく研究集団の存在(その間の隔たり)を示しているかもしれない。
(サンプルの引用マトリクス作成につかった文献)
野中 亮.(2003).デュルケームの社会学方法論における象徴主義の問題.大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要.2..161-175
野中 亮.(2002).「社会形態学」から「儀礼論」へ : デュルケーム社会理論の変遷.大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要.1..195-209
小川 伸彦.(1994).<論文>デュルケームの儀礼論への一視角 : 二つの規範と「社会」の実在性.京都社会学年報 : KJS.1..31-48
樫尾 直樹.(1991).儀礼類型論と供犠の優越性 : デュルケム宗教社会学の理論的可能性(1).東京大学宗教学年報.8..21-35
2013.08.27
複数の文献を一望化し横断的読みを実装するコンテンツ・マトリクスという方法
目掛けた一冊(たとえば誰かに勧められた書物)だけを読む、孤立した読書を〈点の読書〉と呼ぶ。
このブログでは繰り返しになるが、知識がそうなように、書物もあらゆる文献もまたスタンドアローンでは存在できない。一冊の書物、ひとつの文献は、他の多くの文献と、たとえば参照関係や影響関係を介して、直接・間接につながっている。そのつながりを追って進む読書を〈線の読書〉と呼ぶ。
さらに、文献同士を結ぶつながりをまたいで、あるいは逆らって、文献と文献を突合せ縒り合わせて、著者も文献も予期していなかった結びつきを創りながら編み上げながら進む読書を〈面の読書〉と呼ぶ。
点の読書、線の読書、面の読書 読書猿Classic: between / beyond readers

〈一冊〉という単位(パッケージ)は、書物流通の単位であって、我々の知的営為の単位ではない。
何か読まなくてはならない場合に、これさえあれば足りる完全な〈一冊〉が存在すると信じることは、読書の幼年期にある者だけに許される。
世界にあるのは、どんな場合でも、それだけでは足りない不完全な数冊、数十冊、数百冊であって、だからこそ我々には読み通す以上のことが求められる。たとえば読み合わせること、読み比べること、読みつなげること、そして未だ文献のない領域に踏み出すこと。
〈点の読書〉を取り扱う文献の数だけ繰り返さなくてはならないと考えると、複数の文献を扱うことはよほどの難事業に思えるかもしれない。
〈面の読書〉のためには、取り扱う文献を俯瞰し一望することができると取り組みやすい。
以下に示すのは、複数の文献を一望化することを助け、〈面の読書〉を実装することを支援する文献表の作り方である。
取り扱うすべての文献のすべての箇所にランダムアクセスし、複数の文献について縦断的/横断的(あるいは斜交い)に読む助けとなる。
ステップ1.見出し埋め
取り扱う文献を集め、1つの文献につき1行をつかって、文献のタイトルと各パートの見出しを拾い出し、順に左から右のマス(セル)へと入力していく(表計算ソフトをつかうとよい)。
このステップはすべての文献について最後までやり切っておく。
すると、たとえば以下のような表(マトリクス)ができる。

(クリックで拡大)
この作業は、能動的に目次・見出しを読む通すことで読解のための背景情報を頭にインプットすると同時に、取り扱う全文献の内容を1枚に集約するための外部記憶(外部表象)を用意するものである。
これで取り扱うすべての文献を一望できる基礎ができたことになる。以降の作業は、この表(マトリクス)に加筆することが中心となる。
もちろん、目次や見出しを拾うだけでは内容がよく分からない文献も少なくないだろう。
たとえば標準的な構成の論文から拾ってきた場合、見出しと配列順はほとんど同じになって、論文の内容について有益な情報は含まれていないかもしれない。
また古い文献では、見出しがなく、ただ「一」「二」…と数字が振られているだけだったりするが、この場合も同様である。
これらの文献については、次のステップでそれぞれのパートの概要を拾い上げて、追加入力することになる。
ステップ2.概要埋め
見出しを入力したマトリクスの各セル(マス)ごとに、その文献のその見出しのパートの概要を入力していく。
目次・見出しに欠落があったり、内容を示すだけの情報がまだ得られてない文献がある場合は、そうした文献から概要埋めの作業をはじめる。
最初から詳しい概要を入力する必要はない。
初期段階は〈どこに何が書いてある〉が一望できることが重要であるから、何について書いてあるかを示すキーワードを入力するだけでも十分である。
欠落が埋まり、どの文献についても〈どこに何が書いてある〉かが可視化できれば、必要最小限の作業は終わったことになる。
このままステップ3へ進んでもいいし、どの文献のどの箇所からでもいいので、より詳しく内容を拾い上げて表を埋めていくのでもかまわない。
概要埋めをさらに進める際に一つのやり方は、見出しから疑問文をつくり、その答を本文中に探すというものである。多くの文献では、すでに著者が問いを立てて、それに答える形で論旨が進められるものも少なくない。文献のそれぞれのパートで問い、また問いを発見していけば、概要埋めは進んでいくだろう。
すると次のような表(マトリクス)となる(赤文字が今回、追加入力した部分)

(クリックで拡大)
ステップ3.同項結び
〈どこに何が書いてある〉かが可視化できていれば、このステップに進むことができる。
表(マトリクス)の中で、同じ/似た項目・内容があれば、同じ色をつけたりマーキングしたり、丸で囲んだり、囲んだ上に線で結んだりして、関連が分かるようにする。
すると次のようになる。

(クリックで拡大)
ステップ4.面の読み
通常、2.概要埋めの充実化と3.同項結びは、両者を往復しながら進められる。
たとえば、概要埋めの充実化が進むと、それまでの粗い見出しでは見えなかった関連性が発見される。
また同項結びで結ばれたそれぞれの箇所を読み比べることで、おおまかに読むだけでは気付かなかった異同が浮かび上がり、より詳しく読むべき箇所やトピックに注意がいく。
この段階で既に、複数の文献の間を自在に読み回っていることに気付くだろう。
もちろん、概要埋めや同項結びを行ってから、ひとつひとつの文献を通しで読むことも良い。
すでにその文献だけでなく、今回集めた他の文献についても、全体構成が可視化されている。それぞれの文献をバラバラに読むのでなく、一まとまりのものとして読む準備ができている。
さらに同項結びも加えた表(マトリクス)を座右に読み進めれば、たとえば「このテーマについて他の文献はどう扱っているか?」とか「この論文の説明は難しい。他の文献にもっとやさしい説明はないだろうか?」と思ったそのときに、どの文献のどこを参照すればよいか、あなたが作った表(マトリクス)が教えてくれる。
すでに文献の間には、あなたがこの先何度でも行き来できる何本もの〈連絡通路〉が設置されていることになる。
より多く同項結びされたトピック/内容を持っている文献は、他の文献とより多くの共通部分を持つ文献である(例の表でいえば「帰納法と発見」や「ミル型論証と生態学」がそうだ)。
そうした文献を先に読みこめば、他の文献についてはどこが違っているか拾うだけで済む。
こんな風に、同項結びされたコンテンツ・マトリクスは、集めた文献のどれから先に読めば効率的かを教えてくれる。
ステップ5.発見事項の抽出/整理
コンテンツ・マトリクスは同項結びが増えるほど見やすいものではなくなっていく。
その頃には、発見した事項をまとめなおす動機付けが生まれているだろう。次へ進むときが来た。
複数の文献の間で共通して登場するトピックが発見できたら、あるいは比較すべき異同に気付いたら、それらを項目として表に追加し、それぞれの文献ではどうなのかを追記していこう。この際、一番左欄の文献名のすぐ右側に、新たな列を挿入していく。
追記のための情報や参照すべき箇所は、少なくともそのヒントは、すでにコンテンツ・マトリクスの中にあるはずである。
今や、以前
集めた文献をどう整理すべきか?→知のフロント(前線)を浮かび上がらせるレビュー・マトリクスという方法 読書猿Classic: between / beyond readers

で紹介したレビュー・マトリクスを進む段階である。
先に今回のコンテンツ・マトリクスを作っておくことは、文献マトリクスの作成の前作業にもなる。
コンテンツ・マトリクスは、まとめるためのトピック(列項目)を考え出さなくても(これが最も難しい)、目次や見出しを機械的に集めることでマトリクスの枠を作ってしまえる。
後は足りない情報を補いながら、内容を充実化することと、複数の文献を縦断/横断しながら読んでいくことが同時並行的に行われる。取り掛かりやすく、行き詰まりにくい。
特に、標準的な構成をとる論文(だとどこから何を抜き出すか検討がつけやすい)以外の文献を相手にする場合に、コンテンツ・マトリクスから入ると助かることが多い。
FAQ(よくある質問)
(表が横に大きすぎる)
Q1. 論文と書物を同じ表に入れると、書物の行が横に飛び出て見にくいんだけど。
A1. 論文とともに、詳しい目次のある書物を扱う場合は、書物の各1章分ごとに1行を割り当てると、表の横幅(列数)について文献ごとの食い違いが大きくなり過ぎません。
(表が縦に大きすぎる)
Q2. 扱う文献の数が増えると表が縦に広がりすぎて一望できなくなるけど。
A2. 同じ/似た項目・内容を結んでしまうと、スクロールしながらでも意外となんとかなります。
あと、表が縦に広がりすぎるのは、文献の数よりも、ひとつのセルにたくさん書き込む方が原因になるようです。自分でわかる範囲で縮めるなりキーワードだけにするなりすると、コンパクトになります。
(表が複雑すぎる)
Q3. 言われたとおり、関連あるところを結んでいったらスパゲッティ状に混み合って、訳がわからなくなったぞ。
A3. 複雑になりすぎたら、発見した事項をまとめなおす良い機会です。
他に複雑さを軽減するコツとしては
(1)同じ/関連する項目だからといって、すべてを囲んだり、つないだりする必要はありません。
特にどの文献にも出てくる内容/トピックは囲む必要はないです(むしろ表全体の属性としてメモしておくべき)。例につかった表だと、ベーコンやミルや帰納法は、マーキングもしてません。
(2)色付け/マーキング→囲む→囲んだものをつなぐ順で作業するといいです。つなぐのは最重要なものだけにします。そこまでの重要度がないものは色付け/マーキングだけでもなんとかなります。
(面倒すぎる)
Q4. こんなものわざわざ作らなくても、どことどこが繋がるか/関連してるかぐらいすぐわかるし覚えていられる。わざわざ表を作るまでもない。
A4. 元々〈面の読書〉を支援するための道具なので、なくてもできる人は使う必要は無いでしょう。ただ、作業しておくと定着度は違いますし、作業したものを残しておくと、時間をおいてから助かったりします。
(例につかった文献)
赤川元昭(2009)「仮説構築の論理--演繹法と枚挙的帰納法」『流通科学大学論集 流通・経営編』 22(1), 81-104.
赤川元昭(2010)「仮説構築の論理--消去による帰納法」『流通科学大学論集 流通・経営編』 22(2), 149-163.
赤川元昭(2010)「ベーコンと新しい帰納法」『流通科学大学論集 流通・経営編』 23(1), 39-61.
大垣俊一(2007)「ミル型論証と生態学」『Argonauta』14, 3-9.
岡本慎平(2011)「推論と規範 : J.S.ミル『論理学体系』における生の技芸とその構造について」『哲学』 63, 73-87, 2011-00-00
岡本慎平(2012)「他者の心と神の実在:J.S.ミルの類推論法と意識の諸問題」関西倫理学会2012年度大会 2012年11月3日
佐々木憲介(1993)「J.S. ミルの具体的演繹法 (1)」『經濟學研究』 43(3), 67-84.
佐々木憲介(1994)「J.S.ミルの具体的演繹法 (2・完)」『經濟學研究』 44(1), 17-34.
中桐大有(1974)「帰納法と発見(上)」『人文學』 (126), 1-20.
中桐大有(1974)「帰納法と発見(下)」『人文學』 (127), 80-98.
このブログでは繰り返しになるが、知識がそうなように、書物もあらゆる文献もまたスタンドアローンでは存在できない。一冊の書物、ひとつの文献は、他の多くの文献と、たとえば参照関係や影響関係を介して、直接・間接につながっている。そのつながりを追って進む読書を〈線の読書〉と呼ぶ。
さらに、文献同士を結ぶつながりをまたいで、あるいは逆らって、文献と文献を突合せ縒り合わせて、著者も文献も予期していなかった結びつきを創りながら編み上げながら進む読書を〈面の読書〉と呼ぶ。
点の読書、線の読書、面の読書 読書猿Classic: between / beyond readers

〈一冊〉という単位(パッケージ)は、書物流通の単位であって、我々の知的営為の単位ではない。
何か読まなくてはならない場合に、これさえあれば足りる完全な〈一冊〉が存在すると信じることは、読書の幼年期にある者だけに許される。
世界にあるのは、どんな場合でも、それだけでは足りない不完全な数冊、数十冊、数百冊であって、だからこそ我々には読み通す以上のことが求められる。たとえば読み合わせること、読み比べること、読みつなげること、そして未だ文献のない領域に踏み出すこと。
〈点の読書〉を取り扱う文献の数だけ繰り返さなくてはならないと考えると、複数の文献を扱うことはよほどの難事業に思えるかもしれない。
〈面の読書〉のためには、取り扱う文献を俯瞰し一望することができると取り組みやすい。
以下に示すのは、複数の文献を一望化することを助け、〈面の読書〉を実装することを支援する文献表の作り方である。
取り扱うすべての文献のすべての箇所にランダムアクセスし、複数の文献について縦断的/横断的(あるいは斜交い)に読む助けとなる。
ステップ1.見出し埋め
取り扱う文献を集め、1つの文献につき1行をつかって、文献のタイトルと各パートの見出しを拾い出し、順に左から右のマス(セル)へと入力していく(表計算ソフトをつかうとよい)。
文献名 | パート1 | パート2 | パート3 | パート4 | … |
再軍備とナショナリズム : 戦後日本の防衛観 | 第1章 二つの再軍備-西ドイツと日本 | 第2章 吉田内閣による再軍備 | 第3章 積極的再軍備論の登場と展開 | 第4章 日本における社会民主主義の分裂 | … |
このステップはすべての文献について最後までやり切っておく。
すると、たとえば以下のような表(マトリクス)ができる。

(クリックで拡大)
この作業は、能動的に目次・見出しを読む通すことで読解のための背景情報を頭にインプットすると同時に、取り扱う全文献の内容を1枚に集約するための外部記憶(外部表象)を用意するものである。
これで取り扱うすべての文献を一望できる基礎ができたことになる。以降の作業は、この表(マトリクス)に加筆することが中心となる。
もちろん、目次や見出しを拾うだけでは内容がよく分からない文献も少なくないだろう。
たとえば標準的な構成の論文から拾ってきた場合、見出しと配列順はほとんど同じになって、論文の内容について有益な情報は含まれていないかもしれない。
また古い文献では、見出しがなく、ただ「一」「二」…と数字が振られているだけだったりするが、この場合も同様である。
これらの文献については、次のステップでそれぞれのパートの概要を拾い上げて、追加入力することになる。
ステップ2.概要埋め
見出しを入力したマトリクスの各セル(マス)ごとに、その文献のその見出しのパートの概要を入力していく。
目次・見出しに欠落があったり、内容を示すだけの情報がまだ得られてない文献がある場合は、そうした文献から概要埋めの作業をはじめる。
最初から詳しい概要を入力する必要はない。
初期段階は〈どこに何が書いてある〉が一望できることが重要であるから、何について書いてあるかを示すキーワードを入力するだけでも十分である。
欠落が埋まり、どの文献についても〈どこに何が書いてある〉かが可視化できれば、必要最小限の作業は終わったことになる。
このままステップ3へ進んでもいいし、どの文献のどの箇所からでもいいので、より詳しく内容を拾い上げて表を埋めていくのでもかまわない。
概要埋めをさらに進める際に一つのやり方は、見出しから疑問文をつくり、その答を本文中に探すというものである。多くの文献では、すでに著者が問いを立てて、それに答える形で論旨が進められるものも少なくない。文献のそれぞれのパートで問い、また問いを発見していけば、概要埋めは進んでいくだろう。
すると次のような表(マトリクス)となる(赤文字が今回、追加入力した部分)

(クリックで拡大)
ステップ3.同項結び
〈どこに何が書いてある〉かが可視化できていれば、このステップに進むことができる。
表(マトリクス)の中で、同じ/似た項目・内容があれば、同じ色をつけたりマーキングしたり、丸で囲んだり、囲んだ上に線で結んだりして、関連が分かるようにする。
すると次のようになる。

(クリックで拡大)
ステップ4.面の読み
通常、2.概要埋めの充実化と3.同項結びは、両者を往復しながら進められる。
たとえば、概要埋めの充実化が進むと、それまでの粗い見出しでは見えなかった関連性が発見される。
また同項結びで結ばれたそれぞれの箇所を読み比べることで、おおまかに読むだけでは気付かなかった異同が浮かび上がり、より詳しく読むべき箇所やトピックに注意がいく。
この段階で既に、複数の文献の間を自在に読み回っていることに気付くだろう。
もちろん、概要埋めや同項結びを行ってから、ひとつひとつの文献を通しで読むことも良い。
すでにその文献だけでなく、今回集めた他の文献についても、全体構成が可視化されている。それぞれの文献をバラバラに読むのでなく、一まとまりのものとして読む準備ができている。
さらに同項結びも加えた表(マトリクス)を座右に読み進めれば、たとえば「このテーマについて他の文献はどう扱っているか?」とか「この論文の説明は難しい。他の文献にもっとやさしい説明はないだろうか?」と思ったそのときに、どの文献のどこを参照すればよいか、あなたが作った表(マトリクス)が教えてくれる。
すでに文献の間には、あなたがこの先何度でも行き来できる何本もの〈連絡通路〉が設置されていることになる。
より多く同項結びされたトピック/内容を持っている文献は、他の文献とより多くの共通部分を持つ文献である(例の表でいえば「帰納法と発見」や「ミル型論証と生態学」がそうだ)。
そうした文献を先に読みこめば、他の文献についてはどこが違っているか拾うだけで済む。
こんな風に、同項結びされたコンテンツ・マトリクスは、集めた文献のどれから先に読めば効率的かを教えてくれる。
ステップ5.発見事項の抽出/整理
コンテンツ・マトリクスは同項結びが増えるほど見やすいものではなくなっていく。
その頃には、発見した事項をまとめなおす動機付けが生まれているだろう。次へ進むときが来た。
複数の文献の間で共通して登場するトピックが発見できたら、あるいは比較すべき異同に気付いたら、それらを項目として表に追加し、それぞれの文献ではどうなのかを追記していこう。この際、一番左欄の文献名のすぐ右側に、新たな列を挿入していく。
追記のための情報や参照すべき箇所は、少なくともそのヒントは、すでにコンテンツ・マトリクスの中にあるはずである。
今や、以前
集めた文献をどう整理すべきか?→知のフロント(前線)を浮かび上がらせるレビュー・マトリクスという方法 読書猿Classic: between / beyond readers

で紹介したレビュー・マトリクスを進む段階である。
先に今回のコンテンツ・マトリクスを作っておくことは、文献マトリクスの作成の前作業にもなる。
コンテンツ・マトリクスは、まとめるためのトピック(列項目)を考え出さなくても(これが最も難しい)、目次や見出しを機械的に集めることでマトリクスの枠を作ってしまえる。
後は足りない情報を補いながら、内容を充実化することと、複数の文献を縦断/横断しながら読んでいくことが同時並行的に行われる。取り掛かりやすく、行き詰まりにくい。
特に、標準的な構成をとる論文(だとどこから何を抜き出すか検討がつけやすい)以外の文献を相手にする場合に、コンテンツ・マトリクスから入ると助かることが多い。
FAQ(よくある質問)
(表が横に大きすぎる)
Q1. 論文と書物を同じ表に入れると、書物の行が横に飛び出て見にくいんだけど。
A1. 論文とともに、詳しい目次のある書物を扱う場合は、書物の各1章分ごとに1行を割り当てると、表の横幅(列数)について文献ごとの食い違いが大きくなり過ぎません。
(表が縦に大きすぎる)
Q2. 扱う文献の数が増えると表が縦に広がりすぎて一望できなくなるけど。
A2. 同じ/似た項目・内容を結んでしまうと、スクロールしながらでも意外となんとかなります。
あと、表が縦に広がりすぎるのは、文献の数よりも、ひとつのセルにたくさん書き込む方が原因になるようです。自分でわかる範囲で縮めるなりキーワードだけにするなりすると、コンパクトになります。
(表が複雑すぎる)
Q3. 言われたとおり、関連あるところを結んでいったらスパゲッティ状に混み合って、訳がわからなくなったぞ。
A3. 複雑になりすぎたら、発見した事項をまとめなおす良い機会です。
他に複雑さを軽減するコツとしては
(1)同じ/関連する項目だからといって、すべてを囲んだり、つないだりする必要はありません。
特にどの文献にも出てくる内容/トピックは囲む必要はないです(むしろ表全体の属性としてメモしておくべき)。例につかった表だと、ベーコンやミルや帰納法は、マーキングもしてません。
(2)色付け/マーキング→囲む→囲んだものをつなぐ順で作業するといいです。つなぐのは最重要なものだけにします。そこまでの重要度がないものは色付け/マーキングだけでもなんとかなります。
(面倒すぎる)
Q4. こんなものわざわざ作らなくても、どことどこが繋がるか/関連してるかぐらいすぐわかるし覚えていられる。わざわざ表を作るまでもない。
A4. 元々〈面の読書〉を支援するための道具なので、なくてもできる人は使う必要は無いでしょう。ただ、作業しておくと定着度は違いますし、作業したものを残しておくと、時間をおいてから助かったりします。
(例につかった文献)
赤川元昭(2009)「仮説構築の論理--演繹法と枚挙的帰納法」『流通科学大学論集 流通・経営編』 22(1), 81-104.
赤川元昭(2010)「仮説構築の論理--消去による帰納法」『流通科学大学論集 流通・経営編』 22(2), 149-163.
赤川元昭(2010)「ベーコンと新しい帰納法」『流通科学大学論集 流通・経営編』 23(1), 39-61.
大垣俊一(2007)「ミル型論証と生態学」『Argonauta』14, 3-9.
岡本慎平(2011)「推論と規範 : J.S.ミル『論理学体系』における生の技芸とその構造について」『哲学』 63, 73-87, 2011-00-00
岡本慎平(2012)「他者の心と神の実在:J.S.ミルの類推論法と意識の諸問題」関西倫理学会2012年度大会 2012年11月3日
佐々木憲介(1993)「J.S. ミルの具体的演繹法 (1)」『經濟學研究』 43(3), 67-84.
佐々木憲介(1994)「J.S.ミルの具体的演繹法 (2・完)」『經濟學研究』 44(1), 17-34.
中桐大有(1974)「帰納法と発見(上)」『人文學』 (126), 1-20.
中桐大有(1974)「帰納法と発見(下)」『人文學』 (127), 80-98.