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    分数の問題で娘が…。 : 妊娠・出産・育児 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
    http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2013/0621/600642.htm
    のすっかり遅くなってしまったアンサー・ソング




    pitagoras.jpg


    分数が普段使いされない理由


    少女:……という訳で、分数で大変な騒ぎだったんです。

    禁煙:あらあら、大変ね。

    少女:どうして帯分数ってあんなにディスられてるんですか?


     帯分数とは、  や  のように
     整数と分数の部分がある分数のこと


    禁煙:小学校でやるけれど、その後はさっぱり登場しないからかしら?

    少女:でも、そんなのことって人生には他にいくらでもありますよね?

    禁煙:あとは小学生にとっては分かりにくいし面倒くさいから?「あんなに苦労したのに全然出てこない、なんだったんだ、あれは?」って感じかも。

    少女:なんで帯分数は小学校以外じゃ出てこないんですか?

    禁煙:それをいうなら分数というのも、日本だとあまりお目にかからないわね。

    少女:そんなことは……うーん、そうかな? ……って、今、「日本」って言いました?

    禁煙:ヤードポンド法を使っているところだと、まだ日常生活で分数を使うって言うのだけど。

    少女:今もヤードポンド法ってアメリカですか? そういえば
    100の職業でどんな数学を使うのか1枚の表にまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers 100の職業でどんな数学を使うのか1枚の表にまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加
    に出てた表で、分数を使う仕事が多すぎるってちょっと思ってました。でも、なんでまた?

    禁煙:1インチが1/12フィートで1フィートが1/3ヤードだったり、1オンスが1/16ポンドするから、分数を使わないと計算が面倒なの。……そうね、分数が普段使いの社会だと、帯分数というのもわりと見かけるかしら。

    少女:どうしてですか?

    禁煙:分数の欠点って分かる? 多分それが分数が普段使いされない最大の理由なんだけど?

    少女:大学生になっても計算できないから?

    禁煙:そういう本もあったわね。

    少女:あとなんだろう? 計算が面倒だから、とか?

    禁煙:分数の計算で面倒なのは足し算引き算ね。

    少女:分母が違うと通分とかしなきゃダメですよね。

    禁煙:掛け算と割り算はむしろ簡単だと思うけど。今のが、少しだけヒントになるかしら。

    少女:??? ヒントが生かせません。

    禁煙:当たり前すぎるからかな? たとえば
       と 
    では、どちらが大きい?

    少女:え?え? 暗算じゃ無理です。電卓使っていいですか?

    禁煙:じゃあ0.095041と0.09427じゃ、どう?

    少女:0.095041ですね。……つまり分数は大きさがぱっと見じゃ分からない、と。

    禁煙:これって数を普段使いする場合には致命的じゃないかしら?

    少女:でも、よくスーパーで7個入り400円と8個入り450円だとどっちが得か、みたいな話がありますよ。

    禁煙:それも頭の中で小数に直して比較しているのよね。

    少女:うう。計算が得意な人がうらやましいです。

    禁煙:じゃあ
       と 

    ではどちらが大きい?

    少女:そりゃですよ。

    禁煙:とまあ、これが帯分数の使い道なのだけど。

    少女:つまり分数を使いながらも、大きさをぱっと見で比較できるようにするため?

    禁煙:分数を普段使いするための窮余の策、とまで言ってはヤードポンド法を責めてるみたいで悪いけれど。

    少女:いや、この際やめちゃいましょうよ、そんな分数が要るような単位。というか、あんまり数学の話じゃないですね。

    禁煙:そうねえ。帯分数が嫌われる最大の理由は、さっき「分数は掛け算と割り算は簡単」といったけれど、帯分数にしちゃうとせっかくのメリットがなくなっちゃうことかしら。 帯分数なんて整数と分数の足し算からプラス記号を省略した、単なる〈書き方〉に過ぎなくて、そもそも一つの数じゃない、分数を名乗るもおこがましいって言い方をする人もいるくらい。



    fractions.jpg




    ケーキの分数、速度(km/h)の分数


    少女:そんな帯分数をごり押しするなんて、やっぱり小学校の算数って子どもをバカにする愚民政策の手先なんですね。

    禁煙:さすがに、そこまで熱くなれないけれど。そうね、この手の話をすると「いらない区別を増やすな」っていつも怒る人がいるけれど、話してもかまわない?

    少女:どんな話ですか?

    禁煙:分数のルーツもいくつかあって、それが合わさって今の分数になっているから分かりにくいって話。

    少女:確かに掛け算の順番みたいにろくでもない話になりそうです。

    禁煙:分数の元になった考え方は古くからあるけれど、源流のひとつは、古代ギリシアのピタゴラスさんたちね。彼らは比をとても重要なものとして扱ったけれど、分数は比の値だという見方があるわ。たとえばというのは、2:5(2対5)という比の値ということ。

    少女:ふーん、としか言いようがないです。

    禁煙:もう一つの源流は、こちらの方が私たちにとっては自然かもしれないけれど、何かを等しい大きさに分ける(等分する)ところから出てきた発想。だと、同じ大きさ(量)に5つに分けた(5等分した)ものね。古代エジプトでは、こんな風な分子が1の分数(単位分数という)だけをつかってたみたい。
    だと、5等分した2つ分になるね。私たちが分数を言葉で読み上げるとき「5分の2」という言い方も、中国で「三分之二」と書いてきたのも、こちらの発想だと思うけど。

    少女:これも「ふーん」としかコメントのしようが。

    禁煙:それで、とっても乱暴に整理してしまうと、小学校の算数でやる分数は何等分による分数の方で、中学校以降の数学でやる分数は比の分数とその発展形だと言えるかも。

    少女:えっ、今、いきなりアクセルを踏みませんでしたか?

    禁煙:ええ。ちょっと注意を引き付けようと思って。

    少女:2種類の分数があるなんて初耳です。

    禁煙:私も。少し逃げを打っておくと、発想の源泉に戻って、あえて分けて言えば、ってことね。でも、こうやって無理やり整理しておくと、分かりやすいこともあるの。

    少女:どんなことですか?

    禁煙:たとえば、等分に基づく分数は、物事の量、とくに1より細かい量を表すために使われるのだけれど。

    少女:なんか「ケーキを同じ大きさに分ける」みたいな説明で出てくる分数ですね。

    禁煙:量を表すための分数だから、大小の比較が重視されるし、帯分数みたいなものまで登場するのね。

    少女:はあ、普段使いの分数はこっちですか? じゃあ、等分による分数が量を表すためだとしたら、比による分数は何のために?

    禁煙:これも乱暴に言い切ると、比による分数は量と量の関係を表すためにあるの。

    少女:抽象的!!

    禁煙:数の世界を信じたピタゴラスさんの流れだから、そう言われても少し仕方がないけれど。だから小学校で最初に習うときには「ケーキを3人で平等に分けると……」みたいな話になるのね。それが後になると、比による分数の方が優勢になるから、いつの間に何か話が変わってない?ってことになるのかも。

    少女:「量と量の関係」って、そんなの何に使うんですか?

    禁煙:身近なものでいうと、速度(=距離÷時間)だとか密度(=質量÷体積)だとか。時速50キロを「50km/h」と書くのは伊達じゃないの。

    少女:確かに「km/h」って「時間(hour)分の距離(km)」って書き方ですけど、分数って意識なかったです。だって時間と距離って全然別物じゃないですか。

    禁煙:そのとおり。異なる種類の量と量を結び合わせるという働きが大切なの。「同じものをいくつかに分ける」のとは違う、分数(や割り算)の働きがね。

    少女:ということ、割り算にも本当は2種類あるってことですか?

    禁煙:割り算と裏表である掛け算にも2種類あるって言えるかも。簡単に言えば「足し算の繰り返し」でしかない掛け算と「異なる種類の量を結び合わせる(そうして新しい量を作る)」掛け算とね。「足し算の繰り返し」しての掛け算というのは、3×5を「3を5回足すこと」と考える見方。自然数同士の掛け算だとこれでいいけれど、3.4×0.5みたいな掛け算は、「足し算の繰り返し」にこだわることから少し離陸して、数と数の関係を考えた方がいいかも。もちろん計算の仕方を含めて、自然数同士の掛け算の延長線上にあるのだけど。

    少女:すみません。もう少しシンプルにお願いします。

    禁煙:英語だと「足し算の繰り返し」である掛け算はmultiple、「異なる種類の量を結び合わせる(そうして新しい量を作る)」掛け算はproductと分けて言えるのだけれど。今言った2種類の掛け算と、さっき言った2種類の分数と照らし合わせると、

    multipleの掛け算
    (同種の量を繰り返しても同種の量)
    等分する分数
    (ケーキの分数)
    productの掛け算
    (異種の量同士の関係→新しい量)
    比にもとづく分数
    (km/hの分数)


    となるかしら。そして数学(というより近代科学)では、量と量の関係から新しい量をつくる〈比にもとづく分数〉の方が重要なの。

    少女:どうしてですか?

    禁煙:近代科学は量と量の関係で世界を記述することをベースにスタートしたから。そして、このことを一番プリミティブな形で学ぶのが、一次方程式。

    少女:はあ。

    禁煙:日常生活では大きさの比較も簡単だから小数が幅を利かせたけれど、数学では分数は欠かせない。もちろん大きさの比較のための帯分数なんて混ざり物じゃない分数がね。一次方程式を解くのに、計算途中で分数を使っちゃダメで、小数だけで表すことを想像してみて。

    少女:割り切れない数が出てきたらアウトです。というか文字で数を表してる場合は、分数使わないとそもそも書けないですよね。あ、そうか。でも……

    禁煙:なあに?

    少女:今の禁煙さん言い方で思い出したんですけど、二次方程式で虚数というか複素数まで数の範囲を広げないと、解がない方程式が出てくるみたいな話ですか?

    禁煙:そう。負の数がなかったり、分数で表せる数がなかったりしたら、解けない一次方程式が出てくるの。整数または分数の形に表される数をまとめて有理数と呼ぶけれど、すべての一次方程式が解けるためには、取り扱う数の範囲を有理数まで広げなくちゃいけないのね。だから小学生では古代エジプト人ばりに単位分数(分子が1の分数)だけをやって、分数一般は負の数や一次方程式といっしょに教えた方がいいって人もいるくらい。

    少女:つまり有理数は一次方程式が要求する数?

    禁煙:〈要求〉って言い方をすれば、割り算がすでに要求してたと言えるかもしれないけれど。負の数も導入して、整数の範囲で考えると、どんな整数同士を足しても引いても掛けても、整数の範囲を飛び越えない。でも割り算をすると?

    少女:整数じゃなくなる場合がありますね。1÷2とか。でも分数を使えば!

    禁煙:1÷2という割り算をパッケージにして、ひとつの数として認めようというのが分数ね。「÷」という動詞をもつ「1÷2」を名詞化したものが  という分数なんだ……みたいな比喩は余計に混乱させそうね。

    少女:こくん。

    禁煙:分数を割り算のパッケージだと考えれば、たとえば

       と 

    が等しいことはわりと当たり前に思えてこない?

    少女:うーん、それより2時間かけて1キロ進む(1km/2時間)と4時間かけて2キロ進む(2km/4時間)のが同じ速さ(1/2 =2/4)って方がまだ……。って、これも知らないうちに、割り算のパッケージにして扱ってることになるんですか?

    禁煙:ええ。数と数の間の関係を扱うって抽象的になりそうではあるけれど、案外日常でやってることなの。「等分したケーキ」みたいなイメージからは離れるけれど、異なる量同士の関係を表す方が実はよく使われているのかも。さっき言った「近代科学は量と量の関係で世界を記述することをベースにスタートした」ことを大げさにいうのなら、〈productの掛け算〉と〈パッケージの分数〉に基礎の基礎を置いていると言えるかもしれないわね。




    (参考文献)

    数と量の出会い 数学入門 (大人のための数学 1)数と量の出会い 数学入門 (大人のための数学 1)
    (2007/11/14)
    志賀 浩二

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    数学の世界―それは現代人に何を意味するか (中公新書 317)数学の世界―それは現代人に何を意味するか (中公新書 317)
    (1973/03)
    森 毅、竹内 啓 他

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     学校で教える内容を増やすとか減らすとかいう話を聞くと、思い出すことがある。

     学校の授業で聞いたことで、今も覚えていることといえば、どれも余計なことばかりだ。
     人間が不真面目にできているせいかもしれないが、意思伝達から冗長さや不要なものを除いていくと、いつしか何も伝わらなくなってしまうんじゃないかと思ってしまう。
     
     以下で紹介するのも、むかし雑談のように聞いて、今も忘れがたく頭の片すみにあるバカ話である。
     


     頭髪的双子の定理

      髪の毛の数がまったく同じ人間が、少なくとももう一人存在する。 




     この主張を調査によって検証するためには、髪の毛の数を数えるという手間のかかる作業を、膨大な人数分繰り返すことが必要である。
     ほとんどの人にとっては不可能であり、また可能な者がいたとしても、この主張の成否を知ることにはあまりにメリットがないので、調査が実施される見込みはほとんどない。
     
     ではこの件は、人類にとって永遠に謎のままなのかといえば、そうではない。
     我々は思考の力によって結論を得ることができる。
     
     まず、この主張の反対を考えよう。
     すなわち「髪の毛の数がまったく同じ人間が一人も存在しない」という主張である。
     この対立主張が成り立たないことを示せば、最初の主張が正しいことを証明できる。
      
     「髪の毛の数がまったく同じ人間が一人も存在しない」と仮定すると、すべての人間が毛の数の少ない順に一列に並べることができることになる。

    line.png



     この列のうち、ひとつ後ろの人間は、ひとつ前の人間よりも、少なくとも1本髪の毛が必ず多いはずである。
     なぜなら「髪の毛の数がまったく同じ人間が一人も存在しない」のだから。
     
     すると、髪の毛が0本の人を先頭にしたとしても、60億人の人間が並んだ列の最後尾には、髪の毛の数が少なくとも60億本の人間が並んでいなければならない。


     しかし人間の頭皮に60億本の髪の毛が生えることはありえない。
     
     というのも、頭髪は頭皮1平方cm当たりおよそ250~400本だから、60億本の髪の毛が生えるためには(頭皮を半球形で近似すれば)、半球の半径をrとすると、

     400(本/cm2)×(1/2)×4πr2=6000000000本

    となるから半球の半径rは

     
     
     つまり60億本の髪の毛が生えるためには、最低でも半径1545cm、直径30mを越える頭を持たなくてはならない。

     こうして「髪の毛の数がまったく同じ人間が一人も存在しない」ことは否定される。
     
     したがって髪の毛の数がまったく同じ人間が、少なくとももう一人存在することが証明された。


    ... 続きを読む
     人間の感覚は思う以上に正確で優秀だが、苦手分野ももちろんある。

     そのひとつが頻度や確率を取り扱うことである。


     したがって確率計算は、常識や日常感覚から外れることが多い。だからこそ確率は有益である。

     以下では、問題自体に実用の含みはないが、常識や日常感覚との齟齬の大きさが啓発的だ(=びっくりすると忘れにくい)と思われるものを紹介する。



     考えるのは、この記事のタイトルに掲げた「クレオパトラの最後の吐息の一部を今あなたが吸い込む確率」である。

     我々は、ラプラスの魔ほども全知ではないから、推測するにはいくつかの仮定をおかなくてはならない。
     クレオパトラと我々を隔てる2千年余りの月日は、彼女の吐息に含まれる分子が大気全体に拡散するには十分な長さであり、しかしまたそれら分子が消えたり地球外に出て行くほどには長くない、と考えよう。
     こうしておくと、問題は、たくさんの(たとえば100個)玉の中に数個(たとえば3個)の色の違った玉が混じっていて、そこから数個(ここでは3個)取り出したときに色の違った玉が出てくる確率を計算する、教科書に頻出のものと、本質的に同じになる。


     『理科年表』をひっくり返す手間を省くために、数値を示しておこう。
     大気全体は、分子の数で数えると1044個ある。
     一方、我々が一回の呼吸で肺を出入りする空気を0.4リットルとすると、1モルに含まれる分子の数は約6.02×1023個(=アボガドロ数)、また1モルの理想気体は標準状態(STP)ではおよそ22.413 L(リットル)だから、そこに含まれる分子の数は

       
     
    である。
     両者は桁違いに違うので、呼吸する空気の方は1022個としてしまっても、計算に大した差はないだろう。

     ここまで来れば、あとは極めてシンプルな計算が残るだけである。
     いま大気全体の分子の数1044個の中に、クレオパトラの最後の吐息が1022個まじっている。
     したがって大気からランダムに分子1つを選んだとき、それがクレオパトラの最後の吐息に含まれなかった確率は、


       


    である。

     あなたは一息で、分子の数1022個分の空気を吸い込むから、上の確率を1022個分かけたものが、あなたが今吸い込んだ空気の中にクレオパトラの最後の吐息が含まれない確率となる。すなわち、


       


     この確率がどれくらいなのかを具体的に求めたい。
     ただ計算すればよいのだが、そのまま入力しても普通の電卓はギブアップするだろう。実は、フリーの数式処理システムであるMaximaもギブアップした。

     計算の工夫に移る前に、Wolfram Alphaに問いかけよう。この種の問題に初めて触れた人には驚くべき結果が得られる。

    fromWolfram.png


     これは「あなたが今吸い込んだ空気の中にクレオパトラの最後の吐息が含まれない確率」だった。
     「あなたが今吸い込んだ空気の中にクレオパトラの最後の吐息が含まれる確率」を求めるには、1からこの0.3678...を引けばいい。
     つまり今あなたが一息吸えば、その中にクレオパトラの最後の吐息の一部が含まれる確率は6割を超える。




    問題解決への数学問題解決への数学
    (2001/02)
    Steven G. Krantz

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    この問題の初出は、Steven G. Krantzによれば、以下の文献である。

    Jeans, James Hopwood. (1940). An Introduction to the Kinetic Theory of Gases. Cambridge University Press.

    近年、以下の復刻が出ている。


    An Introduction to the Kinetic Theory of Gases (Cambridge Library Collection - Physical  Sciences)An Introduction to the Kinetic Theory of Gases (Cambridge Library Collection - Physical Sciences)
    (2009/07/20)
    James Jeans

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