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     源順(みなもとのしたがう)という人が編纂した(多分)日本初の「国語辞
    典」。これ以前は中国からのインポートものか国産の「漢字字典」しかなかっ
    た(漢籍を読む人用に字を説明してるだけのもの)。「倭名類聚抄」ができた
    のが934年。この時、源順は24歳ですから、えらい天才です。
     ポイントは大きく和語を取り入れたことと、意味分類(ジャンル別)配列を
    採用したこと。実は中国の百科辞典がそうなのです(アルファベットがないか
    ら)。日本もまだ「仮名」がなかったので(それに学問やる人はそれ以後も仮
    名を嫌った)、あいうえお順とか(昔はイロハ順)できなかったのです。「倭
    名類聚抄」は漢語と万葉仮名で書いてあります。たとえば(スペースは勝手に
    入れました)、

     海 四声字苑云 海 音改 和名宇美 百川所帰也

    →【海】 「四声字苑」という本によれば、音読みは「改」と同じ(つまり
    「カイ」)。日本読み(訓読み)は、「宇美(うみ)」である。

     それは無数の川が帰っていくところである。


    淡白な記述(笑)。でもなかなか趣がありますな。すくなくとも某国語辞典の
    「【海】 (1)地球上の陸地以外の部分で、塩水をたたえた所。地球表面積
    の約七割を占め、その面積三億六千万平方キロメートル。平均深度三千八百メートル。」
    なんて説明よりずっといい。この辞典(広辞苑だけど(笑))は、けっこう油
    断できない。「登録商標」なんて「登録の手続を経た商標」なんて書いてある
    んだぜ(笑)。

     閑話休題。さてどういう分類かというと、ざっと、天、地、歳時、鬼神、
    人、術芸、職官、地理、住、交通手段(船・車)、薬、衣、食、調度(家具と
    か)、動物、植物などなど、つまり扱うのは天地人百般、当時の百科事典にも
    なってます。つまり「平安貴族が何をどれだけ知ってたか」が、これでわか
    る。



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