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     明治5年の『英会話独学』(弘成堂)から平成22年9月出版の『ネイティブ厳選街の英会話まる覚え:こだわりフレーズ255』(Jリサーチ出版)まで、日本で出版された「英会話本」3190点をリストにしてみた(ブログに全部載せるのはさすがにきついので別ファイル(csv)にしてある)。


    「英会話本」発行点数に見る英会話の歴史

     下記のグラフは、日本でこれまで出版された「英会話本」の発行点数を、年ごとに集計したものである。書籍の発行総点数も増え続けているので「英会話本」が占める割合も示してみた。


    engbook.png


     1945年の終戦後、早くも9月には『日米会話手帳』(最終的には360万部を売り上げた)が出版されているが、発行点数でみるとピークらしいピークは、60年代に入ってようやく訪れる。
     1962年のピークの前後には、前年(1961年)の岩田一男『英語に強くなる本』(年間ベストセラー)や1962年の渡辺照宏『外国語の学び方』(年間7位)が登場している。
     1974年以降,右肩上がりを続けた発行点数は、1990年には年間100点を超えるが、バブル崩壊に呼応するかのように1995年(年間65点)まで下がっている。
     その後、発行点数は再び増加し、1999年には186点と最多となるが、それ以降「英会話本」の発行点数は下降傾向にある。


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    「英会話本」発行点数

    西暦 点数 経済成長率 出来事
    1945      原子爆弾、敗戦・占領軍駐留
    1946 1    マッカーサー統治、焼跡と引揚げ
    1947 2 8.4 新憲法、男女共学始まる、第一次ベビーブーム
    1948 3 13 東京裁判判決、帝銀事件、斜陽族
    1949 2 2.2 戦後3大買い事件、フジヤマのトビウド、湯川秀樹ノーベル賞
    1950 1 11 朝鮮戦争、特需景気、レッドパージ
    1951 2 13 サンフランシスコ講和条約、三等重役、親指族
    1952 4 11.7 血のメーデー、恐妻症、エッチ
    1953 1 6.3 テレビ放送開始,真知子巻き,八頭身
    1954 3 5.8 第五福竜丸事件(死の灰)、自衛隊,コジラ
    1955 3 8.8 55年体制,神武景気、三種の神器(テレビ・洗濯機・冷蔵庫)
    1956 3 6.4 日ソ国交回復、太陽族、「もはや戦後ではない」
    1957 1 8.3 南極昭和基地、原子の火、才女時代
    1958 2 6.8 団地族、一万円札、スバル360、チキンラーメン
    1959 2 11.1 民放テレビ開局、第1回レコード大賞
    1960 7 12.1 所得倍増計画、安保闘争、だっこちゃん
    1961 1 11.5 ケネディ大統領、「地球は青かった」、巨人・大鵬・卵焼き
    1962 15 7.7 キューバ危機、無責任時代、あたり前田のクラッカー
    1963 9 10.1 狭山事件、バカンス、カギっ子
    1964 14 9.8 東京オリンピック,新幹線、シェー
    1965 14 6.2 日韓基本条例、期待される人間像、ベ平連
    1966 3 11.2 黒い霧、ひのえうま、3C(カー、クーラー、カラーテレビ)
    1967 7 10.9 ミニスカート、天才バカボン
    1968 10 12.8 三億円事件、ベトナム戦争反戦運動・学生運動
    1969 25 12.1 東大安田講堂事件、すぐやる課、エコノミックアニマル
    1970 24 10.8 万博、よど号事件、三島自決、光化学スモッグ、スポ根
    1971 21 5 ドルショック、マクドナルド、ボーリングブーム
    1972 17 9.1 日中国交正常化、沖縄変換,浅間山荘事件、パンダ
    1973 17 5.1 金大中事件,オイルショック、ゴミ戦争
    1974 9 -0.5 田中角栄金脈問題、長嶋引退、燃えよドラゴン
    1975 15 4 ベトナム戦争終結、採用取消、およげたいやきくん
    1976 15 3.8 ロッキード事件、記憶にございません、オヨヨ
    1977 19 4.5 トンネル不況、「普通の女の子に戻りたい」、カラオケ
    1978 22 5.4 サラ金地獄、窓際族、家庭内暴力、先割れスプーン
    1979 18 5.1 地方の時代、カラ出張、キャリアウーマン、インベーダ-ゲーム
    1980 36 4.3 金属バット殺人、イエスの方舟,学園ドラマ、みんなですれば怖くない
    1981 22 4.2 ザ・マンザイ、なめネコ、ノーパン喫茶、粗大ゴミ、ぶりっ子
    1982 48 3.4 日航機逆噴射(心身症),積み木くずし,ひょうきん族、ネクラ
    1983 33 3.1 軽薄短小、戸塚ヨットスクール、おしん、くれない族
    1984 25 4.5 ロス疑惑、グリコ森永事件、男女雇用機会均等法
    1985 44 6.3 エイズ、阪神日本一、ウィンドウズ、キャバクラ
    1986 34 2.8 チェルノブイリ事故、土井フィーバー、いじめ、テレクラ
    1987 53 4.1 国鉄民営化、ブラックマンデー、占いブーム、サラダ記念日
    1988 80 7.1 リクルート事件、フリーター、しょうゆ顔
    1989 101 5.4 昭和から平成へ、消費税、1.57ショック、ベルリンの壁崩壊
    1990 104 5.6 土地融資の総量規制、バブル崩壊、おやじギャル、メセナ
    1991 89 3.3 湾岸戦争、大手証券会社巨額損失補填事件ジケン、茶髪
    1992 94 0.8 ほめ殺し、日本新党、きんさん・ぎんさん、バツイチ
    1993 86 0.2 細川連立政権、リエンジニアリング、ヘアヌード
    1994 77 0.9 村山連立政権、ゼネコン汚職、ヤンママ、イチロー効果
    1995 65 1.9 阪神大震災、信用組合破綻、地下鉄サリン事件
    1996 88 2.6 ペルー大使館占拠、薬害エイズ、O-157
    1997 104 1.6 神戸酒鬼薔薇事件、山一・拓銀倒産、重油流出事故、オーガニック
    1998 149 -2 和歌山ひ素カレー事件、新郵便番号、冬季長野オリンピック
    1999 186 -0.1 周辺事態法、国旗国歌法、通信傍受法、東海村JCO臨界事故
    2000 131 2.9 介護保健、雪印集団食中毒事件、シドニーオリンピック
    2001 150 0.2 アメリカ同時多発テロ、情報公開法、小泉ブーム(構造改革)
    2002 166 0.3 BSE問題、ムネオ・真紀子(劇場型政争)、北朝鮮拉致問題
    2003 175 1.4 イラク戦争、マニフェスト、毒まんじゅう
    2004 122 2.7 アテネオリンピック、イラク人質事件(自己責任論)、年金未納問題
    2005 91 1.9 小泉劇場、刺客、想定内、クールビズ、フォーー
    2006 122 2 国家の品格、格差社会、北朝鮮各実験、イナバウア
    2007 100 2.3 自民党参議院選惨敗、そんなの関係ネェ、郵政民営化
    2008 105 -0.7 チベット暴動、北京オリンピック、日経平均株価7000円割れ、アラフォー
    2009 83    
    2010 53    




     子どもたちが本を選ぶときによく使われるツールだが、外国語の本などを選ぶときにも有用だと思う。


    5本指テスト

    1.君が読もうと思っている本を手に取り、真ん中あたりのページを開こう。絵やイラストがないページがいい。

    2.開いたところを1ページだけ最初から読んでいこう。手を握っておくのを忘れずに。

    3.読んでいる間に知らない単語に出会う度に1本ずつ指を伸ばそう。

    4.1ページ読み終わらないうちに、指が5本とも開いたら、そのまま手を振ってバイバイしよう。その本は君には難しすぎる。

    5.指が1本も開かず、1ページを最後まで読み終えたら、握りこぶしをおでこにつけて考えよう。その本は、今の君にはやさしすぎるかもしれない。

    6.4.でも5.でもないなら、それはまさに君のための本だ!



    ゴルディロックス・テスト
    あるいは「3びきのくま」テスト

    1ぴきめのくまの質問(やさしすぎる?)

    ・その本は何度も読んだことがある? (はい・いいえ)

    ・内容を楽々理解できる? (はい・いいえ)

    ・でてくる単語は全部知ってるものばかり? (はい・いいえ)

    ・どこでもすいすい読んでいける? (はい・いいえ)

    ……「はい」が3~4個あるなら、その本は今の君には「やさしすぎる」かも


    2ひきめのくまの質問(むずかしすぎる?)

    ・1ページに5つ以上わからない単語がある? (はい・いいえ)

    ・読んでいて、何の話をしているか、混乱したりわからなくなったりする? (はい・いいえ)

    ・何度もつっかえるし、へとへとになる? (はい・いいえ)

    ・わからないところを質問したり教えてもらったりする人が身近にいない? (はい・いいえ)

    ……「はい」が3~4個あるなら、その本は今の君には「むずかしすぎる」かも


    3ひきめのくまの質問(ちょうどいい?)

    ・その本ははじめて? (はい・いいえ)

    ・分からないところは、あっても1、2カ所くらい? (はい・いいえ)

    ・知らない単語はあっても1ページに数個だけ? (はい・いいえ)

    ・わからないところを質問したり教えてもらったりする人が身近にいる? (はい・いいえ)

    ……「はい」が3~4個あるなら、その本は今の君には「ちょうどいい」!




    ゴルディロックスは、童話「3びきのくま(英: the Three BearsまたはGoldilocks and the Three Bears、露: Три медведя)」に出てくる主人公の女の子の名前である(ウィキペディアにあらすじがある)。
     この物語から転じて、インフレを起こすほどhotではなく不況を起こすほどcoldではない経済を「ゴルディロックス経済」(Goldilocks economy)と呼ぶことがある。David Shulman(UCLA Anderson Forecastのsenior economist)の1992年の論文 "The Goldilocks Economy: Keeping the Bears at Bay"(ゴルディロックス経済。クマを寄せ付けない)が初出だと言われている。ここでのbearは「弱気、悲観的な期待をもつ者」を指す。クマは前足を上から下へ振り下ろして攻撃することから。
     また宇宙で、恒星からの距離が生命を発生・進化させるのに適した領域のことを(つまり熱すぎず、寒すぎず生命の生存に適した宙域を)ゴルディロックス・ゾーンと呼ぶこともある。

    3びきのくま (世界傑作絵本シリーズ―ロシアの絵本)3びきのくま (世界傑作絵本シリーズ―ロシアの絵本)
    (1962/05/01)
    トルストイ

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    Growing Readers: Units Of Study In The Primary ClassroomGrowing Readers: Units Of Study In The Primary Classroom
    (2004/09/30)
    Kathy Collins

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     レファレンスには、dictionaryやencyclopediaの他にも、handbookやcompanionというのがある。

     ハンドブックの方はもう外来語(つまり日本語)として定着していて、改めて説明など必要ないように思えるが、コンパニオンの方は本のタイトルに見ることも少なくて、何なんだと改めて問われるとうまく答えられそうにない。日本語を当てると「必携」となるようだが、何故に「必ず携えるべき」なのか、もう一歩踏み込んで訳を聞いてみたくなる。

     ちょうどここに、「なるほどコンパニオンとはこういうものを言うのか」と納得した書物があるので紹介したい。


    The Princeton Companion to MathematicsThe Princeton Companion to Mathematics
    (2008/09/08)
    Timothy Gowers、

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     辞典・事典はビギナーにやさしくない、と言われる。
     その分野に関わり出して間もないので、右も左も分からない、それどころか今目の前にあるコトバが理解しがたい場合に、この不案内な状況を助けてもらおうと、わからないコトバをその分野の辞典・事典で調べてみると、今度はジテンに書いてあることが分からない。有り体に言えば、その人はジテンではなく、何か概説書や入門書を手に取るべきだったのかもしれないが、そうしたことも不案内なうちは気付かず、途方に暮れやすい。
     ジテンが分かりにくいのは、いくらか仕方がないところもある。ジテンに載せるべきことは多い。多くのことを登載しようとすれば、有限のスペースという制約がある以上、いきおい一つ一つの説明は切り詰められることになる。背景知識を含めてイチから解き語ることも、予備知識のない人にもわかるように説明することも、別の機会に譲らざるを得ない。
     けれども、もし網羅性をいくらか断念して、初心者のためにスペースを割くことにしたならば、それは普通のジテンにない有益さを備えることになるだろう。何度でも、基本的なところ、一番最初の肝心なところに、立ち戻ることが許されるならば、その分野でもう何年か経験を積んでいる人であっても、実は分かったことにしてやり過ごしてきたことを、改めて振り返りやり直して理解する機会だって得られるかもしれない。

     数学のレファレンスだというのに驚くほど数式が少ないこの本は、そのために大きなハンディを負っている。
     数式を使えばすごぶる少ない分量で伝えられる内容を、コトバでもって説明しようとすれば、必要なスペースは爆発的に増える危険がある。同じスペースなら、多くのことを掲載することを諦めなくてはならなくなるだろう。円環をなす全き知識(エンサイクロペディアの語源だ)は、断念せねばなるまい。
     しかし、この断念によって、この本は天下無双のreadableな数学レファレンスとなった。と言っても、道具としてであれ目的としてであれ(「純粋」数学に限ることなんて今やできない相談だ)、数学に取り組む人たちが何を考え、どんなことに挑んでいるのかについて、伝えられる限りのことは伝えるべく、この本は編まれている。コンテンツを描くのは、それぞれの分野の第一人者たち。何でも載っている訳ではないが、それでも驚くほどたくさんのことが、言葉を尽くして説明されている。

     1000ページ3kg弱というボリュームは、さすがに「必携」は勘弁してくれと思わせるに余りあるが、ならばこの良書を座右に呈しよう(といってもオススメするだけで、本当に差し上げるわけではないが)。ぜひ手にとって(できればPart I Introductionあたりから)拾い読みしていただきたい。