2012.03.31
フロム・ライブラリー図書館となら、できること
少女:先生、こんにちは
司書:こんにちは。今日はお一人ですか?
少女:彼、また調べもので徹夜したらしくて、風邪をこじらせてるみたいで。
司書:やれやれ、困った人です。
少女:先生、今の男の人は?
司書:この図書館の常連で、私の知る限り最も多くここに通った方です。街を離れることにしたそうで、お別れを言いに来られたのです。彼にも会いたかったと言っておられたのですが。
少女:あの、お聞きしていいのか分かりませんけど、どういう人なんですか?
司書:図書館の近くで鉄工所を営まれている方です。働きはじめた頃から、時間を見つけてほぼ毎日図書館に来られました。……彼に渡すようにと託されたものですが、あなたになら見せても差し支えないでしょう。
少女:B6判ですね。京大式カードっていったかしら。
司書:ええ。内容もご覧になってください。
少女:何かのメモ……ですね。隅の数字は今日の日付です。それから、これページ数なのかな?H55-…?
司書:「H55」というのは平凡社1955年の略記です。林達夫が編集した世界大百科事典の最初の版を示します。続く数字は巻数とページ数です。
少女:百科事典のメモですか?
司書:あの方は、その日百科事典で調べた事項を3枚のカードにまとめることを日課にしておられました。今日までで4万枚を越えたそうです。
少女:あ、赤毛組合?
司書:アルファベット順または五十音順に写していかれたのなら、そう呼ぶことも間違いではないかもしれませんね。
少女:ただ写したものじゃないですね。すごく簡潔にまとめてある。
司書:こちらもどうぞ。
少女:1962.05.03……。50年前! こっちは一字一句丁寧に写してあるって感じですね。短いし、国語辞典か小事典かな?
司書:カードへまとめることをはじめた最初の年のものだそうです。当時は何度も書き直したので、本当の最初の1枚はどれか分からないとのことですが。
少女:彼とはどういう……あ、もしかして、百科事典つながり?
司書:一時期は、事典を取り合っておられました。
少女:何十年続けてこられたこと邪魔してたんですか?
司書:彼は一時、ここの百科事典を壊すほど引いていましたから、多少は影響があったかもしれません。いえ、ご心配されるようなことは何も。毎日、事典と首っ引きの少年を、あの方は好ましく思っていたようです。彼に事典の引き方を教えたのは、あの方なのです。
少女:そうなんですか。
司書:あの方はこの図書館の主のような人でしたが、立ち寄られる時間は長くはありませんでした。よほどの常連でないと、挨拶を交わした人もいません。仕事では何人もの後進を育て、海外にも技術指導に行かれた方ですが、当時小学生だった彼は、図書館で望外に得られた弟子のような存在だったのかもしれませんね。
少女:……もう来られないんですか?
司書:ええ。第二の人生を海を渡った先で始められるそうです。何もかも始まったばかりの国で、自分のような古い人間が役に立つとしたら、あと数年間ぐらいだろうから、今行きたいんだと、おっしゃってました。
◯ ◯ ◯
少年:ああ、このカード。前に一度見せてもらったことがあるよ。T49は玉川大学出版部1949年の略号、玉川学園編集の『玉川学習大辞典』、第二次大戦後ほどなくして出版された子ども向けの百科事典だよ。まだ図書館に来てまだしで、事典を読むにも辞書が必要だった頃で、分からないことがある度にこの辞典に助けられたらしいよ。それでも同じ項目を何度も引かなきゃならなくて、だからカードに書き写すことを始めたんだって。
少年:話したことはほとんどない。カードにまとめてるのを見るのは構わないって、最初はそんな感じだった。そのうち、ぼくもカードを書くのを真似するようになった。書いたばかりのカードを見せてもらえるようになったのは、随分経った後だ。時間が無いこともあっただろうし、元々あまり話をするタイプじゃなかったのかもしれない。図書館に居るのも、長くても一時間になることはなかったな。10分だけって日も結構あった。
少年:これは、キリル文字をどうやって覚えたらいいか考えてるって言った次の日に持ってきてくれたカードだ。Юрий Алексеевич Гагарин ユーリイ・アレクセーエヴィチ・ガガーリン、Пётр Ильич Чайковский ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、Лев Николаевич Толстой レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ……ロシアの有名な人の名前ばかり抜き書きしてある。名前だと、発音と意味を別々に覚える必要がないから、最初文字になれるには良いってことなんだと思う。うん、だいたいこんな感じだった。尋ねても直接返事をしてくれることはなくて。ヒントもこうしてカードになって出てくるんだ。
少年:何のせいだったか思い出せないけど、ちょっとした揉め事があって、学校さぼって朝から図書館に行った日がだったと思う。多分ひどい顔をして事典を引いてたんだと思う。その日は午前中にあの人はやって来て、いつのまにか近くに座っていつもどおりカードを作っていたらしかった。
顔を上げた時ちょうど目があった。
数秒考えているような間があって、財布の中から何か大事そうにしまってあるものを取り出して、広げてそれを見せてくれた。
最初、お守りかなにかだと思った。それはいつも使っているB6版のカードで、細かい文字で人の名前がいっぱい書いてあった。
トーマス・エジソン、ジョージ・ブール、コンスタンチン・ツィオルコフスキー、ジョージ・グリーン、アラン・マクダイアミッド、ジョン・メイナード=スミス、エリック・ホッファー……。
うん、みんな図書館で独学した人たちの名前だった。
それからカードを自分の前に戻して、いつものペンでその余白に何か書き加えて、また見せてくれた。ぼくの名前だった。ウィリアム・カムクワンバのとなりだ。それからカードをたたんで財布へしまい、作りかけのカードをまとめる作業に戻ったんだ。
司書:こんにちは。今日はお一人ですか?
少女:彼、また調べもので徹夜したらしくて、風邪をこじらせてるみたいで。
司書:やれやれ、困った人です。
少女:先生、今の男の人は?
司書:この図書館の常連で、私の知る限り最も多くここに通った方です。街を離れることにしたそうで、お別れを言いに来られたのです。彼にも会いたかったと言っておられたのですが。
少女:あの、お聞きしていいのか分かりませんけど、どういう人なんですか?
司書:図書館の近くで鉄工所を営まれている方です。働きはじめた頃から、時間を見つけてほぼ毎日図書館に来られました。……彼に渡すようにと託されたものですが、あなたになら見せても差し支えないでしょう。
少女:B6判ですね。京大式カードっていったかしら。
司書:ええ。内容もご覧になってください。
少女:何かのメモ……ですね。隅の数字は今日の日付です。それから、これページ数なのかな?H55-…?
司書:「H55」というのは平凡社1955年の略記です。林達夫が編集した世界大百科事典の最初の版を示します。続く数字は巻数とページ数です。
少女:百科事典のメモですか?
司書:あの方は、その日百科事典で調べた事項を3枚のカードにまとめることを日課にしておられました。今日までで4万枚を越えたそうです。
少女:あ、赤毛組合?
司書:アルファベット順または五十音順に写していかれたのなら、そう呼ぶことも間違いではないかもしれませんね。
少女:ただ写したものじゃないですね。すごく簡潔にまとめてある。
司書:こちらもどうぞ。
少女:1962.05.03……。50年前! こっちは一字一句丁寧に写してあるって感じですね。短いし、国語辞典か小事典かな?
司書:カードへまとめることをはじめた最初の年のものだそうです。当時は何度も書き直したので、本当の最初の1枚はどれか分からないとのことですが。
少女:彼とはどういう……あ、もしかして、百科事典つながり?
司書:一時期は、事典を取り合っておられました。
少女:何十年続けてこられたこと邪魔してたんですか?
司書:彼は一時、ここの百科事典を壊すほど引いていましたから、多少は影響があったかもしれません。いえ、ご心配されるようなことは何も。毎日、事典と首っ引きの少年を、あの方は好ましく思っていたようです。彼に事典の引き方を教えたのは、あの方なのです。
少女:そうなんですか。
司書:あの方はこの図書館の主のような人でしたが、立ち寄られる時間は長くはありませんでした。よほどの常連でないと、挨拶を交わした人もいません。仕事では何人もの後進を育て、海外にも技術指導に行かれた方ですが、当時小学生だった彼は、図書館で望外に得られた弟子のような存在だったのかもしれませんね。
少女:……もう来られないんですか?
司書:ええ。第二の人生を海を渡った先で始められるそうです。何もかも始まったばかりの国で、自分のような古い人間が役に立つとしたら、あと数年間ぐらいだろうから、今行きたいんだと、おっしゃってました。
少年:ああ、このカード。前に一度見せてもらったことがあるよ。T49は玉川大学出版部1949年の略号、玉川学園編集の『玉川学習大辞典』、第二次大戦後ほどなくして出版された子ども向けの百科事典だよ。まだ図書館に来てまだしで、事典を読むにも辞書が必要だった頃で、分からないことがある度にこの辞典に助けられたらしいよ。それでも同じ項目を何度も引かなきゃならなくて、だからカードに書き写すことを始めたんだって。
少年:話したことはほとんどない。カードにまとめてるのを見るのは構わないって、最初はそんな感じだった。そのうち、ぼくもカードを書くのを真似するようになった。書いたばかりのカードを見せてもらえるようになったのは、随分経った後だ。時間が無いこともあっただろうし、元々あまり話をするタイプじゃなかったのかもしれない。図書館に居るのも、長くても一時間になることはなかったな。10分だけって日も結構あった。
少年:これは、キリル文字をどうやって覚えたらいいか考えてるって言った次の日に持ってきてくれたカードだ。Юрий Алексеевич Гагарин ユーリイ・アレクセーエヴィチ・ガガーリン、Пётр Ильич Чайковский ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー、Лев Николаевич Толстой レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ……ロシアの有名な人の名前ばかり抜き書きしてある。名前だと、発音と意味を別々に覚える必要がないから、最初文字になれるには良いってことなんだと思う。うん、だいたいこんな感じだった。尋ねても直接返事をしてくれることはなくて。ヒントもこうしてカードになって出てくるんだ。
少年:何のせいだったか思い出せないけど、ちょっとした揉め事があって、学校さぼって朝から図書館に行った日がだったと思う。多分ひどい顔をして事典を引いてたんだと思う。その日は午前中にあの人はやって来て、いつのまにか近くに座っていつもどおりカードを作っていたらしかった。
顔を上げた時ちょうど目があった。
数秒考えているような間があって、財布の中から何か大事そうにしまってあるものを取り出して、広げてそれを見せてくれた。
最初、お守りかなにかだと思った。それはいつも使っているB6版のカードで、細かい文字で人の名前がいっぱい書いてあった。
トーマス・エジソン、ジョージ・ブール、コンスタンチン・ツィオルコフスキー、ジョージ・グリーン、アラン・マクダイアミッド、ジョン・メイナード=スミス、エリック・ホッファー……。
うん、みんな図書館で独学した人たちの名前だった。
それからカードを自分の前に戻して、いつものペンでその余白に何か書き加えて、また見せてくれた。ぼくの名前だった。ウィリアム・カムクワンバのとなりだ。それからカードをたたんで財布へしまい、作りかけのカードをまとめる作業に戻ったんだ。
2012.03.27
(保存版)新入生のためのスタディ・スキルまとめ
もうすぐ新学期なので、新入生向けに、これまでの記事をまとめてみた。
食べる
独学者に必要な生活技術は、自炊にはじまる。
自立した人間とは、つまるところ自分に必要な食べ物を自分で用意できる人間のことである。
これが自己陶冶の前提であり、最初の一歩でもある。
難しい話はさて置いても、ろくなものを食ってないと、確実に体調はおかしくなる。風邪が何日も治らなくなる。出掛ける気力も失われて、心身の状態はスパイラルに悪化していく。
パフォーマンスが落ちてきた、集中力が落ちてきたという自覚があるなら-----集中力とは、ぶっちゃけ体力のことだ-----、薬剤やドリンク剤を口に放り込むよりも、まともに食って寝た方が早い。効果も高い。
・サラダからはじめよ/新入生のための一人飯ハック 読書猿Classic: between / beyond readers

本当はこの記事はシリーズ化するはずだったのだが(せめて常備菜をつくるところまで行きたかった)、いつか機会を見て。
探す
学校の授業で何か新しい知識を体系的に学べると思ったら大間違いである。
90分授業がたとえば12回あるとして、ひっきりなしに喋ったとしても(勿論そんなことは不可能である)、講師が発することができる情報量は文字にして新書本2冊程度である。
授業に期待できるのは、物理的に言って〈さわり〉だけである。
では〈さわり〉だけだとして,それにどんな意義があるのだろうか?
学校は,あなたの知らない何かではなく,あなたが何を知らないかを教えるところである。
無知に気付く機会を与えるまでが学校の仕事だ。
それを引受け,コンテンツを充填し無知を埋めるのは,あなた自身がやらなくてはならない。
知りたいと思うことなら,人はいくらでも独力で学ぶ。また独力で学べないと結局何も身につかない。
しかし,そんな分野や知識が存在することをそもそも知らなければ,知りたいと思うこともできない。
自分が〈知っていること〉と〈考え得ること〉の限界を越えて,まだあることも知らない何かに人を気付かせるのは,他者からの不意打ちである。
自分がものを知らないという程度のことは,ほとんど誰でも知っている。
しかし,自分が知らないことが何なのか,具体的に突き止め追求し始めることは多くない。
何しろ知らないことは膨大にあり,分からないことは常態であって,日常の中では,それら未知なるものは背景に押しやられ,バックグラウンド・ノイズとして処理(キャンセル)される。
でなければ,日常生活が回っていかないからだ。
学校というコンテキスト(文脈)は,日常のコンテキストと異なる。
そこでは,何かを知らない/分からないことは,それをキャンセルする理由にならない。
あなたがまだ知らないのならば,学校はそれを学ぶ場所に他ならない。
学校の授業や講義は,特に緊急性も必要性も高くない知識を,背景(バックグラウンド)から引きずり出して,目の前に置く。
そのことで人が,己が無知と遭遇する場を用意する。
具体的に何をどんな風に知らないかに気付く機会を与える。
受講者の知識と知性にできるかぎり多くの穴ぼこを空け,なおも自己回復の気概を完全にはへし折らないのが,よい授業/講義である。
分かりやすいだけの授業/講義は,ほとんど何も残さず過ぎ去っていく。
受講者は,授業/講義からより多くの無知(知識の欠落)を拾い出し,その後の自己学習で補充する。
もちろんこれには時間がかかる。
参考資料へのレファレンスが適切で,受講者が調査リテラシーを一通り身につけていたとしても,おそらく授業/講義の3~4倍の時間が必要になる。
調査リテラシーが残念なレベルならば、もっといくらでも時間がかかる。
・googleで賢く探すために最低知っておくべき5つのこと 読書猿Classic: between / beyond readers

・ 自宅でできるやり方で論文をさがす・あつめる・手に入れる 読書猿Classic: between / beyond readers

・文献をたぐり寄せる技術/そのイモズルは「巨人の肩」につながっている 読書猿Classic: between / beyond readers

・「4つの型」で理解する、調査/探索の基本と応用 読書猿Classic: between / beyond readers

・ビギナーのための図書館サバイバル・ガイド、他ではあまり書いてないけど大切なこと 読書猿Classic: between / beyond readers

覚える
覚えることは、時に疎まれ時に軽んじられるが、思考作業の不可欠な基盤である。
暗記は、思考の負担を減らし、注意という貴重な認知資源を有効活用できるようにする。
覚えることを回避しだすと、学習は必ず挫折する。
語学を例にするのがわかりやすいだろう。
外国語を学ぶ時、説明されている事柄のそれぞれを〈分かった〉上で先に進んでいくと、やがて陽が落ちてあたりが暗くなっていくみたいに、次第に理解が困難になって先に進めなくなる。
先に進むにつれて、いちいち明示されないが前提にされている事項(ルールや語彙)が増えていくが、そのペースについていけなくなるのだ。
人間が一度に注意を向けることができる対象はごくわずかである。
複雑に関連しあった事柄を処理するには、新たに登場した少数の事項以外は、注意を向けなくても自動的に処理されている必要がある。
たとえばアルファベットがおぼつかない状態で、英単語を覚えることは大変な苦役である。
「えー半円が左を向いてるのがビー(b)で、右を向いてるのがディー(d)だ」なんてことに注意(という貴重な認知資源)を割いていると、単語レベルでの情報処理にろくな注意が回らない。
これではすぐにへとへとになるばかりか、何しろ注意が分散しているのだから苦労のわりに頭に残らない。
同じことがいろんなレベル、いろんな領域でも言える。
記憶力に劣等感を持つ人は多いが、忘却は人間の仕様である。
呼び出されない記憶は優先順位が下がり、呼び出しにくくなるのは当然のことだ。
学習に必要なのは、決して忘れることのない記憶力ではなく、忘れることを前提にした記憶のマネジメントである。
・(保存版)覚え方大全/自分で選ぶための53種の記憶法カタログ 読書猿Classic: between / beyond readers

・1年の計はこれでいく→記憶の定着度を4倍にする〈記憶工程表〉の作り方 読書猿Classic: between / beyond readers

・復習のタイミングを変えるだけで記憶の定着度は4倍になる 読書猿Classic: between / beyond readers

・物覚えを確かに改善する、しかし記憶術の本を読む人間はまずやらない作業 読書猿Classic: between / beyond readers

読む
・1冊を1枚にする技術 読書猿Classic: between / beyond readers

・あなたに最適な本を選ぶ「5本指テスト」と「ゴルディロックス・テスト」 読書猿Classic: between / beyond readers

・能動的読書チェックリスト Active Reading Checklist 読書猿Classic: between / beyond readers

・本当のデカルトさんが読者に本の読み方を提案する 読書猿Classic: between / beyond readers

・点の読書、線の読書、面の読書 読書猿Classic: between / beyond readers

・よし、もう一度→ムリ目な難解書を読む5つの方法 読書猿Classic: between / beyond readers

・傍線:テキストに凹凸を付ける/人文学の形稽古 その3 読書猿Classic: between / beyond readers

・本居宣長に学ぶ精読の極み/注釈をするは、すべて大に学問のためになること也 読書猿Classic: between / beyond readers

・語学と精読を思考訓練に高める鈴木式6分割ノートがハンパない 読書猿Classic: between / beyond readers

書く
・書けない時にあなたを助けるアウトライナー・ストーミング 読書猿Classic: between / beyond readers

・とにかく速くて論旨も首尾一貫する文章の書き方 読書猿Classic: between / beyond readers

・書きなぐれ、そのあとレヴィ=ストロースのように推敲しよう/書き物をしていて煮詰まっている人へ 読書猿Classic: between / beyond readers

・卒論に今から使える論文表現例文集(日本語版) 読書猿Classic: between / beyond readers

・こう言い換えろ→論文に死んでも書いてはいけない言葉30 読書猿Classic: between / beyond readers

・驚くほど違う→あなたの文章を最適化するたった4つのルール 読書猿Classic: between / beyond readers

考える
・自分の脳だけでは扱いが難しい量/複雑さの資料を取り扱う方法 読書猿Classic: between / beyond readers

・手塚治虫がやってたプロットの筋トレ 読書猿Classic: between / beyond readers

・発明王はここまでやる→エジソンのすごいノート 読書猿Classic: between / beyond readers

・大抵のことは解決する→質問力をブーストする100のクエスチョン 読書猿Classic: between / beyond readers

・よく考えるための10冊/思考技術のためのプラチナ・クラシックス 読書猿Classic: between / beyond readers

動機付ける
・「動機づけ」はどんな「勉強法」に勝る:学習におけるメタ認知ストラテジー 読書猿Classic: between / beyond readers

・それでも「先延ばし」がやめられないあなたのための一枚のシート:読書猿Classic: between / beyond readers

・ためしてガッテンでも紹介された10秒で心のスイッチを入れる技術 読書猿Classic: between / beyond readers

・問い:何故学ぶのか? → 答え:自由になるため 読書猿Classic: between / beyond readers

マスターする
・これがマスターへの道→しつこく繰り返す技術、7つのステップ 読書猿Classic: between / beyond readers

・むかし村上春樹が書いてた、英語が読めるようになるほとんど唯一の方法、というか「生き方」 読書猿Classic: between / beyond readers

その他
・こうすればテストが怖くなくなる/試験のメタ認知 読書猿Classic: between / beyond readers

(関連記事)
・よく学ぶための7冊/学習技術のシルバーリングス 読書猿Classic: between / beyond readers

2012.03.25
あなたが知らずに話しているドイツ語 /知的革命の残響を聞く
近年、英語の一人勝ちの影で、第二外国語というものは絶滅危険種になっている。
「学びたい外国語」の1位(英語)と2位(中国語)の差は天と地の差(英語56.2%、中国語 4.9%)ほどある。
こうした中で最も数を減らしたのは、長く第2位の地位を占めていたドイツ語である。
1990年代までは、NHKの語学講座テキストの売上げでも2位を守っていたが、2000年代に入ると中国語等に抜かれ、2007年のネットリサーチ・マイボイスコムの「学びたい言語はなんですか?」を尋ねる調査 http://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/10211/index.html では、英語、中国語、ハングル、フランス語、スペイン語、イタリア語の後、なんと7位(1.4%)まで順位を落としている。
日本の近代化を下支えした言語がドイツ語であったことは言を待たない。
明治以降、第1次大戦までの間、日本から留学した者の9割はドイツに向かった。各分野の第一人者はドイツ留学経験者だった。
青山胤通(医学)、池田菊苗(化学)、石原純(物理学)、入沢宗寿(教育学)、上田万年(国語学)、宇野弘蔵(経済学)、大内兵衛(経済学)、緒方正規(衛生学)、荻原雲来(サンスクリット学)、茅誠司(物理学)、河上肇(経済学)、菊池正士(物理学)、北里柴三郎(細菌学)、小泉信三(経済学)、小金井良精(解剖学,人類学)、近藤平三郎(薬学)、三枝博音(哲学)、塩谷温(中国文学)、志賀潔(細菌学)、柴田桂太(植物学)、島薗順次郎(医学)、正田建次郎(数学)、杉本栄一(経済学)、杉山直治郎(法学)、関一(社会政策)、高木貞治(数学)、高木敏雄(神話学)、高橋義孝(ドイツ文学)、高松豊吉(化学)、田中正平(音楽学)、田中館愛橘(物理学)、田辺元(哲学)、俵国一(治金学)、田原淳(病理学)、東畑精一(経済学)、朝永三十郎(哲学史)、朝永振一郎(物理学)、長岡半太郎(物理学)、中山伊知郎(経済学)、中山久四郎(東洋史学)、長与又郎(病理学)、仁科芳雄(物理学)、芳賀矢一(国文学)、長谷部言人(人類学)、秦佐八郎(細菌学)、波多野精一(哲学)、服部宇之吉(中国哲学)、原田豊吉(地質学)、福田徳三(経済学)、藤岡勝二(言語学)、藤浪鑑(病理学)、穂積八束(法学)、増地庸治郎(経営学)、松村任三(植物学)、三木清(哲学者)、美濃部達吉(法学)、三好学(植物学)、八木秀次(電気工学)、矢田部達郎(心理学)、山極勝三郎(病理学)、山崎覚次郎(経済学)、横山又次郎(古生物学)、和田維四郎(鉱物学)、和辻哲郎(哲学)は、みなドイツに留学した。
科学研究を大学へ持ち込み、ゼミナール方式を通じて研究者の大量育成とともに基礎付けられた厳密な学を追求したドイツの研究大学は、ほぼすべての学問分野において研究成果の質と量で他の地域を圧倒し、日本だけでなく世界中から留学生を集めた。
文献学からはじまった → 研究する大学と専門分化した科学の起源 読書猿Classic: between / beyond readers

アーベル(数学)、アダムス(天文学)、アドラー(宗教教育者)、アミエル(文学者)、アームストロング(化学)、アロン(社会学)、アンウィン(経済史)、ウィクセル(経済学)、ウィリアムソン(化学)、ウェルチ(病理学)、ウォード(哲学)、ウォルド(生化学)、エリオット(詩人、評論家)、オースティン(法哲学)、オルテガ・イ・ガセー(哲学)、オルポート(心理学)、カーン(作曲家)、ガイスマール(神学)、カマーリング・オネス(物理学)、カントニ(哲学)、ギブズ(物理学)、キレフスキー(民俗学者)、クーリッジ(物理化学)、クラーク(経済学)、グラノフスキー(歴史学)、グルベル(化学)、コワレフスカヤ(数学)、サウアー(地理学)、サルトル(哲学)、サンタヤーナ(哲学)、W.ジェームズ(哲学、心理学)、シジウィック(化学)、ジニン(化学)、シベリウス(作曲家)、シュトゥール(詩人)、ジロドゥー(劇詩人)、スタンレー(生化学)、スティーグリッツ(写真家)、スモール(社会学)、スホボ・コブイリン(劇作家)、ツレゲーネフ(小説家)、デービス(女性黒人政治運動家)、デュルケム(社会学)、デュボイス(思想家)、トゥルニエ(小説家)、W・I・トマス(社会学)、バージェス(政治学)、パーセル(物理学)、パーソンズ(社会学)、バート(心理学)、パブロフ(生理学)、フィッシャー(歴史学)、フランクランド(化学)、プレーグル(化学)、ベントリー(政治学)、ボーア(物理学)、ボース(物理学)、マイケルソン(物理学)、マクドネル(サンスクリット学)、ミリカン(物理学)、メンデレーエフ(化学)、ラムゼー(化学)、リチャーズ(化学)、ルイス(物理化学)などがドイツに留学した。
今では信じられないかもしれないが、1960年代あたりまで学生言葉の水源地はドイツ語だった。
今でも最も知られるのはアルバイトだが、他にも留年することを(ダブるとは言わず)ドッペるといったりした。ドッペルゲンガーのドッペルである。広辞苑にだって載っている。
医者はドイツ語でカルテ(これ自体ドイツ語だ)を書き、また処方した。登山家はドイツ語で指示し合い、スキーヤーはドイツ語の技を覚えた。
ここまでできる→ネットで無料で読める世界の語学教科書(古典語篇) 読書猿Classic: between / beyond readers

で書いたけれど、古典語に関しては、あるレベル以上のツールはほとんどすべてドイツ語で書かれている。19世紀半ばにドイツで起こった文献学を発端とする知的革命の残響は、今もこんな形で残り響いている。
アイスバーン Eisbahn
元々は「スケートリンク」の意。転じて 堅く固まり、または氷となった雪面。
アインバンド Einwand
異議。クレーム。学会発表で発表者をあわてふためかせるもの。
アウタルキー Autarkie
大もとはギリシア語で自足の意。ここから国家レベルにおける経済的自給自足状態、すなわち食糧、原料などの必要資源を外国からの輸入に依存せずに国内で確保し、また、生産物も外国へ輸出せず自国内で消費してしまうような経済をいうようになった。その後、1930年代の世界恐慌において先進資本主義諸国が恐慌から自国経済を保護するために、それぞれ植民地、半植民地を含めて自給自足的なブロック経済を形成したことを指すようにもなり、さらに経済自立政策を指すようになった。
アウフヘーベン Aufheben
日本では哲学用語で「止揚」の意。ドイツ語では哲学の文献で使われたときはこの意味のこともあるが、普通は「持ち上げる」「拾い上げる」「中止する」「取り消す」などの意で用いる。
アジール Asyl
世俗の世界から遮断された不可侵の聖なる場所、平和領域。自然の中の森・山・巨樹や、奴隷・犯罪者などが庇護される自治都市・教会堂・駆込寺など。
アスピリン Aspirin
アセチルサリチル酸の薬品名。白色無臭の粉末または鱗片状結晶。解熱・鎮痛および抗炎症剤。プロスタグランジンEの生合成を抑制する。
アデノイド Adenoid
増殖性扁桃肥大症のこと。多く小児に起り鼻づまりを起し、口呼吸・閉塞性鼻声・難聴・睡眠障害・注意力散漫・記憶力減退などを来す。また特有なアデノイド顔貌を呈することがある。
アドレナリン Adrenalin
副腎の髄質ホルモン。心筋の収縮力を高め、心・肝・骨格筋の血管を拡張、皮膚・粘膜等の血管を収縮せしめ血圧を上昇させる作用をもつ。気管支平滑筋を弛緩させるが、立毛筋・瞳孔散大筋を収縮させ、また代謝面では肝・骨格筋のグリコーゲンの分解を増進して血糖を上げ、脂肪組織の脂肪を分解、一般に酸素消費を高める。高峰譲吉が初めて結晶化に成功、アドレナリンと命名。止血剤・強心剤などに利用。エピネフリンともいう。
アナフィラキシー Anaphylaxie
(「無防備」の意) アレルギーの一種。抗原抗体反応により急激なショック症状を発し、著しい場合死に至る現象。平滑筋の攣縮れんしゆくが基本的現象で、血液循環障害・呼吸困難等をきたす。
アミラーゼ Amylase
酵素の一。澱粉・アミロース・グリコーゲンなどを液化・糖化してマルトースやグルコースなどを生ずる。反応により3種類に分類。生物界に広く分布。唾液に含まれるものをプチアリンと呼び、また麦芽中のものはジアスターゼの名で市販。微生物由来のものは澱粉工業に使用。
アルバイト Arbeit
ドイツ語では「仕事」「労働」など広い意味で、英語のワークworkにあたるようなことば。たとえばゼミのレポートはゼミナールアルバイトSeminararbiteという。日本では昭和初年から医学などで「研究業績」の意味で使われ出したが、戦後「副業」の意味で「学生アルバイト」のように使われるようになった。
アルペン Alpen
アルプスのドイツ語名。スキー競技で、滑降・回転・大回転競技を総称してアルペン競技という。
アレルギー Allergie
抗原として働く物質の注射・摂取により抗体を生じ、抗原抗体反応をおこす結果、抗原となった物質に対する生体の反応が変る現象。広義には免疫すなわち抗原の害作用への抵抗の増大も含まれるが、狭義には反応の変化の結果傷害的な過敏症状を呈するものをいい、アナフィラキシー反応、アレルギー性細胞傷害、免疫複合体反応(アルツス反応)、遅延型過敏症(細胞性免疫反応)の各型がある。アレルギーの原因となる抗原物質をアレルゲンという。1906年オーストリアの小児科医ピルケ(C. Pirquet1874~1929)の命名。
アンチテーゼ Antithese
〔哲〕特定の肯定的主張(定立)に対立して定立された特定の否定的主張。反立。反定立。弁証法ではフュール‐ジッヒの段階。
イコン Ikon
(ギリシア語のイメージの意のeikonから)
ギリシア教会でまつるキリスト・聖母・聖徒・殉教者などの画像。ビザンチン美術の一表現で、6世紀に始まり、11~17世紀に特にロシアで盛行。図像。
パースによる記号の3区分の一。形式が、その示す対象の内容と何らかの類似性を持つ記号。図像。写像。アイコン。
イソロイシン Isoleucin
必須アミノ酸の一。
イデオロギー Ideologie
(もと、一九世紀初め、フランスの哲学者デステュット=ド=トラシーが唱えた観念学)
トラシーらを空論家として非難したナポレオンの侮蔑的用法をうけて、マルクスが用いた語。歴史的・社会的に制約され偏った観念形態の意。レーニンは、ブルジョアジーのイデオロギーに対抗するために、マルクス主義をプロレタリアートのイデオロギーと考えたが、その場合は肯定的な意味も持つ。
フランクフルト学派の批判理論では、虚偽意識として批判の対象とされる。
転じて、単に思想傾向、政治や社会に対する考え方の意味にも使われる。
インポテンツ Impotenz
陰茎の勃起不全または不能のため男子が性交不能に陥った状態。脳脊髄障害・睾丸機能不全、あるいは精神的・心理的原因による。陰萎いんい。不能。インポ。インポテンス。
ウェーデルン Wedeln
(スキー用語。「尾を振る」の意) 連続小まわりのクリスチャニア。
ウラン Uran
放射性元素の一つで、「ウラン原鉱」などと使う。英語ではユレイニアムuraniumという。日本ではウラニウムということばがあるが、英語をドイツ語風に読んだものである。
ウレタン Urethan
化学用語で化合物の一つ。英語にurethaneということばがあるがユレセインと読む。
エーデルワイス Edelweiss
キク科の多年草。ヨーロッパと小アジアの高山に産し、アルプスの名花として有名。日本のミヤマウスユキソウと近縁。高さ10~20センチメートル。茎・葉に白い軟毛を密生。頂端の星状に開く苞の上に数個の頭花をつける。西洋薄雪草。
エネルギー Energie
英語ではエナジーenergyという。
エネルギッシュ energisch
精力的。元気旺盛。「―な行動」
エピゴーネン Epigonen
思想・芸術上の追随者・模倣者を軽蔑していう語。亜流。
オーベン
医者俗語で上級医・指導医。ドイツ語の副詞oben(上に)を無理やり名詞化したもの。
オナニー Onanie
(旧約聖書「創世記」中の人物オナン(Onan)の名による) 自慰。手淫。
オブラート Oblate
澱粉などで作った薄い膜状の物質。飲み下しにくい散薬などを包んで飲む。
オルガスムス Orgasmus
性的興奮の最高潮。オーガズム。
ガーゼ Gaze
目を粗く織った軟らかい綿布。多くは完全消毒を施して医療用とする。精製綿紗。「―をあてる」
ガス‐ボンベ Gasbombe
圧縮した高圧の気体を入れる鉄製の容器。
カフェイン Kaffein
茶の葉、コーヒーの実・葉などに含まれるアルカロイドの一。無色・無臭の白色針状結晶。水・アルコールには溶けにくく、クロロホルムには溶ける。少量で神経中枢を興奮させ、多量では麻痺させる。強心・利尿・興奮剤。テイン。茶素。
カプセル Kapsel
飲みにくい薬品を封入して飲みやすくする、ゼラチン製の小さい容器。膠嚢こうのう。
宇宙飛行体などの気密容器。
カリスマ Charisma
超能力。または、大衆を心服させ、指導する能力。マックス・ウェーバーの社会学用語。
カルテ Karte
(カードの意) 診療簿。病症録。
カルテル Kartell
同種もしくは類似の産業部門に属する複数の企業が、相互の独立を維持しながら、市場を支配するために共同行為を行うこと。企業協定を結ぶこともある。独占禁止法により原則として禁止。企業連合。
キッセン
キスすること。キスにドイツ語の動詞の不定形の語尾をつけた捏造学生用語。
なおドイツ語Kissenは「枕」の意味。
キッチュ Kitsch
まがいもの。俗悪なもの。
本来の使用目的から外れた使い方をされるもの。
ギプス Gips
石膏。またギプス包帯(石膏末を含ませた包帯。骨折・関節炎などで、局所の安静、位置の固定を要する患部に巻く)の略。「ギプスなき所に整形外科はない」と称されるように、整形外科にとって重要なアイテムである。
クアハウス Kurhaus
(Kurは保養・治療の意) 温泉を利用した保健・保養施設。古くドイツで行われ、近時日本に普及。
グミ Gummi
ゴムのような弾力を持つ、噛んで味わうキャンデー。水飴・砂糖にゼラチンなどを加えて作る。グミ‐キャンデー。
グルント
医者俗語で基礎医学のこと。Grundlageの略。
ゲシュタルト Gestalt
〔心〕部分の寄せ集めではなく、それらの総和以上の体制化された全体的構造を指す概念。形態。
ゲノム Genom
配偶子または生物体を構成する細胞に含まれる染色体の一組、またはその中のDNAの総体。その構成は生物の種に固有。
ケラチン Keratin
硬蛋白質の一。一般に化学試薬に対する抵抗力大。羽毛・爪・角・蹄ひづめ・毛髪などの主成分。脊椎動物の表皮、魚類・爬虫類の鱗うろこにも存する。
ゲル Gel
コロイド溶液が流動性を失い、多少の弾性と固さをもってゼリー状に固化したもの。寒天・ゼラチン・豆腐・こんにゃく・シリカ‐ゲルなどの類。
ゲルピン
無一文のこと。ゲルはGeld(金)の略。ピンは「ピンチ」の略とも「貧」のなまりとも。学生用語。
ゲレンデ Gelande
日本ではスキー場のことをいうが、ドイツ語では「土地」「地帯」の意味である。もちろん「スキー場」のこともいう。
ケロイド Keloid
皮膚の創傷や火傷のあとにできる瘢痕はんこんが異常に増殖して隆起したもの。原因は不明だが体質によるものもある。原爆被爆者に多発した。瘢痕ケロイド。蟹足腫かいそくしゆ。
コークス Koks
石炭を高温で乾留し、揮発分を除いた灰黒色、金属性光沢のある多孔質の固体。炭素を75~85パーセント含む。点火しにくいが、火をつければ無煙燃焼し、火力が強い。冶金やきんコークス・ガス‐コークスなどがある。骸炭。
コラーゲン Kollagen
動物の皮革・腱・軟骨などを構成する硬蛋白質の一種。温水で処理すると溶けてゼラチンとなる。膠原質こうげんしつ。
コンツェルン Konzern
関連ある各種産業部門のおのおの独立した諸企業が、一つの中央部(多くは銀行または持株会社)によって支配・統制されているもの。カルテル・トラスト以上に集中度が高く、独占の最高形態。日本では解体以前の三井・三菱・安田・住友などの財閥の類。
コンドーム Kondom
薄いゴムで作った男性用の避妊・性病予防用のサック。ルーデ‐サック。スキン。
コントラバス Kontrabass
バイオリン属の弦楽器の一。チェロより大きく、最低音部を担い、4弦が普通。ジャズの演奏にも用いる。ダブル‐ベース。バス。ベース。
ザイル Seil
日本では登山用具に限定して使うが、ドイツ語では「縄」「綱」「ロープ」などの意。登山用具の縄もSeilである。
シャーレ Schale
化学実験に使う皿状ガラス容器。ペトリ皿ともいう。
シャン
(schön(美しい)から)美人。反意語は「ウンシャン」(美人でない)。派生語に「バックシャン」(後ろ姿が美しい)、「トテシャン」(とても美人だ)などがある。学生用語。
シュノーケル Schnorchel
第二次大戦中、ドイツが実用化した潜水艦の吸排気装置。
スキン‐ダイビングに使うJ字形の呼吸管。
排煙装置を備えた消防自動車。
シュプール Spur
スキーの滑った跡。「白銀に―を描く」
シュプレヒコール Sprechchor
古代ギリシア劇の合唱に模して行う科白せりふの朗唱・合唱。シェーンベルクなどの作った楽曲に用いられる。
集団のデモンストレーションなどで、一斉にスローガンを唱和すること。また、その唱和。
ストック Stock
シュトックの訛。スキー杖。
スピッツ Spitz
イヌの一品種。顔は短くとがり、耳は立ち、尾は巻く。純白のものが多い。第二次大戦後日本で多く飼われたが、今は少ない。愛玩用。
ゼミナール Seminar
指導教授を中心につくる研究グループ、研究教育のグループというのがもと。英語のセミナーseminarはドイツの制度を取り入れたものであり、ドイツ語から英語に入ったことばであった。日本ではドイツ語からまず入ったが、その後英語系のセミナーも使われるようになった。
セレナーデ Serenade
思いを寄せる女性の家の窓辺で夕べに歌い奏する音楽。
18世紀以降のヨーロッパで盛んになった器楽の形式。多くは管楽・弦楽・管弦楽のために作った比較的軽い性格の多楽章の楽曲。セレナード。セレナータ。小夜曲。夜曲。
ダックスフント Dachshund
イヌの一品種。体高は20センチメートルほどだが、体長は50センチメートル以上あり、短足で胴長の体つきをしている。耳は垂れ、尾は細い。毛色は茶色・褐色など。本来はアナグマ(ドイツ語でダックス)狩に用いたが、今は愛玩用。ドイツ原産。
タンポン Tampon
消毒した綿・ガーゼに薬をしませ、局所に挿入して止血または分泌液の吸収をさせるもの。綿球。止血栓。
チアノーゼ Zyanose
局所的・全身的に血液中の酸素が欠乏して鮮紅色を失うために、皮膚や粘膜が青色になること。血行障害や呼吸障害で起る。
チーテル Titel
医者俗語で博士号のこと。ドイツ語Titelには、英語のtitleと同様、本や論文の標題という意味もあるがここでは称号・学位の意味。
ツベルクリン Tuberkulin
結核菌を加熱殺菌して濾過し、石炭酸を添加した透明褐色の注射液。コッホの創製。初め結核の治療薬としてつくられたが副作用が強く、今はもっぱらツベルクリン反応に利用。
テーマ Thema
「主題」の意味で、英語にもシームthemeということばがあるが、外来語に入っていない。日本ではドイツ系のテーマがよく普及している。
デマゴーグ Demagog
煽動政治家。民衆煽動家。
ドーラン Dohran
(ドイツのドーラン社製のものが多く使われたからいう) 俳優などが使う、舞台・映画撮影の化粧用の油性練り白粉おしろい。
ドッペ・る
(「2重の」「重複した」の意のドイツ語 doppelt から) (昔の学生語) 落第する。留年する。
ドッペルゲンガー Doppelgänger
(ドッペルゲンガーとも)
生き写し。分身。
自身の姿を自分で目にする幻覚現象。
ネーベン
医者俗語で副業、内職。Nebenarbeitの略。
ノイローゼ Neurose
もと医学用語だったのが一般に広まったもの。
バームクーヘン Baumkuchen
(「木の菓子」の意) バター・砂糖・卵・小麦粉・コーン‐スターチなどを混ぜ合せて、切り口が木の年輪に似た層を表すように焼いた洋菓子。
ビーコン
再試験のこと。ドイツ語の動詞wieder-kommen(ヴィーダーコンメン:帰って来る,再び来る)を略して作られた捏造学生用語。
ビニル Vinyl
ドイツ語のビニルという語形が外来語の形にもっとも近い。英語はバイヌルvinylというのが普通。
ビールス Virus
英語ではバイラスvirusといい、ドイツ語ではビールスVirusというから、ドイツ語が原語であると推定される。ウイルスということもあるが、これはラテン語のウイルスvirusからきたもの。
ヒエラルヒー Hierarchie
上下階層関係に整序されたピラミッド型の秩序ないし組織。狭義ではカトリック教会の教階制を、広義では中世ヨーロッパの封建社会の身分構成を指すが、今日では一般に、軍隊組織や官僚制などにもいう。階統制。階層制。位階制。
フェーン(現象) Föhn
(アルプス地方で付けられた名称) おろしの一種。山腹から吹きおろす乾燥した高温の風。山腹を昇るとき雨を降らせて乾燥した空気が反対側の山腹を下るとき断熱圧縮によって温度が上昇するもの。山間の盆地などにしばしば高温をもたらす。
プレパラート Präparat
ガラス板で挟んだ顕微鏡観察用の標本。
プロレタリアート Proletariat
古代ローマにおける最下層の市民たち。
資本主義社会において、生産手段を持たず、自己の労働力を資本家に売って生活する賃金労働者の階級。無産階級。 ブルジョアジー。
ペー‐ハー pH
水素イオン指数のこと。
ペクチン Pektin
果実中に含まれる多糖類。黄白色の粉末。果実の成熟時ゼリー化を促す。リンゴやミカンなどの果実をすりつぶし、酸溶液で熱抽出して得られる。ジャム・ゼリー・糊などの製造に用いる。
ベクトル Vektor
大きさと向きを有する量。力・速度・加速度などはベクトルとして表される。数学的には、平面または空間の二つの点の順序対(A,B)を、有向線分または束縛ベクトルという。二つの有向線分(A,B),(C,D)は、 ACDB が平行四辺形をなすとき同値といい、(A,B)に同値な有向線分全体を一つの(自由)ベクトルといい、 と表す。
ヘゲモニー Hegemonie
(主に政治運動について) 主導権。指導権。「―を握る」
ボーゲン Bogen
(弧形・湾曲・曲線の意)
スキーで、制動回転。
音楽で、弦楽器の弓。
ホルスタイン Holstein
乳牛の一品種。オランダのフリースラント地方で作出、ドイツのホルシュタイン地方で改良。毛色は白地に黒の斑で、泌乳量は年間5千キログラム以上。
ポルターガイスト Poltergeist
(「騒がしい霊」の意) 心霊現象の一。物理的な原因なしに家具が動いたり音を立てたりする現象。
ホルモン Hormon
内分泌腺など特定の組織または器官から分泌され、体液と共に体内を循環し、特定の組織の機能にきわめて微量で一定の変化を与える物質の総称。脳下垂体ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモン、昆虫の変態ホルモンなど。
ボンベ Bombe
圧縮された高圧の気体を入れておく鉄製の容器。普通、圧力計が装置され、内部の圧力を示す。液体の貯蔵用ともする。「酸素―」
マゾヒスト Masochist
マゾヒズムの傾向を持つ人。嗜虐的な性格の人。 サディスト
マゾヒズム masochism
他者から身体的・精神的な虐待・苦痛を受けることによって満足を得る性的倒錯。一般には被虐趣味をいう。オーストリアの作家ザッヘル=マゾッホ(Sacher‐Masoch1836~1895)の描く人物がその典型であるとし、精神病学者クラフト=エビング(Krafft‐Ebing1840~1902)が命名。 サディズム
メスシリンダー Messzylinder
円管状のガラス製容器の側面に目盛を刻んだ器具。液量計。目盛筒。
メタモルフォーゼ Metamorphose
変身。変態。
メッセ Messe
見本市。特に、国際工業見本市・万国物産展。
メッチェン Mädchen
少女、娘。後に「ギャル」に取ってかわられた。
メトロノーム Metronom
振子運動によって楽曲の速度を知る器械。時計の振子の原理を応用して1812年にオランダ人ヴィンケル(D. N. Winkel1780頃~1826)が発明、ドイツ人メルツェル(J. N. M_lzel1772~1838)が改良して16年特許を取得。近年は電気発振を利用したものもある。拍節器。
メルクマール Merkmal
目印。指標。
メルヘン Märchen
説話文学の一形態。神話・伝説に対して、全くの空想によって作った物語。童話・おとぎ話など。
メントール Menthol
分子式C10H20O テルペンに属するアルコール。無色の結晶。薄荷油はつかゆの主成分。合成もされる。食用香味・鎮痛剤・止痒剤などに用いる。薄荷脳はつかのう。メンソール。
ヤッケ Jacke
ウィンド‐ヤッケWindjackeの略。防風用の上着。登山などに用いる。ヤッケ。
ヨーグルト Yoghurt
牛乳・羊乳・山羊乳などを乳酸発酵によって凝固させた食品。バルカン地方(殊にブルガリア)に始まり、各国に広まった。
ヨーデル Jodel
スイスやオーストリアなどのアルプス地方の農民が歌う民謡。また、その唱法。胸声とファルセットとを交互に織りまぜて歌うもの。
ヨード Jod
(「紫に似た」の意のギリシア語 iodes に由来) (→)沃素ようそに同じ。
ラーメン Rahmen
〔建〕材と材とを結合して組み立てる構造物すなわち骨組の一形式。節点がすべて剛節すなわち変形しにくい結合から成る。現代の建築物、特に鉄筋コンクリートの骨組はほとんどこの種の構造。剛節架構。
ラジオゾンデ Radiosonde
高層気象観測用装置の一。気球につけて飛ばし、高空での気象状態を測定して地上に送信する。大気中の紫外線・宇宙線などの測定にも使用。
リビドー Libido
(本来はラテン語で欲望の意) 精神分析の用語で、性的衝動を発動させる力(フロイト)。また、すべての本能のエネルギーの本体(ユング)。
リュックサック Rucksack
登山やハイキングなどに用いる背負袋。ルックザック。リュック。
ルーペ Lupe
拡大鏡。虫めがね。
ルンペン Lumpen
(「ぼろ」の意) 浮浪者。乞食。
レセプト Rezept
〔医〕(処方箋の意) 医療機関が健康保険組合に請求する診療報酬明細書。
ワクチン Vakzin
予防接種用免疫源。もと牝牛の意のラテン語vaccaから出た語で、牛痘の意)。免疫原(抗原)として用いられる各種伝染病の弱毒菌・死菌または無毒化毒素。生体に接種して抗体を生じさせる。英語ではバクシーンvaccineという。-zinをチンと読むのはドイツ語の特徴である。
ワッペン Wappen
(紋章の意。中世騎士の楯などに付けていたもの) ブレザー‐コートなどの胸・腕などに付ける縫取りの装飾の類。また、これに模して作った紙・ビニール製の玩具。エンブレム。
ワンダーフォーゲル Wandervogel
(渡り鳥の意) 青年・学生のグループによる山野徒歩旅行の運動。20世紀初頭、ドイツに始まる。ワンゲル。
「学びたい外国語」の1位(英語)と2位(中国語)の差は天と地の差(英語56.2%、中国語 4.9%)ほどある。
こうした中で最も数を減らしたのは、長く第2位の地位を占めていたドイツ語である。
1990年代までは、NHKの語学講座テキストの売上げでも2位を守っていたが、2000年代に入ると中国語等に抜かれ、2007年のネットリサーチ・マイボイスコムの「学びたい言語はなんですか?」を尋ねる調査 http://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/10211/index.html では、英語、中国語、ハングル、フランス語、スペイン語、イタリア語の後、なんと7位(1.4%)まで順位を落としている。
日本の近代化を下支えした言語がドイツ語であったことは言を待たない。
明治以降、第1次大戦までの間、日本から留学した者の9割はドイツに向かった。各分野の第一人者はドイツ留学経験者だった。
青山胤通(医学)、池田菊苗(化学)、石原純(物理学)、入沢宗寿(教育学)、上田万年(国語学)、宇野弘蔵(経済学)、大内兵衛(経済学)、緒方正規(衛生学)、荻原雲来(サンスクリット学)、茅誠司(物理学)、河上肇(経済学)、菊池正士(物理学)、北里柴三郎(細菌学)、小泉信三(経済学)、小金井良精(解剖学,人類学)、近藤平三郎(薬学)、三枝博音(哲学)、塩谷温(中国文学)、志賀潔(細菌学)、柴田桂太(植物学)、島薗順次郎(医学)、正田建次郎(数学)、杉本栄一(経済学)、杉山直治郎(法学)、関一(社会政策)、高木貞治(数学)、高木敏雄(神話学)、高橋義孝(ドイツ文学)、高松豊吉(化学)、田中正平(音楽学)、田中館愛橘(物理学)、田辺元(哲学)、俵国一(治金学)、田原淳(病理学)、東畑精一(経済学)、朝永三十郎(哲学史)、朝永振一郎(物理学)、長岡半太郎(物理学)、中山伊知郎(経済学)、中山久四郎(東洋史学)、長与又郎(病理学)、仁科芳雄(物理学)、芳賀矢一(国文学)、長谷部言人(人類学)、秦佐八郎(細菌学)、波多野精一(哲学)、服部宇之吉(中国哲学)、原田豊吉(地質学)、福田徳三(経済学)、藤岡勝二(言語学)、藤浪鑑(病理学)、穂積八束(法学)、増地庸治郎(経営学)、松村任三(植物学)、三木清(哲学者)、美濃部達吉(法学)、三好学(植物学)、八木秀次(電気工学)、矢田部達郎(心理学)、山極勝三郎(病理学)、山崎覚次郎(経済学)、横山又次郎(古生物学)、和田維四郎(鉱物学)、和辻哲郎(哲学)は、みなドイツに留学した。
科学研究を大学へ持ち込み、ゼミナール方式を通じて研究者の大量育成とともに基礎付けられた厳密な学を追求したドイツの研究大学は、ほぼすべての学問分野において研究成果の質と量で他の地域を圧倒し、日本だけでなく世界中から留学生を集めた。
文献学からはじまった → 研究する大学と専門分化した科学の起源 読書猿Classic: between / beyond readers

アーベル(数学)、アダムス(天文学)、アドラー(宗教教育者)、アミエル(文学者)、アームストロング(化学)、アロン(社会学)、アンウィン(経済史)、ウィクセル(経済学)、ウィリアムソン(化学)、ウェルチ(病理学)、ウォード(哲学)、ウォルド(生化学)、エリオット(詩人、評論家)、オースティン(法哲学)、オルテガ・イ・ガセー(哲学)、オルポート(心理学)、カーン(作曲家)、ガイスマール(神学)、カマーリング・オネス(物理学)、カントニ(哲学)、ギブズ(物理学)、キレフスキー(民俗学者)、クーリッジ(物理化学)、クラーク(経済学)、グラノフスキー(歴史学)、グルベル(化学)、コワレフスカヤ(数学)、サウアー(地理学)、サルトル(哲学)、サンタヤーナ(哲学)、W.ジェームズ(哲学、心理学)、シジウィック(化学)、ジニン(化学)、シベリウス(作曲家)、シュトゥール(詩人)、ジロドゥー(劇詩人)、スタンレー(生化学)、スティーグリッツ(写真家)、スモール(社会学)、スホボ・コブイリン(劇作家)、ツレゲーネフ(小説家)、デービス(女性黒人政治運動家)、デュルケム(社会学)、デュボイス(思想家)、トゥルニエ(小説家)、W・I・トマス(社会学)、バージェス(政治学)、パーセル(物理学)、パーソンズ(社会学)、バート(心理学)、パブロフ(生理学)、フィッシャー(歴史学)、フランクランド(化学)、プレーグル(化学)、ベントリー(政治学)、ボーア(物理学)、ボース(物理学)、マイケルソン(物理学)、マクドネル(サンスクリット学)、ミリカン(物理学)、メンデレーエフ(化学)、ラムゼー(化学)、リチャーズ(化学)、ルイス(物理化学)などがドイツに留学した。
今では信じられないかもしれないが、1960年代あたりまで学生言葉の水源地はドイツ語だった。
今でも最も知られるのはアルバイトだが、他にも留年することを(ダブるとは言わず)ドッペるといったりした。ドッペルゲンガーのドッペルである。広辞苑にだって載っている。
医者はドイツ語でカルテ(これ自体ドイツ語だ)を書き、また処方した。登山家はドイツ語で指示し合い、スキーヤーはドイツ語の技を覚えた。
ここまでできる→ネットで無料で読める世界の語学教科書(古典語篇) 読書猿Classic: between / beyond readers

で書いたけれど、古典語に関しては、あるレベル以上のツールはほとんどすべてドイツ語で書かれている。19世紀半ばにドイツで起こった文献学を発端とする知的革命の残響は、今もこんな形で残り響いている。
アイスバーン Eisbahn
元々は「スケートリンク」の意。転じて 堅く固まり、または氷となった雪面。
アインバンド Einwand
異議。クレーム。学会発表で発表者をあわてふためかせるもの。
アウタルキー Autarkie
大もとはギリシア語で自足の意。ここから国家レベルにおける経済的自給自足状態、すなわち食糧、原料などの必要資源を外国からの輸入に依存せずに国内で確保し、また、生産物も外国へ輸出せず自国内で消費してしまうような経済をいうようになった。その後、1930年代の世界恐慌において先進資本主義諸国が恐慌から自国経済を保護するために、それぞれ植民地、半植民地を含めて自給自足的なブロック経済を形成したことを指すようにもなり、さらに経済自立政策を指すようになった。
アウフヘーベン Aufheben
日本では哲学用語で「止揚」の意。ドイツ語では哲学の文献で使われたときはこの意味のこともあるが、普通は「持ち上げる」「拾い上げる」「中止する」「取り消す」などの意で用いる。
アジール Asyl
世俗の世界から遮断された不可侵の聖なる場所、平和領域。自然の中の森・山・巨樹や、奴隷・犯罪者などが庇護される自治都市・教会堂・駆込寺など。
アスピリン Aspirin
アセチルサリチル酸の薬品名。白色無臭の粉末または鱗片状結晶。解熱・鎮痛および抗炎症剤。プロスタグランジンEの生合成を抑制する。
アデノイド Adenoid
増殖性扁桃肥大症のこと。多く小児に起り鼻づまりを起し、口呼吸・閉塞性鼻声・難聴・睡眠障害・注意力散漫・記憶力減退などを来す。また特有なアデノイド顔貌を呈することがある。
アドレナリン Adrenalin
副腎の髄質ホルモン。心筋の収縮力を高め、心・肝・骨格筋の血管を拡張、皮膚・粘膜等の血管を収縮せしめ血圧を上昇させる作用をもつ。気管支平滑筋を弛緩させるが、立毛筋・瞳孔散大筋を収縮させ、また代謝面では肝・骨格筋のグリコーゲンの分解を増進して血糖を上げ、脂肪組織の脂肪を分解、一般に酸素消費を高める。高峰譲吉が初めて結晶化に成功、アドレナリンと命名。止血剤・強心剤などに利用。エピネフリンともいう。
アナフィラキシー Anaphylaxie
(「無防備」の意) アレルギーの一種。抗原抗体反応により急激なショック症状を発し、著しい場合死に至る現象。平滑筋の攣縮れんしゆくが基本的現象で、血液循環障害・呼吸困難等をきたす。
アミラーゼ Amylase
酵素の一。澱粉・アミロース・グリコーゲンなどを液化・糖化してマルトースやグルコースなどを生ずる。反応により3種類に分類。生物界に広く分布。唾液に含まれるものをプチアリンと呼び、また麦芽中のものはジアスターゼの名で市販。微生物由来のものは澱粉工業に使用。
アルバイト Arbeit
ドイツ語では「仕事」「労働」など広い意味で、英語のワークworkにあたるようなことば。たとえばゼミのレポートはゼミナールアルバイトSeminararbiteという。日本では昭和初年から医学などで「研究業績」の意味で使われ出したが、戦後「副業」の意味で「学生アルバイト」のように使われるようになった。
アルペン Alpen
アルプスのドイツ語名。スキー競技で、滑降・回転・大回転競技を総称してアルペン競技という。
アレルギー Allergie
抗原として働く物質の注射・摂取により抗体を生じ、抗原抗体反応をおこす結果、抗原となった物質に対する生体の反応が変る現象。広義には免疫すなわち抗原の害作用への抵抗の増大も含まれるが、狭義には反応の変化の結果傷害的な過敏症状を呈するものをいい、アナフィラキシー反応、アレルギー性細胞傷害、免疫複合体反応(アルツス反応)、遅延型過敏症(細胞性免疫反応)の各型がある。アレルギーの原因となる抗原物質をアレルゲンという。1906年オーストリアの小児科医ピルケ(C. Pirquet1874~1929)の命名。
アンチテーゼ Antithese
〔哲〕特定の肯定的主張(定立)に対立して定立された特定の否定的主張。反立。反定立。弁証法ではフュール‐ジッヒの段階。
イコン Ikon
(ギリシア語のイメージの意のeikonから)
ギリシア教会でまつるキリスト・聖母・聖徒・殉教者などの画像。ビザンチン美術の一表現で、6世紀に始まり、11~17世紀に特にロシアで盛行。図像。
パースによる記号の3区分の一。形式が、その示す対象の内容と何らかの類似性を持つ記号。図像。写像。アイコン。
イソロイシン Isoleucin
必須アミノ酸の一。
イデオロギー Ideologie
(もと、一九世紀初め、フランスの哲学者デステュット=ド=トラシーが唱えた観念学)
トラシーらを空論家として非難したナポレオンの侮蔑的用法をうけて、マルクスが用いた語。歴史的・社会的に制約され偏った観念形態の意。レーニンは、ブルジョアジーのイデオロギーに対抗するために、マルクス主義をプロレタリアートのイデオロギーと考えたが、その場合は肯定的な意味も持つ。
フランクフルト学派の批判理論では、虚偽意識として批判の対象とされる。
転じて、単に思想傾向、政治や社会に対する考え方の意味にも使われる。
インポテンツ Impotenz
陰茎の勃起不全または不能のため男子が性交不能に陥った状態。脳脊髄障害・睾丸機能不全、あるいは精神的・心理的原因による。陰萎いんい。不能。インポ。インポテンス。
ウェーデルン Wedeln
(スキー用語。「尾を振る」の意) 連続小まわりのクリスチャニア。
ウラン Uran
放射性元素の一つで、「ウラン原鉱」などと使う。英語ではユレイニアムuraniumという。日本ではウラニウムということばがあるが、英語をドイツ語風に読んだものである。
ウレタン Urethan
化学用語で化合物の一つ。英語にurethaneということばがあるがユレセインと読む。
エーデルワイス Edelweiss
キク科の多年草。ヨーロッパと小アジアの高山に産し、アルプスの名花として有名。日本のミヤマウスユキソウと近縁。高さ10~20センチメートル。茎・葉に白い軟毛を密生。頂端の星状に開く苞の上に数個の頭花をつける。西洋薄雪草。
エネルギー Energie
英語ではエナジーenergyという。
エネルギッシュ energisch
精力的。元気旺盛。「―な行動」
エピゴーネン Epigonen
思想・芸術上の追随者・模倣者を軽蔑していう語。亜流。
オーベン
医者俗語で上級医・指導医。ドイツ語の副詞oben(上に)を無理やり名詞化したもの。
オナニー Onanie
(旧約聖書「創世記」中の人物オナン(Onan)の名による) 自慰。手淫。
オブラート Oblate
澱粉などで作った薄い膜状の物質。飲み下しにくい散薬などを包んで飲む。
オルガスムス Orgasmus
性的興奮の最高潮。オーガズム。
ガーゼ Gaze
目を粗く織った軟らかい綿布。多くは完全消毒を施して医療用とする。精製綿紗。「―をあてる」
ガス‐ボンベ Gasbombe
圧縮した高圧の気体を入れる鉄製の容器。
カフェイン Kaffein
茶の葉、コーヒーの実・葉などに含まれるアルカロイドの一。無色・無臭の白色針状結晶。水・アルコールには溶けにくく、クロロホルムには溶ける。少量で神経中枢を興奮させ、多量では麻痺させる。強心・利尿・興奮剤。テイン。茶素。
カプセル Kapsel
飲みにくい薬品を封入して飲みやすくする、ゼラチン製の小さい容器。膠嚢こうのう。
宇宙飛行体などの気密容器。
カリスマ Charisma
超能力。または、大衆を心服させ、指導する能力。マックス・ウェーバーの社会学用語。
カルテ Karte
(カードの意) 診療簿。病症録。
カルテル Kartell
同種もしくは類似の産業部門に属する複数の企業が、相互の独立を維持しながら、市場を支配するために共同行為を行うこと。企業協定を結ぶこともある。独占禁止法により原則として禁止。企業連合。
キッセン
キスすること。キスにドイツ語の動詞の不定形の語尾をつけた捏造学生用語。
なおドイツ語Kissenは「枕」の意味。
キッチュ Kitsch
まがいもの。俗悪なもの。
本来の使用目的から外れた使い方をされるもの。
ギプス Gips
石膏。またギプス包帯(石膏末を含ませた包帯。骨折・関節炎などで、局所の安静、位置の固定を要する患部に巻く)の略。「ギプスなき所に整形外科はない」と称されるように、整形外科にとって重要なアイテムである。
クアハウス Kurhaus
(Kurは保養・治療の意) 温泉を利用した保健・保養施設。古くドイツで行われ、近時日本に普及。
グミ Gummi
ゴムのような弾力を持つ、噛んで味わうキャンデー。水飴・砂糖にゼラチンなどを加えて作る。グミ‐キャンデー。
グルント
医者俗語で基礎医学のこと。Grundlageの略。
ゲシュタルト Gestalt
〔心〕部分の寄せ集めではなく、それらの総和以上の体制化された全体的構造を指す概念。形態。
ゲノム Genom
配偶子または生物体を構成する細胞に含まれる染色体の一組、またはその中のDNAの総体。その構成は生物の種に固有。
ケラチン Keratin
硬蛋白質の一。一般に化学試薬に対する抵抗力大。羽毛・爪・角・蹄ひづめ・毛髪などの主成分。脊椎動物の表皮、魚類・爬虫類の鱗うろこにも存する。
ゲル Gel
コロイド溶液が流動性を失い、多少の弾性と固さをもってゼリー状に固化したもの。寒天・ゼラチン・豆腐・こんにゃく・シリカ‐ゲルなどの類。
ゲルピン
無一文のこと。ゲルはGeld(金)の略。ピンは「ピンチ」の略とも「貧」のなまりとも。学生用語。
ゲレンデ Gelande
日本ではスキー場のことをいうが、ドイツ語では「土地」「地帯」の意味である。もちろん「スキー場」のこともいう。
ケロイド Keloid
皮膚の創傷や火傷のあとにできる瘢痕はんこんが異常に増殖して隆起したもの。原因は不明だが体質によるものもある。原爆被爆者に多発した。瘢痕ケロイド。蟹足腫かいそくしゆ。
コークス Koks
石炭を高温で乾留し、揮発分を除いた灰黒色、金属性光沢のある多孔質の固体。炭素を75~85パーセント含む。点火しにくいが、火をつければ無煙燃焼し、火力が強い。冶金やきんコークス・ガス‐コークスなどがある。骸炭。
コラーゲン Kollagen
動物の皮革・腱・軟骨などを構成する硬蛋白質の一種。温水で処理すると溶けてゼラチンとなる。膠原質こうげんしつ。
コンツェルン Konzern
関連ある各種産業部門のおのおの独立した諸企業が、一つの中央部(多くは銀行または持株会社)によって支配・統制されているもの。カルテル・トラスト以上に集中度が高く、独占の最高形態。日本では解体以前の三井・三菱・安田・住友などの財閥の類。
コンドーム Kondom
薄いゴムで作った男性用の避妊・性病予防用のサック。ルーデ‐サック。スキン。
コントラバス Kontrabass
バイオリン属の弦楽器の一。チェロより大きく、最低音部を担い、4弦が普通。ジャズの演奏にも用いる。ダブル‐ベース。バス。ベース。
ザイル Seil
日本では登山用具に限定して使うが、ドイツ語では「縄」「綱」「ロープ」などの意。登山用具の縄もSeilである。
シャーレ Schale
化学実験に使う皿状ガラス容器。ペトリ皿ともいう。
シャン
(schön(美しい)から)美人。反意語は「ウンシャン」(美人でない)。派生語に「バックシャン」(後ろ姿が美しい)、「トテシャン」(とても美人だ)などがある。学生用語。
シュノーケル Schnorchel
第二次大戦中、ドイツが実用化した潜水艦の吸排気装置。
スキン‐ダイビングに使うJ字形の呼吸管。
排煙装置を備えた消防自動車。
シュプール Spur
スキーの滑った跡。「白銀に―を描く」
シュプレヒコール Sprechchor
古代ギリシア劇の合唱に模して行う科白せりふの朗唱・合唱。シェーンベルクなどの作った楽曲に用いられる。
集団のデモンストレーションなどで、一斉にスローガンを唱和すること。また、その唱和。
ストック Stock
シュトックの訛。スキー杖。
スピッツ Spitz
イヌの一品種。顔は短くとがり、耳は立ち、尾は巻く。純白のものが多い。第二次大戦後日本で多く飼われたが、今は少ない。愛玩用。
ゼミナール Seminar
指導教授を中心につくる研究グループ、研究教育のグループというのがもと。英語のセミナーseminarはドイツの制度を取り入れたものであり、ドイツ語から英語に入ったことばであった。日本ではドイツ語からまず入ったが、その後英語系のセミナーも使われるようになった。
セレナーデ Serenade
思いを寄せる女性の家の窓辺で夕べに歌い奏する音楽。
18世紀以降のヨーロッパで盛んになった器楽の形式。多くは管楽・弦楽・管弦楽のために作った比較的軽い性格の多楽章の楽曲。セレナード。セレナータ。小夜曲。夜曲。
ダックスフント Dachshund
イヌの一品種。体高は20センチメートルほどだが、体長は50センチメートル以上あり、短足で胴長の体つきをしている。耳は垂れ、尾は細い。毛色は茶色・褐色など。本来はアナグマ(ドイツ語でダックス)狩に用いたが、今は愛玩用。ドイツ原産。
タンポン Tampon
消毒した綿・ガーゼに薬をしませ、局所に挿入して止血または分泌液の吸収をさせるもの。綿球。止血栓。
チアノーゼ Zyanose
局所的・全身的に血液中の酸素が欠乏して鮮紅色を失うために、皮膚や粘膜が青色になること。血行障害や呼吸障害で起る。
チーテル Titel
医者俗語で博士号のこと。ドイツ語Titelには、英語のtitleと同様、本や論文の標題という意味もあるがここでは称号・学位の意味。
ツベルクリン Tuberkulin
結核菌を加熱殺菌して濾過し、石炭酸を添加した透明褐色の注射液。コッホの創製。初め結核の治療薬としてつくられたが副作用が強く、今はもっぱらツベルクリン反応に利用。
テーマ Thema
「主題」の意味で、英語にもシームthemeということばがあるが、外来語に入っていない。日本ではドイツ系のテーマがよく普及している。
デマゴーグ Demagog
煽動政治家。民衆煽動家。
ドーラン Dohran
(ドイツのドーラン社製のものが多く使われたからいう) 俳優などが使う、舞台・映画撮影の化粧用の油性練り白粉おしろい。
ドッペ・る
(「2重の」「重複した」の意のドイツ語 doppelt から) (昔の学生語) 落第する。留年する。
ドッペルゲンガー Doppelgänger
(ドッペルゲンガーとも)
生き写し。分身。
自身の姿を自分で目にする幻覚現象。
ネーベン
医者俗語で副業、内職。Nebenarbeitの略。
ノイローゼ Neurose
もと医学用語だったのが一般に広まったもの。
バームクーヘン Baumkuchen
(「木の菓子」の意) バター・砂糖・卵・小麦粉・コーン‐スターチなどを混ぜ合せて、切り口が木の年輪に似た層を表すように焼いた洋菓子。
ビーコン
再試験のこと。ドイツ語の動詞wieder-kommen(ヴィーダーコンメン:帰って来る,再び来る)を略して作られた捏造学生用語。
ビニル Vinyl
ドイツ語のビニルという語形が外来語の形にもっとも近い。英語はバイヌルvinylというのが普通。
ビールス Virus
英語ではバイラスvirusといい、ドイツ語ではビールスVirusというから、ドイツ語が原語であると推定される。ウイルスということもあるが、これはラテン語のウイルスvirusからきたもの。
ヒエラルヒー Hierarchie
上下階層関係に整序されたピラミッド型の秩序ないし組織。狭義ではカトリック教会の教階制を、広義では中世ヨーロッパの封建社会の身分構成を指すが、今日では一般に、軍隊組織や官僚制などにもいう。階統制。階層制。位階制。
フェーン(現象) Föhn
(アルプス地方で付けられた名称) おろしの一種。山腹から吹きおろす乾燥した高温の風。山腹を昇るとき雨を降らせて乾燥した空気が反対側の山腹を下るとき断熱圧縮によって温度が上昇するもの。山間の盆地などにしばしば高温をもたらす。
プレパラート Präparat
ガラス板で挟んだ顕微鏡観察用の標本。
プロレタリアート Proletariat
古代ローマにおける最下層の市民たち。
資本主義社会において、生産手段を持たず、自己の労働力を資本家に売って生活する賃金労働者の階級。無産階級。 ブルジョアジー。
ペー‐ハー pH
水素イオン指数のこと。
ペクチン Pektin
果実中に含まれる多糖類。黄白色の粉末。果実の成熟時ゼリー化を促す。リンゴやミカンなどの果実をすりつぶし、酸溶液で熱抽出して得られる。ジャム・ゼリー・糊などの製造に用いる。
ベクトル Vektor
大きさと向きを有する量。力・速度・加速度などはベクトルとして表される。数学的には、平面または空間の二つの点の順序対(A,B)を、有向線分または束縛ベクトルという。二つの有向線分(A,B),(C,D)は、 ACDB が平行四辺形をなすとき同値といい、(A,B)に同値な有向線分全体を一つの(自由)ベクトルといい、 と表す。
ヘゲモニー Hegemonie
(主に政治運動について) 主導権。指導権。「―を握る」
ボーゲン Bogen
(弧形・湾曲・曲線の意)
スキーで、制動回転。
音楽で、弦楽器の弓。
ホルスタイン Holstein
乳牛の一品種。オランダのフリースラント地方で作出、ドイツのホルシュタイン地方で改良。毛色は白地に黒の斑で、泌乳量は年間5千キログラム以上。
ポルターガイスト Poltergeist
(「騒がしい霊」の意) 心霊現象の一。物理的な原因なしに家具が動いたり音を立てたりする現象。
ホルモン Hormon
内分泌腺など特定の組織または器官から分泌され、体液と共に体内を循環し、特定の組織の機能にきわめて微量で一定の変化を与える物質の総称。脳下垂体ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモン、昆虫の変態ホルモンなど。
ボンベ Bombe
圧縮された高圧の気体を入れておく鉄製の容器。普通、圧力計が装置され、内部の圧力を示す。液体の貯蔵用ともする。「酸素―」
マゾヒスト Masochist
マゾヒズムの傾向を持つ人。嗜虐的な性格の人。 サディスト
マゾヒズム masochism
他者から身体的・精神的な虐待・苦痛を受けることによって満足を得る性的倒錯。一般には被虐趣味をいう。オーストリアの作家ザッヘル=マゾッホ(Sacher‐Masoch1836~1895)の描く人物がその典型であるとし、精神病学者クラフト=エビング(Krafft‐Ebing1840~1902)が命名。 サディズム
メスシリンダー Messzylinder
円管状のガラス製容器の側面に目盛を刻んだ器具。液量計。目盛筒。
メタモルフォーゼ Metamorphose
変身。変態。
メッセ Messe
見本市。特に、国際工業見本市・万国物産展。
メッチェン Mädchen
少女、娘。後に「ギャル」に取ってかわられた。
メトロノーム Metronom
振子運動によって楽曲の速度を知る器械。時計の振子の原理を応用して1812年にオランダ人ヴィンケル(D. N. Winkel1780頃~1826)が発明、ドイツ人メルツェル(J. N. M_lzel1772~1838)が改良して16年特許を取得。近年は電気発振を利用したものもある。拍節器。
メルクマール Merkmal
目印。指標。
メルヘン Märchen
説話文学の一形態。神話・伝説に対して、全くの空想によって作った物語。童話・おとぎ話など。
メントール Menthol
分子式C10H20O テルペンに属するアルコール。無色の結晶。薄荷油はつかゆの主成分。合成もされる。食用香味・鎮痛剤・止痒剤などに用いる。薄荷脳はつかのう。メンソール。
ヤッケ Jacke
ウィンド‐ヤッケWindjackeの略。防風用の上着。登山などに用いる。ヤッケ。
ヨーグルト Yoghurt
牛乳・羊乳・山羊乳などを乳酸発酵によって凝固させた食品。バルカン地方(殊にブルガリア)に始まり、各国に広まった。
ヨーデル Jodel
スイスやオーストリアなどのアルプス地方の農民が歌う民謡。また、その唱法。胸声とファルセットとを交互に織りまぜて歌うもの。
ヨード Jod
(「紫に似た」の意のギリシア語 iodes に由来) (→)沃素ようそに同じ。
ラーメン Rahmen
〔建〕材と材とを結合して組み立てる構造物すなわち骨組の一形式。節点がすべて剛節すなわち変形しにくい結合から成る。現代の建築物、特に鉄筋コンクリートの骨組はほとんどこの種の構造。剛節架構。
ラジオゾンデ Radiosonde
高層気象観測用装置の一。気球につけて飛ばし、高空での気象状態を測定して地上に送信する。大気中の紫外線・宇宙線などの測定にも使用。
リビドー Libido
(本来はラテン語で欲望の意) 精神分析の用語で、性的衝動を発動させる力(フロイト)。また、すべての本能のエネルギーの本体(ユング)。
リュックサック Rucksack
登山やハイキングなどに用いる背負袋。ルックザック。リュック。
ルーペ Lupe
拡大鏡。虫めがね。
ルンペン Lumpen
(「ぼろ」の意) 浮浪者。乞食。
レセプト Rezept
〔医〕(処方箋の意) 医療機関が健康保険組合に請求する診療報酬明細書。
ワクチン Vakzin
予防接種用免疫源。もと牝牛の意のラテン語vaccaから出た語で、牛痘の意)。免疫原(抗原)として用いられる各種伝染病の弱毒菌・死菌または無毒化毒素。生体に接種して抗体を生じさせる。英語ではバクシーンvaccineという。-zinをチンと読むのはドイツ語の特徴である。
ワッペン Wappen
(紋章の意。中世騎士の楯などに付けていたもの) ブレザー‐コートなどの胸・腕などに付ける縫取りの装飾の類。また、これに模して作った紙・ビニール製の玩具。エンブレム。
ワンダーフォーゲル Wandervogel
(渡り鳥の意) 青年・学生のグループによる山野徒歩旅行の運動。20世紀初頭、ドイツに始まる。ワンゲル。