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2013.06.30
分数の根っこについて私が語れる2,3の事項/数学となら、できること
分数の問題で娘が…。 : 妊娠・出産・育児 : 発言小町 : 大手小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2013/0621/600642.htm
のすっかり遅くなってしまったアンサー・ソング

分数が普段使いされない理由
少女:……という訳で、分数で大変な騒ぎだったんです。
禁煙:あらあら、大変ね。
少女:どうして帯分数ってあんなにディスられてるんですか?
禁煙:小学校でやるけれど、その後はさっぱり登場しないからかしら?
少女:でも、そんなのことって人生には他にいくらでもありますよね?
禁煙:あとは小学生にとっては分かりにくいし面倒くさいから?「あんなに苦労したのに全然出てこない、なんだったんだ、あれは?」って感じかも。
少女:なんで帯分数は小学校以外じゃ出てこないんですか?
禁煙:それをいうなら分数というのも、日本だとあまりお目にかからないわね。
少女:そんなことは……うーん、そうかな? ……って、今、「日本」って言いました?
禁煙:ヤードポンド法を使っているところだと、まだ日常生活で分数を使うって言うのだけど。
少女:今もヤードポンド法ってアメリカですか? そういえば
100の職業でどんな数学を使うのか1枚の表にまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers

に出てた表で、分数を使う仕事が多すぎるってちょっと思ってました。でも、なんでまた?
禁煙:1インチが1/12フィートで1フィートが1/3ヤードだったり、1オンスが1/16ポンドするから、分数を使わないと計算が面倒なの。……そうね、分数が普段使いの社会だと、帯分数というのもわりと見かけるかしら。
少女:どうしてですか?
禁煙:分数の欠点って分かる? 多分それが分数が普段使いされない最大の理由なんだけど?
少女:大学生になっても計算できないから?
禁煙:そういう本もあったわね。
少女:あとなんだろう? 計算が面倒だから、とか?
禁煙:分数の計算で面倒なのは足し算引き算ね。
少女:分母が違うと通分とかしなきゃダメですよね。
禁煙:掛け算と割り算はむしろ簡単だと思うけど。今のが、少しだけヒントになるかしら。
少女:??? ヒントが生かせません。
禁煙:当たり前すぎるからかな? たとえば
と 
では、どちらが大きい?
少女:え?え? 暗算じゃ無理です。電卓使っていいですか?
禁煙:じゃあ0.095041と0.09427じゃ、どう?
少女:0.095041ですね。……つまり分数は大きさがぱっと見じゃ分からない、と。
禁煙:これって数を普段使いする場合には致命的じゃないかしら?
少女:でも、よくスーパーで7個入り400円と8個入り450円だとどっちが得か、みたいな話がありますよ。
禁煙:それも頭の中で小数に直して比較しているのよね。
少女:うう。計算が得意な人がうらやましいです。
禁煙:じゃあ
と 
ではどちらが大きい?
少女:そりゃ
ですよ。
禁煙:とまあ、これが帯分数の使い道なのだけど。
少女:つまり分数を使いながらも、大きさをぱっと見で比較できるようにするため?
禁煙:分数を普段使いするための窮余の策、とまで言ってはヤードポンド法を責めてるみたいで悪いけれど。
少女:いや、この際やめちゃいましょうよ、そんな分数が要るような単位。というか、あんまり数学の話じゃないですね。
禁煙:そうねえ。帯分数が嫌われる最大の理由は、さっき「分数は掛け算と割り算は簡単」といったけれど、帯分数にしちゃうとせっかくのメリットがなくなっちゃうことかしら。 帯分数なんて整数と分数の足し算からプラス記号を省略した、単なる〈書き方〉に過ぎなくて、そもそも一つの数じゃない、分数を名乗るもおこがましいって言い方をする人もいるくらい。

ケーキの分数、速度(km/h)の分数
少女:そんな帯分数をごり押しするなんて、やっぱり小学校の算数って子どもをバカにする愚民政策の手先なんですね。
禁煙:さすがに、そこまで熱くなれないけれど。そうね、この手の話をすると「いらない区別を増やすな」っていつも怒る人がいるけれど、話してもかまわない?
少女:どんな話ですか?
禁煙:分数のルーツもいくつかあって、それが合わさって今の分数になっているから分かりにくいって話。
少女:確かに掛け算の順番みたいにろくでもない話になりそうです。
禁煙:分数の元になった考え方は古くからあるけれど、源流のひとつは、古代ギリシアのピタゴラスさんたちね。彼らは比をとても重要なものとして扱ったけれど、分数は比の値だという見方があるわ。たとえば
というのは、2:5(2対5)という比の値ということ。
少女:ふーん、としか言いようがないです。
禁煙:もう一つの源流は、こちらの方が私たちにとっては自然かもしれないけれど、何かを等しい大きさに分ける(等分する)ところから出てきた発想。
だと、同じ大きさ(量)に5つに分けた(5等分した)ものね。古代エジプトでは、こんな風な分子が1の分数(単位分数という)だけをつかってたみたい。
だと、5等分した2つ分になるね。私たちが分数を言葉で読み上げるとき「5分の2」という言い方も、中国で「三分之二」と書いてきたのも、こちらの発想だと思うけど。
少女:これも「ふーん」としかコメントのしようが。
禁煙:それで、とっても乱暴に整理してしまうと、小学校の算数でやる分数は何等分による分数の方で、中学校以降の数学でやる分数は比の分数とその発展形だと言えるかも。
少女:えっ、今、いきなりアクセルを踏みませんでしたか?
禁煙:ええ。ちょっと注意を引き付けようと思って。
少女:2種類の分数があるなんて初耳です。
禁煙:私も。少し逃げを打っておくと、発想の源泉に戻って、あえて分けて言えば、ってことね。でも、こうやって無理やり整理しておくと、分かりやすいこともあるの。
少女:どんなことですか?
禁煙:たとえば、等分に基づく分数は、物事の量、とくに1より細かい量を表すために使われるのだけれど。
少女:なんか「ケーキを同じ大きさに分ける」みたいな説明で出てくる分数ですね。
禁煙:量を表すための分数だから、大小の比較が重視されるし、帯分数みたいなものまで登場するのね。
少女:はあ、普段使いの分数はこっちですか? じゃあ、等分による分数が量を表すためだとしたら、比による分数は何のために?
禁煙:これも乱暴に言い切ると、比による分数は量と量の関係を表すためにあるの。
少女:抽象的!!
禁煙:数の世界を信じたピタゴラスさんの流れだから、そう言われても少し仕方がないけれど。だから小学校で最初に習うときには「ケーキを3人で平等に分けると……」みたいな話になるのね。それが後になると、比による分数の方が優勢になるから、いつの間に何か話が変わってない?ってことになるのかも。
少女:「量と量の関係」って、そんなの何に使うんですか?
禁煙:身近なものでいうと、速度(=距離÷時間)だとか密度(=質量÷体積)だとか。時速50キロを「50km/h」と書くのは伊達じゃないの。
少女:確かに「km/h」って「時間(hour)分の距離(km)」って書き方ですけど、分数って意識なかったです。だって時間と距離って全然別物じゃないですか。
禁煙:そのとおり。異なる種類の量と量を結び合わせるという働きが大切なの。「同じものをいくつかに分ける」のとは違う、分数(や割り算)の働きがね。
少女:ということ、割り算にも本当は2種類あるってことですか?
禁煙:割り算と裏表である掛け算にも2種類あるって言えるかも。簡単に言えば「足し算の繰り返し」でしかない掛け算と「異なる種類の量を結び合わせる(そうして新しい量を作る)」掛け算とね。「足し算の繰り返し」しての掛け算というのは、3×5を「3を5回足すこと」と考える見方。自然数同士の掛け算だとこれでいいけれど、3.4×0.5みたいな掛け算は、「足し算の繰り返し」にこだわることから少し離陸して、数と数の関係を考えた方がいいかも。もちろん計算の仕方を含めて、自然数同士の掛け算の延長線上にあるのだけど。
少女:すみません。もう少しシンプルにお願いします。
禁煙:英語だと「足し算の繰り返し」である掛け算はmultiple、「異なる種類の量を結び合わせる(そうして新しい量を作る)」掛け算はproductと分けて言えるのだけれど。今言った2種類の掛け算と、さっき言った2種類の分数と照らし合わせると、
となるかしら。そして数学(というより近代科学)では、量と量の関係から新しい量をつくる〈比にもとづく分数〉の方が重要なの。
少女:どうしてですか?
禁煙:近代科学は量と量の関係で世界を記述することをベースにスタートしたから。そして、このことを一番プリミティブな形で学ぶのが、一次方程式。
少女:はあ。
禁煙:日常生活では大きさの比較も簡単だから小数が幅を利かせたけれど、数学では分数は欠かせない。もちろん大きさの比較のための帯分数なんて混ざり物じゃない分数がね。一次方程式を解くのに、計算途中で分数を使っちゃダメで、小数だけで表すことを想像してみて。
少女:割り切れない数が出てきたらアウトです。というか文字で数を表してる場合は、分数使わないとそもそも書けないですよね。あ、そうか。でも……
禁煙:なあに?
少女:今の禁煙さん言い方で思い出したんですけど、二次方程式で虚数というか複素数まで数の範囲を広げないと、解がない方程式が出てくるみたいな話ですか?
禁煙:そう。負の数がなかったり、分数で表せる数がなかったりしたら、解けない一次方程式が出てくるの。整数または分数の形に表される数をまとめて有理数と呼ぶけれど、すべての一次方程式が解けるためには、取り扱う数の範囲を有理数まで広げなくちゃいけないのね。だから小学生では古代エジプト人ばりに単位分数(分子が1の分数)だけをやって、分数一般は負の数や一次方程式といっしょに教えた方がいいって人もいるくらい。
少女:つまり有理数は一次方程式が要求する数?
禁煙:〈要求〉って言い方をすれば、割り算がすでに要求してたと言えるかもしれないけれど。負の数も導入して、整数の範囲で考えると、どんな整数同士を足しても引いても掛けても、整数の範囲を飛び越えない。でも割り算をすると?
少女:整数じゃなくなる場合がありますね。1÷2とか。でも分数を使えば!
禁煙:1÷2という割り算をパッケージにして、ひとつの数として認めようというのが分数ね。「÷」という動詞をもつ「1÷2」を名詞化したものが
という分数なんだ……みたいな比喩は余計に混乱させそうね。
少女:こくん。
禁煙:分数を割り算のパッケージだと考えれば、たとえば
と 
が等しいことはわりと当たり前に思えてこない?
少女:うーん、それより2時間かけて1キロ進む(1km/2時間)と4時間かけて2キロ進む(2km/4時間)のが同じ速さ(1/2 =2/4)って方がまだ……。って、これも知らないうちに、割り算のパッケージにして扱ってることになるんですか?
禁煙:ええ。数と数の間の関係を扱うって抽象的になりそうではあるけれど、案外日常でやってることなの。「等分したケーキ」みたいなイメージからは離れるけれど、異なる量同士の関係を表す方が実はよく使われているのかも。さっき言った「近代科学は量と量の関係で世界を記述することをベースにスタートした」ことを大げさにいうのなら、〈productの掛け算〉と〈パッケージの分数〉に基礎の基礎を置いていると言えるかもしれないわね。
(参考文献)
http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2013/0621/600642.htm
のすっかり遅くなってしまったアンサー・ソング

分数が普段使いされない理由
少女:……という訳で、分数で大変な騒ぎだったんです。
禁煙:あらあら、大変ね。
少女:どうして帯分数ってあんなにディスられてるんですか?
帯分数とは、 整数と分数の部分がある分数のこと |
禁煙:小学校でやるけれど、その後はさっぱり登場しないからかしら?
少女:でも、そんなのことって人生には他にいくらでもありますよね?
禁煙:あとは小学生にとっては分かりにくいし面倒くさいから?「あんなに苦労したのに全然出てこない、なんだったんだ、あれは?」って感じかも。
少女:なんで帯分数は小学校以外じゃ出てこないんですか?
禁煙:それをいうなら分数というのも、日本だとあまりお目にかからないわね。
少女:そんなことは……うーん、そうかな? ……って、今、「日本」って言いました?
禁煙:ヤードポンド法を使っているところだと、まだ日常生活で分数を使うって言うのだけど。
少女:今もヤードポンド法ってアメリカですか? そういえば
100の職業でどんな数学を使うのか1枚の表にまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers

に出てた表で、分数を使う仕事が多すぎるってちょっと思ってました。でも、なんでまた?
禁煙:1インチが1/12フィートで1フィートが1/3ヤードだったり、1オンスが1/16ポンドするから、分数を使わないと計算が面倒なの。……そうね、分数が普段使いの社会だと、帯分数というのもわりと見かけるかしら。
少女:どうしてですか?
禁煙:分数の欠点って分かる? 多分それが分数が普段使いされない最大の理由なんだけど?
少女:大学生になっても計算できないから?
禁煙:そういう本もあったわね。
少女:あとなんだろう? 計算が面倒だから、とか?
禁煙:分数の計算で面倒なのは足し算引き算ね。
少女:分母が違うと通分とかしなきゃダメですよね。
禁煙:掛け算と割り算はむしろ簡単だと思うけど。今のが、少しだけヒントになるかしら。
少女:??? ヒントが生かせません。
禁煙:当たり前すぎるからかな? たとえば
では、どちらが大きい?
少女:え?え? 暗算じゃ無理です。電卓使っていいですか?
禁煙:じゃあ0.095041と0.09427じゃ、どう?
少女:0.095041ですね。……つまり分数は大きさがぱっと見じゃ分からない、と。
禁煙:これって数を普段使いする場合には致命的じゃないかしら?
少女:でも、よくスーパーで7個入り400円と8個入り450円だとどっちが得か、みたいな話がありますよ。
禁煙:それも頭の中で小数に直して比較しているのよね。
少女:うう。計算が得意な人がうらやましいです。
禁煙:じゃあ
ではどちらが大きい?
少女:そりゃ
禁煙:とまあ、これが帯分数の使い道なのだけど。
少女:つまり分数を使いながらも、大きさをぱっと見で比較できるようにするため?
禁煙:分数を普段使いするための窮余の策、とまで言ってはヤードポンド法を責めてるみたいで悪いけれど。
少女:いや、この際やめちゃいましょうよ、そんな分数が要るような単位。というか、あんまり数学の話じゃないですね。
禁煙:そうねえ。帯分数が嫌われる最大の理由は、さっき「分数は掛け算と割り算は簡単」といったけれど、帯分数にしちゃうとせっかくのメリットがなくなっちゃうことかしら。 帯分数なんて整数と分数の足し算からプラス記号を省略した、単なる〈書き方〉に過ぎなくて、そもそも一つの数じゃない、分数を名乗るもおこがましいって言い方をする人もいるくらい。

ケーキの分数、速度(km/h)の分数
少女:そんな帯分数をごり押しするなんて、やっぱり小学校の算数って子どもをバカにする愚民政策の手先なんですね。
禁煙:さすがに、そこまで熱くなれないけれど。そうね、この手の話をすると「いらない区別を増やすな」っていつも怒る人がいるけれど、話してもかまわない?
少女:どんな話ですか?
禁煙:分数のルーツもいくつかあって、それが合わさって今の分数になっているから分かりにくいって話。
少女:確かに掛け算の順番みたいにろくでもない話になりそうです。
禁煙:分数の元になった考え方は古くからあるけれど、源流のひとつは、古代ギリシアのピタゴラスさんたちね。彼らは比をとても重要なものとして扱ったけれど、分数は比の値だという見方があるわ。たとえば
少女:ふーん、としか言いようがないです。
禁煙:もう一つの源流は、こちらの方が私たちにとっては自然かもしれないけれど、何かを等しい大きさに分ける(等分する)ところから出てきた発想。
少女:これも「ふーん」としかコメントのしようが。
禁煙:それで、とっても乱暴に整理してしまうと、小学校の算数でやる分数は何等分による分数の方で、中学校以降の数学でやる分数は比の分数とその発展形だと言えるかも。
少女:えっ、今、いきなりアクセルを踏みませんでしたか?
禁煙:ええ。ちょっと注意を引き付けようと思って。
少女:2種類の分数があるなんて初耳です。
禁煙:私も。少し逃げを打っておくと、発想の源泉に戻って、あえて分けて言えば、ってことね。でも、こうやって無理やり整理しておくと、分かりやすいこともあるの。
少女:どんなことですか?
禁煙:たとえば、等分に基づく分数は、物事の量、とくに1より細かい量を表すために使われるのだけれど。
少女:なんか「ケーキを同じ大きさに分ける」みたいな説明で出てくる分数ですね。
禁煙:量を表すための分数だから、大小の比較が重視されるし、帯分数みたいなものまで登場するのね。
少女:はあ、普段使いの分数はこっちですか? じゃあ、等分による分数が量を表すためだとしたら、比による分数は何のために?
禁煙:これも乱暴に言い切ると、比による分数は量と量の関係を表すためにあるの。
少女:抽象的!!
禁煙:数の世界を信じたピタゴラスさんの流れだから、そう言われても少し仕方がないけれど。だから小学校で最初に習うときには「ケーキを3人で平等に分けると……」みたいな話になるのね。それが後になると、比による分数の方が優勢になるから、いつの間に何か話が変わってない?ってことになるのかも。
少女:「量と量の関係」って、そんなの何に使うんですか?
禁煙:身近なものでいうと、速度(=距離÷時間)だとか密度(=質量÷体積)だとか。時速50キロを「50km/h」と書くのは伊達じゃないの。
少女:確かに「km/h」って「時間(hour)分の距離(km)」って書き方ですけど、分数って意識なかったです。だって時間と距離って全然別物じゃないですか。
禁煙:そのとおり。異なる種類の量と量を結び合わせるという働きが大切なの。「同じものをいくつかに分ける」のとは違う、分数(や割り算)の働きがね。
少女:ということ、割り算にも本当は2種類あるってことですか?
禁煙:割り算と裏表である掛け算にも2種類あるって言えるかも。簡単に言えば「足し算の繰り返し」でしかない掛け算と「異なる種類の量を結び合わせる(そうして新しい量を作る)」掛け算とね。「足し算の繰り返し」しての掛け算というのは、3×5を「3を5回足すこと」と考える見方。自然数同士の掛け算だとこれでいいけれど、3.4×0.5みたいな掛け算は、「足し算の繰り返し」にこだわることから少し離陸して、数と数の関係を考えた方がいいかも。もちろん計算の仕方を含めて、自然数同士の掛け算の延長線上にあるのだけど。
少女:すみません。もう少しシンプルにお願いします。
禁煙:英語だと「足し算の繰り返し」である掛け算はmultiple、「異なる種類の量を結び合わせる(そうして新しい量を作る)」掛け算はproductと分けて言えるのだけれど。今言った2種類の掛け算と、さっき言った2種類の分数と照らし合わせると、
multipleの掛け算 (同種の量を繰り返しても同種の量) | 等分する分数 (ケーキの分数) |
productの掛け算 (異種の量同士の関係→新しい量) | 比にもとづく分数 (km/hの分数) |
となるかしら。そして数学(というより近代科学)では、量と量の関係から新しい量をつくる〈比にもとづく分数〉の方が重要なの。
少女:どうしてですか?
禁煙:近代科学は量と量の関係で世界を記述することをベースにスタートしたから。そして、このことを一番プリミティブな形で学ぶのが、一次方程式。
少女:はあ。
禁煙:日常生活では大きさの比較も簡単だから小数が幅を利かせたけれど、数学では分数は欠かせない。もちろん大きさの比較のための帯分数なんて混ざり物じゃない分数がね。一次方程式を解くのに、計算途中で分数を使っちゃダメで、小数だけで表すことを想像してみて。
少女:割り切れない数が出てきたらアウトです。というか文字で数を表してる場合は、分数使わないとそもそも書けないですよね。あ、そうか。でも……
禁煙:なあに?
少女:今の禁煙さん言い方で思い出したんですけど、二次方程式で虚数というか複素数まで数の範囲を広げないと、解がない方程式が出てくるみたいな話ですか?
禁煙:そう。負の数がなかったり、分数で表せる数がなかったりしたら、解けない一次方程式が出てくるの。整数または分数の形に表される数をまとめて有理数と呼ぶけれど、すべての一次方程式が解けるためには、取り扱う数の範囲を有理数まで広げなくちゃいけないのね。だから小学生では古代エジプト人ばりに単位分数(分子が1の分数)だけをやって、分数一般は負の数や一次方程式といっしょに教えた方がいいって人もいるくらい。
少女:つまり有理数は一次方程式が要求する数?
禁煙:〈要求〉って言い方をすれば、割り算がすでに要求してたと言えるかもしれないけれど。負の数も導入して、整数の範囲で考えると、どんな整数同士を足しても引いても掛けても、整数の範囲を飛び越えない。でも割り算をすると?
少女:整数じゃなくなる場合がありますね。1÷2とか。でも分数を使えば!
禁煙:1÷2という割り算をパッケージにして、ひとつの数として認めようというのが分数ね。「÷」という動詞をもつ「1÷2」を名詞化したものが
少女:こくん。
禁煙:分数を割り算のパッケージだと考えれば、たとえば
が等しいことはわりと当たり前に思えてこない?
少女:うーん、それより2時間かけて1キロ進む(1km/2時間)と4時間かけて2キロ進む(2km/4時間)のが同じ速さ(1/2 =2/4)って方がまだ……。って、これも知らないうちに、割り算のパッケージにして扱ってることになるんですか?
禁煙:ええ。数と数の間の関係を扱うって抽象的になりそうではあるけれど、案外日常でやってることなの。「等分したケーキ」みたいなイメージからは離れるけれど、異なる量同士の関係を表す方が実はよく使われているのかも。さっき言った「近代科学は量と量の関係で世界を記述することをベースにスタートした」ことを大げさにいうのなら、〈productの掛け算〉と〈パッケージの分数〉に基礎の基礎を置いていると言えるかもしれないわね。
(参考文献)
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2013.06.22
書くことが嫌いにならないための10箇条
1.机に向かうたびに何かすごいことが起こると期待するなら、書くことはいつもひどい落胆をもたらすだろう。
2.インスピレーションの元の意味=息を吸い込むこと
3.何故書くのかと思い迷ったら、ヴァン・ゴッホが弟テオに宛てた手紙を思い出そう。彼がまだ僧職につくための勉強を安下宿で続けていた頃だ。机から顔を上げ、窓から青みがかった黄昏を見て、ノートの端に電柱や星を描いて、こう付け加えた。
「すごく美しい。君に見せなくては」
4.何事もすばやく効率的にやっていると想像力は枯渇する。
5.見当違いでも、証明できなくても、これが最後のチャンスというわけじゃない。
6.「自分が書くものがいかにひどいかをちゃんと見なさい。自分がどんなに退屈な人間か気づきなさい。でも先に進みなさい。はじめから終わりまで完全に退屈なものが書けたらお金をあげるわ」
7.物書きは臆病で怠惰、誰よりも少ない努力で誰よりも多くを望む。
8.全力で精力的に取り組むことができることは、誰かに言われたことか、すでに慣れたこと。新しいものはそこにはない。
9.書くことの恐怖に打ち勝てるのは、実際に書くことだけだ。書くことを遠ざければ遠ざけるだけ恐怖は増大する。
10.モンキーマインド(せわしない心)に陥り、あれこれ迷って一言も書けないときはリストを作ろう。リストのタイトル(あるいは内容)は何でもいい。今、目に入るものをひとつずつ、あるいは好きなものを好きな順に、呪いたい奴ら、大切な場所、腹が立ったこと、目覚めてから今までやったこと、生まれてはじめてやったことを古い順に……
(参考文献)
(その邦訳)
(その邦訳)
2.インスピレーションの元の意味=息を吸い込むこと
3.何故書くのかと思い迷ったら、ヴァン・ゴッホが弟テオに宛てた手紙を思い出そう。彼がまだ僧職につくための勉強を安下宿で続けていた頃だ。机から顔を上げ、窓から青みがかった黄昏を見て、ノートの端に電柱や星を描いて、こう付け加えた。
「すごく美しい。君に見せなくては」
4.何事もすばやく効率的にやっていると想像力は枯渇する。
5.見当違いでも、証明できなくても、これが最後のチャンスというわけじゃない。
6.「自分が書くものがいかにひどいかをちゃんと見なさい。自分がどんなに退屈な人間か気づきなさい。でも先に進みなさい。はじめから終わりまで完全に退屈なものが書けたらお金をあげるわ」
7.物書きは臆病で怠惰、誰よりも少ない努力で誰よりも多くを望む。
8.全力で精力的に取り組むことができることは、誰かに言われたことか、すでに慣れたこと。新しいものはそこにはない。
9.書くことの恐怖に打ち勝てるのは、実際に書くことだけだ。書くことを遠ざければ遠ざけるだけ恐怖は増大する。
10.モンキーマインド(せわしない心)に陥り、あれこれ迷って一言も書けないときはリストを作ろう。リストのタイトル(あるいは内容)は何でもいい。今、目に入るものをひとつずつ、あるいは好きなものを好きな順に、呪いたい奴ら、大切な場所、腹が立ったこと、目覚めてから今までやったこと、生まれてはじめてやったことを古い順に……
(参考文献)
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(その邦訳)
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2013.06.06
借りれる英語力ー英会話をアクティベートするフレーズストックの定番書8+1冊
英文で論文を書く場合は、例文を借用せよ、と以前書いた。
卒論に今から使える論文表現例文集(日本語版) 読書猿Classic: between / beyond readers

論文の内容はオリジナルであるべきだが、論文を論文足らしめる部分=構成や構成を形作る定型パターンは使い回しが効くし、また使いまわすべきだ。オリジナルなのは内容だけでたくさんで、形式は従来のものを踏襲した方がいい。その方が早く正確に読めるから。
書き言葉は、リアルタイムの呼出しを要しないから(どれだけ時間をかけてもいい)例文の借用はやりやすい。
リアルタイムで言葉を投げ合うことが必要な会話では、少し状況は異なる。言葉のラリーの最中に、その都度、例文集を検索していては、スムーズなやり取りは望めない。
しかし、フレーズのストックはそれでも役に立つ。
というのも、会話の内容はオリジナルでも、会話の枠組みのかなりの部分が定型フレーズで形作られるからだ。
一説には、会話の3割を定型句が占めるという。
このブログでも繰り返してきた論点だが、高速かつスムーズに呼び出すことができるまで練り上げられた記憶は、認知資源を節約する。定型フレーズを労なく呼び出すことができれば、その分浮いた思考のパワーを会話のコンテンツ(相手が話す回す内容、自分が話す内容)を取り扱うことに回すことができる。
以下は、日本と英語圏のそれぞれで編まれた定番のフレーズ・ストック集のリストである。
とっつきやすさを勘案し、収録数が少ないもの、また容易に取り扱えるものから順に並べた。
この書は、いくつかの特徴(チャームポイント)からロングセラーになっている。
1点目は、基本的に大人言葉を学ぶことになる外国語学習者の弱点、それも劣等感を刺激する「ネイティブなら当たり前」な部分をついているところ。
2点目は、コミュニケーションの実用性から見た子ども言葉の効率の良さ、つまり、より少なく、またよりやさしい言葉で〈伝えたいことを伝える〉ことができるところ。
3点目は、そんな子ども言葉から大人言葉へと成長発展していく道筋を、具体的な言葉を例に示しているところ。だから子ども言葉(baby→kid→child→preteen→teenagerの5ステップ)で100フレーズ、プラスそれぞれのgrown-up版とで計200が登場する。
数が少ないので、整理・分類してある訳ではない。
フレーズ数の少なさと易しさ、「まずはこれだけ」感とお得感の高さから、今回のリストの冒頭に加えた。
タイトルにあるように、有名なJazz Chantシリーズの一つ。
日本人(だけじゃないが)が苦手な英語のストレス(強弱)とリズムを、やや大げさにしつつJAZZの調子にのって練習することによって、英語らしい調子で話せるようにするのがシリーズのコンセプト。
したがって本の方は書き起こしたスクリプト集に過ぎず、本体はCDなどの音声教材の方。
コミュニケーションや社会的ポジションにおけるSmalltalk(スモールトーク)の重要さについては、前に書いた。
あなたの地位と人脈は《スモールトーク》が決めている/ダンバー『ことばの起源』応用篇 読書猿Classic: between / beyond readers

これだけで足りるものではないが、逆にここに上がっているフレーズが使えないと、人と人の会話が成立しない。つまり日常会話の雑談Smalltalkを造りあげる最小限の決まり文句を15の状況別にまとめた英会話のミニマム・キット。
フレーズ単体の紹介ではなく、十行程度の(つまり1曲分)短いやりとりが1曲ごとにまとめられている。
表現を収集/整理しただけでなく、使い方やタイミング、フレーズが持つニュアンスや背景(バックグラウンド)をかなりの分量を割いて解説してあるのが特徴。その意味で、今回のリストにあげた他のフレーズ集(とくに英語圏で編まれたもの)を補完するものとしても使える。
そのかわりに収録数は少なめ(惜しむべきは索引もない)。なので、この位置に置いた。
フレーズ・ストック集を紹介する場合、必ず紹介される超定番書。
会話に出てくる定型フレーズのなかでも、'Excuse me.', 'Pardon me.'などのように、そのままの形で使えるもの(会話内容に応じて自分で単語を代入したりする必要はないもの)を2000ほど集めたフレーズ・ストック集。
配列は場面別ではなく、キーとなる単語のアルファベット順で、辞書っぽいつくりになっている。
各フレーズの意味、使われる状況を、簡潔に説明し、別に会話例が示される。
原書は2011年に第3版が出ているが、実はこの書の第1版には、以下の邦訳(というか対訳版)がある。
こちらは'Could you ~?'のように、話す内容/目的・機能に応じて言葉の代入・入れ替えが必要な定型パターンを集めたフレーズ・ストック集。
タイトルのFunctionはここでは話す目的を意味していて、「同意する」「あやまる」「礼を言う」といった目的別の言い回しについて140種類のFunctionにごとにまとめているのだが、単なる寄せ集めではない。
それぞれのFunctionごとに、通常・フォーマル・インフォーマルの3ケースでの 使い方を示した 会話の仕方を示している。
例を示そう。

(from Blundell, J., Higgens, J., & Middlemiss, N. M. G. (1982). Function in English. Oxford: University Press. p.110.)
上記は、66番目の「あることをしようと思ってる」ことをいうFunctionのはじまりの部分である。
各Functionのタイトルの下には必ずこんなマンガがあって、一目瞭然である。
最初はご存知の ”I'm going to ...”が登場している。後ろの番号は、「...」部分を埋め方のパターンで、末尾にあるパターンリストに説明されている。
”I'm going to ...”の後には、シチュエーションが示されて、具体的な場面で言い回しのバリエーションが展開される。

(from Blundell, J., Higgens, J., & Middlemiss, N. M. G. (1982). Function in English. Oxford: University Press. p.110.)
その後には「I」(インフォーマル)と「F」(フォーマル)な言い回しが、新たな場面設定の後に示される。
この後には、ご丁寧に言い回しを練習するための、別の状況設定や課題が3つくらい、各Functionごとに用意されている。
同種のものに
がある。
こちらも会話フレーズ集の老舗。あちこちの電子辞書でコンテンツの一角を担っているので、お馴染みの方も多いだろう。
日常生活、オフィス、海外旅行と、さまざまなシーンで頻繁に使われる短いフレーズをできるだけ詰め込んで(8,000フレーズ)、状況別・場面別に整理したもの。
携帯版は本当にポケットに入るサイズ。索引も英語/日本語の二本立てで割りとよくできている。
「英会話とっさのひとこと辞典」の、英語圏でのカウンタパートはこれ。
収録フレーズ7000以上。これもこうしたリストには必ず挙げられる超定番。
場面別に、母国語話者に馴染みの深い言い回しを揃え、比喩表現、イディオムには、すべて意味を明記する。
トピックも医療、就職、アパート探しから銀行口座開設といった日常生活お役立ち系から、スモールトーク系の会話の切り出し表現や様々な意思表示までカバーし、豊富な感情表現をも収録。 多少くだけた表現から堅い表現、ユーモア交じり、軽い皮肉まで集めるとともにスピーチレベルも明記。
明快な構成と、よくできたINDEXも役に立つ。
(おまけ)
やや特殊な目的だが、科学者として職業を全うしなければならない多くの場面について、照準を合わせたフレーズ・ストック集。
英語圏の訪問客があなたの研究室を訪れた場合、英語圏の国で開催される学会に出席して,登録受付して研究発表して,それに続く質疑応答を英語で行う場合、そこで容易ならぬ意見の不一致に直面した場合や、明らかに悪意をもって質問された場合、互いに傷を残す言い合い(negative interaction)に陥りそうな場合まで、使えるフレーズが集めてある。
卒論に今から使える論文表現例文集(日本語版) 読書猿Classic: between / beyond readers

論文の内容はオリジナルであるべきだが、論文を論文足らしめる部分=構成や構成を形作る定型パターンは使い回しが効くし、また使いまわすべきだ。オリジナルなのは内容だけでたくさんで、形式は従来のものを踏襲した方がいい。その方が早く正確に読めるから。
書き言葉は、リアルタイムの呼出しを要しないから(どれだけ時間をかけてもいい)例文の借用はやりやすい。
リアルタイムで言葉を投げ合うことが必要な会話では、少し状況は異なる。言葉のラリーの最中に、その都度、例文集を検索していては、スムーズなやり取りは望めない。
しかし、フレーズのストックはそれでも役に立つ。
というのも、会話の内容はオリジナルでも、会話の枠組みのかなりの部分が定型フレーズで形作られるからだ。
一説には、会話の3割を定型句が占めるという。
このブログでも繰り返してきた論点だが、高速かつスムーズに呼び出すことができるまで練り上げられた記憶は、認知資源を節約する。定型フレーズを労なく呼び出すことができれば、その分浮いた思考のパワーを会話のコンテンツ(相手が話す回す内容、自分が話す内容)を取り扱うことに回すことができる。
以下は、日本と英語圏のそれぞれで編まれた定番のフレーズ・ストック集のリストである。
とっつきやすさを勘案し、収録数が少ないもの、また容易に取り扱えるものから順に並べた。
![]() | ネイティブなら子どものときに身につける 英会話なるほどフレーズ100―誰もここまで教えてくれなかった使える裏技 (2000/04/10) スティーブ ソレイシィ、ロビン ソレイシィ 他 商品詳細を見る |
この書は、いくつかの特徴(チャームポイント)からロングセラーになっている。
1点目は、基本的に大人言葉を学ぶことになる外国語学習者の弱点、それも劣等感を刺激する「ネイティブなら当たり前」な部分をついているところ。
2点目は、コミュニケーションの実用性から見た子ども言葉の効率の良さ、つまり、より少なく、またよりやさしい言葉で〈伝えたいことを伝える〉ことができるところ。
3点目は、そんな子ども言葉から大人言葉へと成長発展していく道筋を、具体的な言葉を例に示しているところ。だから子ども言葉(baby→kid→child→preteen→teenagerの5ステップ)で100フレーズ、プラスそれぞれのgrown-up版とで計200が登場する。
数が少ないので、整理・分類してある訳ではない。
フレーズ数の少なさと易しさ、「まずはこれだけ」感とお得感の高さから、今回のリストの冒頭に加えた。
![]() | Small Talk: More Jazz Chants (2003/05/29) Carolyn Graham 商品詳細を見る |
![]() | Small Talk: More Jazz Chants (1986/07/31) Carolyn Graham 商品詳細を見る |
タイトルにあるように、有名なJazz Chantシリーズの一つ。
日本人(だけじゃないが)が苦手な英語のストレス(強弱)とリズムを、やや大げさにしつつJAZZの調子にのって練習することによって、英語らしい調子で話せるようにするのがシリーズのコンセプト。
したがって本の方は書き起こしたスクリプト集に過ぎず、本体はCDなどの音声教材の方。
コミュニケーションや社会的ポジションにおけるSmalltalk(スモールトーク)の重要さについては、前に書いた。
あなたの地位と人脈は《スモールトーク》が決めている/ダンバー『ことばの起源』応用篇 読書猿Classic: between / beyond readers

これだけで足りるものではないが、逆にここに上がっているフレーズが使えないと、人と人の会話が成立しない。つまり日常会話の雑談Smalltalkを造りあげる最小限の決まり文句を15の状況別にまとめた英会話のミニマム・キット。
フレーズ単体の紹介ではなく、十行程度の(つまり1曲分)短いやりとりが1曲ごとにまとめられている。
![]() | 状況別・場面別 英語にするとこうなる―使える口語表現 (2000/04) 小坂 貴志 商品詳細を見る |
表現を収集/整理しただけでなく、使い方やタイミング、フレーズが持つニュアンスや背景(バックグラウンド)をかなりの分量を割いて解説してあるのが特徴。その意味で、今回のリストにあげた他のフレーズ集(とくに英語圏で編まれたもの)を補完するものとしても使える。
そのかわりに収録数は少なめ(惜しむべきは索引もない)。なので、この位置に置いた。
![]() | Common American Phrases in Everyday Contexts, 3rd Edition (2011/10/25) Richard Spears 商品詳細を見る |
フレーズ・ストック集を紹介する場合、必ず紹介される超定番書。
会話に出てくる定型フレーズのなかでも、'Excuse me.', 'Pardon me.'などのように、そのままの形で使えるもの(会話内容に応じて自分で単語を代入したりする必要はないもの)を2000ほど集めたフレーズ・ストック集。
配列は場面別ではなく、キーとなる単語のアルファベット順で、辞書っぽいつくりになっている。
各フレーズの意味、使われる状況を、簡潔に説明し、別に会話例が示される。
原書は2011年に第3版が出ているが、実はこの書の第1版には、以下の邦訳(というか対訳版)がある。
![]() | アメリカ人がよく使う米語らしい米語の会話表現辞典1700 (1996/11) リチャード・スピアーズ 商品詳細を見る |
![]() | Function in English (1982/07/01) J.A. Blundell、etc. 他 商品詳細を見る |
こちらは'Could you ~?'のように、話す内容/目的・機能に応じて言葉の代入・入れ替えが必要な定型パターンを集めたフレーズ・ストック集。
タイトルのFunctionはここでは話す目的を意味していて、「同意する」「あやまる」「礼を言う」といった目的別の言い回しについて140種類のFunctionにごとにまとめているのだが、単なる寄せ集めではない。
それぞれのFunctionごとに、通常・フォーマル・インフォーマルの3ケースでの 使い方を示した 会話の仕方を示している。
例を示そう。

(from Blundell, J., Higgens, J., & Middlemiss, N. M. G. (1982). Function in English. Oxford: University Press. p.110.)
上記は、66番目の「あることをしようと思ってる」ことをいうFunctionのはじまりの部分である。
各Functionのタイトルの下には必ずこんなマンガがあって、一目瞭然である。
最初はご存知の ”I'm going to ...”が登場している。後ろの番号は、「...」部分を埋め方のパターンで、末尾にあるパターンリストに説明されている。
”I'm going to ...”の後には、シチュエーションが示されて、具体的な場面で言い回しのバリエーションが展開される。

(from Blundell, J., Higgens, J., & Middlemiss, N. M. G. (1982). Function in English. Oxford: University Press. p.110.)
その後には「I」(インフォーマル)と「F」(フォーマル)な言い回しが、新たな場面設定の後に示される。
この後には、ご丁寧に言い回しを練習するための、別の状況設定や課題が3つくらい、各Functionごとに用意されている。
同種のものに
![]() | Functions of American English Student's book: Communication Activities for the Classroom (1983/02/28) Leo Jones、C. von Baeyer 他 商品詳細を見る |
がある。
![]() | 携帯版 英会話とっさのひとこと辞典 (1999/02) 巽 一朗、巽 スカイ・ヘザー 他 商品詳細を見る |
こちらも会話フレーズ集の老舗。あちこちの電子辞書でコンテンツの一角を担っているので、お馴染みの方も多いだろう。
日常生活、オフィス、海外旅行と、さまざまなシーンで頻繁に使われる短いフレーズをできるだけ詰め込んで(8,000フレーズ)、状況別・場面別に整理したもの。
携帯版は本当にポケットに入るサイズ。索引も英語/日本語の二本立てで割りとよくできている。
![]() | NTC's Dictionary of Everyday American English Expressions (McGraw-Hill ESL References) (1995/01/11) Richard Spears、Betty Birner 他 商品詳細を見る |
「英会話とっさのひとこと辞典」の、英語圏でのカウンタパートはこれ。
収録フレーズ7000以上。これもこうしたリストには必ず挙げられる超定番。
場面別に、母国語話者に馴染みの深い言い回しを揃え、比喩表現、イディオムには、すべて意味を明記する。
トピックも医療、就職、アパート探しから銀行口座開設といった日常生活お役立ち系から、スモールトーク系の会話の切り出し表現や様々な意思表示までカバーし、豊富な感情表現をも収録。 多少くだけた表現から堅い表現、ユーモア交じり、軽い皮肉まで集めるとともにスピーチレベルも明記。
明快な構成と、よくできたINDEXも役に立つ。
(おまけ)
![]() | 困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話―国際学会や海外ラボでの会話術と苦情、断り、抗議など厄介な対人関係に対処する表現法 (2007/04/01) Ann M. K¨orner 商品詳細を見る |
やや特殊な目的だが、科学者として職業を全うしなければならない多くの場面について、照準を合わせたフレーズ・ストック集。
英語圏の訪問客があなたの研究室を訪れた場合、英語圏の国で開催される学会に出席して,登録受付して研究発表して,それに続く質疑応答を英語で行う場合、そこで容易ならぬ意見の不一致に直面した場合や、明らかに悪意をもって質問された場合、互いに傷を残す言い合い(negative interaction)に陥りそうな場合まで、使えるフレーズが集めてある。
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