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2010.03.08
マックスウェルの悪魔つかまえた?/自宅で作れる(?)エントロピー法則の「破り方」
あのポピュラーサイエンス誌が137年分のアーカイブを無料でWebで公開してるという。
Search the PopSci Archives | Popular Science
http://www.popsci.com/archives
さっそく少年時代に魂を捉えて離さない「あの記事」を探してみた。
"Maxwell's Demon Comes to Life"
Popular Science,June 1947, page 144-145
検索結果をクリックすると、何故だか164ページに出るので、スクロールしてページを戻ると、145ページにこの記事がある。
この記事のタイトルにもなっている「マクスウェルの悪魔 Maxwell's Demon」というのは、ぶっちゃけ分子の門番で、速い分子が来たときには門を開けて、おそい分子が来たときには門を閉じるような存在である。
すると、門のあっち側には速い分子ばかりに、門のこっち側には遅い空気ばっかりになる。つまり門のあっち側の空気は熱くなって、門のこっち側の空気は冷たくなる。
こうして「マクスウェルの悪魔」は仕事をすることなしに、片方の部屋の温度を下げ、もう片方の部屋の温度を上げることができる。これは熱力学第二法則と矛盾するじゃないか、というのが、マクスウェルが提起した問題である(ウィキペディア「マクスウェルの悪魔」)。
これは1980年代に入ってやっと最終的な結論が出るほどの難問(難癖)だった。
そしてポピュラーサイエンスの1947年6月号に掲載の、この記事が作り方を説明している「ヒルシュ管」こそは、この「マクスウェルの悪魔」の工学的実現だというのである。
つまりT字型に繋がれた「管」に空気を吹き込むだけで、一方から暖かい空気、もう一方からは冷たい空気が出てくるという。
それだけでなんと、熱い方では最高180℃、冷たい方では-60℃の空気が出てくる!
「熱いお湯と冷たい水からぬるい湯はつくれても、その逆はできない」と信じ込んでいた少年にはびっくりだった。
フランスがドイツ陸軍に占領中に、1930 年頃フランスの物理学者Georges Ranqueが発明したものを、ナチス・ドイツの物理学者ルドルフ・ヒルシュが改良し実用化したものだという。
作り方ははっきり明らかだ。
「サイエンティフィック・アメリカン」の記事を、科学実験マニアたちのためにまとめたC.L.Stong (1960),The Scientific American book of projects for the amateur scientist.(これには翻訳がある。ストング編『アマチュア科学者』(白揚社))にも微に細に入り書いてある(原書 p.514-520.)。
少年時代に読んだのはこの邦訳だが、あとで原著をとりよせてみると2/3くらいの抄訳だった。

『アマチュア科学者』は写真はなし、図も味のある手書きだったが(上の図)、『ポピュラーサイエンス誌』は写真やカラーを使った仕組みを説明する図がついている。すばらしい(下の図)。

原理はいわゆるボルテックス効果と呼ばれるものだが、日本語のサイトでは、ボルテックス効果を利用した製品(製品名「コルダー」)を作っているサンワ・エンタープライス株式会社のページが詳しい(右上のダウンロード・ボタンからカタログ(pdfファイル)をダウンロードすれば性能等の数値データも入手できる)。
熱力学第二法則は破られてないから安心されたし。
……歴代の「アマチュア科学者」記事を集めた電子書籍。
……原論文J.C.Maxwell(1871),Theory of Heatを含む主要な歴史的論文と詳細なクロニクル、文献リストを含んだ決定版。
Search the PopSci Archives | Popular Science
http://www.popsci.com/archives
さっそく少年時代に魂を捉えて離さない「あの記事」を探してみた。
"Maxwell's Demon Comes to Life"
Popular Science,June 1947, page 144-145
検索結果をクリックすると、何故だか164ページに出るので、スクロールしてページを戻ると、145ページにこの記事がある。
この記事のタイトルにもなっている「マクスウェルの悪魔 Maxwell's Demon」というのは、ぶっちゃけ分子の門番で、速い分子が来たときには門を開けて、おそい分子が来たときには門を閉じるような存在である。
すると、門のあっち側には速い分子ばかりに、門のこっち側には遅い空気ばっかりになる。つまり門のあっち側の空気は熱くなって、門のこっち側の空気は冷たくなる。
こうして「マクスウェルの悪魔」は仕事をすることなしに、片方の部屋の温度を下げ、もう片方の部屋の温度を上げることができる。これは熱力学第二法則と矛盾するじゃないか、というのが、マクスウェルが提起した問題である(ウィキペディア「マクスウェルの悪魔」)。
これは1980年代に入ってやっと最終的な結論が出るほどの難問(難癖)だった。
そしてポピュラーサイエンスの1947年6月号に掲載の、この記事が作り方を説明している「ヒルシュ管」こそは、この「マクスウェルの悪魔」の工学的実現だというのである。
つまりT字型に繋がれた「管」に空気を吹き込むだけで、一方から暖かい空気、もう一方からは冷たい空気が出てくるという。
それだけでなんと、熱い方では最高180℃、冷たい方では-60℃の空気が出てくる!
「熱いお湯と冷たい水からぬるい湯はつくれても、その逆はできない」と信じ込んでいた少年にはびっくりだった。
フランスがドイツ陸軍に占領中に、1930 年頃フランスの物理学者Georges Ranqueが発明したものを、ナチス・ドイツの物理学者ルドルフ・ヒルシュが改良し実用化したものだという。
作り方ははっきり明らかだ。
「サイエンティフィック・アメリカン」の記事を、科学実験マニアたちのためにまとめたC.L.Stong (1960),The Scientific American book of projects for the amateur scientist.(これには翻訳がある。ストング編『アマチュア科学者』(白揚社))にも微に細に入り書いてある(原書 p.514-520.)。
少年時代に読んだのはこの邦訳だが、あとで原著をとりよせてみると2/3くらいの抄訳だった。

『アマチュア科学者』は写真はなし、図も味のある手書きだったが(上の図)、『ポピュラーサイエンス誌』は写真やカラーを使った仕組みを説明する図がついている。すばらしい(下の図)。

原理はいわゆるボルテックス効果と呼ばれるものだが、日本語のサイトでは、ボルテックス効果を利用した製品(製品名「コルダー」)を作っているサンワ・エンタープライス株式会社のページが詳しい(右上のダウンロード・ボタンからカタログ(pdfファイル)をダウンロードすれば性能等の数値データも入手できる)。
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![]() | アマチュア科学者―輪ゴムのエンジンから原子破砕器まで (1963年) (1963) 村山 信彦 商品詳細を見る |
![]() | Scientific American: The Amateur Scientist : The Complete Collection (2002/07) Shawn Carlson 商品詳細を見る |
……歴代の「アマチュア科学者」記事を集めた電子書籍。
![]() | 新装版 マックスウェルの悪魔 (ブルーバックス) (2002/09/20) 都筑 卓司 商品詳細を見る |
![]() | 熱とはなんだろう (ブルーバックス) (2002/11/20) 竹内 薫 商品詳細を見る |
![]() | Maxwell's Demon 2: Entropy, Classical and Quatum Information, Computing (2003/02) 不明 商品詳細を見る |
……原論文J.C.Maxwell(1871),Theory of Heatを含む主要な歴史的論文と詳細なクロニクル、文献リストを含んだ決定版。
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