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2010.04.05
論理学は思考の「高地」トレーニング」である/ロジック・アズ・ブロックバスター
論理学の良いところは、トレーニングの効果が絶大なところだ。
たとえれば、論理学は一種の「高地」トレーニングなので苦しいが、これによって思考の「心肺機能」がアップする。
思考が「息切れ」しにくくなる。そして「登坂力」が増す。
微細な違いに気付く力や、筋が混み入った話への感受性も高まる。
学術書の類や、日本語とは思えない悪文を読むのに、きつい坂道を上るような苦しさを感じている人は、最もその効果を実感できるだろう。
しかし論理学を学ぶ人はあまり多くない。
独習は不可能ではない。
というより、自分で問題を解かないことにはどうにもならないので、習うにしろ、自分一人で取り組まなくてはならない時間が多い。
科学哲学者の内井惣七氏は、論理学の学習について、次のように言っている。
・問題を山のように解かないと、論理学が身に付くはずがない。ぼーっと、本を眺めてマスターできるのは、フォン・ノイマンみたいな悪魔だけだ。
・証明の基本は、まず証明すべき式の形をしっかりと見ること(論理学や数学もそうだが、記号操作が必要なものを苦手とする人は、記号の並びの些細な違いについての感受性が鈍い。トレーニングはその識別力となって身に付いていく)。
・述語論理に入ったときは、命題論理のトートロジーの形を(ひとめで)見分ける感覚が身に付いてないと、どうにもならない。
「問題を山のように」というのは、どれくらいの量のことか?
内井惣七氏が自分のサイトで「思い出話」を書いている。
http://www1.kcn.ne.jp/~h-uchii/Logic/
彼が京都大学の工学部から文学部に学士入学した際(内井氏が言うところを信じるならば、彼自身が京都大学に教員として着任する1990年まで)、この大学にはまともな論理学者がいなかったそうだ。
したがって内井氏が学んだのは外部講師による集中講義であって、これは当時の制度では30時間×2回=計60時間だった。
2回と言うのは、外部講師の旅費が2回分しか出ないということだが、60時間で論理学が身に付くものではないと、この時の外部講師は自腹を切って京大に論理学を教えに来た。
しかし受講生は減っていって、とうとう内井氏ひとりになってしまった。
当時使われていた教科書はKalish & Montague(1967), Logic: Techniques of Formal Reasoning.で、「できるだけたくさん問題を解きなさい」ということだったので、内井氏は夏休み中に、この教科書のすべての問題を解いて、かの講師に送った。「こんなには採点できない」とついに弱音がもれたそうだ。
しかし1年が経ち、講師は別れの際、続きはこれで勉強しなさいとゲンツェンの原論文のコピーとKleeneのMathematical Logicのコピーをくれた(コピーがものすごく高価だった時代の話である)。
さてテキストだが、内井惣七氏のものだと『真理・証明・計算―論理と機械』がある。コンパクトで、トピック満載だが、湯で戻す必要がある。その意味で、ちょっと「授業書」っぽい。
今なら、独習の場合は、戸田山和久『論理学をつくる』が一番使いやすいと思う。
『論理学をつくる』がきつかったら?
趣向はちがうが、野矢 茂樹『新版 論理トレーニング』をやるだけでも(「読む」だけでなく「解く」ということである)、「学術書の類や、日本語とは思えない悪文を読む」自分にかかる負担が変わっていることに気付くだろう。終わったら、ついでに『論理トレーニング101題』もやろう。
なお、『論理学をつくる』で問題を解くのが「きつい」というのは、それほど変な話ではない。ちゃんと取り組んでいる証拠だから、まちがっても「自分の頭が悪い」などとは思わないように。
「1問解くのに丸1日かかった」としても、途中で投げ出したとしても、不思議ではない。そういうものだ。ちゃんと取り組んでいる証拠だから、まちがっても「自分の頭が悪い」などとは思わないように。その気になったら、また取り組めば良いだけの話だ。
『論理学をつくる』が終わったら?
述語計算LKを学ぶのに、
が、その名の通り復刊されている。今のうちに買い。
不完全性定理では、ゲーデルの原論文に沿ったものだと(これがあんまりないのだ)
が丁寧なつくり。
の一工夫も二工夫もあるちょっと違った証明も、スマリヤンのいろんな論理ゲームの本ともどもお勧めである。
今や、カリッシュの本も、クリーニの本も、お手頃価格で手に入る。
たとえれば、論理学は一種の「高地」トレーニングなので苦しいが、これによって思考の「心肺機能」がアップする。
思考が「息切れ」しにくくなる。そして「登坂力」が増す。
微細な違いに気付く力や、筋が混み入った話への感受性も高まる。
学術書の類や、日本語とは思えない悪文を読むのに、きつい坂道を上るような苦しさを感じている人は、最もその効果を実感できるだろう。
しかし論理学を学ぶ人はあまり多くない。
独習は不可能ではない。
というより、自分で問題を解かないことにはどうにもならないので、習うにしろ、自分一人で取り組まなくてはならない時間が多い。
科学哲学者の内井惣七氏は、論理学の学習について、次のように言っている。
・問題を山のように解かないと、論理学が身に付くはずがない。ぼーっと、本を眺めてマスターできるのは、フォン・ノイマンみたいな悪魔だけだ。
・証明の基本は、まず証明すべき式の形をしっかりと見ること(論理学や数学もそうだが、記号操作が必要なものを苦手とする人は、記号の並びの些細な違いについての感受性が鈍い。トレーニングはその識別力となって身に付いていく)。
・述語論理に入ったときは、命題論理のトートロジーの形を(ひとめで)見分ける感覚が身に付いてないと、どうにもならない。
「問題を山のように」というのは、どれくらいの量のことか?
内井惣七氏が自分のサイトで「思い出話」を書いている。
http://www1.kcn.ne.jp/~h-uchii/Logic/
彼が京都大学の工学部から文学部に学士入学した際(内井氏が言うところを信じるならば、彼自身が京都大学に教員として着任する1990年まで)、この大学にはまともな論理学者がいなかったそうだ。
したがって内井氏が学んだのは外部講師による集中講義であって、これは当時の制度では30時間×2回=計60時間だった。
2回と言うのは、外部講師の旅費が2回分しか出ないということだが、60時間で論理学が身に付くものではないと、この時の外部講師は自腹を切って京大に論理学を教えに来た。
しかし受講生は減っていって、とうとう内井氏ひとりになってしまった。
当時使われていた教科書はKalish & Montague(1967), Logic: Techniques of Formal Reasoning.で、「できるだけたくさん問題を解きなさい」ということだったので、内井氏は夏休み中に、この教科書のすべての問題を解いて、かの講師に送った。「こんなには採点できない」とついに弱音がもれたそうだ。
しかし1年が経ち、講師は別れの際、続きはこれで勉強しなさいとゲンツェンの原論文のコピーとKleeneのMathematical Logicのコピーをくれた(コピーがものすごく高価だった時代の話である)。
さてテキストだが、内井惣七氏のものだと『真理・証明・計算―論理と機械』がある。コンパクトで、トピック満載だが、湯で戻す必要がある。その意味で、ちょっと「授業書」っぽい。
今なら、独習の場合は、戸田山和久『論理学をつくる』が一番使いやすいと思う。
『論理学をつくる』がきつかったら?
趣向はちがうが、野矢 茂樹『新版 論理トレーニング』をやるだけでも(「読む」だけでなく「解く」ということである)、「学術書の類や、日本語とは思えない悪文を読む」自分にかかる負担が変わっていることに気付くだろう。終わったら、ついでに『論理トレーニング101題』もやろう。
なお、『論理学をつくる』で問題を解くのが「きつい」というのは、それほど変な話ではない。ちゃんと取り組んでいる証拠だから、まちがっても「自分の頭が悪い」などとは思わないように。
「1問解くのに丸1日かかった」としても、途中で投げ出したとしても、不思議ではない。そういうものだ。ちゃんと取り組んでいる証拠だから、まちがっても「自分の頭が悪い」などとは思わないように。その気になったら、また取り組めば良いだけの話だ。
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『論理学をつくる』が終わったら?
述語計算LKを学ぶのに、
![]() | 復刊 数理論理学 (2001/08/15) 松本 和夫 商品詳細を見る |
が、その名の通り復刊されている。今のうちに買い。
不完全性定理では、ゲーデルの原論文に沿ったものだと(これがあんまりないのだ)
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が丁寧なつくり。
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の一工夫も二工夫もあるちょっと違った証明も、スマリヤンのいろんな論理ゲームの本ともどもお勧めである。
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今や、カリッシュの本も、クリーニの本も、お手頃価格で手に入る。
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おもに情報科学の学生を想定した数理論理学の教科書のリストです。
http://taurus.ics.nara-wu.ac.jp/staff/kamo/shohyo/logic-1.html
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ブランドオブミー 2010/04/06 Tue 13:48
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