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2008.09.01
○○学史で,○○学を,ざっくり学ぶ
時間の経過とともに成長したり、巨大化・複雑化していく対象について、
大体の概要や見通しを得るために、その歴史をざっとさらってみる方法がある。
1 「起源もの」という事典
◎ヨハン・ベックマン『西洋事物起原1、2、3、4』(岩波文庫)
主にドイツを中心に、西洋における様々な事物や出来事の発見・起源・伝播などを記した書物。言わば百科辞典のひとつひとつの項目を、ヨハン・ベックマンの博識で時間的に掘り下げたもの。
◎石井研堂「明治事物起原」(橋南堂,1908)
近代デジタルライブラリーや「docuneドキュン」ドキュメント共有サイトで読める
◎事物起源選集 / 紀田順一郎監修・解説 ; : 全9巻. -- クレス出版, 2004
石井研堂「明治事物起原」を含む、日本の事物起源ものを集成
ただし「起源」は確かめようがなく不確かな場合や「捏造」されたものである場合も多い。
2 哲学史・思想史
◎シュテーリヒ『西洋科学史』(現代教養文庫、全5巻)
普通なら哲学、自然科学、社会科学、人文科学などと分けられてしまう「諸科学」の流れを、人類の認識の発展として一貫して捉えた名著。古代ギリシア以前の諸文明から19世紀の物理学や進化論や精神分析の登場までを扱う。ないものねだりではあるが、この本の唯一の欠点は(多くの学史がそうなのだが)あまり近い過去、この本の場合なら20世紀を扱ってないこと。つまり相対性理論も量子力学も原子爆弾も、社会調査も、新古典派経済学の「勝利」も「散開」も、ゲーム理論も、「沈黙の春」も、スタグフレーションも南北問題も・・・この本にはない。続きを書くことは、読者への宿題かもしれない。それ故に、よい意味でも悪い意味でも「古典的名著」。ヴォネガットの『スローターハウス5』の一節を引けば、「人生に必要なことは全て、フョードル・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に書いてある。・・・でも、もうそれだけじゃ足りないんだ! 」。
◎『哲学の歴史(全12巻+別巻1)』(中央公論新社、2007)
最新にして、野心的な哲学の歴史。
◎岩崎 武雄『西洋哲学史 再訂版』(有斐閣,1975)
手軽なサイズと値段のために,よく読まれた哲学史。関が原以東では,大学院入試準備にも用いられることも多かったとか。
◎九鬼周造『西洋近世哲学史稿』
ハイデガーを鼻であしらった天才 九鬼周造が,祇園から京大に通って講義した哲学史講義を,後にカント学者として大成する優等生 天野貞祐がノートにまとめたもの。タイトルとおり,ルネサンス期からヘーゲルの本のさわりまでしか扱わないが,平賀源内の放屁論から始めるキャッチーなつかみ,空前絶後の説明のわかりやすさなど,他の追随を許さない逸品。関が原以西では,大学院入試に必須だったとか。
◎W. T. Jones(1969), A History of Western Philosophy.
コプルストンは専門的すぎる(地の文は英語でも、引用はすべて原典から情け容赦なくラテン語、ギリシア語で引いてくる、しかも多い)、ラッセルは個性的すぎる、というのであれば、ジョーンズの5冊本がおすすめ。
3 文学史
世界文学全集の「おまけ」だが,これだけでも結構な読み物。
◎ドイツ文学案内 (岩波文庫)
ギリシア・ローマ古典文学案内 (岩波文庫 別冊 4)
いわずとしれた岩波文庫の文学案内。小さくて安くてわかりやすい。「世界文学あらすじ事典」みたいな本が平気で売られているような,今の時代こそ,活用すべき小品。
◎ミメーシス―ヨーロッパ文学における現実描写〈上〉 (ちくま学芸文庫)
ミメーシス―ヨーロッパ文学における現実描写〈下〉 (ちくま学芸文庫)
こちらは文学のディティールにとことんこだわった文学研究書。図書館もない土地で書かれたなんて,本当の碩学のみに可能な仕事。ホメロスからヴァージニア・ウルフまで扱うので,ヨーロッパ文学史のようにも読める。
=日本文学史=
「愛国的文化論は客観性に乏しく、他国人が日本文学史を書いたほうがより客観性がでるだろう」と考えていたドナルド・キーンを「私の蒙を啓いてくれた恩人」とうならせた愛国者による文学史。キーンによる本書解説にその辺は詳しい。
◎ドナルド・キーン『日本文学の歴史 全18巻』(中央公論社『日本文学史』,1976 →改定新版1994)
その後、キーンは小西甚一を訪問し、二人は知り合い意識しあう間柄となる。キーンは「他国人が書いた日本文学史」を断念しなかった。それもこのような大著で念願を果たした。本書の刊行パーティのスピーチで小西はこう受けてたった。「日本人に本当の日本文学史が書けないはずはありません。キーンさんのよりも良い文藝史を、わたくしが書きます」。
◎小西甚一『日本文藝史, 全5巻.』(講談社, 1985)
その「宣戦布告」を実現して,打ち立てられた日本文学史の巨塔がこの書である。
日本文学史の名を借りた、いい意味でも悪い意味でも、進歩的知識人が描いた日本思想史。滅法おもしろいが、これでいいのかと心配になるところも多数(そこがおもしろいのだが)。人によっては不愉快になる人もいるだろう(そこがおもしろいのだが)。
4 科学史
◎平田寛(1988)『科学の文化史』朝倉書店。
『図説 科学・技術の歴史』(平田、朝倉書店、1985)の増補改訂版。東洋の科学史は扱われていない。
現在もっともコストパフォーマンスよく学術レベルの科学史の通史を学ぶことができる本。
5 数学史
◎ボイヤー『数学の歴史 (全5巻)』(朝倉書店 1985)
通史として読めるもの。練習問題も豊富。
◎カジョリ『数学史 (全3巻)』 (津軽書房 1970)
非常に詳しくほとんど網羅されている資料集。
これ一冊でおなかいっぱいになる、アメリカの大学での標準的教科書。
◎武隈良一『数学史』(培風館 1959)
個人が手にしやすい値段で,かつ必要十分な内容を備えたコンパクトな1冊。
◎安藤洋美『高校数学史演習』(現代数学社 1999)
高校生にもわかる使える役に立つ数学史。演習の名のとおり練習問題も秀逸!
◎森毅、竹内啓数学の世界―それは現代人に何を意味するか (中公新書 317)
数学の世界を縦横に歩き回る対談。自在闊達かつゆるゆるの森毅に,スルーも納得しない竹内啓のおかげで,「数学の世界」のおおざっぱなマップを得ることができる。
いかに哲学者が数学をわかっていないかを,古代から現在にわたってこき下ろした(たとえば「ヘーゲルという人は、自説にちょうど都合がよい分だけ、同時代の科学についての知識を欠いていた人で・・・」)基礎論のところが最高。
6 統計学史
◎小杉肇『統計学史』恒星社厚生閣 1984
エジプト時代から日本の国勢調査まで、統計学の歴史がまとめられている。統計学の発展に寄与した多くの研究者が簡潔に紹介され、よみやすい。
◎イアン・ハッキング『偶然を飼いならす―統計学と第二次科学革命』(木鐸社、
1999)
科学においてなぜ統計学が必要なのか。いつもどおり読ませる筆致,考えさせる統計学史。
ハッキングよりもぐっと実務者向きの統計お話
7 化学史
少なめのページ数に良くまとめてある。
8 生物学史
生命科学・医学史研究の最新の成果を、トピックごとにそれぞれわかりやすく紹介。とりわけ社会史的な観点からのアプローチを重視した、新しい視点による生物学史研究入門書。
9 医学史
◎川喜田愛郎『近代医学の史的基盤 上 』『近代医学の史的基盤 下』(岩波書店、1977)
日本語で書かれた西洋医学史のうちで最高のもの。その情報密度は医学史事典としても使えるほど。
◎アッカークネヒト『世界医療史』(内田老鶴圃、2000)
原題A short history of medicine。「short history」というタイトル通りにコンパクトなボリュームなのだけれど、古代から現代、中国や中南米、アラビア医学を含み、そのカバリッジは「世界」というタイトルどおりに広い。当時の社会経済状況にも短いながらも的確な目配り。なぜ医学史を学ぶかを端的に説明した序文もすばらしい。
10 心理学史
心理学の成立から現代の心理学まで、心理学の大きな流れをコンパクトにまとめあげた入門テキスト。心理学史の方法論や日本の心理学史を含めた意欲的な一冊。
本書は1870年頃から1930年頃までの約50年間の動物心理学の変遷を豊富な資料を駆使し「自然科学としての心理学」の歴史と姿を詳述している。
11 経済学史
◎八木紀一郎『経済思想 (日経文庫―経済学入門シリーズ)』
きわめて簡潔。大まかな経済学の流れを確認するのによい。
分配、再生産と価値、生存、政府、効用、企業、失業といった7つのテーマごとに1章ずつ当て、ある程度深く踏み込んでいる。基礎だけでは退屈、いきなり応用だとわからないという人に有益。「見取り図」をつくるという著者の意図は、このリストの趣旨と一致する。
◎馬渡尚憲『経済学のメソドロジー―スミスからフリードマンまで』日本評論社
学派がことなると方法自体が異なる経済学。この本は経済学の方法に焦点を当てて、それらがどのように発展し、 様々な経済学の系譜を生み出したきたかを説明。
◎三土修平『経済学史』新世社
経済学史であっても数学的な展開がないと物足りない(数式があった方がむしろわかりやすい)という人にお薦め。代表的な経済理論を、簡潔な数理モデルを使って解説している。新古典派がモデルのベースだが、 マルクスも含めて他学派も「中立的」に扱っている。
◎ハンス ブレムス『経済学の歴史 1630‐1980―人物・理論・時代背景』
歴史上の経済理論を数理的にモデル化して(三土氏のものよりは、もう少しだけ複雑・現代的)分析した異色の経済学史。現在に近い理論により多くのページを割いている。三土氏のものが「中立的」だとしたら、新古典派に「偏って」いる。現在の経済学から見た経済学史、という試み。
◎『経済学大辞典 (3)』東洋経済新報社:
全3巻から成る、日本最大の経済学の辞典。掲載は大項目主義。 第3巻が経済史と経済学史。
◎『マーケティング学説史 アメリカ編』
◎経営革命の構造 (岩波新書)
12 社会学史
◎新睦人・大村英昭・宝月誠・中野正大・中野秀一郎『社会学のあゆみ 』(有斐閣新書一九七九年)。
新睦人・中野秀一郎編『社会学のあゆみ (パート2) ――新しい社会学の展開』(有斐閣新書一九八四年)。
二冊で一組。長く読まれてきた新書版の定番テキスト。近頃では、「意外と難しい」と、最初の一冊としてはどうかという意見も。むしろ社会学は「入門書」や「教科書」からはじめるほうがよいかも。
こちらはずっとやさしくなった継承版。
おもしろさ抜群の社会学史。社会学どころか、学問の始まりからはじめて、社会学の伝統を(1)紛争理論、(2)功利主義・合理的選択理論、(3)デュルケム理論、(4)ミクロ相互作用論の四つに整理し、それぞれの伝統に属する、今でも使える理論だけを紹介。コリンズはデュルケムおたくであり、その意味で実に偏向のある社会学史だが、だからこそ、めっぽう面白い。
◎D・マーチンデール『現代社会学の系譜〈上〉―社会学理論の性格と諸類型 (1970年)』(新装版・未来社1974年)
『現代社会学の系譜〈下〉―社会学理論の性格と諸類型 (1971年)』(新装版・未来社1974年)
2段組600ページの大作、日本語で読める最も詳しい社会学史。きわめて整然とした見立ての下に「社会学史」の全体像がまとめられており、なおかつ社会学周辺の研究や、今となってはマイナーな社会学者も省かない。「社会学者・学説」の箇条書き的紹介に過ぎない類書と異なり,大きな流れを一気に読ませる名著。
13 人類学史
見やすい構成、堅実かつ充実した内容(古典的でオーソドクスとも言える)、使える文献案内と、最初の人類学史にぴったりの書。
上記の書と比べて、より情報量、圧縮率ともに高し。より玄人向け。
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大体の概要や見通しを得るために、その歴史をざっとさらってみる方法がある。
1 「起源もの」という事典
◎ヨハン・ベックマン『西洋事物起原1、2、3、4』(岩波文庫)
主にドイツを中心に、西洋における様々な事物や出来事の発見・起源・伝播などを記した書物。言わば百科辞典のひとつひとつの項目を、ヨハン・ベックマンの博識で時間的に掘り下げたもの。
◎石井研堂「明治事物起原」(橋南堂,1908)
近代デジタルライブラリーや「docuneドキュン」ドキュメント共有サイトで読める
◎事物起源選集 / 紀田順一郎監修・解説 ; : 全9巻. -- クレス出版, 2004
石井研堂「明治事物起原」を含む、日本の事物起源ものを集成
ただし「起源」は確かめようがなく不確かな場合や「捏造」されたものである場合も多い。
2 哲学史・思想史
◎シュテーリヒ『西洋科学史』(現代教養文庫、全5巻)
普通なら哲学、自然科学、社会科学、人文科学などと分けられてしまう「諸科学」の流れを、人類の認識の発展として一貫して捉えた名著。古代ギリシア以前の諸文明から19世紀の物理学や進化論や精神分析の登場までを扱う。ないものねだりではあるが、この本の唯一の欠点は(多くの学史がそうなのだが)あまり近い過去、この本の場合なら20世紀を扱ってないこと。つまり相対性理論も量子力学も原子爆弾も、社会調査も、新古典派経済学の「勝利」も「散開」も、ゲーム理論も、「沈黙の春」も、スタグフレーションも南北問題も・・・この本にはない。続きを書くことは、読者への宿題かもしれない。それ故に、よい意味でも悪い意味でも「古典的名著」。ヴォネガットの『スローターハウス5』の一節を引けば、「人生に必要なことは全て、フョードル・ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』に書いてある。・・・でも、もうそれだけじゃ足りないんだ! 」。
◎『哲学の歴史(全12巻+別巻1)』(中央公論新社、2007)
最新にして、野心的な哲学の歴史。
◎岩崎 武雄『西洋哲学史 再訂版』(有斐閣,1975)
手軽なサイズと値段のために,よく読まれた哲学史。関が原以東では,大学院入試準備にも用いられることも多かったとか。
◎九鬼周造『西洋近世哲学史稿』
ハイデガーを鼻であしらった天才 九鬼周造が,祇園から京大に通って講義した哲学史講義を,後にカント学者として大成する優等生 天野貞祐がノートにまとめたもの。タイトルとおり,ルネサンス期からヘーゲルの本のさわりまでしか扱わないが,平賀源内の放屁論から始めるキャッチーなつかみ,空前絶後の説明のわかりやすさなど,他の追随を許さない逸品。関が原以西では,大学院入試に必須だったとか。
◎W. T. Jones(1969), A History of Western Philosophy.
コプルストンは専門的すぎる(地の文は英語でも、引用はすべて原典から情け容赦なくラテン語、ギリシア語で引いてくる、しかも多い)、ラッセルは個性的すぎる、というのであれば、ジョーンズの5冊本がおすすめ。
3 文学史
![]() | 世界文学史 (世界文学全集) (1993/06) 松平 千秋 商品詳細を見る |
世界文学全集の「おまけ」だが,これだけでも結構な読み物。
◎ドイツ文学案内 (岩波文庫)
ギリシア・ローマ古典文学案内 (岩波文庫 別冊 4)
![]() | フランス文学案内 (岩波文庫) (1990/03) 渡辺 一夫鈴木 力衛 商品詳細を見る |
![]() | 新版 ロシア文学案内 (岩波文庫) (2000/04) 藤沼 貴安岡 治子 商品詳細を見る |
いわずとしれた岩波文庫の文学案内。小さくて安くてわかりやすい。「世界文学あらすじ事典」みたいな本が平気で売られているような,今の時代こそ,活用すべき小品。
◎ミメーシス―ヨーロッパ文学における現実描写〈上〉 (ちくま学芸文庫)
ミメーシス―ヨーロッパ文学における現実描写〈下〉 (ちくま学芸文庫)
こちらは文学のディティールにとことんこだわった文学研究書。図書館もない土地で書かれたなんて,本当の碩学のみに可能な仕事。ホメロスからヴァージニア・ウルフまで扱うので,ヨーロッパ文学史のようにも読める。
![]() | 読書案内―世界文学 (岩波文庫) (1997/10) サマセット・モーム西川 正身 商品詳細を見る |
![]() | C.S.ルイス文学案内事典 (1998/11) ウォルター フーパー 商品詳細を見る |
=日本文学史=
![]() | 日本文学史 (講談社学術文庫) (1993/09) 小西 甚一 商品詳細を見る |
「愛国的文化論は客観性に乏しく、他国人が日本文学史を書いたほうがより客観性がでるだろう」と考えていたドナルド・キーンを「私の蒙を啓いてくれた恩人」とうならせた愛国者による文学史。キーンによる本書解説にその辺は詳しい。
◎ドナルド・キーン『日本文学の歴史 全18巻』(中央公論社『日本文学史』,1976 →改定新版1994)
その後、キーンは小西甚一を訪問し、二人は知り合い意識しあう間柄となる。キーンは「他国人が書いた日本文学史」を断念しなかった。それもこのような大著で念願を果たした。本書の刊行パーティのスピーチで小西はこう受けてたった。「日本人に本当の日本文学史が書けないはずはありません。キーンさんのよりも良い文藝史を、わたくしが書きます」。
◎小西甚一『日本文藝史, 全5巻.』(講談社, 1985)
その「宣戦布告」を実現して,打ち立てられた日本文学史の巨塔がこの書である。
![]() | 日本文学史序説〈上〉 (ちくま学芸文庫) (1999/04) 加藤 周一 商品詳細を見る |
![]() | 日本文学史序説〈下〉 (ちくま学芸文庫) (1999/04) 加藤 周一 商品詳細を見る |
![]() | 『日本文学史序説』補講 (2006/11) 加藤 周一 商品詳細を見る |
日本文学史の名を借りた、いい意味でも悪い意味でも、進歩的知識人が描いた日本思想史。滅法おもしろいが、これでいいのかと心配になるところも多数(そこがおもしろいのだが)。人によっては不愉快になる人もいるだろう(そこがおもしろいのだが)。
4 科学史
◎平田寛(1988)『科学の文化史』朝倉書店。
『図説 科学・技術の歴史』(平田、朝倉書店、1985)の増補改訂版。東洋の科学史は扱われていない。
![]() | 世界科学史話 (2008/03) 中村 邦光 商品詳細を見る |
現在もっともコストパフォーマンスよく学術レベルの科学史の通史を学ぶことができる本。
5 数学史
◎ボイヤー『数学の歴史 (全5巻)』(朝倉書店 1985)
通史として読めるもの。練習問題も豊富。
◎カジョリ『数学史 (全3巻)』 (津軽書房 1970)
非常に詳しくほとんど網羅されている資料集。
![]() | カッツ 数学の歴史 (2005/07) ヴィクター・J. カッツ 商品詳細を見る |
これ一冊でおなかいっぱいになる、アメリカの大学での標準的教科書。
◎武隈良一『数学史』(培風館 1959)
個人が手にしやすい値段で,かつ必要十分な内容を備えたコンパクトな1冊。
◎安藤洋美『高校数学史演習』(現代数学社 1999)
高校生にもわかる使える役に立つ数学史。演習の名のとおり練習問題も秀逸!
◎森毅、竹内啓数学の世界―それは現代人に何を意味するか (中公新書 317)
数学の世界を縦横に歩き回る対談。自在闊達かつゆるゆるの森毅に,スルーも納得しない竹内啓のおかげで,「数学の世界」のおおざっぱなマップを得ることができる。
![]() | ブルバキ数学史〈上〉 (ちくま学芸文庫) (2006/03) ニコラ ブルバキ 商品詳細を見る |
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いかに哲学者が数学をわかっていないかを,古代から現在にわたってこき下ろした(たとえば「ヘーゲルという人は、自説にちょうど都合がよい分だけ、同時代の科学についての知識を欠いていた人で・・・」)基礎論のところが最高。
6 統計学史
◎小杉肇『統計学史』恒星社厚生閣 1984
エジプト時代から日本の国勢調査まで、統計学の歴史がまとめられている。統計学の発展に寄与した多くの研究者が簡潔に紹介され、よみやすい。
◎イアン・ハッキング『偶然を飼いならす―統計学と第二次科学革命』(木鐸社、
1999)
科学においてなぜ統計学が必要なのか。いつもどおり読ませる筆致,考えさせる統計学史。
![]() | リスク〈上〉―神々への反逆 (日経ビジネス人文庫) (2001/08) ピーター バーンスタイン 商品詳細を見る |
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ハッキングよりもぐっと実務者向きの統計お話
7 化学史
![]() | 入門化学史 (科学史ライブラリー) (2007/09) T.H.ルヴィア 商品詳細を見る |
少なめのページ数に良くまとめてある。
8 生物学史
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生命科学・医学史研究の最新の成果を、トピックごとにそれぞれわかりやすく紹介。とりわけ社会史的な観点からのアプローチを重視した、新しい視点による生物学史研究入門書。
9 医学史
◎川喜田愛郎『近代医学の史的基盤 上 』『近代医学の史的基盤 下』(岩波書店、1977)
日本語で書かれた西洋医学史のうちで最高のもの。その情報密度は医学史事典としても使えるほど。
◎アッカークネヒト『世界医療史』(内田老鶴圃、2000)
原題A short history of medicine。「short history」というタイトル通りにコンパクトなボリュームなのだけれど、古代から現代、中国や中南米、アラビア医学を含み、そのカバリッジは「世界」というタイトルどおりに広い。当時の社会経済状況にも短いながらも的確な目配り。なぜ医学史を学ぶかを端的に説明した序文もすばらしい。
10 心理学史
![]() | 流れを読む心理学史―世界と日本の心理学 (有斐閣アルマ) (2003/10) サトウ タツヤ高砂 美樹 商品詳細を見る |
心理学の成立から現代の心理学まで、心理学の大きな流れをコンパクトにまとめあげた入門テキスト。心理学史の方法論や日本の心理学史を含めた意欲的な一冊。
![]() | 動物心理学史―ダーウィンから行動主義まで (1990/05) R. ボークス 商品詳細を見る |
本書は1870年頃から1930年頃までの約50年間の動物心理学の変遷を豊富な資料を駆使し「自然科学としての心理学」の歴史と姿を詳述している。
11 経済学史
◎八木紀一郎『経済思想 (日経文庫―経済学入門シリーズ)』
きわめて簡潔。大まかな経済学の流れを確認するのによい。
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分配、再生産と価値、生存、政府、効用、企業、失業といった7つのテーマごとに1章ずつ当て、ある程度深く踏み込んでいる。基礎だけでは退屈、いきなり応用だとわからないという人に有益。「見取り図」をつくるという著者の意図は、このリストの趣旨と一致する。
◎馬渡尚憲『経済学のメソドロジー―スミスからフリードマンまで』日本評論社
学派がことなると方法自体が異なる経済学。この本は経済学の方法に焦点を当てて、それらがどのように発展し、 様々な経済学の系譜を生み出したきたかを説明。
◎三土修平『経済学史』新世社
経済学史であっても数学的な展開がないと物足りない(数式があった方がむしろわかりやすい)という人にお薦め。代表的な経済理論を、簡潔な数理モデルを使って解説している。新古典派がモデルのベースだが、 マルクスも含めて他学派も「中立的」に扱っている。
◎ハンス ブレムス『経済学の歴史 1630‐1980―人物・理論・時代背景』
歴史上の経済理論を数理的にモデル化して(三土氏のものよりは、もう少しだけ複雑・現代的)分析した異色の経済学史。現在に近い理論により多くのページを割いている。三土氏のものが「中立的」だとしたら、新古典派に「偏って」いる。現在の経済学から見た経済学史、という試み。
◎『経済学大辞典 (3)』東洋経済新報社:
全3巻から成る、日本最大の経済学の辞典。掲載は大項目主義。 第3巻が経済史と経済学史。
◎『マーケティング学説史 アメリカ編』
◎経営革命の構造 (岩波新書)
12 社会学史
◎新睦人・大村英昭・宝月誠・中野正大・中野秀一郎『社会学のあゆみ 』(有斐閣新書一九七九年)。
新睦人・中野秀一郎編『社会学のあゆみ (パート2) ――新しい社会学の展開』(有斐閣新書一九八四年)。
二冊で一組。長く読まれてきた新書版の定番テキスト。近頃では、「意外と難しい」と、最初の一冊としてはどうかという意見も。むしろ社会学は「入門書」や「教科書」からはじめるほうがよいかも。
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こちらはずっとやさしくなった継承版。
![]() | ランドル・コリンズが語る社会学の歴史 (1997/08) ランドル コリンズ 商品詳細を見る |
おもしろさ抜群の社会学史。社会学どころか、学問の始まりからはじめて、社会学の伝統を(1)紛争理論、(2)功利主義・合理的選択理論、(3)デュルケム理論、(4)ミクロ相互作用論の四つに整理し、それぞれの伝統に属する、今でも使える理論だけを紹介。コリンズはデュルケムおたくであり、その意味で実に偏向のある社会学史だが、だからこそ、めっぽう面白い。
◎D・マーチンデール『現代社会学の系譜〈上〉―社会学理論の性格と諸類型 (1970年)』(新装版・未来社1974年)
『現代社会学の系譜〈下〉―社会学理論の性格と諸類型 (1971年)』(新装版・未来社1974年)
2段組600ページの大作、日本語で読める最も詳しい社会学史。きわめて整然とした見立ての下に「社会学史」の全体像がまとめられており、なおかつ社会学周辺の研究や、今となってはマイナーな社会学者も省かない。「社会学者・学説」の箇条書き的紹介に過ぎない類書と異なり,大きな流れを一気に読ませる名著。
13 人類学史
![]() | 人類学的思考の歴史 (2007/06) 竹沢 尚一郎 商品詳細を見る |
見やすい構成、堅実かつ充実した内容(古典的でオーソドクスとも言える)、使える文献案内と、最初の人類学史にぴったりの書。
![]() | 人類学の歴史と理論 (明石ライブラリー) (2005/02) アラン バーナード 商品詳細を見る |
上記の書と比べて、より情報量、圧縮率ともに高し。より玄人向け。
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