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2010.07.11
あなたの知識は5年後には陳腐化する/理科離れと科学知識の更新コスト
科学技術者の現在は、すでに決してばら色ではない。
老練の技術者が、新たな技術の登場によって退場する羽目になり、慣れぬ営業などに異動配属されることは、見慣れた光景となった。
自分の親がそうした憂き目にあったところを見た子供たちは、さて科学技術を学んでそれを職業にしようと思うだろうか。
現在の「最新の科学技術」を身につけても早晩陳腐化することを知りながら、現在の科学技術を学ぶことに時間と労力を費やそうと思うだろうか。
「A:科学が進むとB:科学(理科)離れが進む」
なぜなら、
A:科学が進む(A1:科学研究の体制が大きくなる→A2:科学進歩の速度があがる)
→C:科学知識の更新コストが上がる(C1:科学知識の陳腐化の速度もあがる→C2:科学知識から同じだけの利益を上げるためには、ますます多くのコストを新しい科学知識の取得・更新にかけなくてはならない)
→B1:科学知識を取得が多くの人にとってペイしないもの、「高くつきすぎる」ものになる
→B:科学(理科)離れが進む。
(命題を整理する)
A:科学が進む(≒A’科学進歩の速度が上がる)
B:理科離れが進む(≒B’科学を学ぶことのコストがペイしない人が増える)
¬A’:科学進歩の速度がゆっくり(例えば産業革命以前のヨーロッパ)
¬B’:科学を学ぶことのコストがペイしない人が増えない(減る)
(反証)
A’→¬B’ (科学進歩の速度がゆっくりだと、科学を学ぶコストがペイしない人は増えない(減る)
科学進歩がゆっくりな時代は、そもそも科学を学ぶコスト自体が高かった。
一部の人しか学べず科学に携わる人も少なかった。それが科学進歩がゆっくりな理由のひとつでもあった。
D:科学知識の習得コストが高い→E:科学を学べる人が少ない→¬A’:科学進歩の速度がゆっくり
(考察)
「理科離れ」がパラドックスであるのは、学会などの科学者コミュニティ、大学などの研究+教育機関、公教育でのカリキュラム化などにより科学知識の生産・流通の仕組み・経路が整えられたことで、科学知識の習得コストが低くなったはずなのに、その結果(しかも意図した結果)として「A’科学進歩の速度が上がる」ことから、科学知識の陳腐化の速度も上がり、科学知識の更新コストがあがり、科学知識の習得コストの一部分が高まった(最初の変化と反対の動き)ところにある。
老練の技術者が、新たな技術の登場によって退場する羽目になり、慣れぬ営業などに異動配属されることは、見慣れた光景となった。
自分の親がそうした憂き目にあったところを見た子供たちは、さて科学技術を学んでそれを職業にしようと思うだろうか。
現在の「最新の科学技術」を身につけても早晩陳腐化することを知りながら、現在の科学技術を学ぶことに時間と労力を費やそうと思うだろうか。
「A:科学が進むとB:科学(理科)離れが進む」
なぜなら、
A:科学が進む(A1:科学研究の体制が大きくなる→A2:科学進歩の速度があがる)
→C:科学知識の更新コストが上がる(C1:科学知識の陳腐化の速度もあがる→C2:科学知識から同じだけの利益を上げるためには、ますます多くのコストを新しい科学知識の取得・更新にかけなくてはならない)
→B1:科学知識を取得が多くの人にとってペイしないもの、「高くつきすぎる」ものになる
→B:科学(理科)離れが進む。
(命題を整理する)
A:科学が進む(≒A’科学進歩の速度が上がる)
B:理科離れが進む(≒B’科学を学ぶことのコストがペイしない人が増える)
¬A’:科学進歩の速度がゆっくり(例えば産業革命以前のヨーロッパ)
¬B’:科学を学ぶことのコストがペイしない人が増えない(減る)
(反証)
A’→¬B’ (科学進歩の速度がゆっくりだと、科学を学ぶコストがペイしない人は増えない(減る)
科学進歩がゆっくりな時代は、そもそも科学を学ぶコスト自体が高かった。
一部の人しか学べず科学に携わる人も少なかった。それが科学進歩がゆっくりな理由のひとつでもあった。
D:科学知識の習得コストが高い→E:科学を学べる人が少ない→¬A’:科学進歩の速度がゆっくり
(考察)
「理科離れ」がパラドックスであるのは、学会などの科学者コミュニティ、大学などの研究+教育機関、公教育でのカリキュラム化などにより科学知識の生産・流通の仕組み・経路が整えられたことで、科学知識の習得コストが低くなったはずなのに、その結果(しかも意図した結果)として「A’科学進歩の速度が上がる」ことから、科学知識の陳腐化の速度も上がり、科学知識の更新コストがあがり、科学知識の習得コストの一部分が高まった(最初の変化と反対の動き)ところにある。
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sho
気になった事をいくつか。
1.ペイできる科学技術="最新の科学技術"なのか?
確かに宇宙開発やロボットなどの花形最新技術は、最先端で競争することに重きが置かれますが、農学や化学、バイオの分野は、製品開発や環境調査など、必ずしも最先端でなくても、その専門知識を生かして食べていけるようなキャリアはある程度存在するように思います。
2.そもそも「ペイできるかどうか」という要素が、理科離れと直結するのか?
日本の教育システムにおいて、理系・文系の振り分けがなされるのは、大学入試の時点です。このタイミングにおいて、将来的に稼げるかどうか、と言う発想で進路を選択する高校生は少ないように思います。
(将来を考えていたとしても、漠然とした高学歴→大企業コース、あるいは弁護士、医者などの高度専門職、といったキャリアプランを考える人が多いのではないでしょうか。)
本トピックの中核になっている、「科学技術の進歩・発展と陳腐化の関係性」については納得できるのですが、それを今問題視されている理科離れまでつなげるには、すこし飛躍しているのではないか?と思います。
もちろん事業仕分けにおいて「2番でもいいのでは?」という発言が物議を醸したように、「最先端の科学技術」が、現代の社会においてどの程度意義を持ちうるのか、と言う事は非常に重要な論点であることは確かです。
しかし、科学政策一般や「理科離れ」を語るにあたっては、もうすこし間口を広げた理系のキャリアや、将来性を含めて考えていかなければいけないのではないでしょうか?
1.ペイできる科学技術="最新の科学技術"なのか?
確かに宇宙開発やロボットなどの花形最新技術は、最先端で競争することに重きが置かれますが、農学や化学、バイオの分野は、製品開発や環境調査など、必ずしも最先端でなくても、その専門知識を生かして食べていけるようなキャリアはある程度存在するように思います。
2.そもそも「ペイできるかどうか」という要素が、理科離れと直結するのか?
日本の教育システムにおいて、理系・文系の振り分けがなされるのは、大学入試の時点です。このタイミングにおいて、将来的に稼げるかどうか、と言う発想で進路を選択する高校生は少ないように思います。
(将来を考えていたとしても、漠然とした高学歴→大企業コース、あるいは弁護士、医者などの高度専門職、といったキャリアプランを考える人が多いのではないでしょうか。)
本トピックの中核になっている、「科学技術の進歩・発展と陳腐化の関係性」については納得できるのですが、それを今問題視されている理科離れまでつなげるには、すこし飛躍しているのではないか?と思います。
もちろん事業仕分けにおいて「2番でもいいのでは?」という発言が物議を醸したように、「最先端の科学技術」が、現代の社会においてどの程度意義を持ちうるのか、と言う事は非常に重要な論点であることは確かです。
しかし、科学政策一般や「理科離れ」を語るにあたっては、もうすこし間口を広げた理系のキャリアや、将来性を含めて考えていかなければいけないのではないでしょうか?
2010/07/12 Mon 01:51 URL [ Edit ]
haha
新しい技術が、上昇する知識の更新コストよりも価値があれば習得する意味があるし、そうでなければ使われないということだけじゃないでしょうか?
科学の世界にも格差ができるということでしょう。なので、地味な分野は理科離れが進み、分かりやすい分野には理科進みとなるのでは?
科学の世界にも格差ができるということでしょう。なので、地味な分野は理科離れが進み、分かりやすい分野には理科進みとなるのでは?
2010/07/13 Tue 13:16 URL [ Edit ]
だいきち
科学が進歩すると、それに対応できないオッサンが居なくなるのが速いって事ですよね?
科学はオッサンに冷たい仕事→将来を不安に感じた若者が、科学の道を歩まないって理屈なんだろうけどさ・・・
目障りで高給取りなオッサンが居ない職場で、20代の若者が権限と高級を与えられるとなれば、それだけで魅力的な職場に思えますけどねえ?
私も科学の進歩が知識の腐敗を早めるは同意しますけど、それで理科離れが起きる事は別問題じゃないですかね?
科学分野を目指す若者の性格は、科学の進歩前と後では大きく変わるかもね。
科学はオッサンに冷たい仕事→将来を不安に感じた若者が、科学の道を歩まないって理屈なんだろうけどさ・・・
目障りで高給取りなオッサンが居ない職場で、20代の若者が権限と高級を与えられるとなれば、それだけで魅力的な職場に思えますけどねえ?
私も科学の進歩が知識の腐敗を早めるは同意しますけど、それで理科離れが起きる事は別問題じゃないですかね?
科学分野を目指す若者の性格は、科学の進歩前と後では大きく変わるかもね。
2010/07/24 Sat 20:51 URL [ Edit ]
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