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2011.01.13
すべての書籍は「中古品」である/図書館で本より雑誌を見るべき5つの理由
初心者向け図書館講座を続けよう。
図書館にあるのは書籍だけだと思うのは狭い考えだ。
とはいうものの、そう思うのは図書館や図書館を紹介してきた者にも責任がある。
今回取り上げる図書館資源は、雑誌である。
雑誌は、ともすれば、書籍よりも格下の存在と見なされてきた。
しかし知識の担い手や情報流通の観点から見れば、ほとんどすべての書籍は「セコハン(secondhand)」であり、ほとんど「二次著作物」と言っては過言であるが、言い足りないよりは言い過ぎた方がいい。
本の最初や最後の方に「初出」がどうとかと書いてあるのを見たことがあるだろう。
今のような出版のしくみができた以降の書籍は、自主出版でもない限り、雑誌(学術誌などを含む)などに載ったものを元にして作られていることが多い。
書き下ろしの本は、思うよりずっと少ない。
一応は「書き下ろし」の形をとっていても、内容はその著者がどこかで書いたり、話したりしたことが元になっていることも多い。
「書き下ろし」の企画が通るには、その著者がそうした内容を書くのにふさわしいと編集者や出版社に認められる必要があるが、そのためには企画に先立ってその著者がなんらかの形で情報発信していて、それを編集者なりがそれを読んだり聞いたりしているはずである。
書籍はぶっちゃけ、雑誌などの「下流」に位置する。
このことから次のようなことが生じる。
1.雑誌記事の内容は書籍より新しい
雑誌に載ったものが、その後、書籍になる(ことが多い)のだから当然である。
書籍をつくるのは雑誌よりも時間がかかる(時間をかける)のが普通だから、雑誌に載った後に書籍になるとしても、そこにさらにタイムラグが生まれる。
そして調べものというニーズで言えば、できるかぎり新しい情報を得たい場合が大半である。
新しいテーマやトピックについて調べようという場合、そもそもそのテーマについての書籍がない場合も多い。しかし、そうした場合でも雑誌記事は見つかる場合がある。
2.雑誌記事の内容は書籍よりも多様である
なんとなれば雑誌に掲載された記事のごく一部しか書籍にならないからだ。
これは一面では書籍の利点(アドバンテージ)でもある。「選りすぐられたもの」だけが書籍になるとも考えられるからだ。
しかしこのことは必ずしも内容の質を保証しない。たとえば商業的にペイするかどうかは書籍化にあたって重要な要素であろう。つまり売れそうにないものは書籍になりにくい。
我々が何か調べようとする場合、そのテーマやトピックはポピュラーなものとは限らない。むしろ、誰もが知っていることを調べても仕方がないだろうから、調べもののテーマはマイナーなものになることが珍しくない。
このことも、調べるなら書籍だけでなく雑誌記事にも当たらなくてはならない理由のひとつである。
3.雑誌記事は書籍より詳細である
専門雑誌や学術雑誌など、多くの人を相手にする訳ではない雑誌の場合、その分野の人なら当然知っているべき入門的知識に紙面を割く必要はない。
むしろある特定の事項に絞って突っ込んだ内容を盛り込むことが多い。学術論文はその最たる例だ。
特定の事項に絞ってあるので詳しいタイトルがつくことが多く、知りたいことズバリの内容を検索するのにもよい。
網羅的に書かれた書籍は、こうした記事を要約して(詳細は省いて)まとめたものが多い。
書籍でざっくり概説的な知識を得た後、さらに突っ込んで知ろうとする場合は、こうした専門雑誌の記事に当たる必要がある。
4.雑誌記事は書籍よりも短い
雑誌記事は、書籍よりも〈新しく〉〈多様〉で〈詳細〉であると言った。
もう一つ大きな特徴がある。雑誌記事は大抵の場合、書籍よりも短い。
短いことはいいことだ。同じ読書速度なら、短い方がたくさん読める。
調べものの観点から言えば、たくさん読めるというのは、より多くの情報源に当たることができるということだ。
1冊の本を読む時間に10本の雑誌記事が読めるとしたら、しかも〈新しく〉〈多様〉で〈詳細〉なのだ、これを使わない手はないだろう。
5.雑誌記事を追うには図書館へ行け
しかし本を読めと宣う人は多いが、雑誌を読めと言ってくれる人はあまりいない。
せいぜい指導教官や研究室のおせっかいな先輩が「論文を読め」「論文を読まないなら死ね」と言ってくれるくらいだ。
論文は学術雑誌に載っている、といった当たり前のことは、誰も教えてくれない。
探すべきは学術雑誌や論文だけではない。
知りたい情報が専門誌は無論、一般誌にも載っていることも少なくない。
くだらない眉唾ものの記事ばかり載せているように思える大衆雑誌も、そのくだらない記事が年月を経ると、その時代を映す貴重な資料になることだってある。
なにしろ雑誌はたくさんある。
この多様性もまた、先に見たように雑誌(記事)のメリットなのだが、個人が入手し収集できる雑誌はごく限られている。
多様性のメリットを発揮するには、多くの雑誌を長期間に渡って収集するところが必要になる。
だから図書館なのだ。
雑誌記事を使いこなすには、記事ひとつひとつが検索できる必要がある。
雑誌記事検索のためのツールは従来玄人向けで、小さな図書館は所蔵してないことも多かった。
今は国会図書館の雑誌記事索引がインターネットで誰でも使える。
あなたの行きつけの図書館にあまり雑誌が揃っていなくても、国会図書館の雑誌記事索引で見つけたものなら、有料だがその記事をコピーして自宅や職場に送ってもらえる。郵送料込みで数百円、時間も1週間かからない。
もちろん、行きつけの図書館を介しても依頼できる。
国立国会図書館 遠隔複写サービスの紹介ページ
http://www.ndl.go.jp/jp/service/copy3.html
自宅で雑誌記事を手に入れる方法は、以前書いた次の記事が参考になるかもしれない。
自宅でできるやり方で論文をさがす・あつめる・手に入れる 読書猿Classic: between / beyond readers
図書館にあるのは書籍だけだと思うのは狭い考えだ。
とはいうものの、そう思うのは図書館や図書館を紹介してきた者にも責任がある。
今回取り上げる図書館資源は、雑誌である。
雑誌は、ともすれば、書籍よりも格下の存在と見なされてきた。
しかし知識の担い手や情報流通の観点から見れば、ほとんどすべての書籍は「セコハン(secondhand)」であり、ほとんど「二次著作物」と言っては過言であるが、言い足りないよりは言い過ぎた方がいい。
本の最初や最後の方に「初出」がどうとかと書いてあるのを見たことがあるだろう。
今のような出版のしくみができた以降の書籍は、自主出版でもない限り、雑誌(学術誌などを含む)などに載ったものを元にして作られていることが多い。
書き下ろしの本は、思うよりずっと少ない。
一応は「書き下ろし」の形をとっていても、内容はその著者がどこかで書いたり、話したりしたことが元になっていることも多い。
「書き下ろし」の企画が通るには、その著者がそうした内容を書くのにふさわしいと編集者や出版社に認められる必要があるが、そのためには企画に先立ってその著者がなんらかの形で情報発信していて、それを編集者なりがそれを読んだり聞いたりしているはずである。
書籍はぶっちゃけ、雑誌などの「下流」に位置する。
このことから次のようなことが生じる。
1.雑誌記事の内容は書籍より新しい
雑誌に載ったものが、その後、書籍になる(ことが多い)のだから当然である。
書籍をつくるのは雑誌よりも時間がかかる(時間をかける)のが普通だから、雑誌に載った後に書籍になるとしても、そこにさらにタイムラグが生まれる。
そして調べものというニーズで言えば、できるかぎり新しい情報を得たい場合が大半である。
新しいテーマやトピックについて調べようという場合、そもそもそのテーマについての書籍がない場合も多い。しかし、そうした場合でも雑誌記事は見つかる場合がある。
2.雑誌記事の内容は書籍よりも多様である
なんとなれば雑誌に掲載された記事のごく一部しか書籍にならないからだ。
これは一面では書籍の利点(アドバンテージ)でもある。「選りすぐられたもの」だけが書籍になるとも考えられるからだ。
しかしこのことは必ずしも内容の質を保証しない。たとえば商業的にペイするかどうかは書籍化にあたって重要な要素であろう。つまり売れそうにないものは書籍になりにくい。
我々が何か調べようとする場合、そのテーマやトピックはポピュラーなものとは限らない。むしろ、誰もが知っていることを調べても仕方がないだろうから、調べもののテーマはマイナーなものになることが珍しくない。
このことも、調べるなら書籍だけでなく雑誌記事にも当たらなくてはならない理由のひとつである。
3.雑誌記事は書籍より詳細である
専門雑誌や学術雑誌など、多くの人を相手にする訳ではない雑誌の場合、その分野の人なら当然知っているべき入門的知識に紙面を割く必要はない。
むしろある特定の事項に絞って突っ込んだ内容を盛り込むことが多い。学術論文はその最たる例だ。
特定の事項に絞ってあるので詳しいタイトルがつくことが多く、知りたいことズバリの内容を検索するのにもよい。
網羅的に書かれた書籍は、こうした記事を要約して(詳細は省いて)まとめたものが多い。
書籍でざっくり概説的な知識を得た後、さらに突っ込んで知ろうとする場合は、こうした専門雑誌の記事に当たる必要がある。
4.雑誌記事は書籍よりも短い
雑誌記事は、書籍よりも〈新しく〉〈多様〉で〈詳細〉であると言った。
もう一つ大きな特徴がある。雑誌記事は大抵の場合、書籍よりも短い。
短いことはいいことだ。同じ読書速度なら、短い方がたくさん読める。
調べものの観点から言えば、たくさん読めるというのは、より多くの情報源に当たることができるということだ。
1冊の本を読む時間に10本の雑誌記事が読めるとしたら、しかも〈新しく〉〈多様〉で〈詳細〉なのだ、これを使わない手はないだろう。
5.雑誌記事を追うには図書館へ行け
しかし本を読めと宣う人は多いが、雑誌を読めと言ってくれる人はあまりいない。
せいぜい指導教官や研究室のおせっかいな先輩が「論文を読め」「論文を読まないなら死ね」と言ってくれるくらいだ。
論文は学術雑誌に載っている、といった当たり前のことは、誰も教えてくれない。
探すべきは学術雑誌や論文だけではない。
知りたい情報が専門誌は無論、一般誌にも載っていることも少なくない。
くだらない眉唾ものの記事ばかり載せているように思える大衆雑誌も、そのくだらない記事が年月を経ると、その時代を映す貴重な資料になることだってある。
このことにいち早く気付いた大宅壮一は膨大な雑誌のコレクションと独自の分類をつくったが、彼の死後、このコレクションをもとに大宅壮一文庫がつくられ、現在でも年間2万人の利用がある。 このコレクションの「雑誌記事索引総目録」が件名別、人名別で刊行されており、これを使って明治時代から現在までの大衆誌の記事を検索できる。普通の雑誌記事索引では見られない記事を拾っているところが貴重。 公式サイト:http://www.oya-bunko.or.jp/ |
なにしろ雑誌はたくさんある。
この多様性もまた、先に見たように雑誌(記事)のメリットなのだが、個人が入手し収集できる雑誌はごく限られている。
多様性のメリットを発揮するには、多くの雑誌を長期間に渡って収集するところが必要になる。
だから図書館なのだ。
雑誌記事を使いこなすには、記事ひとつひとつが検索できる必要がある。
雑誌記事検索のためのツールは従来玄人向けで、小さな図書館は所蔵してないことも多かった。
今は国会図書館の雑誌記事索引がインターネットで誰でも使える。
『雑誌記事索引』は「国立国会図書館NDL-OPAC」http://opac.ndl.go.jp/ のページから「雑誌記事索引の検索/申込み」をクリックして検索する。 1948年から現在までの国内刊行の学術雑誌を中心とした雑誌記事情報を収録(1948~74年は人文・社会系のみ)。 ※国会図書館が所蔵するすべての雑誌の記事が検索できるわけではない。検索可能な雑誌と記事が採録されている期間については、雑誌記事索引採録誌一覧で確認できる。 なお、学術雑誌については、国立情報学研究所(NII)の「CiNii(NII論文情報ナビゲータ)」http://ci.nii.ac.jp/ で、上記の『雑誌記事索引』に加えて、国内の学協会誌、大学研究紀要などの論文情報を検索でき、一部の論文は全文の閲覧が可能。 |
あなたの行きつけの図書館にあまり雑誌が揃っていなくても、国会図書館の雑誌記事索引で見つけたものなら、有料だがその記事をコピーして自宅や職場に送ってもらえる。郵送料込みで数百円、時間も1週間かからない。
もちろん、行きつけの図書館を介しても依頼できる。
国立国会図書館 遠隔複写サービスの紹介ページ
http://www.ndl.go.jp/jp/service/copy3.html
自宅で雑誌記事を手に入れる方法は、以前書いた次の記事が参考になるかもしれない。
自宅でできるやり方で論文をさがす・あつめる・手に入れる 読書猿Classic: between / beyond readers
(その他の役立つツール) 『明治・大正・昭和前期雑誌記事索引集成』(皓星社) 明治初期から昭和前期までの人文科学、社会科学など各テーマの雑誌記事索引と雑誌毎の目次を掲載したもの。 上記の国会図書館「雑誌記事索引」作成以前の時代について、雑誌記事・論文を網羅的に調べることができる。 皓星社ホームページで執筆者索引検索と総目次検索が可能。 Scirus http://www.scirus.com/srsapp/ Elsevier社が提供する科学技術情報に特化したサーチ・エンジン。MEDLINE/PubMed(医薬学関係の雑誌論文書誌情報)やScienceDirect (1,800誌以上の主として科学技術専門誌の全文情報有料、抄録までは無料)、SIAM、CogPrints、arXiv.org e-Print archiveをサービス・ソースとし、科学技術雑誌論文の検索にも使える。 ArticleFinder http://www4.infotrieve.com/search/databases/newsearch.asp Infotrieve社が提供する雑誌論文検索・発注システムで、書誌事項の検索までは無料。採録誌54,000誌以上、収録レコード数は2,600万件以上。サービス・ソースはMEDLINE、ERIC、IEEE、IEE、Infotrieve社が作成している雑誌目次情報のTable of Contents(TOC)外部サイトへのリンクおよび電子ジャーナル目次情報のeContent外部サイトへのリンクなど。 大学や研究機関に所属していない個人も合わせ技で、ScirusやArticleFindeやGoogle Scholarで見つけた(がオンラインでは入手できない)雑誌記事を、(すべての雑誌ではないが)国会図書館NDL-OPACで検索して郵送取り寄せするも可能。 「国立国会図書館NDL-OPAC」http://opac.ndl.go.jp/ のページから「一般資料の検索/申込み」ボタンを押して、「洋雑誌新聞」にチェックを入れて、タイトルの検索ボックスに雑誌名を入力し検索→見つかったら書誌情報画面左上の「所蔵詳細/申込み」ボタンを押し、該当号を選ぶ。 |
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