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     英辞郎は、1980年代にある翻訳家(匿名希望)による個人の英単語用例集として始められ、その後結成されたEDP(Electronic Dictionary Project)によって長年共同編纂が続けられている「成長する辞書」である。
     正確さは保障されないものの、2012年04月時点で、英和見出項目数 = 187 万、和英見出項目数 = 251 万を越える辞書データには、一般的な単語や連語から、イディオム、ビジネス用語、経済用語、法律用語、特許用語、コンピュータ用語、科学技術用語、医学用語、固有名詞(組織名、企業名、人名、国名、映画名)、スラングなど、通常の英語辞書にない新しい語彙や複雑な言い回しも含まれる。

     〈英辞郎 on the WEB〉http://www.alc.co.jp/ は、これをオンライン上で無料で利用できるものだが、膨大な語義、用例が、かえって目的の表現を見つけにくくしているところがある。
     例えば、act のような基礎レベルの単語を検索してしまうと35,000 件以上がヒットしてしまう。
     
     しかし無い袖は振れないが、あるデータは上手く篩(ふるい)にかけることができれば有用に活用できるはずである。
     同じ検索エンジンを使っても、なれない人と達意の人の見つけてくるものは雲泥の差であることが、このことを示している。
     
     以下は、知っている人には常識に属するものだが、いくつかのコツを知っておくだけで検索効率は格段に向上する。より多く辞書をひくことができれば、より多くの表現に触れることができ、言語運用能力の向上が見込めるだろう。
     
     以下、カギ括弧でくくった「__」の部分は、〈英辞郎 on the WEB〉による検索例へのリンクとなっている。
     
     
     
    1.2語以上で検索

     検索エンジンの使い方を学ぶ小学生がまず最初に教えられることと同じである。
     
     紙の辞書の場合、1語ずつ引く必要があるので、そのやり方を検索エンジンやオンライン辞書に持ち込む人が意外に少なくない。
     
     例えば次の表現
     
     address the growing food security problems
     
    を調べようとすると、慣れない人や紙辞書のやり方を持ち込む人は、「address」や「security」「problem」を調べようとする。
     見知った単語であるが辞書を引く必要がある語というのは大抵の場合、多くの語義を持っている。そのうちのどれが該当するのか探すのにもう一苦労が待っている。
     
     ここはもちろん「address problem」や「food security」や「growing problem」で検索するのが正しい。
     すると一発で必要が訳が手に入る。
     
     しかしこれだけでは、いささか天下り的である。
     「address problem」や「food security」というフレーズを知っているから、そういうことが思いつけるのだ、知らない場合はどうするのだ?という反論が予想される。
     
     なので、より普遍的なルールにしておこう。
     
     英語の意味を知りたい時は、1語でなく2~3語を入れて検索すること。
     
     検索語を増やすことは、篩(ふるい)を増やすことだ。
     
     分からないと目される単語(例えばaddressやsecurity)だけでなく、それと結びつく単語(addressならその目的語となっているproblem、securityならそれを修飾しているfood)を、スペースで区切って追加することで、結果を絞り込むことができる。
     



    2.英語&日本語で検索する

     〈2語以上で検索する〉の応用発展だが、これも基本ワザ。
     英辞郎は、英語と日本語を同時に検索語にして検索することができる。
     これを使って多過ぎる語義や用例の中から、必要な表現を更に絞り込むことができる。
     
     単純な例でいえば、そのままでは35000件以上がヒットする「act」、名詞の基本語義だけでも
     
    行為、活動、言動/〔立法機関による〕布告、法令、決議/見せ掛け、振り/〔演劇・歌劇などの〕幕、段◆【参考】scene/〔ショーなどの短い〕出し物、演目/〔ショーなどの〕芸能人、俳優、歌手

    とふんだんにあるが、「法律」としてのactについて検索したいなら「act 法」と入力して検索すればいい。

     先の例を蒸し返すと「address problem」や「growing problem」の替りに「address 問題」や「growing 問題」で検索することで

    ・「address 問題」からは〈address problems〉(問題に取り組む)の他に〈address a issue〉〈address a question〉〈address a challenge〉という表現があること、
    ・「growing 問題」から〈growing problem〉(深刻さを増す問題)の他に〈growing concerns〉という表現があることを知ることができる。

     この英語&日本語の搦め手でコロケーションを探すのは、紙の辞書では難しい。

     日本語→英語を探すときも、日本語のフレーズに英単語をひとつ追加しておくだけで、絞り込みが効き、目的の表現が素早く見つかる。
     



    3.[__]で囲って変化形ごと検索

     英辞郎では、googleと同様に
    ・OR 検索:「◯◯◯」と「△△△」のどちらかを含んだ見出し語を検索する
    →複数の検索キーワードを「|」[パイプと呼ばれる記号]で区切る
    (例)do (one's | your | his | her | its | our | their) best
    …文章の主語によって変わるdo one's bestの「one's」、すべてを漏らさず検索する


    ・NOT 検索:「◯◯◯」を含み、「△△△」を含まない見出し語を検索する
    →検索条件から除外したい検索キーワードの前に「-」[ハイフン]をつける
    (例) explore -探検
    …「探検」以外で、exploreの訳語にどんなものがあるか探す
    (例)内閣 -(は | が | の | を | に | で | へ | と | から)
    …「内閣」を含み助詞が続くもの以外を探す


    ・フレーズ検索:「◯◯◯ △△△」を指定した通りの順番で含んだ見出し語を検索する
    →スペースで区切られた複数の検索キーワードを「" "」[引用符]で囲む
    (例)"catch|deal|put|take the risk of"
    …動詞+the risk ofで候補となる動詞を全て同時に検索(ORの「|」(パイプ)も同時に使える)→take the risk ofが正解とわかる

    などが使えるが、それ以外に
    ・変化形検索:変化形も含めて検索する
    が使える。
     変化形も含めて検索したい単語を[ ] で囲んで検索するだけでよい。

     変化形は、動詞の活用形や形容詞・副詞の比較級・最大級、名詞の単数形・複数形などだが、検索文字列に表示される変化形検索対象の単語の上にマウスオーバーすることで確認することができる。
     
    (例) you [go] away
    ……you + go の原形・変化形( goes, going, went, gone ) + away で検索 する





    4.語数指定のワイルドカード検索

     googleでも「 * 」の部分を任意の文字に置き換えて検索してくれたが、英辞郎では置き換える単語の数を指定できる。
     
    (例)can {1} help
    …「can you help」 のように、「can」と「help」の間に単語が 1 個あるデータを検索する


    なお、ワイルドカードは複数箇所で使える。
    (例) so {1} that {1} can
    …「so compact that you can」 や 「so large that they can」 のように、「so」と「that」と「can」の間に単語が 1 個挟まれているデータを検索する


    (例)can {1,} help
    …「can you help」 や 「can be of help」 のように、「can」と「help」の間に単語が 1 個以上あるデータを検索する

    (例)stand {1,3} chance
    …「stand a chance」 や 「stand a fair chance」、「stand less of a chance」 のように、「stand」と「chance」の間に単語が 1 個以上、3 個以下あるデータを検索する



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    (2010/10)
    衣笠 忠司

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