| Home |
2012.05.27
97冊から選りすぐり→外国語学習の成功者たちがやったことまとめ
『私はこうして◯◯語をマスターした』という本は腐るほど存在する。
しかし、言語学習の研究者によれば、北米では研究者が複数の学習成功者の体験を収集し分析することはあっても、個人の学習履歴を本人が書籍にまとめることはほとんどない。
ヨーロッパではロンブー・カトーの記録などいくつか例はあるが、毎年複数冊が出版される日本のような盛況には程遠いという。
大量の語学学習成功者本は、他にはない貴重なデータ群であると言える。
竹内理(2003)は、この種の著作120冊のうち97冊を入手し、普通の語学学習者の参考となる体験を得られるよう下記の7つの条件を満たすものを選び出し、著作のみでは情報の不足する場合については他の出版物、経歴表、本人への確認などで補完することで学習記録のデータを集め分析した。
最終的に分析対象となったのは69冊、のべ185名(うち16名は重複)となり、対象言語は英語(101名)を筆頭に、アラビア語、中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語,朝鮮語、ロシア語、スペイン語、タイ語であった。
(選別条件)
1.著者の信念ではなく経験がベースになっていること
2.学習方法に関する記述が具体的であること
3.著者の高い外国語能力がなんらかの手段で確認できること
4.著者が11~12歳以降に日本(あるいは対象言語が外国語となる地域)で本格的に学習をはじめたこと
5.著者の留学経験が学習の初期~中期段階でほとんどないこと
6.著者がETLL(例外的高度外国語学習能力保持者Exceptionally Talented Language Learner 。全人口の5%程度の割合で出現する*)ではなく、また特殊な外国語教授法も受けていないこと
7.著者の家庭・教育環境にバイリンガル的要素がないこと
*Seliger, H., Krashen, D. and Ladefoged, P. (1975). Maturational constraints in the acquisition of a native-like accent in second language learning. Language Sciences, 36, 20-22.
Selinker, L. (1972). Interlanguage. International Review of Applied Linguistics, 10, 209-231.
多くの資料を集めることで、特異で奇抜な学習法は背景に退き、多くの成功者に共通する学習ストラテジーが抽出される。
その中には、北米の第二言語習得研究では、ほとんど重視されない「音読」のような方略が含まれる。
体験本研究を含む語学学習成功者たちの研究が示唆するところも、次のような突飛なところのない、ありふれた結論となるが、普通の努力を出し抜ける方略(「ユダヤ人の秘訣」)をつい求めがちな我々にとっては、戒めになり励ましになるだろう。
・ありふれたことを挫折せず、 きちんとこなしておれば、 相当に高いレベルまで外国語を習得できる
・北米での研究をそのまま日本に移植してはならない
以下、竹内理(2003)から、いくつかの項目を紹介する。
発音ーまず音から入る
・「それこそ何百回となく繰り返し聞いて、発音、イントネーション、母音と子音の使い分けなどいろんな方法で分析して真似てみた」
・「(聞き、まね、繰り返したのち)自分の発音をテープに録音し、ネイティブスピーカーとの違いをチェックする」「(ネイティブ並になるまで)繰り返して練習を続ける」
・「ラジオでアナウンサーが今しゃべっているのを追いかけて、そのとおりにすぐいうの」「耳から今聞いたばかりのアナウンサーのきれいな発音を、そのとおりに復唱するわけ」
……多くの体験本が、発音に対して強い関心を持ち、外国語学習をまず音から入るべき、と主張する。これは語学学習の成功者の体験を分析した他の研究とも一致する。
たとえばPurcell & Sulter(1980)は、発音の正確さにどれほどの関心を持つかが、ネイティブ並の発音能力を身につけられるかどうかの予測指標になるという。
リスニングー聞き流しはまだ早い/画像は邪魔になる
・「テープを聞き流さないで、真剣に何回も何回も「深く」聞く」
・「聞き取れないところをそのまま聞き流すのではなく、テキストを理解した上で、何度も聞いたことで、効果が上がったのでしょう」
・「なまじ映像の助けがあると、耳がおろそかになりやすく、画面を見てnewsを聞き取れた(理解できた)と錯覚しやすいのである」
……初期から中期にかけては、聞き流して分かった気分になるよりも、できるだけ細かく聴き、聞き取った言語材料を確認する作業が重要である、という。また映像などの視覚情報が必ずしもリスニング向上の助けにならないことは、他の研究(例えば竹内2000、第3章など)とも一致する。
リーディングー分析的に読む、母語を介さず読む
・「難解な文に出会ったらぶつ切りにしてその構文などをしっかりと把握しましょう」「読み飛ばしているといつまでも理解力は伸びません」
・「読解力を養うには速読によって大意をパッとつかむ訓練と、一字一句にこだわり正確さを期する訓練と双方から攻めるべきだろう」
・「(成功の秘訣は)水準の高い英文を毎週大量に読んだことだと考えています。もちろん、読み方は英語→日本語の訳読ではなく、英語を英語のまま理解するよう努力しました」
……〈分析的に読むこと〉と〈大意をとりながら読む〉ことは相反する要素を含んでいるが、学習段階や使用場面に合わせた使い分けがなされている。〈分析的に読むこと〉はリスニングにおける〈深く聞く〉に対応しており、学習段階の初期から中期にかけて使用されたことが報告されている。その後は〈大意をとりながら読む〉が優勢となっていく。
音読ー語学のインフラ整備
・「最初から発音と音読を徹底して教えられた」「自宅でも繰り返し音読して、それがからだにしみついた」
・「音読と暗記はさけて通れない」「(音読は)暗記するつもりではなく、意味をこめて読むことが大切なのだ。この作業を1日4-5課分(または10分~30分)、毎日続けることだ」
・「次の日に学校で習う部分を何回も声を出して読み、学校から帰ってたらその日に学校で習ったところをまた何回も繰り返し音読した。同じ箇所を百回ぐらい読んだと思います」
・「ズラっと一行の文章が並んでいると、すぐそれを発音してペラペラと読んで、幾度も繰り返して、おしまい頃には、二行か三行までの文章なら、すぐ目をつぶってそれを暗記でいえたものです」
……音読は、単に読むことよりも、外国語の基礎力を作るための方略として、繰り返し登場する。音読されたものが内化され、アウトプットの際の資源となり、また間違えた外国語をみるとおかしい感覚を抱くためのリソースともなっている。
スピーキングー例文の暗記と活用
・「強い意欲と、単純でばかばかしいまでの暗記(800程度の文型を覚えたこと)。この二つこそは、外国語を習得する上での必修の条件ではなかっただろうか」
・「英語をお経のように唱えて勉強した。一つの基本文型を基に、否定文・疑問文・付加疑問文・受動態・未来形・過去形・現在完了形……と、パタン変化が今でも口からスラスラ出てくる」「私の場合は、言葉が瞬間に出てくるように自分を造った」
・「暗記によりセンテンスパタンの引き出しをこしらえる。どの引き出しをいつ引っ張り出すかを、練習するのです」
……体験本には、コミュニケーション志向の〈新しい〉(とはもはや言えないが)言語習得観に対して、〈古い〉タイプの基本文型の暗記や反復を重視するものが多い。
竹内はこの点について、教室の外で目標言語が話されている第二言語習得を主に対象としてきた北米の言語学習研究(これを背景に日本の英語教育はコミュニケーション志向へと転換した)と、教室の外で自然に目標言語に触れる機会のない外国語習得との違いに着目している。
ライティングー読まないと書けない
・「読む、書く、の繰り返しによって、作文能力は上達していくのである」
・「多数の本を読むうちに、自然とその文体が身についたのである」
・「類似の表現をした他の著者の文章をできるだけ多く集めてそれを加工することにした」「英語らしい表現のストックをすこしでも多くふやすことである」
……ライティングについてのインプットの重要性が強調される。大量に読むことなしに、まとまった文章は書けないというのが、多くの体験本に共通してみられる指摘である。
ボキャブラリーー一定レベルまではとにかく増やす
・「一定以上の語彙力を持たねばそれ(外国語の習得)を実現することはできません」
・「語彙力が一定レベルにまで達しなければ、語学力が日の目をみることはない」
文法ー大人の学習者の武器
・「文法にくわしい教科書を読むことにした。すると、それまでランダムに入っていた単語(の使い方)が、見事に整理されていく。まるで霧が晴れ、視界がひらけていくような感じがした」
・「頭で納得するということが、大人の学習者にとっては重要な要素なのである」
・「(成人の英語学習には)英文法ができるかどうか、致命的に重要なポイントであると思う」
……体験本は、単語や文法の、意識的学習を排除しない。むしろ積極的にその意義を認める傾向が強い。受験英語に見られる、文法を自己目的化することを批判することは忘れないが、コミュニケーションの足場として文法を捉え、学習に活用している。
メタ認知ー学ぶことを見つめること
・「外国語を学習している動機を明確にすることである」「使える機会があれば意識的にどんどん使うようにしている」「(上達の秘訣は)できるだけ多く外国語に接する時間を作り出すことでもある」
・「一日に最低一時間を優先的に確保し、こつこつ自分で努力するほうがより経済的、効率的」
・「明確な目標が強烈な動機となって、やる気をおこさせる。しかも、何段階にも小刻みに設定された目標のほうがよい」
……体験本で最も優勢な指摘は、学習方略のなかで〈メタ認知方略〉と呼ばれるものに分類される。
語学学習の体験を自ら書きあらわすことそれ自体が、語学学習のメタ認知的方略を実践していることであるのだが、学習者自らが目標を設定し、環境を整備し、活動を行い、その成否の責任を負うという自律的学習Autonomous Learningの基礎となる〈メタ認知方略は、そのパフォーマンスの点でも、最重要なものである。
〈どのようなやり方で勉強するか〉という個別の学習方略よりも、〈自分にあった学習方法を見つけ出し活用する〉というメタ方略の有無を見た方が、その学習者の成否をよく予想できるくらいである。
というのも、失敗する学習者は例外なく、この〈メタ認知方略〉がダメだからである。
(文献)
・Purcell, E. T. and Suter, R. W. (1980), PREDICTORS OF PRONUNCIATION ACCURACY: A REEXAMINATION. Language Learning, 30: 271–287. doi: 10.1111/j.1467-1770.1980.tb00319.x
・竹内理編著(2000)『認知的アプローチによる外国語教育』松柏社
・竹内理(2003)『より良い外国語学習法を求めて : 外国語学習成功者の研究』
・竹内理(2007)『「達人」の英語学習法 : データが語る効果的な外国語習得法とは』草思社
……上の本の内容を、英語に絞り、読みやすくしたもの。
しかし、言語学習の研究者によれば、北米では研究者が複数の学習成功者の体験を収集し分析することはあっても、個人の学習履歴を本人が書籍にまとめることはほとんどない。
ヨーロッパではロンブー・カトーの記録などいくつか例はあるが、毎年複数冊が出版される日本のような盛況には程遠いという。
大量の語学学習成功者本は、他にはない貴重なデータ群であると言える。
竹内理(2003)は、この種の著作120冊のうち97冊を入手し、普通の語学学習者の参考となる体験を得られるよう下記の7つの条件を満たすものを選び出し、著作のみでは情報の不足する場合については他の出版物、経歴表、本人への確認などで補完することで学習記録のデータを集め分析した。
最終的に分析対象となったのは69冊、のべ185名(うち16名は重複)となり、対象言語は英語(101名)を筆頭に、アラビア語、中国語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、日本語,朝鮮語、ロシア語、スペイン語、タイ語であった。
(選別条件)
1.著者の信念ではなく経験がベースになっていること
2.学習方法に関する記述が具体的であること
3.著者の高い外国語能力がなんらかの手段で確認できること
4.著者が11~12歳以降に日本(あるいは対象言語が外国語となる地域)で本格的に学習をはじめたこと
5.著者の留学経験が学習の初期~中期段階でほとんどないこと
6.著者がETLL(例外的高度外国語学習能力保持者Exceptionally Talented Language Learner 。全人口の5%程度の割合で出現する*)ではなく、また特殊な外国語教授法も受けていないこと
7.著者の家庭・教育環境にバイリンガル的要素がないこと
*Seliger, H., Krashen, D. and Ladefoged, P. (1975). Maturational constraints in the acquisition of a native-like accent in second language learning. Language Sciences, 36, 20-22.
Selinker, L. (1972). Interlanguage. International Review of Applied Linguistics, 10, 209-231.
多くの資料を集めることで、特異で奇抜な学習法は背景に退き、多くの成功者に共通する学習ストラテジーが抽出される。
その中には、北米の第二言語習得研究では、ほとんど重視されない「音読」のような方略が含まれる。
体験本研究を含む語学学習成功者たちの研究が示唆するところも、次のような突飛なところのない、ありふれた結論となるが、普通の努力を出し抜ける方略(「ユダヤ人の秘訣」)をつい求めがちな我々にとっては、戒めになり励ましになるだろう。
・ありふれたことを挫折せず、 きちんとこなしておれば、 相当に高いレベルまで外国語を習得できる
・北米での研究をそのまま日本に移植してはならない
以下、竹内理(2003)から、いくつかの項目を紹介する。
発音ーまず音から入る
・「それこそ何百回となく繰り返し聞いて、発音、イントネーション、母音と子音の使い分けなどいろんな方法で分析して真似てみた」
・「(聞き、まね、繰り返したのち)自分の発音をテープに録音し、ネイティブスピーカーとの違いをチェックする」「(ネイティブ並になるまで)繰り返して練習を続ける」
・「ラジオでアナウンサーが今しゃべっているのを追いかけて、そのとおりにすぐいうの」「耳から今聞いたばかりのアナウンサーのきれいな発音を、そのとおりに復唱するわけ」
……多くの体験本が、発音に対して強い関心を持ち、外国語学習をまず音から入るべき、と主張する。これは語学学習の成功者の体験を分析した他の研究とも一致する。
たとえばPurcell & Sulter(1980)は、発音の正確さにどれほどの関心を持つかが、ネイティブ並の発音能力を身につけられるかどうかの予測指標になるという。
リスニングー聞き流しはまだ早い/画像は邪魔になる
・「テープを聞き流さないで、真剣に何回も何回も「深く」聞く」
・「聞き取れないところをそのまま聞き流すのではなく、テキストを理解した上で、何度も聞いたことで、効果が上がったのでしょう」
・「なまじ映像の助けがあると、耳がおろそかになりやすく、画面を見てnewsを聞き取れた(理解できた)と錯覚しやすいのである」
……初期から中期にかけては、聞き流して分かった気分になるよりも、できるだけ細かく聴き、聞き取った言語材料を確認する作業が重要である、という。また映像などの視覚情報が必ずしもリスニング向上の助けにならないことは、他の研究(例えば竹内2000、第3章など)とも一致する。
リーディングー分析的に読む、母語を介さず読む
・「難解な文に出会ったらぶつ切りにしてその構文などをしっかりと把握しましょう」「読み飛ばしているといつまでも理解力は伸びません」
・「読解力を養うには速読によって大意をパッとつかむ訓練と、一字一句にこだわり正確さを期する訓練と双方から攻めるべきだろう」
・「(成功の秘訣は)水準の高い英文を毎週大量に読んだことだと考えています。もちろん、読み方は英語→日本語の訳読ではなく、英語を英語のまま理解するよう努力しました」
……〈分析的に読むこと〉と〈大意をとりながら読む〉ことは相反する要素を含んでいるが、学習段階や使用場面に合わせた使い分けがなされている。〈分析的に読むこと〉はリスニングにおける〈深く聞く〉に対応しており、学習段階の初期から中期にかけて使用されたことが報告されている。その後は〈大意をとりながら読む〉が優勢となっていく。
音読ー語学のインフラ整備
・「最初から発音と音読を徹底して教えられた」「自宅でも繰り返し音読して、それがからだにしみついた」
・「音読と暗記はさけて通れない」「(音読は)暗記するつもりではなく、意味をこめて読むことが大切なのだ。この作業を1日4-5課分(または10分~30分)、毎日続けることだ」
・「次の日に学校で習う部分を何回も声を出して読み、学校から帰ってたらその日に学校で習ったところをまた何回も繰り返し音読した。同じ箇所を百回ぐらい読んだと思います」
・「ズラっと一行の文章が並んでいると、すぐそれを発音してペラペラと読んで、幾度も繰り返して、おしまい頃には、二行か三行までの文章なら、すぐ目をつぶってそれを暗記でいえたものです」
……音読は、単に読むことよりも、外国語の基礎力を作るための方略として、繰り返し登場する。音読されたものが内化され、アウトプットの際の資源となり、また間違えた外国語をみるとおかしい感覚を抱くためのリソースともなっている。
スピーキングー例文の暗記と活用
・「強い意欲と、単純でばかばかしいまでの暗記(800程度の文型を覚えたこと)。この二つこそは、外国語を習得する上での必修の条件ではなかっただろうか」
・「英語をお経のように唱えて勉強した。一つの基本文型を基に、否定文・疑問文・付加疑問文・受動態・未来形・過去形・現在完了形……と、パタン変化が今でも口からスラスラ出てくる」「私の場合は、言葉が瞬間に出てくるように自分を造った」
・「暗記によりセンテンスパタンの引き出しをこしらえる。どの引き出しをいつ引っ張り出すかを、練習するのです」
……体験本には、コミュニケーション志向の〈新しい〉(とはもはや言えないが)言語習得観に対して、〈古い〉タイプの基本文型の暗記や反復を重視するものが多い。
竹内はこの点について、教室の外で目標言語が話されている第二言語習得を主に対象としてきた北米の言語学習研究(これを背景に日本の英語教育はコミュニケーション志向へと転換した)と、教室の外で自然に目標言語に触れる機会のない外国語習得との違いに着目している。
ライティングー読まないと書けない
・「読む、書く、の繰り返しによって、作文能力は上達していくのである」
・「多数の本を読むうちに、自然とその文体が身についたのである」
・「類似の表現をした他の著者の文章をできるだけ多く集めてそれを加工することにした」「英語らしい表現のストックをすこしでも多くふやすことである」
……ライティングについてのインプットの重要性が強調される。大量に読むことなしに、まとまった文章は書けないというのが、多くの体験本に共通してみられる指摘である。
ボキャブラリーー一定レベルまではとにかく増やす
・「一定以上の語彙力を持たねばそれ(外国語の習得)を実現することはできません」
・「語彙力が一定レベルにまで達しなければ、語学力が日の目をみることはない」
文法ー大人の学習者の武器
・「文法にくわしい教科書を読むことにした。すると、それまでランダムに入っていた単語(の使い方)が、見事に整理されていく。まるで霧が晴れ、視界がひらけていくような感じがした」
・「頭で納得するということが、大人の学習者にとっては重要な要素なのである」
・「(成人の英語学習には)英文法ができるかどうか、致命的に重要なポイントであると思う」
……体験本は、単語や文法の、意識的学習を排除しない。むしろ積極的にその意義を認める傾向が強い。受験英語に見られる、文法を自己目的化することを批判することは忘れないが、コミュニケーションの足場として文法を捉え、学習に活用している。
メタ認知ー学ぶことを見つめること
・「外国語を学習している動機を明確にすることである」「使える機会があれば意識的にどんどん使うようにしている」「(上達の秘訣は)できるだけ多く外国語に接する時間を作り出すことでもある」
・「一日に最低一時間を優先的に確保し、こつこつ自分で努力するほうがより経済的、効率的」
・「明確な目標が強烈な動機となって、やる気をおこさせる。しかも、何段階にも小刻みに設定された目標のほうがよい」
……体験本で最も優勢な指摘は、学習方略のなかで〈メタ認知方略〉と呼ばれるものに分類される。
語学学習の体験を自ら書きあらわすことそれ自体が、語学学習のメタ認知的方略を実践していることであるのだが、学習者自らが目標を設定し、環境を整備し、活動を行い、その成否の責任を負うという自律的学習Autonomous Learningの基礎となる〈メタ認知方略は、そのパフォーマンスの点でも、最重要なものである。
〈どのようなやり方で勉強するか〉という個別の学習方略よりも、〈自分にあった学習方法を見つけ出し活用する〉というメタ方略の有無を見た方が、その学習者の成否をよく予想できるくらいである。
というのも、失敗する学習者は例外なく、この〈メタ認知方略〉がダメだからである。
(文献)
・Purcell, E. T. and Suter, R. W. (1980), PREDICTORS OF PRONUNCIATION ACCURACY: A REEXAMINATION. Language Learning, 30: 271–287. doi: 10.1111/j.1467-1770.1980.tb00319.x
・竹内理編著(2000)『認知的アプローチによる外国語教育』松柏社
![]() | 認知的アプローチによる外国語教育 (2000/01) 竹内 理 商品詳細を見る |
・竹内理(2003)『より良い外国語学習法を求めて : 外国語学習成功者の研究』
![]() | より良い外国語学習法を求めて―外国語学習成功者の研究 (2003/12) 竹内 理 商品詳細を見る |
・竹内理(2007)『「達人」の英語学習法 : データが語る効果的な外国語習得法とは』草思社
![]() | 「達人」の英語学習法―データが語る効果的な外国語習得法とは (2007/11/23) 竹内 理 商品詳細を見る |
……上の本の内容を、英語に絞り、読みやすくしたもの。
![]() | わたしの外国語学習法 (ちくま学芸文庫) (2000/03) ロンブ カトー 商品詳細を見る |
- 関連記事
| Home |