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2012.06.28
読めないとはこういうこと→勉強できない子をあぶりだす5つの質問
例によって体調不良なので短いものを。
読む力が大切だとか、国語力はすべての学力の根本だと、誰もが口にする。
間違っているとは思わないけれど、〈読む力〉や〈国語力〉が具体的にどういうものなのか、ちゃんと話している人たちの間で共有されているのかというと、あまり確信がない。
〈読む力〉がどういうものか説明しようとすると、どんどんと細かい話や、それ自体説明しなきゃならない難しげな概念などたくさん登場してきて、長くなるばかりか分かりやすくも無い。
できるだけシンプルで身にしみそうなのを紹介する。
下の5つの質問は、もともと小学生対象に使われていたものだが、自分や、周囲の大人や子どもにも試してみることができる。
(1)まさおくんは、キャラメルとあめとでは、キャラメルがすきです。キャラメルとチョコレートでは、チョコレートのほうがすきです。まさおくんの一ばんすききなのは、どれですか。
(2)りんごとなしでは、りんごが大きく、かきとりんごでは、かきのほうが大きい。では、かきとなしでは、どちらが大きいか。
(3)もし、ねずみが犬よりも大きくて、犬がとらより大きいとしたら、ねずみととらでは、どちらが大きいか。
(4)ABCDの4つの市がある。AはCより大きく、CはBより小さい。BはAより大きく、DはAのつぎに大きい。4つの市を大きいじゅんに書け。
(5)フランスの女の子が三人いる。マチルドは、レナールよりかみの毛の色が明るい。また、マチルドは、アンネットより毛がこい。だれのかみの毛が一ばん黒いか。
(1)は子ども自身の嗜好/体験と一致している。子どもの経験と常識の範囲で解ける。
(2)は嗜好とは無関係だが、現実の関係がそのまま問題になっている。
(3)は、架空の事柄についての問題。現実とは相反する事柄について、与えられた前提をベースに推論する必要がある。
(4)は、現実の事物から離れて、抽象的な論理の操作が必要。
(5)は、異なった表現で表される関係を、比較可能なように翻訳=変換することが必要。
この質問をつくった岸本裕史(1981)によれば、
(1)(2)ができれば、計算練習さえすれば、小学校低学年(1,2年)の算数についていける。
(3)ができれば、日常と縁遠い大きな数や図形を扱う小学3年の算数もついていける。(3)ができない子は、読み物、すなわち文字でつづった虚構の世界に関心がない。読書を楽しむようになれば、このレベルはクリアする。
(4)ができれば、小学4年の学習についていける。(4)ができない子は、小学4年でひどくつまずく(いわゆる9歳の壁)。教えても分かってくれず、やらせても一向に良くならない。残しても、塾へやってもダメ。親も教師も子ども自身も頭がわるいと諦めがち。対策は、具合的な発言や実績に基づいて、頭そのものは悪くないことを強調しつつ、現実べったりの世界から離陸できるよう克服の方向を示す。
(5)ができれば、小学生としては十分な思考力が備わっている。より知的な発達に資すること、読書や制作活動などに、余った時間を費やせばよい。
(文献)
岸本裕史(1981、改訂版1996)『改訂版 見える学力、見えない学力』(国民文庫846)
(関連記事)
では、子どもの〈見えない学力〉地頭、読む力に親は何ができるのか? 読書猿Classic: between / beyond readers

読む力が大切だとか、国語力はすべての学力の根本だと、誰もが口にする。
間違っているとは思わないけれど、〈読む力〉や〈国語力〉が具体的にどういうものなのか、ちゃんと話している人たちの間で共有されているのかというと、あまり確信がない。
〈読む力〉がどういうものか説明しようとすると、どんどんと細かい話や、それ自体説明しなきゃならない難しげな概念などたくさん登場してきて、長くなるばかりか分かりやすくも無い。
できるだけシンプルで身にしみそうなのを紹介する。
下の5つの質問は、もともと小学生対象に使われていたものだが、自分や、周囲の大人や子どもにも試してみることができる。
(1)まさおくんは、キャラメルとあめとでは、キャラメルがすきです。キャラメルとチョコレートでは、チョコレートのほうがすきです。まさおくんの一ばんすききなのは、どれですか。
(2)りんごとなしでは、りんごが大きく、かきとりんごでは、かきのほうが大きい。では、かきとなしでは、どちらが大きいか。
(3)もし、ねずみが犬よりも大きくて、犬がとらより大きいとしたら、ねずみととらでは、どちらが大きいか。
(4)ABCDの4つの市がある。AはCより大きく、CはBより小さい。BはAより大きく、DはAのつぎに大きい。4つの市を大きいじゅんに書け。
(5)フランスの女の子が三人いる。マチルドは、レナールよりかみの毛の色が明るい。また、マチルドは、アンネットより毛がこい。だれのかみの毛が一ばん黒いか。
(1)は子ども自身の嗜好/体験と一致している。子どもの経験と常識の範囲で解ける。
(2)は嗜好とは無関係だが、現実の関係がそのまま問題になっている。
(3)は、架空の事柄についての問題。現実とは相反する事柄について、与えられた前提をベースに推論する必要がある。
(4)は、現実の事物から離れて、抽象的な論理の操作が必要。
(5)は、異なった表現で表される関係を、比較可能なように翻訳=変換することが必要。
この質問をつくった岸本裕史(1981)によれば、
(1)(2)ができれば、計算練習さえすれば、小学校低学年(1,2年)の算数についていける。
(3)ができれば、日常と縁遠い大きな数や図形を扱う小学3年の算数もついていける。(3)ができない子は、読み物、すなわち文字でつづった虚構の世界に関心がない。読書を楽しむようになれば、このレベルはクリアする。
(4)ができれば、小学4年の学習についていける。(4)ができない子は、小学4年でひどくつまずく(いわゆる9歳の壁)。教えても分かってくれず、やらせても一向に良くならない。残しても、塾へやってもダメ。親も教師も子ども自身も頭がわるいと諦めがち。対策は、具合的な発言や実績に基づいて、頭そのものは悪くないことを強調しつつ、現実べったりの世界から離陸できるよう克服の方向を示す。
(5)ができれば、小学生としては十分な思考力が備わっている。より知的な発達に資すること、読書や制作活動などに、余った時間を費やせばよい。
(文献)
岸本裕史(1981、改訂版1996)『改訂版 見える学力、見えない学力』(国民文庫846)
![]() | 見える学力、見えない学力 (国民文庫―現代の教養) (1996/03) 岸本 裕史 商品詳細を見る |
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