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2013.01.13
今でも定義付けが苦手なあなたのためにテンプレートを提供しよう
何かを伝えるために書かれる文章では、ものごとを定義しなくてはならないことが少なくない。
ひとつの言葉は、いろんな意味で、いろんな用法で、使うことができる。できる限り拡大解釈や誤解の危険性を減らそうとすれば、少なくともあなたの文章で核になる概念については、その意味と用法を制限を設けておくべきだ。
その作業は、何もあなた一人だけで引き受けなくてはならない訳ではない。
あなたが必要とする定義を、どこかの誰かがすでに作ってくれていることは、思った以上に多い。
まずは、「誰かがすでに作ってくれている」はずと思って探してみた方がよい。
しかし先人のつくった定義とそれを見つけようとする努力は、自前の定義を作り出すことから、あなたを永遠に解放してくれる訳ではない。
また自分で定義をつくることができなければ、他人のつくった定義を吟味し、選ぶことも困難になるだろう。
とくに、学術論文のように、世界の誰もまだ知らないことを伝えようとする場合には、自前の定義が必要になることが多い。
定義を作ることの難しさは、既に自分が知っているはずのもの、例えばそれを使って長らく考えてきた概念を、改めて言語化するところにある。
意識せずに行なってきたことを、ひとつひとつ改めて意識化する困難。
しかし人は、その困難に対してこそ、自分が知っているのは本当には何なのかを(時には知ったつもりでいただけで、ほとんど何も知ってはいなかった事実を)、改めて知ることになる。
書くことは、すでに完成し切った思考を外に運び出すことではない。
自分の知と無知の端境に立ち、両方に引き裂かれながら、その二つをつなぎとめようとすることだ。
定義することもまた、新しきものを古きものに、これから知ろうとするものを我々が(私が、ではない)既に知っているものに、改めて結びなおすことである。

定義の基本的なやり方については、アリストテレスから現在まで引き続き用いられているものがある。
類(Genus)と種差(differentia specifica)、すなわちどのカテゴリーに属するかと、そのカテゴリー内での他との違いとをを組み合わせる、というものである。
これだと少し分かりにくいから、一般のことばに言い換え、公式の形にしておこう。
定義の公式
Gは類(Genus)の略だけれど、英語でGroupだと覚えてしまっても構わない。
dは種差(differentia specifica)の略だが、英語でもdifference=差異なのでおなじみだろう。
どのグループに属するかを示すG要素は通常定義の中に1回登場するだけだが、他の者達との違いを示すのにd要素は複数登場することが多い。
英文で例を示そう。(G)を表す一般語を青色で示し、種差(d)を表す部分に下線を引いた。
この形は非常によく使われるので、英語の場合を公式化しておこう。
英文における定義の公式
定義とは、一般的な記述であることから、現在形で書かれる。
また同じ理由から、定義されるものを示す定義文の主語には定冠詞theを用いない。可算名詞なら不定冠詞の"a / an"がつく。不可算名詞なら冠詞をつけない。
(※このことを覚えておくと、辞書に載っていない言葉の定義を検索エンジンで探すのに役立つ。例えばschoolの定義を探すなら"A school is a *"で検索する。Waterは不可算名詞なので"Water is a *"で検索する)。
公式の変化形
定義したい言葉の一部が、(G)を表す一般語として再び登場する場合がある。例えば
"carbon tax"という語を定義しようとしているが、(G)を表す一般語のところに(polluion) taxという言葉が登場する。
しかしこれも、(G)(何の一種であるか?何と似ているか?)+ (d)(似ているものたちとどこが違うか?)の組み合わせであるので、混乱することは無いだろう。
さて「〜に用いられる」という表現は、定義に頻出する。関係代名詞をつかっても書けるが、以下の例のように、(G)を表す一般語がdeviceの類いであれば、さらに短縮して書くことができる。
上記のように、(G)を表す一般語を、前に来る形容詞や後続する句で修飾して限定することでも、他との違い(種差(d)を盛り込むことができる。
これも関係代名詞を使う場合と同様、類(G)(何の一種であるか?何と似ているか?)と種差(d)(似ているものたちとどこが違うか?)の組み合わせと考えると理解しやすい。
以下の例でも、(G)を表す一般語を青色で示し、種差(d)を表す部分に下線を引いた。
例を追加する
類(Genus)と種差(differentia specifica)による定義は、定義が備えるべき条件を満たしているが、これだけでは読み手が理解しづらい場合がある。
そのようなとき有効なのが、定義につづいて例を与えることである。
簡便なのは、定義の文の後ろに、コンマで区切って "such as"として、以下に例となるモノを並べることである。
such asの代わりに、"Common examples are〜"または"Typical example are〜"と別の文をはじめて、そこで例をあげるやり方がある。
(参考記事)
・言葉と思考の解像度を上げる→つぶやきをフォーマルな英文に仕上げる4つの技術 読書猿Classic: between / beyond readers

・比較三原則/たちどころに「ものがみえる」ようになるメソッド 読書猿Classic: between / beyond readers

・今あるだけの貧弱なボキャブラリーでも何とかする英語の技術 読書猿Classic: between / beyond readers

→自分で定義をひねり出すときの頭の使い方として参考になる。
(参考書籍)
新しい本ではないが、例文集に過ぎない類書と異なり、全編が実践的なトレーニング(手を変え品を変えたパターン・プラクティスのこれでもかという繰り返し)にあてられていて貴重。
ひとつの言葉は、いろんな意味で、いろんな用法で、使うことができる。できる限り拡大解釈や誤解の危険性を減らそうとすれば、少なくともあなたの文章で核になる概念については、その意味と用法を制限を設けておくべきだ。
その作業は、何もあなた一人だけで引き受けなくてはならない訳ではない。
あなたが必要とする定義を、どこかの誰かがすでに作ってくれていることは、思った以上に多い。
まずは、「誰かがすでに作ってくれている」はずと思って探してみた方がよい。
しかし先人のつくった定義とそれを見つけようとする努力は、自前の定義を作り出すことから、あなたを永遠に解放してくれる訳ではない。
また自分で定義をつくることができなければ、他人のつくった定義を吟味し、選ぶことも困難になるだろう。
とくに、学術論文のように、世界の誰もまだ知らないことを伝えようとする場合には、自前の定義が必要になることが多い。
定義を作ることの難しさは、既に自分が知っているはずのもの、例えばそれを使って長らく考えてきた概念を、改めて言語化するところにある。
意識せずに行なってきたことを、ひとつひとつ改めて意識化する困難。
しかし人は、その困難に対してこそ、自分が知っているのは本当には何なのかを(時には知ったつもりでいただけで、ほとんど何も知ってはいなかった事実を)、改めて知ることになる。
書くことは、すでに完成し切った思考を外に運び出すことではない。
自分の知と無知の端境に立ち、両方に引き裂かれながら、その二つをつなぎとめようとすることだ。
定義することもまた、新しきものを古きものに、これから知ろうとするものを我々が(私が、ではない)既に知っているものに、改めて結びなおすことである。

定義の基本的なやり方については、アリストテレスから現在まで引き続き用いられているものがある。
類(Genus)と種差(differentia specifica)、すなわちどのカテゴリーに属するかと、そのカテゴリー内での他との違いとをを組み合わせる、というものである。
これだと少し分かりにくいから、一般のことばに言い換え、公式の形にしておこう。
定義の公式
定義 = 類G(何の一種であるか?何と似ているか?) +種差d(似ているものたちとどこが違うか?) |
Gは類(Genus)の略だけれど、英語でGroupだと覚えてしまっても構わない。
dは種差(differentia specifica)の略だが、英語でもdifference=差異なのでおなじみだろう。
どのグループに属するかを示すG要素は通常定義の中に1回登場するだけだが、他の者達との違いを示すのにd要素は複数登場することが多い。
英文で例を示そう。(G)を表す一般語を青色で示し、種差(d)を表す部分に下線を引いた。
A catalyst is a substance which alters the rate at which a chemical reaction occurs (d1), but it itself unchanged at the end of the reaction (d2). 触媒とは、物質の一種である(G)。 (他の物質とどこが違うかといえば) 化学反応が起こる速度を変化させる(d1)、 しかし反応の終わってもそれ自体は変化しない(d2)。 |
この形は非常によく使われるので、英語の場合を公式化しておこう。
英文における定義の公式
A 可算名詞/不可算名詞(定義したいもの) is a{ (G)を表す一般語}+ {(d1,d2,…)を表す関係代名詞節}. |
定義とは、一般的な記述であることから、現在形で書かれる。
また同じ理由から、定義されるものを示す定義文の主語には定冠詞theを用いない。可算名詞なら不定冠詞の"a / an"がつく。不可算名詞なら冠詞をつけない。
(※このことを覚えておくと、辞書に載っていない言葉の定義を検索エンジンで探すのに役立つ。例えばschoolの定義を探すなら"A school is a *"で検索する。Waterは不可算名詞なので"Water is a *"で検索する)。
A computer is a machine that performs computations according to instructions. コンピュータとは、機械である(G)/(他の機械との違いは)指示に従って演算を実行する(d)(ところ)。 =コンピュータとは、指示に従って演算を実行する機械である。 A leader is a person who has a vision (d1), a drive and a commitment to achieve that vision (d2), and the skills to make it happen (d3). リーダーとは、人である (G) /(他の人との違いは)ビジョンを持っていて(d1)、ビジョンの達成に向かう情熱とコミットメントもあって(d2)、それにビジョンを実現するスキルを持っている(d3)(ところ)。 =リーダーとは、ビジョンを持っており、ビジョンの達成に向かう情熱とコミットメントがあり、そしてビジョンを実現するスキルを備えた人である。 |
公式の変化形
定義したい言葉の一部が、(G)を表す一般語として再び登場する場合がある。例えば
A carbon tax is a polluion tax on energy sources that vaies in proportion to the amount of carbon dioxide their emits into atmosphere. 炭素税は、汚染税(の一種)(G)である。/(他の汚染税とちがうのは)大気中に排出される二酸化炭素の量に比例してエネルギー源ごとに税率が変わる(d)(ところ)。 =炭素税は、大気中に排出される二酸化炭素の量に比例してエネルギー源ごとに税率が変わる汚染税(の一種)である。 |
"carbon tax"という語を定義しようとしているが、(G)を表す一般語のところに(polluion) taxという言葉が登場する。
しかしこれも、(G)(何の一種であるか?何と似ているか?)+ (d)(似ているものたちとどこが違うか?)の組み合わせであるので、混乱することは無いだろう。
さて「〜に用いられる」という表現は、定義に頻出する。関係代名詞をつかっても書けるが、以下の例のように、(G)を表す一般語がdeviceの類いであれば、さらに短縮して書くことができる。
A thermostat is a device which is used for regulating temperature. A thermostat is a device used for regulating temperature. A thermostat is a device for regulating temperature. サーモスタットはデバイスである/(他のデバイスと違うのは)温度を調節するために用いられる(ところ)。 =サーモスタットは、温度を調節するために用いられるデバイスである。 |
上記のように、(G)を表す一般語を、前に来る形容詞や後続する句で修飾して限定することでも、他との違い(種差(d)を盛り込むことができる。
これも関係代名詞を使う場合と同様、類(G)(何の一種であるか?何と似ているか?)と種差(d)(似ているものたちとどこが違うか?)の組み合わせと考えると理解しやすい。
以下の例でも、(G)を表す一般語を青色で示し、種差(d)を表す部分に下線を引いた。
A contract is a legally enforceable promise. 契約とは、法的強制力のある約束である。 A concert is a live performance (typically of music) before an audience. コンサートとは、聴衆の前にしておこなう(通常の音楽の)ライブパフォーマンスである。 Water is a chemical compound with the chemical formula H2O. 水とは、化学式H2Oで表される化学化合物である。 |
例を追加する
類(Genus)と種差(differentia specifica)による定義は、定義が備えるべき条件を満たしているが、これだけでは読み手が理解しづらい場合がある。
そのようなとき有効なのが、定義につづいて例を与えることである。
簡便なのは、定義の文の後ろに、コンマで区切って "such as"として、以下に例となるモノを並べることである。
An acid is a compound which neutralizes a solution of sodium hydroxide, such as sulphuric acid or nitric acid. 酸とは、化合物である(G) /(他の化合物とどこが違うかといえば)水酸化ナトリウムの溶液を中和する(d)(ところである)。 /(ここからが例)これには硫酸や硝酸などがある。 |
such asの代わりに、"Common examples are〜"または"Typical example are〜"と別の文をはじめて、そこで例をあげるやり方がある。
An acid is a compound which neutralizes a solution of sodium hydroxide, such as sulphuric acid or nitric acid. Common examples are sulphuric acid or nitric acid. 酸とは、化合物である(G) /(他の化合物とどこが違うかといえば)水酸化ナトリウムの溶液を中和する(d)(ところである)。 /(ここからが例)一般的な例としては、硫酸や硝酸などがある。 |
(参考記事)
・言葉と思考の解像度を上げる→つぶやきをフォーマルな英文に仕上げる4つの技術 読書猿Classic: between / beyond readers

・比較三原則/たちどころに「ものがみえる」ようになるメソッド 読書猿Classic: between / beyond readers

・今あるだけの貧弱なボキャブラリーでも何とかする英語の技術 読書猿Classic: between / beyond readers

→自分で定義をひねり出すときの頭の使い方として参考になる。
(参考書籍)
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新しい本ではないが、例文集に過ぎない類書と異なり、全編が実践的なトレーニング(手を変え品を変えたパターン・プラクティスのこれでもかという繰り返し)にあてられていて貴重。
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