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2013.03.17
ネットでは逢えない書物に会いに行くー新入生におくるリアルワールドでの本の探し方
去年はまとめ記事
(保存版)新入生のためのスタディ・スキルまとめ 読書猿Classic: between / beyond readers

でごまかしたので、今年は項目を分けて、新入生向けのサバイバル記事を書く。
最初は、本の入手の仕方について。
ネットで買う話は今更だし別の機会に譲って、リアルワールドで足を運んで手に入れる方法や考え方を今回は取り上げる。
このテーマを選んだ理由は次のとおりである。
(1)どの本が良いとか、どのように読むか、みたいな話は、みんな本が手に入ってからの話。手に入れることができることが大前提なので。
(2)それなのに各自でなんとかしておけと放置されることが多い(本の買い方借り方なんて当たり前の話は、誰もわざわざしてくれない)ので。
(3)加えて、「これを読んでおけ」と指示された書物を手に入れるという最初の一歩に何度かつまずくと、学問とか知的っぽい色んなものに《門前払い》をくらったような疎外感を胸に深く刻んで、手に届かないブドウは酸っぱいというイソップのキツネ状態をこじらせることも少なくないので。
(4)知らない街で暮らすことになって、図書館どころか本屋の位置さえ分からなくても、読まなくてはならない事態は容赦なくやってくるので。
自分が学生だった頃を思い出しても、大学の先生が薦める本は、なぜか必ず絶版か品切れだった。
当時の大学図書館は教員と連携しておらず、課題図書について別に複数冊キープしたり、貸出し期間を短く設定したりなんてことはしなかった。つまり課題図書を手に入れるのには、ほとんど役に立たなかった。
そういう逆境(?)に置かれた故に何らかのノウハウを身につけたとか開発したとかいう、うるわしい話は残念ながら全くない。
偶然にも、京阪神の古書街ツアーを組んでくれる先輩や、「いま○○書店で×××が***円で出てるけど、買っておこうか?」と気の利いた連絡をくれる友人に恵まれたのである。
これは僥倖であって、方法ではない。
そして、こういう場合は、ラッキーのおすそ分けをするのが吉である。古人はこれを「分福」という。
以下の雑文を書き残す次第である。
リアル書店を泳ぎ切る
◯本屋に本がない理由を知る
最低限知っておくべき事実の確認からはじめよう。
ひとつの書籍あたりの発行部数が減り、それを補うかために、より多くの書籍を発刊しなければならない(増え続ける発行点数)という悪循環の中に、長らくこの国の出版流通は置かれていた。
多くの新刊書は、初版でせいぜい数千部しか発刊されない。
しかし日本全国に本屋は(すごい勢いで減り続けているとはいえ)2012年で1万5千軒ある。
当然、新刊はすべての本屋に並ぶはずがない。
加えて返品制度がある。
詳細は省くが、書籍は多くの出版社からごく少数の取次会社(書籍の問屋)を経て、多数ある全国の書店に入荷する。
多数の小さな本屋と、寡占状態の取次では当然、取次ぎのほうが強い。
書店への入荷を配本と言うが、配本される本の種類・部数などは、取次側が決定するのが基本である(パターン配本)。
配本された本は書店で陳列され販売されるが、一定期間を過ぎても売れ残った本は取次を経由して出版社に返却される。
これを返本という。
出版社と取次の間では、書籍が取次に渡った段階で代金が出版社に支払われ、取次から書店へ配本される。書店から取次へと返本されて来た本は出版社へ戻されると、出版社から取次へその分の代金は返還されなくてはならない。資金繰りのためには、その分を相殺すべく、別の新しい書籍を出版して、取次に引き渡す。ひとつの書籍あたりの発行部数が少なくなれば、ますます別の書籍を出版しなくてはならない。
取次と書店との間では、新刊配本分についても(売れていない商品についても)、書店の注文品同様に配本当月の請求になる。
加えて書店にはどんどん新刊配本が回ってくる。
このため、資金繰りの上からも、店舗効率からも、ますます早い目に見切りをつけて返本し、次々と入れ替えざるを得なくなる。
書店にとどまる期間が短くなれば平均すれば売れる部数も減り、出版社はますます新しい書籍を出すように駆られて、ますます多くの書籍が出版されて……という悪循環。
こうして売れ続けるごく一部の本以外は、書店から速やかに消え去ることになる。
つまり新刊書店は、川(流れ)であって、海ではない。
流れの速さはますます速くなり、書籍はほんのつかの間その棚にとどまり、去っていく。
もちろん、すべての新刊書店がパターン配本に甘んじている訳ではない。
店を支える客筋を持ち、自己責任で独自の品揃えができる小規模書店は存在する。
読み手から見るならば、個性的な品揃えの書店は、その品揃えの魅力だけでなく、自分の責任で仕入れていることが多いが故に、他の新刊書店で見つからなくなった書籍が返本されず残っている可能性がある。
そうした書店は、あなたが時間をかけて探し、通うだけの理由がある。
また一時増えた、大きな床面積の巨大書店は、幅が広い川である。
つまり流れをいくらかゆるやかにすることができる。
他の本屋から流れ去ってしまった本を見つける可能性がいくらか高いことになる。
ネット書店からの配達が待てないほど切羽詰まったときは(必ずやってくる)、近隣で最も大きな書店に電話して在庫を確認し、自分の足で走るのが(特に地方都市の場合は)ベストである。
◯新刊書店を越えていく
あなたが時代の流れに敏感なネオマニー(新しがり)ならば、刻々と変わる流れを知るために、定期的に(たとえば毎日)新刊書店を訪ねる必要があるだろう。
逆に、カーライルの黄金則(刊行後1年未満の本は買わない)に従うオールド・タイプの読書人ならば、新刊書店はほとんど用のないところとなる。
しかし、いずれにせよ「本屋に行く」しか書物を手に入れる方法を知らない、読書の幼年期に幕を引くことになるだろう。
何故なら、知識の世界に足を踏み入れるならば、それを成り立たせる関係は、当然ながら新刊書流通とは別の原理で組み上がっているからだ。
このブログでは繰り返し触れていることだが、知識も、当然に書物も、スタンドアローンでは存在しない。
知識は他の知識と、書物は他の書物と、影響し合い参照し合う関係を、互いに網の目のように広げている。
1冊の書は、そのひとつの結び目に過ぎない。
しかしこの結び目は、驚くほど多くの、近くのそして遠くの結び目と結びついている。
そのことに気付き、今手にしている書物が外へと伸ばす結びつきを追いかけようとすれば、たとえばある箇所で言及されている別の書物は、当然ながらその書物が著された以前に生まれた書物であって、高い確率で新刊書店には存在しない。
書店では手に入らない書物の存在を、あなたは次から次へと知ることになるだろう(そして古本屋や図書館で積んだ経験が、新刊書店でも生きることをやがて知るだろう)。
次へ向かう時が来たようだ。
(文献案内)
かつてあった『ブックマップ』などの書店・図書館を合わせた案内書はいまはない。
こうした本は鮮度が肝心なので嘆かわしいところだが、比較的最近のものとしては次のものがある。
リアル古書店にアクセスする
古本業界には、寡占的な取次(問屋)は存在しない。
すべての書籍を自分の責任で仕入れる。つまり、そのほとんどが、新刊書店のところで述べた〈個性的な品揃えの書店〉にならざるを得ない※。
※誤解を招く言い方をすれば、クライエントーサーバ型の新刊書流通に対し、ピア・トゥ・ピア型の古書流通というのだが(いやクライエントが要求しない本が配本されるじゃないか、という批判がある)、古書では、仕入れてきた書籍を出品して古書店同士が互いに売買する市場が取引の中心になっている。
新刊書店に書物は留まらないという構造がある以上、新聞の書評で紹介された本だけを読み続けるなら別だが、まっとうな読書生活を防衛するためには、古書店に向かわざるを得ない。
手元の資料だと、古書店は全国に2千と数百軒あまり。
当然、自分の生活圏内に存在せず、周囲に古書店を利用している人もおらず、モデリングによって学ぶことのできない人も少なくないだろう。
しかし、大学は本を読む人間をあるエリアに集中させる(はず)から、その周辺には古書店がある可能性は小さくない(はず)。
大学デビューが最後の機会だと知って、足を運ぶべきである。
知的好奇心に火がつきだした者にとっては、古書店の棚は宝の山に見える。
自分が欲しい本を手に入れるのにいくらかでも苦労したことがある者なら、なぜもっと早くこの店に来なかったのかと地団駄を踏むだろう。
図書館でもスペースの関係から、刊行年の古い本は書庫に入っていて、直接書架から手に取れる機会は少ない(だから書庫に入れるなら、その機会を逃すべきではない)。
古書店の棚は、ある分野の書物が、生まれた時期の別によらず一堂に会する数少ない場所でもある。
今日では、ある書物の存在を知れば、検索することは容易である。
検索できるならば、自宅にいながらにして、新刊書と古書を問わず、また国内外を問わず、ネットを通じて購入ができる。
それどころかGoogle Mapの「おみせフォト」(Google Business Photos;ストリートビューの店内版)を使えば、いくつかの古書店では、店内をバーチャルに歩いて回ることすら可能である。
例として、以下に二つの書店をあげて、リンクを貼った。
赤尾照文堂
京都市中京区河原町通六角

Bauman Rare Books
535 Madison Ave, New York

問題は、プラトンが対話篇『メノン』の中で告げた、探索のパラドクスにまで戻る。
すなわち、あらかじめ知っていなければ探すことはできない(偶然受け取っても、それが探していたものであることが分からない)。しかし、あらかじめ知っているのであれば、もはや探す必要がないではないか。
いかにして自分がまだ知らない何かがあることを知るのか?
そして探しているものが、実はどのようなものであるかを、いかにして知るのか?
去年の記事
(保存版)新入生のためのスタディ・スキルまとめ 読書猿Classic: between / beyond readers

に、こう書いた。
学校は、あなたの知らない何かではなく、あなたが何を知らないかを教えるところである。
無知に気付く機会を与えるまでが学校の仕事だ。
それを引受け,コンテンツを充填し無知を埋めるのは,あなた自身がやらなくてはならない。
知りたいと思うことなら,人はいくらでも独力で学ぶ。また独力で学べないと結局何も身につかない。
しかし,そんな分野や知識が存在することをそもそも知らなければ,知りたいと思うこともできない。
自分が〈知っていること〉と〈考え得ること〉の限界を越えて,まだあることも知らない何かに人を気付かせるのは,他者からの不意打ちである。
そうして人は、書架を(時には目録や索引を)ブラウズすることによっても、不意打ちを受けることができる。
◯古書店街へ行こう
神田や本郷や早稲田の古書店街のように、古本屋が軒を連ねる場所がある。
古くから大学のある街には、これほどでなくても、何軒かの古書店が並ぶ場所がある。
まずはこうしたところへ行くのが手っ取り早い。
東京の3大古書店街はサイトを持っている。
・BOOK TOWN じんぼうー神田古書店街(東京都千代田区神田神保町)
・文京の古本屋ー本郷古書店街(東京都文京区本郷)
・早稲田古本ネットー早稲田古書店街(東京都新宿区西早稲田)…2012年の夏あたりで消えているのでアーカイブから。
関西の古書店街については、以下のまとめサイトがある(すばらしい)。
・nekokitiのページ:電脳Nマガジン 関西 古本屋マップ
◯古本まつりへ行こう
古本屋に足を運ばなくても、古本屋の方からあなたに会いに来る機会がある。
「古本まつり」として、複数の古書店が参加するイベントが、全国各地で開かれている。
数日間であるが、地理的にちらばった古本屋が一堂に会する機会であり、ビギナーには特にオススメである。
ここでお気に入りの古書店が見つかれば、あなたの古本屋ライフも、始まったのも同然である。
(文献案内)
こちらも、かつて『全国古本屋地図』という繰り返し出版されてきた定番本があったのだが、今は無き。この世界を知るためには、古いものでも読む価値はある。
日本古書通信社から出た、後継を期待されたのが次の書だが(表紙の写真も歴代の『全国古本屋地図』たちである。制作の顛末はこちら)、名簿であって地図ではなくなっている。
古書の世界についての書は山のようにあるが、今回はビギナー向けの記事だから、最近に出た読みやすいものを(ディープ編は別の機会に)。
リアル図書館をアクティベート(使えるように)する
◯大学図書館のガイダンスは必ず参加
数えきれないほどの図書館がこの星には存在するが、わざわざ使い方を向こうから教えてくれる図書館は、世界中を探しても、大学初学年の大学図書館しかない。
この機会を逃しては、自分で努力して機会をつくらないかぎり(お膳立てされた機会を見過ごす者が自ら機会を作るだろうか?)、一生涯学ぶことはないだろう。
全員が参加するガイダンスは、最低限のものだろう。オプションのガイダンスや、大学図書館が定期的に開いている様々な講座(データベースの使い方からレポート・論文作成まで)も残らず参加しよう。講座の感想をいい、質の向上に貢献しよう。図書館員とのコミュニケーションの種を蒔いておこう。
大学で身につくことは自分で調べ考えたことだけである。だから、ここが大学の中心である。ふさわしい優先順位をつけること。
◯図書館では点ではなく面で探す
あまりに基本的すぎて、ガイダンスでも触れられない事項を少し。以降は公共の図書館を利用する場合にも当てはまる事項である
手に入れたい本が決まっていて図書館へ足を運んでも、その本だけを書架から手に取るのでは、図書館の価値は十分の一もない。ある本を借りるためだけに行くのでは、図書館は無料貸本屋にすぎない。
図書館では、内容別に組織立って、書物は並べられている(そのために訓練を受けた専門家が、積み上げると膨大な時間を費やしている)。
図書館へ行く意義の半分は、その分類の成果をブラウズできること(そしてすぐさま手に取り内容にアクセスできること)である。
言い換えれば、ある特定の本=点から、その周辺へ知的視野を広げるために、わざわざ図書館に足を運んでいるのだ。
教員が並べた課題図書、書評サイトが勧める一冊を探しに出掛けるのはよし。しかし周りに(ことによると隣に)今のあなたにとって、もっとよい書物が待っているかもしれない。
手にとった左右5冊ずつくらいは、せめて目次に目を通すように、と指導している人もいるくらいである。
そしてあらゆる書物を所蔵する図書館は存在しない。
所蔵していても、誰かが先に借り出していて、今は書架に残っていないかもしれない。
しかしすべての書物は互いに参照し合いながら、部分的に内容を共有し合っていることを理解するならば、目指す一冊が無くても(完全な代替は不可能でも)、適当な(いい加減な、という意味ではない)数冊を選び出すことができるようになる。
一冊の本の固有性を神聖視する立場からは火をつけられそうだが(汝の著作権に安らぎあれ)、古典と呼ばれるテクストは、無数の書物の中に散らばったものを、そうして再び結わえ直したところに成立したものが少なくない。
そして、我々がものを書くこともまた、結び目をつくる行為なのである。
◯返却本コーナーを見る
知的周辺視を鍛える、簡易な方法がこれである。
理想的には、図書館の全ての棚を見て歩くことだが、それは過大な要求だろう。
かわりに、全書架からのサンプリングとして返却本コーナーを利用する。
その日に返却された書物が一時置きされる、あのスペースのことである。
図書館全体の本をくまなく見るのは不可能でも、「今日の返却本」は大した数ではない。
それでいていろんな分野の本が集まっているので、自分の知識と関心からは思いもつかない本に出会える機会となる。
誰かが何かの欲求/必要から貸し出されていた本だから、ハズレである確率もいくらか低い。
図書館へ行くたびに返却本コーナーをのぞくことを習慣にすると、知的周辺視と読書の幅がぐんぐん広がる。
馬力のある人なら図書館へ行くたびに、返却本コーナーから強制的に何か一冊借りることを自分ルールにしておくとよい。
(以下はビギナーのための図書館サバイバル・ガイド、他ではあまり書いてないけど大切なこと 読書猿Classic: between / beyond readers
の再編集である)
◯記録(ログ)をとる
老若男女を問わず、ビギナーほどメモをとらない。
メモをとらないと勿論、書名や請求記号の記憶も不正確になる。
知ったばかりの日本十進分類コードは、無味乾燥な数字に過ぎない。
本棚までたどり着いて、その本の並びを眺め、本を何冊か引きぬいて見て、ようやく覚えるに足りる何かが手に入る。
覚えておく方が無理なのだ。
だからメモれ。
特に数字や固有名詞は必ずメモれ。
あるはずものがないのは、半分は固有名詞の記憶の不正確さのせいだ。
人間は、他人が書いたもののタイトルや発表年など、必ず間違える動物だと知れ。
論文の後ろについた参考文献リストも信用出来ない。ケアレス・ミスの宝庫だ。
信じ切ってると痛い目にあうから、データベースその他で確認することを怠るな。
このことを知っておくだけで、文献調査難民になるケースが1/4は減る。
それから書いた日時を書き留めることも忘れるな。
メモしておけば、数日後にも数ヵ月後にも数年後にも、正確に思いだすことができる。
調査の経験が(どれだけわすかなものであっても)、財産になる。
◯既知を書きだし未知を知る
公立だろうと学校のだろうと、今時の図書館はネットでも蔵書検索ができる。
出かける前に調べておかないのは怠慢だ。というより時間がもったいない。
何の本を見ればいいか分からないのだ、だから図書館へ行くのだ、という声があがるかもしれない。
そうだとしても、次の項目は書きだしておくべきだ。
(1)何のために探しものしているのか?(目的)
(2)今の時点で分かっていること/すでに調べたことは何か?(既知のこと)
さらに、次の2つの項目を加えておくと、この後の作業が便利だ。
(3)見つけたいもの/知りたいことの種類(文献、言葉の情報、事象・事件の情報、人物の情報、歴史・日時の情報、地理・地名の情報)
(4)どこで探すか?(ネット、公立図書館、学校の図書館、……)
書き出すのは、自分にとって明確にする意味がある。
それから誰かと共有することが可能となる。
既知のことを書き込むことで、何が未知なのか、どうすればその「穴=未知」が埋まるのか、何が知りたいのか、それには何を調べるべきなのかが、少しずつ明らかになっていく。
◯レファレンス・カウンターを使う

レファレンス・カウンターは大いに利用していい。
使えば使うほど、あなたの探しものの経験値は高まる。レベル・アップもはやくなる。
図書館には、レファレンス・カウンターという探しものを支援してくれる専門の係がいるところがある。
レファレンス・カウンターには、ぜひさっきの表を持ち込もう。
当然だが、相手用と自分用の2つを用意すること。
「何が知りたいのか?」「目的は何なのか?」「どこまで分かっているのか?」という調査の三大前提をモレとダブリなしに伝えるのは結構手間がかかる。
ビギナーはこいつを甘く見てる。伝わって当然だと思ってる。
だからうまく伝わらないとなると、すぐにイライラする。
しかし口頭だけで説明しようとすると、慣れた人間でもないかぎり、はじめて留守番電話に不意打ちされた人類のように、あわあわと伝えるべきことの半分も言い終えられない。
自分で表を埋めてみると、調べものを手伝ってもらえるよう誰かに伝えることの面倒くささが実感できる。
そして作った表は、相手に伝える格好の説明資料になる。
表がうまくできてなくても、心意気は伝わる。これは大切なところだ。
丁寧に自分の意向を伝え(そのために自分ができる努力を惜しまず)、
そして相手が差し出してくれたものをきちんと受け取る(メモを忘れるな)、
そうした人間は味方を得る。少なくともその確率は高まる。
コミュニケーションとは、こういうことをいう。
(文献案内)
大学図書館の利用法については、このブログでは既に定番の次のものが参考になる。
大学に入る人にはマストアイテムだと言ってよい。
街の図書館を使いこなすための本が欠けているが、新書になっているものは次のものがある。
学生でなくても、大学図書館が使えることについても説明している。
実際に図書館に足を運ぶためのガイドとしては、『ブックマップ』なき後、比較的新しいものとしては次の2冊がある。
公立図書館だけでなく、各種の専門図書館も扱っている。
このブログでは「図書館ビギナーズマニュアル」のカテゴリーに図書館の使い方に関する記事がある。参考になるかもしれない。
(保存版)新入生のためのスタディ・スキルまとめ 読書猿Classic: between / beyond readers

でごまかしたので、今年は項目を分けて、新入生向けのサバイバル記事を書く。
最初は、本の入手の仕方について。
ネットで買う話は今更だし別の機会に譲って、リアルワールドで足を運んで手に入れる方法や考え方を今回は取り上げる。
このテーマを選んだ理由は次のとおりである。
(1)どの本が良いとか、どのように読むか、みたいな話は、みんな本が手に入ってからの話。手に入れることができることが大前提なので。
(2)それなのに各自でなんとかしておけと放置されることが多い(本の買い方借り方なんて当たり前の話は、誰もわざわざしてくれない)ので。
(3)加えて、「これを読んでおけ」と指示された書物を手に入れるという最初の一歩に何度かつまずくと、学問とか知的っぽい色んなものに《門前払い》をくらったような疎外感を胸に深く刻んで、手に届かないブドウは酸っぱいというイソップのキツネ状態をこじらせることも少なくないので。
(4)知らない街で暮らすことになって、図書館どころか本屋の位置さえ分からなくても、読まなくてはならない事態は容赦なくやってくるので。
自分が学生だった頃を思い出しても、大学の先生が薦める本は、なぜか必ず絶版か品切れだった。
当時の大学図書館は教員と連携しておらず、課題図書について別に複数冊キープしたり、貸出し期間を短く設定したりなんてことはしなかった。つまり課題図書を手に入れるのには、ほとんど役に立たなかった。
そういう逆境(?)に置かれた故に何らかのノウハウを身につけたとか開発したとかいう、うるわしい話は残念ながら全くない。
偶然にも、京阪神の古書街ツアーを組んでくれる先輩や、「いま○○書店で×××が***円で出てるけど、買っておこうか?」と気の利いた連絡をくれる友人に恵まれたのである。
これは僥倖であって、方法ではない。
そして、こういう場合は、ラッキーのおすそ分けをするのが吉である。古人はこれを「分福」という。
以下の雑文を書き残す次第である。
リアル書店を泳ぎ切る
◯本屋に本がない理由を知る
最低限知っておくべき事実の確認からはじめよう。
ひとつの書籍あたりの発行部数が減り、それを補うかために、より多くの書籍を発刊しなければならない(増え続ける発行点数)という悪循環の中に、長らくこの国の出版流通は置かれていた。
多くの新刊書は、初版でせいぜい数千部しか発刊されない。
しかし日本全国に本屋は(すごい勢いで減り続けているとはいえ)2012年で1万5千軒ある。
当然、新刊はすべての本屋に並ぶはずがない。
加えて返品制度がある。
詳細は省くが、書籍は多くの出版社からごく少数の取次会社(書籍の問屋)を経て、多数ある全国の書店に入荷する。
多数の小さな本屋と、寡占状態の取次では当然、取次ぎのほうが強い。
書店への入荷を配本と言うが、配本される本の種類・部数などは、取次側が決定するのが基本である(パターン配本)。
配本された本は書店で陳列され販売されるが、一定期間を過ぎても売れ残った本は取次を経由して出版社に返却される。
これを返本という。
出版社と取次の間では、書籍が取次に渡った段階で代金が出版社に支払われ、取次から書店へ配本される。書店から取次へと返本されて来た本は出版社へ戻されると、出版社から取次へその分の代金は返還されなくてはならない。資金繰りのためには、その分を相殺すべく、別の新しい書籍を出版して、取次に引き渡す。ひとつの書籍あたりの発行部数が少なくなれば、ますます別の書籍を出版しなくてはならない。
取次と書店との間では、新刊配本分についても(売れていない商品についても)、書店の注文品同様に配本当月の請求になる。
加えて書店にはどんどん新刊配本が回ってくる。
このため、資金繰りの上からも、店舗効率からも、ますます早い目に見切りをつけて返本し、次々と入れ替えざるを得なくなる。
書店にとどまる期間が短くなれば平均すれば売れる部数も減り、出版社はますます新しい書籍を出すように駆られて、ますます多くの書籍が出版されて……という悪循環。
こうして売れ続けるごく一部の本以外は、書店から速やかに消え去ることになる。
つまり新刊書店は、川(流れ)であって、海ではない。
流れの速さはますます速くなり、書籍はほんのつかの間その棚にとどまり、去っていく。
もちろん、すべての新刊書店がパターン配本に甘んじている訳ではない。
店を支える客筋を持ち、自己責任で独自の品揃えができる小規模書店は存在する。
読み手から見るならば、個性的な品揃えの書店は、その品揃えの魅力だけでなく、自分の責任で仕入れていることが多いが故に、他の新刊書店で見つからなくなった書籍が返本されず残っている可能性がある。
そうした書店は、あなたが時間をかけて探し、通うだけの理由がある。
また一時増えた、大きな床面積の巨大書店は、幅が広い川である。
つまり流れをいくらかゆるやかにすることができる。
他の本屋から流れ去ってしまった本を見つける可能性がいくらか高いことになる。
ネット書店からの配達が待てないほど切羽詰まったときは(必ずやってくる)、近隣で最も大きな書店に電話して在庫を確認し、自分の足で走るのが(特に地方都市の場合は)ベストである。
◯新刊書店を越えていく
あなたが時代の流れに敏感なネオマニー(新しがり)ならば、刻々と変わる流れを知るために、定期的に(たとえば毎日)新刊書店を訪ねる必要があるだろう。
逆に、カーライルの黄金則(刊行後1年未満の本は買わない)に従うオールド・タイプの読書人ならば、新刊書店はほとんど用のないところとなる。
しかし、いずれにせよ「本屋に行く」しか書物を手に入れる方法を知らない、読書の幼年期に幕を引くことになるだろう。
何故なら、知識の世界に足を踏み入れるならば、それを成り立たせる関係は、当然ながら新刊書流通とは別の原理で組み上がっているからだ。
このブログでは繰り返し触れていることだが、知識も、当然に書物も、スタンドアローンでは存在しない。
知識は他の知識と、書物は他の書物と、影響し合い参照し合う関係を、互いに網の目のように広げている。
1冊の書は、そのひとつの結び目に過ぎない。
しかしこの結び目は、驚くほど多くの、近くのそして遠くの結び目と結びついている。
そのことに気付き、今手にしている書物が外へと伸ばす結びつきを追いかけようとすれば、たとえばある箇所で言及されている別の書物は、当然ながらその書物が著された以前に生まれた書物であって、高い確率で新刊書店には存在しない。
書店では手に入らない書物の存在を、あなたは次から次へと知ることになるだろう(そして古本屋や図書館で積んだ経験が、新刊書店でも生きることをやがて知るだろう)。
次へ向かう時が来たようだ。
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リアル古書店にアクセスする
古本業界には、寡占的な取次(問屋)は存在しない。
すべての書籍を自分の責任で仕入れる。つまり、そのほとんどが、新刊書店のところで述べた〈個性的な品揃えの書店〉にならざるを得ない※。
※誤解を招く言い方をすれば、クライエントーサーバ型の新刊書流通に対し、ピア・トゥ・ピア型の古書流通というのだが(いやクライエントが要求しない本が配本されるじゃないか、という批判がある)、古書では、仕入れてきた書籍を出品して古書店同士が互いに売買する市場が取引の中心になっている。
新刊書店に書物は留まらないという構造がある以上、新聞の書評で紹介された本だけを読み続けるなら別だが、まっとうな読書生活を防衛するためには、古書店に向かわざるを得ない。
手元の資料だと、古書店は全国に2千と数百軒あまり。
当然、自分の生活圏内に存在せず、周囲に古書店を利用している人もおらず、モデリングによって学ぶことのできない人も少なくないだろう。
しかし、大学は本を読む人間をあるエリアに集中させる(はず)から、その周辺には古書店がある可能性は小さくない(はず)。
大学デビューが最後の機会だと知って、足を運ぶべきである。
知的好奇心に火がつきだした者にとっては、古書店の棚は宝の山に見える。
自分が欲しい本を手に入れるのにいくらかでも苦労したことがある者なら、なぜもっと早くこの店に来なかったのかと地団駄を踏むだろう。
図書館でもスペースの関係から、刊行年の古い本は書庫に入っていて、直接書架から手に取れる機会は少ない(だから書庫に入れるなら、その機会を逃すべきではない)。
古書店の棚は、ある分野の書物が、生まれた時期の別によらず一堂に会する数少ない場所でもある。
今日では、ある書物の存在を知れば、検索することは容易である。
検索できるならば、自宅にいながらにして、新刊書と古書を問わず、また国内外を問わず、ネットを通じて購入ができる。
それどころかGoogle Mapの「おみせフォト」(Google Business Photos;ストリートビューの店内版)を使えば、いくつかの古書店では、店内をバーチャルに歩いて回ることすら可能である。
例として、以下に二つの書店をあげて、リンクを貼った。
赤尾照文堂
京都市中京区河原町通六角

Bauman Rare Books
535 Madison Ave, New York

問題は、プラトンが対話篇『メノン』の中で告げた、探索のパラドクスにまで戻る。
すなわち、あらかじめ知っていなければ探すことはできない(偶然受け取っても、それが探していたものであることが分からない)。しかし、あらかじめ知っているのであれば、もはや探す必要がないではないか。
いかにして自分がまだ知らない何かがあることを知るのか?
そして探しているものが、実はどのようなものであるかを、いかにして知るのか?
去年の記事
(保存版)新入生のためのスタディ・スキルまとめ 読書猿Classic: between / beyond readers

に、こう書いた。
学校は、あなたの知らない何かではなく、あなたが何を知らないかを教えるところである。
無知に気付く機会を与えるまでが学校の仕事だ。
それを引受け,コンテンツを充填し無知を埋めるのは,あなた自身がやらなくてはならない。
知りたいと思うことなら,人はいくらでも独力で学ぶ。また独力で学べないと結局何も身につかない。
しかし,そんな分野や知識が存在することをそもそも知らなければ,知りたいと思うこともできない。
自分が〈知っていること〉と〈考え得ること〉の限界を越えて,まだあることも知らない何かに人を気付かせるのは,他者からの不意打ちである。
そうして人は、書架を(時には目録や索引を)ブラウズすることによっても、不意打ちを受けることができる。
◯古書店街へ行こう
神田や本郷や早稲田の古書店街のように、古本屋が軒を連ねる場所がある。
古くから大学のある街には、これほどでなくても、何軒かの古書店が並ぶ場所がある。
まずはこうしたところへ行くのが手っ取り早い。
東京の3大古書店街はサイトを持っている。
・BOOK TOWN じんぼうー神田古書店街(東京都千代田区神田神保町)
・文京の古本屋ー本郷古書店街(東京都文京区本郷)
・早稲田古本ネットー早稲田古書店街(東京都新宿区西早稲田)…2012年の夏あたりで消えているのでアーカイブから。
関西の古書店街については、以下のまとめサイトがある(すばらしい)。
・nekokitiのページ:電脳Nマガジン 関西 古本屋マップ
◯古本まつりへ行こう
古本屋に足を運ばなくても、古本屋の方からあなたに会いに来る機会がある。
「古本まつり」として、複数の古書店が参加するイベントが、全国各地で開かれている。
数日間であるが、地理的にちらばった古本屋が一堂に会する機会であり、ビギナーには特にオススメである。
ここでお気に入りの古書店が見つかれば、あなたの古本屋ライフも、始まったのも同然である。
(文献案内)
こちらも、かつて『全国古本屋地図』という繰り返し出版されてきた定番本があったのだが、今は無き。この世界を知るためには、古いものでも読む価値はある。
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日本古書通信社から出た、後継を期待されたのが次の書だが(表紙の写真も歴代の『全国古本屋地図』たちである。制作の顛末はこちら)、名簿であって地図ではなくなっている。
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古書の世界についての書は山のようにあるが、今回はビギナー向けの記事だから、最近に出た読みやすいものを(ディープ編は別の機会に)。
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リアル図書館をアクティベート(使えるように)する
◯大学図書館のガイダンスは必ず参加
数えきれないほどの図書館がこの星には存在するが、わざわざ使い方を向こうから教えてくれる図書館は、世界中を探しても、大学初学年の大学図書館しかない。
この機会を逃しては、自分で努力して機会をつくらないかぎり(お膳立てされた機会を見過ごす者が自ら機会を作るだろうか?)、一生涯学ぶことはないだろう。
全員が参加するガイダンスは、最低限のものだろう。オプションのガイダンスや、大学図書館が定期的に開いている様々な講座(データベースの使い方からレポート・論文作成まで)も残らず参加しよう。講座の感想をいい、質の向上に貢献しよう。図書館員とのコミュニケーションの種を蒔いておこう。
大学で身につくことは自分で調べ考えたことだけである。だから、ここが大学の中心である。ふさわしい優先順位をつけること。
◯図書館では点ではなく面で探す
あまりに基本的すぎて、ガイダンスでも触れられない事項を少し。以降は公共の図書館を利用する場合にも当てはまる事項である
手に入れたい本が決まっていて図書館へ足を運んでも、その本だけを書架から手に取るのでは、図書館の価値は十分の一もない。ある本を借りるためだけに行くのでは、図書館は無料貸本屋にすぎない。
図書館では、内容別に組織立って、書物は並べられている(そのために訓練を受けた専門家が、積み上げると膨大な時間を費やしている)。
図書館へ行く意義の半分は、その分類の成果をブラウズできること(そしてすぐさま手に取り内容にアクセスできること)である。
言い換えれば、ある特定の本=点から、その周辺へ知的視野を広げるために、わざわざ図書館に足を運んでいるのだ。
教員が並べた課題図書、書評サイトが勧める一冊を探しに出掛けるのはよし。しかし周りに(ことによると隣に)今のあなたにとって、もっとよい書物が待っているかもしれない。
手にとった左右5冊ずつくらいは、せめて目次に目を通すように、と指導している人もいるくらいである。
そしてあらゆる書物を所蔵する図書館は存在しない。
所蔵していても、誰かが先に借り出していて、今は書架に残っていないかもしれない。
しかしすべての書物は互いに参照し合いながら、部分的に内容を共有し合っていることを理解するならば、目指す一冊が無くても(完全な代替は不可能でも)、適当な(いい加減な、という意味ではない)数冊を選び出すことができるようになる。
一冊の本の固有性を神聖視する立場からは火をつけられそうだが(汝の著作権に安らぎあれ)、古典と呼ばれるテクストは、無数の書物の中に散らばったものを、そうして再び結わえ直したところに成立したものが少なくない。
そして、我々がものを書くこともまた、結び目をつくる行為なのである。
◯返却本コーナーを見る
知的周辺視を鍛える、簡易な方法がこれである。
理想的には、図書館の全ての棚を見て歩くことだが、それは過大な要求だろう。
かわりに、全書架からのサンプリングとして返却本コーナーを利用する。
その日に返却された書物が一時置きされる、あのスペースのことである。
図書館全体の本をくまなく見るのは不可能でも、「今日の返却本」は大した数ではない。
それでいていろんな分野の本が集まっているので、自分の知識と関心からは思いもつかない本に出会える機会となる。
誰かが何かの欲求/必要から貸し出されていた本だから、ハズレである確率もいくらか低い。
図書館へ行くたびに返却本コーナーをのぞくことを習慣にすると、知的周辺視と読書の幅がぐんぐん広がる。
馬力のある人なら図書館へ行くたびに、返却本コーナーから強制的に何か一冊借りることを自分ルールにしておくとよい。
(以下はビギナーのための図書館サバイバル・ガイド、他ではあまり書いてないけど大切なこと 読書猿Classic: between / beyond readers

◯記録(ログ)をとる
老若男女を問わず、ビギナーほどメモをとらない。
メモをとらないと勿論、書名や請求記号の記憶も不正確になる。
知ったばかりの日本十進分類コードは、無味乾燥な数字に過ぎない。
本棚までたどり着いて、その本の並びを眺め、本を何冊か引きぬいて見て、ようやく覚えるに足りる何かが手に入る。
覚えておく方が無理なのだ。
だからメモれ。
特に数字や固有名詞は必ずメモれ。
あるはずものがないのは、半分は固有名詞の記憶の不正確さのせいだ。
人間は、他人が書いたもののタイトルや発表年など、必ず間違える動物だと知れ。
論文の後ろについた参考文献リストも信用出来ない。ケアレス・ミスの宝庫だ。
信じ切ってると痛い目にあうから、データベースその他で確認することを怠るな。
このことを知っておくだけで、文献調査難民になるケースが1/4は減る。
それから書いた日時を書き留めることも忘れるな。
メモしておけば、数日後にも数ヵ月後にも数年後にも、正確に思いだすことができる。
調査の経験が(どれだけわすかなものであっても)、財産になる。
◯既知を書きだし未知を知る
公立だろうと学校のだろうと、今時の図書館はネットでも蔵書検索ができる。
出かける前に調べておかないのは怠慢だ。というより時間がもったいない。
何の本を見ればいいか分からないのだ、だから図書館へ行くのだ、という声があがるかもしれない。
そうだとしても、次の項目は書きだしておくべきだ。
(1)何のために探しものしているのか?(目的)
(2)今の時点で分かっていること/すでに調べたことは何か?(既知のこと)
さらに、次の2つの項目を加えておくと、この後の作業が便利だ。
(3)見つけたいもの/知りたいことの種類(文献、言葉の情報、事象・事件の情報、人物の情報、歴史・日時の情報、地理・地名の情報)
(4)どこで探すか?(ネット、公立図書館、学校の図書館、……)
書き出すのは、自分にとって明確にする意味がある。
それから誰かと共有することが可能となる。
既知のことを書き込むことで、何が未知なのか、どうすればその「穴=未知」が埋まるのか、何が知りたいのか、それには何を調べるべきなのかが、少しずつ明らかになっていく。
◯レファレンス・カウンターを使う

レファレンス・カウンターは大いに利用していい。
使えば使うほど、あなたの探しものの経験値は高まる。レベル・アップもはやくなる。
図書館には、レファレンス・カウンターという探しものを支援してくれる専門の係がいるところがある。
レファレンス・カウンターには、ぜひさっきの表を持ち込もう。
当然だが、相手用と自分用の2つを用意すること。
「何が知りたいのか?」「目的は何なのか?」「どこまで分かっているのか?」という調査の三大前提をモレとダブリなしに伝えるのは結構手間がかかる。
ビギナーはこいつを甘く見てる。伝わって当然だと思ってる。
だからうまく伝わらないとなると、すぐにイライラする。
しかし口頭だけで説明しようとすると、慣れた人間でもないかぎり、はじめて留守番電話に不意打ちされた人類のように、あわあわと伝えるべきことの半分も言い終えられない。
自分で表を埋めてみると、調べものを手伝ってもらえるよう誰かに伝えることの面倒くささが実感できる。
そして作った表は、相手に伝える格好の説明資料になる。
表がうまくできてなくても、心意気は伝わる。これは大切なところだ。
丁寧に自分の意向を伝え(そのために自分ができる努力を惜しまず)、
そして相手が差し出してくれたものをきちんと受け取る(メモを忘れるな)、
そうした人間は味方を得る。少なくともその確率は高まる。
コミュニケーションとは、こういうことをいう。
(文献案内)
大学図書館の利用法については、このブログでは既に定番の次のものが参考になる。
大学に入る人にはマストアイテムだと言ってよい。
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街の図書館を使いこなすための本が欠けているが、新書になっているものは次のものがある。
学生でなくても、大学図書館が使えることについても説明している。
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実際に図書館に足を運ぶためのガイドとしては、『ブックマップ』なき後、比較的新しいものとしては次の2冊がある。
公立図書館だけでなく、各種の専門図書館も扱っている。
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このブログでは「図書館ビギナーズマニュアル」のカテゴリーに図書館の使い方に関する記事がある。参考になるかもしれない。
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