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     元々、書き言葉は、それぞれの用途や目的ごとに決まった定型(フォーマット)に基づいて書かれるのが普通であった。

     例外は、近代以降、西洋世界から広がった〈小説〉という新しい言語芸術と、大正期以来、日本の初等教育で続けられる〈自由作文〉ぐらいである。
     日本に生を受け、小説しか読まず、作文教育しか受けていない人が、「書き方がわからない」としても不思議なことではない。
     
     現状確認を繰り返すだけでは仕方がないから、「ならばどうすればいいか」に進もう。
     
     書き言葉が定型に基づくものであるなら、その定型を学べばいい。もっと言えば、マネすればいい。
     これについては、すでに多くのフォーマットやテンプレートが提案されている。
     このブログでも

     文章の型稽古→穴埋めすれば誰でも書ける魔法の文章テンプレート 読書猿Classic: between / beyond readers 文章の型稽古→穴埋めすれば誰でも書ける魔法の文章テンプレート 読書猿Classic: between / beyond readers このエントリーをはてなブックマークに追加

     という記事を書いたことがある。

     
     そこで今回は、実用文/仕事の文章に必要な、最小限の要素を抽出して、理由付けした。
     パターンを丸暗記するより、理解したほうが、記憶することも応用することも容易にできるだろう。

     加えて、この基本のパターンを、

    ・報告:現在を書く
    ・分析:過去を描く
    ・提言:未来を書く

    という3つの応用パターンに展開した。
     


    基本パターン

     実用文/仕事の文章に求められる機能は《情報伝達》であり、煎じ詰めれば、問い(情報要求)に対する答え(情報提供)である。
     しかし煎じ詰めたものだけを提供するなら、せいぜいが箇条書きに堕してしまい、文章の域にとどまらない。

     文章として完備したものになるためには、答え(情報提供)を呼びつける問い(情報要求)を含み持ち、なおかつ問い(情報要求)が出されるコンテキスト(背景・文脈)をも取り込む必要がある。
     こうすれば、文章を読むだけで、その文章が生まれてきた理由と書かれた目的を知ることができ、読み手がこの文章を読むべきかどうかを判断することができるようになる。

     文章自体がその存在証明を行うのが〈大人の文章〉なのである。

     背景→問い→答え、という順序はまた、我々の理解のプロセスにとっても適合的である。
     我々は既知の情報を背景にして、その前景に未知なるものを置くことで物事を認識し理解する。
     つまり既知なるものを先行させ、未知なるものを後続させるのが《情報伝達》の基層フォーマットである。
     これで文章構成の最小ユニットが出揃った。
     
    〈読者の既知情報=背景〉
         ↓
    〈未知情報の要求=問い〉
         ↓
    〈未知情報の提供=答え〉

    〈読者の既知情報=背景〉と〈未知情報の要求=問い〉のギャップをつなぐために、逆接の接続詞を入れると、次のような基本フォーマットができる。
     C・B・Aと記憶すればよいだろう。


    1.ommon knowledge:読者の既知情報=背景

     書き手はむろん、読み手も知っている共通知識から書き始める。
     この文章のコンテキスト(背景・文脈)を提示して読者を誘う。

     観点をかえれば、前提となる知識を示して読者を選んでいる、とも言える。
     つまり、「コンテキスト(背景・文脈)を提示された知識を持っている人を対象にこの文章は書かれている」というアナウンスでもあるからだ。

     しかしアナウンスして読者を選択した以上、コンテキスト(背景・文脈)を提示された知識を持っている人が、知らないこと/抱くような疑問には、すべて文章中で答える責任が生じる。
     

    2.ut :新知見の導入

     しかし、読み手も知っている(はず)ことばかりでは、その文章は読む価値がない。
     文章は、読み手が知らない事項へ進まなくてはならない。
     その切り替え点で、逆接の接続詞が入る。

     こうして既知から未知への方向転換が行われ、読み手が知らないこと/意外に思うことへ導いていく。


    3.sk-Answer:問いと答え:未知情報の要求と提供

     まだ知らないこと、あるいは意外に思うことへ導いたことで、読み手の中に〈問い〉が生まれる。

     以下は、読み手が抱く〈問い〉に対して〈答え〉を返すように書き進めていく。

     必要ならば、つまり、返した〈答え〉に対して読み手がまた〈問い〉を抱くようならば、答えの一部についてさらに問いかけし、より詳しい答えを書いていく。

     たとえば、読み手にとって未知の(かもしれない)用語や概念が〈答え〉の中に登場するならば、読み手は「この用語/概念は何か?」という〈問い〉を抱くだろう。コンテキスト(背景・文脈)を提示された知識を持っている人が、知らないこと/抱くような疑問には、すべて文章中で答える責任が生じたことを思い出そう。
     これには「___という用語/概念は、____という意味である(ということを指す)」という〈答え〉を返す必要があるだろう。

     あるいは、読み手があなたの主張に「本当にこんなことが言えるのか?」という疑問(問い)を抱くならば、これには「___であると主張する根拠は____である」といった〈答え〉を返す必要があるだろう。

     このような〈問い〉と〈答え〉を必要なだけ繰り返していく。




     では、この基本パターンを3つの実践パターンに展開していこう。


    展開1:報告:現在を書く

    1.ommon knowledge:共通知識

    「___については、____である(ことはよく知られている)。」


    2.ut :新知見の導入

    「しかし、___であることはあまり知られていない。」


    3.sk-Answer:問いと答え

    「~は、どうなっているのだろうか。→___となっている。以下で、_(数字)_つに分けて詳しく述べる。」
    「第一に、_____」
    「第二に、_____」
    ……



    展開2:分析:過去を書く

    1.ommon knowledge:共通知識

    「___については、従来____であると考えられてきた。」


    2.ut :新知見の導入

    「しかし、___である原因については、十分には明らかにされていない。」


    3.sk-Answer:問いと答え

    「何故こうなったのか。→___が原因である。」
    「そう判断する根拠は、次の_(数字)_つである。」
    「第一に、_____」
    「第二に、_____」
    ……




    展開3:提言:未来を書く

    1.ommon knowledge:共通知識

    「___について、____である(ことはよく知られている)」


    2.ut :新知見の導入

    「しかし、最近は___となっている(___に変わってきている)」


    3.sk-Answer:問いと答え

    「これからどうなるのか?→___となると予想される。なぜなら___。」

    「それならどうすればいいのか?→___すべきである。なぜなら___。」




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