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この本に書いてあるのは、ほんとに〈基本的〉なことです。
ここで〈基本的〉というのは
(1)大抵の人が実行可能で
(2)多くの人にとって有益であることが理解できるけれど
(3)実際に実行する人はそれほど多くない
という意味です。
そういう〈基本的〉な、本の読み方(情報の読み取り方、ものごとの筋道の追いかけ方)、問いの立て方と問い直し方、受け取った情報を元にした思考の組み立て方、文章の書き方そして考え方について書いてあります。
ちゃんとした学問をちゃんとやっている人が、そうなるまでに身につけるような、頭脳と身体の使い方について、その一番大切な核(コア)にあたる部分を、できるだけ分かりやすく説明してくれています。
この本を読むと、引用文を並べて感想コメントを付け加えただけのレポートなんて書けなくなるでしょう。
この本を読むと、「自分の頭で考える」なんて能天気なことをのたまう人たちから得られるものは何ひとつないことに気付くでしょう。
この本を読むと、ヘンなもの(これさえあれば世の中の物事はなんでもぶった切れる特別なもの、という格好をしていることが多いです)にハマって学生生活や人生を棒に振ってしまう危険性が半分くらいに下がるでしょう。
この本を読むと、たとえば時々ネットでも見かける、Twitterでとりわけ見かける、どこかで聞いたようなことをヒステリックに振り回している恥ずかしい学者や批評家先生に欠けているものが何なのか、はっきり言葉にすることができるようになるでしょう。
たとえば文庫版の前書きにはこんな一節があります。
「自分で考えろ」というのはやさしい。「自分で考える力を身につけよう」というだけなら、誰でもいえる。そういって考える力がつくと思っている人々は、どれだけ考える力を持っているのか。考えるとはどういうことかを知っているのか。本を読みさえすれば、考えることにつながるわけでもない。自分で何かを調べさえすれば、考える力が育つわけでもない。ディスカッションやディベートの機会を作れば、自分の考えを伝えられるようになるわけでもない」
(知的複眼思考法 誰でも持っている想像力のスイッチ(講談社プラスアルファ文庫、6~7ページ)
こうした問いかけのすべてに、この本は答えを出してくれている訳ではありません。
もちろんヒントや例解(たとえばこんなやり方がある)については、さまざまな例をあげて詳しく説明しています。
しかしこの本が教えてくれるのは、もはや唯一の正解なんてない領域に私たちが踏み込んでいるのだということ、だからって「何でもあり」という訳でないこと、つまり「正解探し」とは違う努力をしなければならないこと、不安になるかもしれないけれどそんな不安を抱えながら進んでいくのだということです。
短く言えば、この本が教えてくれるのは、考え方や読み方・書き方についての〈解答〉ではなく〈課題〉です。
まともにこれらの〈課題〉に応じるためには、この本に書いてあること以外/以上のことにも挑むことになるでしょう。
だからこそ、真っ先にこの本を読んで欲しいと思うのです。
蛇足と思いながら、付け加えます。
〈基本的〉なことというのは、少しのコストで多くが得られるものではありません。
むしろ手間や負担がしっかり必要なことが多いです(だからこそ、実際にやる人、やり続けることができる人は多くなくて、誰にもできることを続けるだけで多くの人が届かない域に至ることがあるのですが)。
大人と付き合いはじめた若い人にとっては、これだけで敬遠しがちになります。
というのは、すでに何年も前からはじめている人たちに対して、若い人たちが〈基本的〉なことで立ち向かっても、先行する人たちが有利に決まっているからです。
一発逆転を狙って、抜け道や邪道を探したくなるのは自然な感情です。
ですが、なぜ抜け道が抜け道であり邪道が邪道であるのかを、知ってから飛び込むのと知らずに飛び込むのは違います。
だからこそ、真っ先にこの本を読んで欲しいと思います。
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