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2014.05.25
何も思いつかない状態から〈自分を炎上させる言葉〉で脱出するアイデア発想法
0(ゼロ)を1にすることは、1を2にしたり2を4にしたりするよりも難しい。
アイデア発想法の多くは、「〜についてのアイデアを出そう」という目的で使うものである。
テーマが外から与えられる状況下で進化してきたものなので無理もない。
半時間で108のアイデアを生む/後処理をにらんだブレイン・ライティングの工夫その他 読書猿Classic: between / beyond readers

自分の枠を超える→アナロジーを梃子に新しい考えを生み出す3つの質問 読書猿Classic: between / beyond readers

アイデアが降りてこないあなたを神様に助けさせる7つの道具 読書猿Classic: between / beyond readers

問題は、何をするかも、どっちへ進むかも、決まってない場合である。
以前は、昔書いたメモや文章を読み返すか、辞書や書物をランダムに開くか、散歩など他のことをするかしながら、何か思いつくまで待つくらいしかしてなかった。
発明王はここまでやる→エジソンのすごいノート 読書猿Classic: between / beyond readers

しかし少し前に紹介した、まだうまく言葉にならないものを捕まえるための方法にTAE(Thinking At the Edge)がある。これを使うともう少し組織的かつルーティン的に「0(ゼロ)からはじめる」ことに取り組める。
何を書くかは身体に尋ねる-言葉にならないところから理論を立ち上げるThinking At the Edgeという方法 読書猿Classic: between / beyond readers

最初はTAEをフルセットに近い形でやっていたのだが、どんどん手を抜くようになって、最近は以下の簡易な方法に落ち着いている。
なお、この方法は、
書くのに必要なすべてのものー野田のフロー(流れ)図と創作系記事まとめ 読書猿Classic: between / beyond readers

で触れた
a.コモンセンスを獲得する全方位読書〜A.書きたいもの/書く動機
の中の
・精神に逆目を立ててくれるような、苦手な分野、嫌いな作家の本を手に取る
とくに好きでもない書物、どうしても好きになれない作品は、あなたが何を書きたいのかを教えてくれる可能性が高い。
「いやいやいや、そうじゃないだろ!」と思わず叫んだ箇所、どうしても納得できない部分に突き当たったなら、それこそがあなたが書きたいと思う何かであり、少なくともその方向を示す断片である。
自分を広げる読書の中で、とくに自分が「否」と叫びたくなるものを読む中で、自分が本当は何を書きたいのかを発見する。
を手続化・方法化したものである。
1.自分を炎上させる言葉からはじめる
最初に「呼び水となる1文」を用意する。
この「呼び水となる1文」は、書けるなら自分で書いてもいい。
しかし自分で書けるくらいだったら、0(ゼロ)からはじめることにはならない。
ここは言葉が出てくるきっかけになりさえすれば、何でもかまわない。
名言名句や「うまいこという」と自分が感心するようなフレーズよりもむしろ、カチンとくる(腹が立つ)ものとか、「これはひどい」と思うような1文を選んだ方が、言葉(文句)が出て来やすい。
一言で言えば「自分を炎上させる言葉を選ぶ」といった感じである※。
※では、実際に巷で炎上を引き起こしている発言がベストかといえばそうではなくて、文脈から切り離して持ってくると何てことはないフレーズであることが多く(状況×発言者×言葉遣い×内容の合わせ技が炎上発言を成り立たせるほとんどすべてであり、内容だけの比重を考えると案外軽いことが分かる)、あまり自分を炎上させてはくれないようである。
ネットで何か書いている人なら、自分を批判するコメントの類をストックしておく。
書いても仕方がないと思いながらも思わず反論してしまいたくなるようなのが、最も言葉が湧き出てくる。
他の人宛の言葉でも、思わず噛みつきたくなるような言葉なら、同様に使える。
「自分を炎上させる言葉」は、自分の価値観やものの見方と食い違うものであることが多い。
お手軽なのは、たとえば思想信条の違う/対立する人たちが書いたものから探すことである。
その発言の内部で〈食い違い〉を含む矛盾した文も「それが本当は正しいとしたらどういうことか?」という問いとセットにすると、呼び水となる言葉として使える。「本当は正しいとしたら」を持ち続けるのが少し労力がいるが、これができるなら、禅の公案のようなものも使えるようになる。
こうして溢れ出た悪感情まみれの言葉は、以下の数ステップの間に濾過/蒸留されて、アイデアに精製される。
「自分を炎上させる言葉」に、書くのを辞めたくなるような言葉を選ぶのは、その善用であり供養である。
2.沸き起こる言葉を手を止めず書き出す
自分の中から言葉が湧き上がる〈呼び水となる1文〉を選んだはずなので、その1文を目にして出てくる言葉をとにかく書き留めていく。
そのまま外に出すわけではないので、手を止めたり、書いたことを反省したりはしない。
うまい表現にはならず、まともな文にもならないかもしれませんが、単語であっても、時にはうなり声であっても、とにかく書き出す。
外には出せないような罵詈雑言や汚い言葉も書き留める。
同じような言葉が繰り返し出てきても構わないので、そのまま書き出ていく。
この段階ではそれほど時間を使いたくないので、あまりたくさん書かなくてもいい。
言葉が途切れて来たら、次のステップへ進む。
3.書き出した〈ぶつくさ〉に線を引く
2.で書き出した言葉の羅列を読み返します。
「これは、さっきのと似てる」「また同じ事を言ってる」というところに線を引いたり囲んだり印をつけたりしていく。
重要そうと思えるところにも、線を引いたり囲んだり印をつけたりしていく。
そして線・囲み・印をついた部分から、テーマや方向性とすべきキーワードを拾い出す。
ここまで来れば、今後の調べものやアイデア出しのテーマや方向性、少なくともその候補ぐらいは手に入る。

4.拾い上げた項目を交差Crossingさせる
3.で拾えたのはせいぜい思いつきだが、さらに掘り下げるにはもう1ステップ加える。
線・囲み・印をついた部分から、なるべく異なるものを3つくらい選ぶ。
3つの項目を拾った場合は、3×3のマス目を埋めることになる。
3つ以上選んでもかまいませんが、拾い上げる項目が増えると、交差表は大きくなり埋めるマス目の数は急激に増えて時間がかかるようになる。
より複雑なものや大物を狙うなら3つより多めを、そうでないなら3つだけを拾うことにして先に進む。
中の人の現有能力では、手間対効果を考えると3×3ぐらいがちょうど良いようである。
こうして選んだ3つ(以上)の項目をつかって下のような交差表をつくる。
左端と上端に並んだ項目を掛け合わせてマス目を埋めていく。

これはTAEで出てくるパターン交差の流用である。
交差させる項目はできるだけ異なるものを選んだ。
いわば思いつきの中の極端なもの同士を掛け合わせることで、思いつきに含まれているがはっきりとは現れていないものを現前化させる試みである。
これは自分のつぶやきのそれぞれを、異なる角度から見なおしてみることでもある。
個々の思いつきには、その内容と共に、その内容を支える前提や視点が(多くは暗黙的・陰伏的に)含まれている。
異なる思いつきを掛け合わせることは、異なる内容と前提・視点を強引に組み合わせることで、暗黙的・陰伏的だった部分を表面に浮かび上がらせる。
また 自分を炎上させる言葉に惹起させられて出てきたつぶやきは、勢いはあるかわりに冷静さに欠け視野がせまいものになりがちである。
異なる前提・視点と結び合わせることは、視野を広げ、冷静さを取り戻すプロセスでもある。
どのように「掛け合わせ」て何を書き込むかは自由であり、異なる項目を結び付けようとするだけで(特にそれぞれの項目が大きく異なっている場合には)言葉が浮かんでくることも珍しくない。
しかし一応のガイドライン(導きの質問)としては次のようなものがある。
・〈左端の項目〉と〈上端の項目〉は、どこが似ているか?
・〈左端の項目〉と〈上端の項目〉は、どこが異なるか?
・〈左端の項目〉の視点から見て〈上端の項目〉はどう見える?
・・〈左端の項目〉と主張する人は、〈上端の項目〉をどう思うか?
・〈左端の項目〉の中の何が、〈上端の項目〉を問いとした時の、答えになっているか?
・〈左端の項目〉と掛けて〈上端の項目〉と解く、その心は?
交差シートのマス目は必ずしもすべて埋める必要はない。
交差する中で「これは!」というものが出てくれば、目的は達したので先に進んで構わない。
ただ、作りかけの交差シートは保存しておこう。
いつか空いているマス目を埋めようとすることで、今は気付かず思いつかなかったアイデアが浮かぶことが結構ある。
(参考文献)
アイデア発想法の多くは、「〜についてのアイデアを出そう」という目的で使うものである。
テーマが外から与えられる状況下で進化してきたものなので無理もない。
半時間で108のアイデアを生む/後処理をにらんだブレイン・ライティングの工夫その他 読書猿Classic: between / beyond readers

自分の枠を超える→アナロジーを梃子に新しい考えを生み出す3つの質問 読書猿Classic: between / beyond readers

アイデアが降りてこないあなたを神様に助けさせる7つの道具 読書猿Classic: between / beyond readers

問題は、何をするかも、どっちへ進むかも、決まってない場合である。
以前は、昔書いたメモや文章を読み返すか、辞書や書物をランダムに開くか、散歩など他のことをするかしながら、何か思いつくまで待つくらいしかしてなかった。
発明王はここまでやる→エジソンのすごいノート 読書猿Classic: between / beyond readers

しかし少し前に紹介した、まだうまく言葉にならないものを捕まえるための方法にTAE(Thinking At the Edge)がある。これを使うともう少し組織的かつルーティン的に「0(ゼロ)からはじめる」ことに取り組める。
何を書くかは身体に尋ねる-言葉にならないところから理論を立ち上げるThinking At the Edgeという方法 読書猿Classic: between / beyond readers

最初はTAEをフルセットに近い形でやっていたのだが、どんどん手を抜くようになって、最近は以下の簡易な方法に落ち着いている。
なお、この方法は、
書くのに必要なすべてのものー野田のフロー(流れ)図と創作系記事まとめ 読書猿Classic: between / beyond readers

で触れた
a.コモンセンスを獲得する全方位読書〜A.書きたいもの/書く動機
の中の
・精神に逆目を立ててくれるような、苦手な分野、嫌いな作家の本を手に取る
とくに好きでもない書物、どうしても好きになれない作品は、あなたが何を書きたいのかを教えてくれる可能性が高い。
「いやいやいや、そうじゃないだろ!」と思わず叫んだ箇所、どうしても納得できない部分に突き当たったなら、それこそがあなたが書きたいと思う何かであり、少なくともその方向を示す断片である。
自分を広げる読書の中で、とくに自分が「否」と叫びたくなるものを読む中で、自分が本当は何を書きたいのかを発見する。
を手続化・方法化したものである。
1.自分を炎上させる言葉からはじめる
最初に「呼び水となる1文」を用意する。
この「呼び水となる1文」は、書けるなら自分で書いてもいい。
しかし自分で書けるくらいだったら、0(ゼロ)からはじめることにはならない。
ここは言葉が出てくるきっかけになりさえすれば、何でもかまわない。
名言名句や「うまいこという」と自分が感心するようなフレーズよりもむしろ、カチンとくる(腹が立つ)ものとか、「これはひどい」と思うような1文を選んだ方が、言葉(文句)が出て来やすい。
一言で言えば「自分を炎上させる言葉を選ぶ」といった感じである※。
※では、実際に巷で炎上を引き起こしている発言がベストかといえばそうではなくて、文脈から切り離して持ってくると何てことはないフレーズであることが多く(状況×発言者×言葉遣い×内容の合わせ技が炎上発言を成り立たせるほとんどすべてであり、内容だけの比重を考えると案外軽いことが分かる)、あまり自分を炎上させてはくれないようである。
ネットで何か書いている人なら、自分を批判するコメントの類をストックしておく。
書いても仕方がないと思いながらも思わず反論してしまいたくなるようなのが、最も言葉が湧き出てくる。
他の人宛の言葉でも、思わず噛みつきたくなるような言葉なら、同様に使える。
「自分を炎上させる言葉」は、自分の価値観やものの見方と食い違うものであることが多い。
お手軽なのは、たとえば思想信条の違う/対立する人たちが書いたものから探すことである。
その発言の内部で〈食い違い〉を含む矛盾した文も「それが本当は正しいとしたらどういうことか?」という問いとセットにすると、呼び水となる言葉として使える。「本当は正しいとしたら」を持ち続けるのが少し労力がいるが、これができるなら、禅の公案のようなものも使えるようになる。
こうして溢れ出た悪感情まみれの言葉は、以下の数ステップの間に濾過/蒸留されて、アイデアに精製される。
「自分を炎上させる言葉」に、書くのを辞めたくなるような言葉を選ぶのは、その善用であり供養である。
2.沸き起こる言葉を手を止めず書き出す
自分の中から言葉が湧き上がる〈呼び水となる1文〉を選んだはずなので、その1文を目にして出てくる言葉をとにかく書き留めていく。
そのまま外に出すわけではないので、手を止めたり、書いたことを反省したりはしない。
うまい表現にはならず、まともな文にもならないかもしれませんが、単語であっても、時にはうなり声であっても、とにかく書き出す。
外には出せないような罵詈雑言や汚い言葉も書き留める。
同じような言葉が繰り返し出てきても構わないので、そのまま書き出ていく。
この段階ではそれほど時間を使いたくないので、あまりたくさん書かなくてもいい。
言葉が途切れて来たら、次のステップへ進む。
3.書き出した〈ぶつくさ〉に線を引く
2.で書き出した言葉の羅列を読み返します。
「これは、さっきのと似てる」「また同じ事を言ってる」というところに線を引いたり囲んだり印をつけたりしていく。
重要そうと思えるところにも、線を引いたり囲んだり印をつけたりしていく。
そして線・囲み・印をついた部分から、テーマや方向性とすべきキーワードを拾い出す。
ここまで来れば、今後の調べものやアイデア出しのテーマや方向性、少なくともその候補ぐらいは手に入る。

4.拾い上げた項目を交差Crossingさせる
3.で拾えたのはせいぜい思いつきだが、さらに掘り下げるにはもう1ステップ加える。
線・囲み・印をついた部分から、なるべく異なるものを3つくらい選ぶ。
3つの項目を拾った場合は、3×3のマス目を埋めることになる。
3つ以上選んでもかまいませんが、拾い上げる項目が増えると、交差表は大きくなり埋めるマス目の数は急激に増えて時間がかかるようになる。
より複雑なものや大物を狙うなら3つより多めを、そうでないなら3つだけを拾うことにして先に進む。
中の人の現有能力では、手間対効果を考えると3×3ぐらいがちょうど良いようである。
こうして選んだ3つ(以上)の項目をつかって下のような交差表をつくる。
左端と上端に並んだ項目を掛け合わせてマス目を埋めていく。

これはTAEで出てくるパターン交差の流用である。
交差させる項目はできるだけ異なるものを選んだ。
いわば思いつきの中の極端なもの同士を掛け合わせることで、思いつきに含まれているがはっきりとは現れていないものを現前化させる試みである。
これは自分のつぶやきのそれぞれを、異なる角度から見なおしてみることでもある。
個々の思いつきには、その内容と共に、その内容を支える前提や視点が(多くは暗黙的・陰伏的に)含まれている。
異なる思いつきを掛け合わせることは、異なる内容と前提・視点を強引に組み合わせることで、暗黙的・陰伏的だった部分を表面に浮かび上がらせる。
また 自分を炎上させる言葉に惹起させられて出てきたつぶやきは、勢いはあるかわりに冷静さに欠け視野がせまいものになりがちである。
異なる前提・視点と結び合わせることは、視野を広げ、冷静さを取り戻すプロセスでもある。
どのように「掛け合わせ」て何を書き込むかは自由であり、異なる項目を結び付けようとするだけで(特にそれぞれの項目が大きく異なっている場合には)言葉が浮かんでくることも珍しくない。
しかし一応のガイドライン(導きの質問)としては次のようなものがある。
・〈左端の項目〉と〈上端の項目〉は、どこが似ているか?
・〈左端の項目〉と〈上端の項目〉は、どこが異なるか?
・〈左端の項目〉の視点から見て〈上端の項目〉はどう見える?
・・〈左端の項目〉と主張する人は、〈上端の項目〉をどう思うか?
・〈左端の項目〉の中の何が、〈上端の項目〉を問いとした時の、答えになっているか?
・〈左端の項目〉と掛けて〈上端の項目〉と解く、その心は?
交差シートのマス目は必ずしもすべて埋める必要はない。
交差する中で「これは!」というものが出てくれば、目的は達したので先に進んで構わない。
ただ、作りかけの交差シートは保存しておこう。
いつか空いているマス目を埋めようとすることで、今は気付かず思いつかなかったアイデアが浮かぶことが結構ある。
(参考文献)
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