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    時間がない人のための要約

    ・長い文章を書くにはアウトラインプロセッサが便利

    ・アウトラインプロセッサは、
    (a)文章の論理構造
    (b)(執筆中に直面する)文章の複雑さ・長さ
    の両方を、書き手が随時コントロールしながら執筆するための道具


    ・アウトラインプロセッサを使うと〈今できるところから〉書くスタイルがとりやすい

    ・《発想》《構成》《剪定》の作業を分けると効率が良い




    まず、

    ・何故この世界にアウトラインプロセッサなんてものが存在するのか

    そして

    ・アウトラインプロセッサが何をもたらすのか

    について解説し、その後、

    ・アウトラインプロセッサを使って書く実際の作業プロセス

    の一方法について説明する。



    アウトラインプロセッサとは?


     辞書的に言えば、アウトラインプロセッサとは、文章の構成(アウトライン)の組立てや章・節の構成・変更を容易にする機能を備えた文書作成支援ソフトウェアである。
     英語ではoutlinerという呼称が一般的である。

     以下ではまず、アウトラインプロセッサならば必ず登載されている基本機能について説明しよう。

    ※以下の説明はアウトラインプロセッサ機能を持ったテキストエディタやワープロソフトにも当てはまる
     

     
    章や節や段落などを階層化されたブロックとして扱える


     アウトラインプロセッサでは、インデント(字下げ)を使って、文章の部分部分をひとかたまりのブロックとして扱い、ブロック同士を階層化できる。
     例えば、章タイトルのブロックに下位項目としていくつかの節タイトルを従属させたり、節タイトルに下位項目としていくつかの段落を従属させることができる。

     下の3つの例で囲まれているものは皆ブロックである。

    block3.png


     下の例で「構成を考えることから文章書きに着手するのに便利」という項目には、

    ・元々、アウトラインプロセッサはこのためのもの
    ・(ある程度以上の長さの文章だと)最初から最後まで止まらず迷わず書き抜ける人はあまりいない
    ・既存の構成(フォーマット)を選択し採用することも含めて
    ・構成(アウトライン)は、文章(文)レベルでなく、単語レベルで作成可能
    ・書きたいことと書くべきことのバランス

    という5つの下位項目が従属している。

    block2.png


    下の例で、「アウトラインプロセッサを使うメリット」という項目には、
    ・構成を考えることから文章書きに着手するのに便利
    ・発想と構成の作業を分離できる
    ・(総じて)常に〈今できるところ〉から文章書きの作業に着手/再開できるよう支援するソフトウェア

    という3つの下位項目と、それらに従属する更に下位レベルの項目が、従属している。

    block1.png


     こうして文章の階層構造を持ったブロックの集まりとして扱うことが、アウトラインプロセッサとこれを用いた文章作成の中核である。
     
     そのため、アウトラインプロセッサでは、インデント(字下げ)で階層構造化したブロックごとに以下のような操作ができる。

    ブロックごとに表示したり隠したりできる

     このご利益は、文章の構造(アウトライン)だけをみたり、細部を表示したりできること

     例)各章の見出しだけを表示して、全体構造を見る

       outline-toplevel.png


     例)ある節だけ細部まで展開して、現在検討中の範囲(だけ)を表示する
     
       outline-detail.png

     

     この機能によって、長く複雑な文章のうち、必要に応じて現在検討中の範囲やレベル(だけ)を表示し編集することができる。
     言い換えれば、複雑で長い文章を書く際、執筆者が取り扱える限度に、常に複雑さや長さをコントロールできる訳である。



    ブロック単位での編集が容易


     普通のテキストエディタやワープロの文書編集機能に加えて、ブロック単位でのコピー・移動・階層移動が行える。

     ブロック単位で階層レベルを上下に変更

    例)章を節に格下げ、節を章に格上げ

     ブロック単位で位置(前後)を入れ替え、移動

    例)1章の中にある節を、その中にある段落ごと、別の章に移動する

     ブロック単位でのコピー

    例)ある章を、その中にある節・段落ごとコピーする



    アウトラインプロセッサを使うメリット


     では、こうしたアウトラインプロセッサの機能は文章作成に何をもたらすだろうか?


    構成(アウトライン)先行の文章作成

     その名が予告しているとおり、アウトラインプロセッサは、構成(アウトライン)を考えることからはじめる文章作成をサポートするものである。
     
     ある程度以上の長さの文章だと、最初から最後まで止まらず迷わず書き抜ける人はそう多くない。
     行き当たりばったりの文章作成は書きなれた人にとっても危険が多い。
     何を書いていいのか分からなくなって行き詰まり、何を書いているのか分からなくなって踏み迷う。
     加えて必要に迫られての文章作成は、制限事項や必要事項がほぼ必ず着いてまわり、おまけに締切りが追ってくる。
     
     制限事項を守り、必要事項を盛り込み、締切りに間に合うよう速く、しかも少しでも楽に書くためには、既存の構成(フォーマット)を選択し採用することも含めて、まず文章のまず構成(アウトライン)を考えた方がよい。
     構成づくり自体は、最初から完成形の文章を書き始めることに比べれば、はるかに時間も労力も少なくて済む。
     というのも、構成(アウトライン)づくり自体は、文章(や文)を書かなくても、単語・フレーズのレベルで可能である。
     むしろ短い言葉で書いた方が、入替えや並べ替えがしやすく、ああでもないこうでもないと構成をいじりやすい。
     短く言葉でコンパクトに書くことで全体を一目で見る(一望する)ことが容易になる(アウトラインプロセッサのブロック単位の表示・隠し機能もこの一望性に貢献する)。
     また単語レベルで構成を考えると、つなぎ言葉など前後の文脈を規定する言葉は除かれ、位置・階層レベルを変えるだけで各項目の関係を組み直せる。
     文章作成の他の作業から構成づくりを取り出すことで、構成の作成・変更の作業を軽くし、文章作成全体の作業を軽減することになる。


    文章構成の一望化
     
     アウトラインプロセッサを使うことは、単に構成づくりの作業の分離を促すだけではない。
     文章作成の全過程で、文章の構成を念頭において作業することが容易になる。
     ブロック単位での表示・隠し機能を使うことで、全体の構成を俯瞰したり、細部に集中したりといった切替えが自在にできる(文章のズームアウト/クローズアップ)ので、《過度の複雑さのために構成》の作業が混乱・停滞する危険を減らす。
     またインデントにより構造化しつつ書くことになるので、常に何が文章の幹であり何が枝であるかが明確であり、また明確化することを求められる。すなわち文章の論理構造を自覚的に取り扱うことになり、そのトレーニングにもなる(俗っぽく言えばアタマが良くなる)。

     アウトラインプロセッサを使うことで、構成づくりの作業のはじめからおしまいまで、論旨の迷走や構成の破綻が起こりにくくし、起こった場合にも修正ができるだけ容易にできるように支援する。
     

    発想と構成の分離

     文章作成の他の作業から構成づくりを取り出したように、アウトラインプロセッサの使用は、発想と構成の作業を分離することを助ける。
     この二つを分離すべき理由は次の通りである。
     発想(思いつき)を促進するためには、できるだけ制約条件を外し、判断すること・結論を出すことを控えるべきである。
     構成はこれとは逆に、たとえば章・節・段落・文の包括(上下)関係や前後関係などを制約条件として、考慮に入れておこなわざるを得ない。文章の各部分は互いに依存し合い制約し合うから、このことは必然である。
     正反対の志向を持つ2種類の作業は、できれば分離して行った方が互いに邪魔し合う弊害が減じる。
     アウトラインプロセッサによる文章作成では、順序や階層レベルの変更を簡単にブロック単位でできることから、まず思いつくだけ書き出す(発想の作業)、しかる後、並べかえる(構成の作業)ことに専念する、といった作業の分離が行いやすい。
     後で見るように、本記事でも、そうした使い方を推奨する。
     

    〈今できるところ〉から着手する

     さらにもう一つ、アウトラインプロセッサは、人を最初から順番に書くことから解放し、〈今できるところ〉から文章書きの作業に着手/再開することを支援する。
     最初に全体の構成を考えて書くこと自体、文章を順番に書くことからの逸脱だったが※、文章を構成する部分を発想することも、それを並べ替えて構成をつくることも、粗い構成を細分化していくことも、それらを最終的に文章化することも、どれも文章の順序どおりに行う必要はない。

    ※建物を建てる際、北西角の一角を完成させてから他の部分を建て始める、といったことはしない。基礎全体を作り、土台を敷き、柱などの建方へと作業は進んでいく。構成を考えてから文章作成をはじめることは、これに比較できる。
     
     アウトラインプロセッサを使った文章作成では、文章の構成要素を階層化されたブロックとして扱うといったが、その階層はいつでも並べ替え・組替えが可能であり、また容易である。あとでいくらでも順番を変えることができるものして文章を書いていくのだから、「最初から順番に書く」ことに拘泥するのは無意味である。
     また、最初に全体構造を組み立てることから始めたが、アウトラインプロセッサを使っていれば、どれだけ書き進んでも最上位の章立てレベル以外を隠して、全体構造が一望できたところにいつでも何度でも戻ることできる。
     自分が書き出した込み入った文章に言葉のジャングルか迷路のように迷いだしたら、いつでも上空から迷路全体を俯瞰することだってできる。
     つまるところ、すでに大まかな構成はできているのだから(そして大まかな構成をやり直すことだっていつでもできるのだから)、好きなところ書きやすいところから書いていっても、どこにも行き着かず迷走することはない。
     
     
     以上が、何故この世界にアウトラインプロセッサなんてものが存在するのか、そしてアウトラインプロセッサが何をもたらすのかについて述べた一般論である。
     以下では、実際はどんな風にアウトラインプロセッサを使っているかを紹介するが、あくまで一個人の使い方なのでクセや偏りがあるはずなので、補完するために上記の一般論を先に置いた。




    アウトラインプロセッサを使った文章作成のプロセス


     アウトラインプロセッサを使ったは、次の三つのパートに分かれる。
     1.アウトラインづくり、2.アウトラインの剪定、3.文章化

     実際は、この3つを行ったり来たりすることになる(長い文章ほど往復する回数は多くなる。今回の文章程度だと2往復くらい)。
     


    1.アウトラインづくり


     アウトラインづくりは、基本的にトップダウンの作業となる。
     まず全体の構成をつくり、それを細分化・詳細化していくことで、アウトラインを成長させていく。
     
    (1)最上位レベル


    (a)既存のフォーマットの選択・採用


     最上位レベルの構成は、文章のジャンルや分野にある既存のフォーマットを使うことが多い。
     理由には、書き手側の利益だけでなく、読み手の利益も含まれる。すなわち、

    ・すぐ取り掛かれる(何から書き始めるのか迷わなくて済む)

    ・安定した効果を期待できる

    ・読み手の想定を裏切らず読みやすい


     逆に言えば、読み手の想定を裏切る必要のある文章を書く場合は、その限りでないことになる。
     しかし実際は、物語のようなものでも、最上位レベルに関しては、既存のフォーマットにしたがっていることが多い。
     
     先に述べたように、アウトラインはいつでも、どんなレベルでも変更可能だから、後で変えることになったとしても、最初は既存のフォーマットからスタートする手もある。
     
     過去記事で、文章の種類やジャンルごとに既存フォーマットについて述べたものは、以下の通りである。参考にされたし。


    ・実用文のフォーマット




    ・論文のフォーマット




    ・手紙文のフォーマット




    ・読書感想文のフォーマット




    ・物語のフォーマット
     




    (b)書きたいことと書くべきことを箇条書きする


     しかし既存のフォーマットは汎用であるために中身がない。
     様々なことに用いることができるよう、わざと空白にしてある。
     
     したがって、既存のフォーマットを使うにしろ使わないにしろ、何を書こうとするのか、書き手であるあなたが決めなくてはならない。
     そして、○○について書こうと決めたら、今度はそのためにどんなことを書かなくてはならないかについても考えなくてはならない。
     書きたいこと(want to write:WTW)と書くべきこと(need to write:NTW)は、アウトラインの必須項目である。
     既存のフォーマットは文章のおおまかな順序や構造を与えてくれるだけでなく、空白を書き手に差し出すことで、書きたいこと(WTW)と書くべきこと(NTW)を呼び出す呼び水となるものである。
     
     《発想》と《構成》の作業を分けて行う基本ルールに従って、まずは書きたいこと(WTW)と書くべきこと(NTW)を、思いつく限り書き出してみよう。
     長い文で書いてしまうと取り回しが悪い。
     この段階では、やや言葉足らずでかまわないから、単語かフレーズの形で思いつきを書き並べていく。もちろん順序は問わない。

     書きたいこと(WTW)と書くべきこと(NTW)以外に浮かんできたものも、とにかく書き出そう。
     現時点で不明なこと、書くに当たっての懸念、その他、書くべきでないことや、とくに書く必要でないことも出てくるに違いない。
     にごった井戸を澄んだ水が出てくるまで汲み上げるようなもので、無駄に思えるものを外に出した後に、採用すべき思いつきが出てくることも少なくない。
     
     書き出せるだけだしたら、軽く分類するなり、既存のフォーマットに当てはめるなりすれば、スタート地点としての最上位レベルのアウトラインは、とりあえずできたことになる。
     
     なお、不要にみえる項目も削除せず、(ゴミ箱)という項目をつくってその下位項目として移動しておくことをお勧めする。
     最終稿の中に生かされなくても(そして一見まぬけに見えても)、こうしたジャンク項目はひそかに書き手の知性と動機付けの水位を上げてくれているのだ。
     
     
     では、次の細分化の作業に入っていこう。


    (2)細分化の作業


     ここまで着たら、大まかな項目が箇条書きとして並んでいるはずである。
     これ以降、それぞれの項目を細分化・詳細化していくことで、アウトラインを成長させていく。
     
     大原則は〈今できるところから〉行うである。
     詳細化は、項目によって難易の差が大きい。向こう見ずに最難関から突破しようとせず、最も取り組みやすそうなところから手をつけることを勧める。
     
     細分化・詳細化には、今の時点では抽象的に、あるいはぼんやりとしか分かっていない/考えていない事項について、より詳しく何であるのか(あるべきか)を突き止め、議論を詳細化し深めていく必要がある。
     
     具体的には、それぞれの項目について、自問自答を行っていくことになる。
     つまり、いま詳細化しようとしている項目を「問い」として捉えて、その答えを、下位項目として追加していくのである。
     そうしてでてきた下位項目についても問答を行い、さらに下位項目を追加していく。
     この繰り返しでアウトラインの細分化を行っていく。
     
     どのような問答を行うべきかは、書いている文章やアウトラインの段階によって様々だが、よく使われる問いを並べてみると以下のようになる。

     ・「~とは何か?」-本質:定義を導く
     ・「言い換えると?」-説明・言い換えを導く
     ・「具体的には?」-説明・事例を導く
     ・「どんな例があるか?」-例示を導く
     ・「何故そう言えるのか?」-根拠を導く
     ・「その後は?」ー帰結・結果を導く

     作業の進め方は、最上位レベルでやったのと同様、《発想》と《構成》の作業をを分けて行うのがいい。

     まず《発想》の作業では、ここでも思いつく限りとにかく書き出していく。
     導きの問いを参考に、今のアウトラインの各項目に問いを投げかけ、あるいは問いの形にして、答えらしきものが浮かぶ限り書き出す。
     先に言ったとおり、無関係くさいものも、同考えてもハズレな答えも、とにかく書き出してしまった方がいい。
     うまい答えが出ないからと止まってしまうと、自分の中の検閲官に追いつかれてしまい、効率は落ちてしまう。
     そうした自己検閲をなるべく避けるために、《発想》と《構成》の作業を分けるのである。
     
     問答の答えを書き出し終えたら、《構成》の作業として、新たに書き並んだ下位項目をしかるべき順に並べ替え、不要な項目を削除せずゴミ箱項目に移し、作業中に他にも必要な項目が思い浮かべば追加していく。

     
     細分化は、今述べたように、何重にも繰り返す必要がある。
     一通りやり終えた後に、最初に手をつけた項目を見直すと、さらに細分化を続ける必要に気付くことがある。
     詳細化する過程で、書き手の理解が進み思考が深まったのである。
     
     言うまでもなく、この細分化の作業が、アウトラインづくりの中心であり、最も時間がかかるところである。
     


    2.アウトラインの剪定


    (1)アウトラインづくりは必ず行き詰る


     アウトラインづくりは、基本的にトップダウン、全体構成から細部へ進む作業になるが、そうそう一直線に下っていけば完成するものではない。
     
     大抵の場合、アウトラインが詳細になっていくと、どこかで行き詰ってしまい先に進まなくなる。
     たとえばいくつもの筋や要素が入り組んで見通しが極めて悪くなったり、本筋が何であるかが見えにくくなる。
     
     また手がける文章が長ければ長いほど、細部が出来上がってくると、最初に決めた全体構成のところどころに不整合や改善点が見えてくる事が多い。
     全体構成を決めたときには、文章を構成する細かい要素の隅々まで念頭において考えられた訳ではない。アウトラインを細分化する中で素材や構成と格闘しているうちに、そうした細部が持つ意味が見えてきたり、他の要素とのつながりが発見できることは少なくない。
     最初は必須に思えた要素がそれほど重要ではなくなくなったり、繰り返しが過ぎてうるさく感じるようになったり、不要部分や重複部分も目に付いてくる。
     もちろんすべての重複部分や不要部分を取り除けば済む訳ではない。冗長性のない文章は、踊り場のない階段のようなもので、読みづらく、かえって伝えるべきものを伝えにくくなる。
     
     重要なのは、この行き詰まりは、最初の目論見が甘かったことだけから生じているのではないことだ。
     今のあなたは、かつてのあなたと同じではない。あなたの知力は、このアウトラインに取っ組み合うわずかの間に、いくらか成長したのだ。だからこそ弱点に目が行き、改善すべき点に意識が向く。

     書くことは気付きを生む。
     人は理解したことを書くばかりでなく、理解するためにも書く。
     あるいは最初の理解を乗り越えるために書くのだとも言える。
     そうでなければ、今も書かれている多くの見返りのない文章は書かれぬままだっただろう。
     だから、これは良い徴候だ。つまり、ようやく本当に頭で考えることができる段階に来たということだから。
     
     細分化を進めてアウトラインが育ち切ったら(そしてアウトラインの繁茂が道をふさぎ出したら)、全体を見直す機会である。
     
     
    (2)剪定の作業


     樹木の剪定とは異なり、アウトラインの剪定は、取り除くだけではなく増補する必要も同じくらいある(アウトラインは樹木とは違い自力では成長しない)。
     それでもあえて剪定の比喩を使うのは、木の枝葉に近づきハサミを使った後、木から離れて全体像を見ることで成果を確認する、という作業が、ここでのアウトラインを整える作業に似ているからである。
     削除したり増補したりした後、その成果を評価するには、より広い範囲を見ながら行わなければならない。
     つまりアウトラインを整理する作業は、より上位の項目のレベルや全体構成のレベルにまで、繰り返し戻って確かめることが必要になる。
     
     上位レベルを参照しながら、次のようなことを確認する。
    論理的に破綻してないか?

    前後関係に問題はないか(まだ出てこない事項を参照したり前提にしていないか)?

    重複した部分はないか?→あればどれを生かすべきか?一方を「何章を参照せよ」にするか?複数生かすなら表現を変えるか?

    不要な部分はないか?→省略できないか?本文ではなく注記に回すか?


     こうしたことを確認しながら、アウトラインに対して移動と除去と追加を行っていく。

     
    (3)大きな変更が必要な場合


     部分的な手直しでは足りず、章立ての順序を入れ替えたり、一つの章を分割したり、また複数の章を合体したり、と大きく構成を変える必要が出てくるかもしれない。
     書かれている内容が同じでも、構成が変わると(順序の変更のようなものですらも)、文章はまるで異なったものになる。
     今まで手を掛けて育ててきたアウトラインほど、下手に手を入れたら台無しになりはしないか、と手を出しづらくなる。
     
     対策はいろいろあるが、一番簡易なのは、先のバージョンのアウトラインはまるごと残しておくことだ。
     こうしておけば、安心していくらでもいじり回すことができる。
     いじり倒してうまく行かなかったら、うまくいかなかったバージョンとして、それも残しておく。
     
     最終的にボツになるアウトラインにも、後で役立つヒントが含まれることがある。
     失敗をもたらした大胆な改造は、少なくともその時点では、少なくとも意図においては、採用すべきものがあったはずである。それを消してしまっては、心理的に、その良き意図ごと捨ててしまうことになる。
     失敗バージョンを残しておいた方が、あとでその意図をもっとうまく実現する成功バージョンが生まれやすい。
     
     
    (4)煮詰まったら違うフォーマットに変換してみる


     アウトラインプロセッサは、基本的にコンピュータの上で文書作成が完結するように作られたツールである。
     しかしユーザーはそれに縛られる必要はない。
     作業途中の文章がコンピュータの中にあるとつい忘れがちだが、ひどく行き詰ったら、あるいはいろいろ改変を試みてもうまくいかなかったら、手をつかって紙に構成を書き出してみるだけでも、思わぬ展望が開けたりする。
     箇条書きでもいいし、項目同士を線で結んでチャート化してもいい。表にまとめてみるのもいい。
     あるいは音声言語を使って誰かに概要を説明してみるのもよい。
     
     

    3.文章化の作業


     細分化と剪定を経て、アウトラインが十分に熟したら、単語レベルから完全な文・文章のレベルへ移行する段階である(実際は締切りが迫るとか外的な要因に促されて、文章化に進むことが多いが)。
     
     
     ここでも〈今できるところから〉着手する原則に従う。
     つまりアウトラインの文章化もまた、取り組みやすそうなところから、どんどん作業をしていい。最初からでなくてもかまわない。
     
     いきなり最終稿を作ろうとするより、ドラフト(下書き)のそのまたドラフト(下書き)を書くぐらいの感じで進めた方がスムーズに進み、手直しも案外少なくて済む。
     
     詳細化の作業がそうだったように、文章化してみることで、改めてアウトラインの過不足や順序の問題に気付くことも多い。
     つまり文章化を進めるうちに構成を変える必要はどうしても出てくる。
     丁寧にやるなら、1.アウトラインづくり や 2.アウトラインの剪定の段階にまで戻ってやり直すべきである。つまり《発想》《構成》《剪定》の作業をもう一度行うことになる。この章の最初に述べた「この3つを行ったり来たりすることになる」とは、このことである。
     大規模に変更する場合は特に、やり直した方が結局速く済む。




      
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