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    時間がない人のための要約

    1.フォーマットを細分化して、〈ここでは何を書くべきか〉を示すフレームを作っていく
    2.フレームごとに、このトピックについて書けることを、順不同/思いつくだけ止まらずに書く(フレーム内で殴り書き)
    3.2のなぐり書きを読み返し重要そうなところに下線を引き、下線部を一文にまとめる。
    4.殴り書きできない(足りない)フレームについては、要調査、要発想のタグをつけておいて、まとめて処理する


    フレームドNSW
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    〈書きべきこと〉と〈書けること〉

     文章を書くには、正反対の方法が二つある。
     
     一つは書くべきこと(NTW: need to write)を先に定めるアプローチである。 
     何を書くべきかを細部に至るまで決めることができれば、究極には、文章を書くことは穴埋め作業に還元される。
     そこまでいくのは現実的には無理でも、多くの文章には、どんな順序で何を書けばいいかを示す大まかなフォーマットならば存在する。
     通常は、既存のフォーマットが与える大まかな枠組みからはじめて、これを細分化することでトップダウン的に〈どんな順序で何を書くべきか〉というアウトラインを決めていく。
     
     もう一つは、とにかく書けること(ATW: able to write)からどんどん書いていき、調整は後で考えるやり方。
     これは、書けなくなる要因である自己規制を振り払うために役立つ。
     このブログでも、時間を決めて、その間は止まらず書き続けることノン・ストップ・ライティングやレヴィ=ストロースの執筆法を紹介したことがある。




     

     しかし、どちらの方法にも限界がある。
     
     書くべきことを先に定めるアプローチの場合、よほど簡単な文章でもない限り、アウトラインを細分化する作業はいつしか行き詰まる。
     我々は、書こうとしている文章を、最初から完全に把握している訳ではない(しているなら、そもそも書き方に悩むこともなく、すらすら最後まで書き切ることだろう)。
     ほとんど同じことだが、書くべきことが明らかになったとしても、私がそれを書くことができるとは限らない。
     
     逆に、書けることから書いていくやり方にも、いくつか問題がある。
     ひとつは、何でもありで書き出すと、あとでまとめるのが大変なことである。
     さらにこちらの方が重要だが、「何でもいいから書け」と言われても、大抵の人はそんなには書けないことである。
     ガイドとして〈何を書くべきか〉や「お題」があった方が、むしろ書きやすい場合がある。
     
     では、どうすればいいか?
     すぐに思いつくのは(そして誰もがやっているのが)、〈書きべきこと〉からはじめるアプローチと、〈書けること〉をとにかく書き出すアプローチを、組み合わせることである。
     人それぞれに、様々な組み合わせ方が考えられる。
     
     以下は、読書猿の中の人が現在用いている〈組み合わせ〉である。


    1.〈書くべきこと〉を示すフレームを用意する

     フォーマットを細分化することでアウトラインをつくるのは同じである。
     
    (1)全体構成に使える文章の型紙として、できるなら最初にフォーマットから始める。
    ・手紙文や報告書のように、あらかじめ用意されている場合はそれを用いる。
    ・何らかの発想法や思考整理法で構成案を手に入れている場合はそれを用いる。

    ※ 誰に指示された訳でも依頼された場合でもない場合、あなたの〈書くべきこと〉とは自分の〈書きたいこと〉である。
     書きたいことのジャンルが判明している場合は、フォーマットを発見できる可能性があるが、それ以前のなんとも表現しようもない段階にある場合は、フレーム無しのノン・ストップ・ライティング(時間を決めて、その間は止まらず何でもいいから書き続ける)をおすすめする。
     
     
    (2)フォーマットをできるだけ細分化する
     この場合も、できるならパターンを用いる。
     主張文なら、クレーム、データ、ワラントといった3要素が使える。
     データの列挙なら、時系列順に分解したり、空間的に順序付けする。
     
     こうしたパターンが何も思いつかない場合やどんな分割パターンを使えばいいか不明な場合は、項目をとにかく二分割することを繰り返す〈サクランボ分割〉を使うといい。分けてみることで、内部構造が見えてきて、細分化の方向が分かることがある。

     
    2.フレームごとに〈書けること〉を順不同で殴り書きする

     アウトラインをできるだけ細分化し、行き詰まったら、そこで殴り書きに移行する。
     アウトラインの最下層は、何を書くべきかを示すフレーム(枠)であると考えて、その枠内で/書くべきことについて、思いつく限り書き出す。

    (1)書けるところから書く
     フレームをどこから埋めるかは、こだわらなくてよい。
     埋めやすいところから取りかかる。書きにくそうなところは後回しでよい。

     埋めていくうちに理解が進んでいく。
     ジグソーパズルのように他のピースが埋まると、分かることもある。
     後述のように、埋められない部分が分かるのも、進歩である。
     
    (2)〈書くべきこと〉について殴り書く
     〈書くべきこと〉について思いつくことを、単語・フレーズでいいので、止まらず書き出す。
     文章が出てきたらそれも書き留める。
     順不同でOK。重複してもかまわない。

    (3)手が止まったら、書き殴りを読み返して、重要そうに思えるところや気になるところに下線を引いておく

    (4)殴り書きを、(a)まとめるもの、(b)フレーム外に追い出すもの、(b)ゴミ箱行き、の三つに分類する。

    (a)まとめるもの
     下線を引いたものをいくつかに分けて、それぞれを、つなぎ合わせて一つの文にしてみる。あるいは、それぞれに小見出しを付ける。
     
    (b)枠外項目に集めるもの
     下線を引いたが、今のフレーム内に収まらないもの、「居るべき場所はここじゃない」と
    感じるもの、しかし捨てるのが惜しいものがこれにあたる。
     これらも、できればいくつかに分けて、それぞれを一文化して、枠外に出す。
     これがアウトラインの組み替えのきっかけになる。
     枠の中で殴り書くことで、枠を超えるものかどうか分かりやすくなる。
     
    (c)ゴミ箱項目に捨てるもの
     惜しくない殴り書きもすぐに消さずゴミ箱項目に集めておく。
     後で何かのきっかけになるかもしれない。


    3.書くべきことと書き得ることのギャップを浮かび上がらせる

     殴り書きでフレームを充填することができない部分は必ず出てくる。
     フレームのおかげで問題は局地化されているので、そこだけ対策すればいい。
     「知らないから書けない」のであれば、調査が必要である。そのフレームには「?」マークをつけておく。
     「誰もやってない新しいものが必要」であれば、発想が必要である。そのフレームには「!」マークをつけておく。
     調査と発想のどちらが必要か分からない場合もある。その場合は「!?」マークをつけておく。
     埋めることができなかったフレームすべてに、要調査/要発想マークが付け終わったらまとめて処理する。要調査マークの項目については調査/調べものし、要発想マークの項目について発想法を用いる。
     
     しかし殴り書きですら書けない理由が、無知/未知のせいでも、思いつかないのでもない場合もある。つまり必要なのは調査でも発想でもない場合、何らかのメンタルブロックが書くのを妨げている。
     この場合は、これ以上抵抗せずに「心の言い訳」を真摯に訊く(書き出してもいい)。
     あるいは、書かずに済ませる道を探る。この場合はアウトライン(構成)の変更が必要になる。
     我々は書くべきこと(あるいは書きたいこと)のすべてを書ける訳ではない。
     多くの文章はいくらかの断念をもって完結する。
     諦めたことは、次の文章を書き始める理由・動機となる。


    4.アウトラインを修正する

     3では殴り書きをまとめて、一文にしていった。
     フレームの外に放り出したもの、フレームに収まらないものたちが、収まるべき場所を要求する。これがアウトラインの変更につながる。
     ボトムアップでアウトラインが変更されたら、再度上位レベルからアウトラインを調整する。
     
     アウトラインが複雑になり、扱える限度を超え始めたら、全体のコピーを残しておいて、次のバージョンをつくる。
     削れるところをとことん削っていく(前バージョンとして全体のコピーが残っているので大胆にいく)。
     足りなくなるまで、言いかえると、思わず追加したくなるまで削っていくと、新しいアイデアを呼び込みやすい。


    (参考記事)




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